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第七章
第三話 デンバー王が用意した強者が弱すぎてざまーあ!
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~レオ視点~
俺は今、デンバー城の敷地内にある訓練場にいた。
訓練場の壁沿いには、この国の兵士たちが集まり、俺に視線を向けている。
「おい、聞いたか? あの男、王様に啖呵を切ったらしいぞ」
「マジかよ! あの王様に立てつくなんて命知らずだな」
「何でも、この模擬戦で負けたら斬首されるらしいぜ」
「ということは、公開処刑をするために俺たちを呼んだのか? だってあの男の対戦相手はこの国で一番のあいつだろう」
兵士たちの会話が聞こえてくる。
おそらくあいつらは、俺が負けると思い込んでいるだろう。今の内にほざけるだけほざいていればいいさ。試合が終われば、お前たちは目玉が飛び出るかと思うほど驚くのだからな。この俺の圧倒的な強さを前にして。
俺は視線を訓練場の出入口に向ける。
それにしても王様のやつは遅いな。どうせあの男のことだ。庶民である俺なんか待たせるだけ待たせて、イラつかせようと考えているのだろうな。本当にせこい考えだぜ。だけど俺はその作戦には乗らねぇぞ。
「待たせたな」
出入口から王様が一人の男を連れて入ってくると、兵士たちは一斉に頭を下げ出した。
だけど俺はそんなことはしない。何せ俺を侮った男だ。そんなやつには、例え王であってもそんなことをする必要はない。
眼球を左右に動かして周囲を見る。ブラゴのやつも、兵士たちと同様にクソのような王様に頭を下げていやがった。
まぁ、あの男も所詮は権力に抗うことのできない普通の人間にしかすぎないからな。
「お前が俺の対戦相手か。ふん、俺よりもチビだし筋肉量も全然俺のほうが上じゃないか。見るからにザコ臭がプンプンしやがる」
対戦相手が俺の前に立つと、開口一番に俺を罵り出した。
男は二メートルを超えていそうなほど高身長であり、鍛え抜かれた筋肉は俺以上に膨れ上がっている。
「今日がお前の最後の日となる。何か言い残すことはあるか?」
王様が俺の最後の言葉を尋ねてくる。その言葉を聞いた俺はニヤリと口角を上げた。
「そうだな。なら、俺が勝った場合は王様、お前は俺に土下座をしてもらおうか?」
「何だって! あの男、王様に勝った報酬として土下座を要求しやがった」
「なんて命知らずな。あの男終わったな」
「おい、見ろよ。あの男の言葉に、王様は顔を真赤にしているぞ! 絶対にご立腹だ。あの男、負けた場合は斬首どころでは済まされないぞ」
俺の言葉に、兵士たちはどよめく。
「コーウ! Sランクの実力を見せつけろ! あの男を完膚なきまで叩きのめせば、報酬金額を上乗せしてやる」
「ほう、それはいいな。なら、王様をコケにしてくれた礼を言わせてもらう。お前のお陰で俺の貰える金が増えるのだからな」
「礼なんていいさ。どうせお前は金を貰えない。何せ、この俺に負けるのだからな」
俺の挑発に、コーウと呼ばれた男は乗ったようだ。額に青筋を立て、睨みつけてきた。
「なら、お望みどおりに今すぐ倒してくれる!」
試合の合図もなしに、男は背中にある大剣を引き抜くと、そのまま勢いよく振り下ろしてきた。
相手の攻撃の軌道を見破った俺は、そのまま後方に跳躍して一撃を躱す。
まったく、これだから単細胞は困る。ちょっとつつけばすぐに熱くなるから扱いやすいぜ。
「どうした? そんな遅い攻撃では、一角ウサギですら仕留められないぞ」
「たった一撃を躱した程度で図に乗るな!」
男は大剣を振り上げながらこちらに駆け寄ってくる。
「なら、攻守交替といくか」
ティルヴィングを鞘から抜いた瞬間、十字鍔のキヨンから触手のようなものが飛び出し、俺の手首を刺す。
剣とつながり、文字通り一心同体となった瞬間、剣を水平にする。
やつも次の一撃を当てようと接近しているが、男の動きはまるで亀の歩みのように遅く映った。
のろいんだよ! このノロマ!
このまま一瞬で倒してやろうか。いや、やつはこの俺をコケにしたんだ。一瞬で終わらせるのは面白くない。アリの足を一本、一本毟り取るようにじわじわと追い詰めてやるぜ。
素早く思考を巡らせ、瞬時に戦法を考える。
「食らえ! 一閃突き!」
最も早い技を繰り出し、コーウの持つ大剣を狙う。
ティルヴィングより行われた一閃突きは、狙い通りに男の大剣に直撃。するとやつの持っていた大剣は砕け、地面にボロボロと落ちる。
一撃を当て、コーウの持つ得物を破壊したあと、そのまま通りすぎる。そしてくるりと身体を半回転させ、男を見た。
やつは得物を失っているとも知らずに、無様に刀身を失った剣を振り下ろす。もちろん男の斬撃は空すら切れなかった。
「なん……だと? いったい……何が起きた」
突然刀身がなくなった大剣に、コーウは戸惑いを見せている。背中ががら空きだ。あれでは今すぐ切ってくださいと言っているようなもの。だけど俺はそんなことはしない。だってすぐに終わらせたらつまらないからな。
壊れるまで遊んでやるよ。
「どうした? 得物を失ってビビッているのか? その筋肉は見せかけか?」
「何だと! この俺の鍛え抜かれた筋肉をバカにしやがって! テメ―なんか、絞め殺してくれる!」
握っていた剣を投げ捨て、コーウは両手を前に突き出した状態で無防備に突っ込んできた。
「本当の強者を見破ることができない愚鈍なやつの末路がどうなるのか、この場にいる全員に見せつけてやる」
ティルヴィングを真上に持っていくと、構えた姿勢のまま動きを止める。そして男が間合いに入った瞬間、一気に振り下ろした。
「大切斬!」
技を放った直後、ティルヴィングの刀身は男の右腕を切り落とし、鮮血をぶちまける。
「ギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァ! 腕がアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!」
腕を斬られた男は、左腕で右側の切断面に触れながら、断末魔の叫びを上げた。
「何をギャアギャア叫んでいやがる。俺の攻撃はまだ終わっていないぞ! もう一度大切斬!」
もう一度切断力の高い技をコーウに放つ。
ティルヴィングの刃は男の左腕も両断し、切断された腕が転がると地面を赤く染め上げた。
「ギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァ! もう片方の腕がアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!」
両腕を失った男は、再び絶叫する。
ざまあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 俺を見下して侮ったからこうなるんだ!
へへへ、いい気味だ。だけどまだ俺の腹の虫が収まらない。次は右足、そして今度は左足、最後はその首を刎ねてやる!
得物を構え、コーウにゆっくりと近づく。
「ま、待ってくれ! 俺の負けだ。だから、い、命だけは助けてくれ! お前がこの国のナンバーワンだ!」
両腕を失っている男は両の目から涙を流し、哀れにも懇願してきた。その姿を見た途端、俺は腸が煮えくり返る思いに駆られた。
「この俺を侮辱しておいて、何が命乞いだ! テメ―は殺す! 少なくとも元この国で一番の強者なんだろが! それなら武人らしく戦って死ぬ覚悟でいやがれ!」
剣を上段に構え、そのまま振り下ろす。
この俺をイラつかせた罰だ! あの世で後悔しやがれ!
「止めて! レオ!」
刃が男の足に触れようとした瞬間、エリナの声が聞こえた。その声に反応した俺はティルヴィングの勢いを弱め、寸止めの状態で制止する。そして俺の上半身に腕を回されていることに気づいた。
「もういいわよ。それ以上はしなくても、あなたが一番だと言うことは、ここにいる全員が分かっているのだから。だから、それ以上は弱者をいたぶるようなことはしないで! そんなのレオらしくないわ!」
エリナは涙ぐみながら声を荒げる。
チッ、お前に泣かれたら興が醒めるじゃねぇか。ああもういい。この程度で赦してやるよ。なあに、お楽しみはこれからだ。何せ、国王様の土下座が見られるのだからな。
俺は心の中で笑いながらも、デンバー王に視線を向けた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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俺は今、デンバー城の敷地内にある訓練場にいた。
訓練場の壁沿いには、この国の兵士たちが集まり、俺に視線を向けている。
「おい、聞いたか? あの男、王様に啖呵を切ったらしいぞ」
「マジかよ! あの王様に立てつくなんて命知らずだな」
「何でも、この模擬戦で負けたら斬首されるらしいぜ」
「ということは、公開処刑をするために俺たちを呼んだのか? だってあの男の対戦相手はこの国で一番のあいつだろう」
兵士たちの会話が聞こえてくる。
おそらくあいつらは、俺が負けると思い込んでいるだろう。今の内にほざけるだけほざいていればいいさ。試合が終われば、お前たちは目玉が飛び出るかと思うほど驚くのだからな。この俺の圧倒的な強さを前にして。
俺は視線を訓練場の出入口に向ける。
それにしても王様のやつは遅いな。どうせあの男のことだ。庶民である俺なんか待たせるだけ待たせて、イラつかせようと考えているのだろうな。本当にせこい考えだぜ。だけど俺はその作戦には乗らねぇぞ。
「待たせたな」
出入口から王様が一人の男を連れて入ってくると、兵士たちは一斉に頭を下げ出した。
だけど俺はそんなことはしない。何せ俺を侮った男だ。そんなやつには、例え王であってもそんなことをする必要はない。
眼球を左右に動かして周囲を見る。ブラゴのやつも、兵士たちと同様にクソのような王様に頭を下げていやがった。
まぁ、あの男も所詮は権力に抗うことのできない普通の人間にしかすぎないからな。
「お前が俺の対戦相手か。ふん、俺よりもチビだし筋肉量も全然俺のほうが上じゃないか。見るからにザコ臭がプンプンしやがる」
対戦相手が俺の前に立つと、開口一番に俺を罵り出した。
男は二メートルを超えていそうなほど高身長であり、鍛え抜かれた筋肉は俺以上に膨れ上がっている。
「今日がお前の最後の日となる。何か言い残すことはあるか?」
王様が俺の最後の言葉を尋ねてくる。その言葉を聞いた俺はニヤリと口角を上げた。
「そうだな。なら、俺が勝った場合は王様、お前は俺に土下座をしてもらおうか?」
「何だって! あの男、王様に勝った報酬として土下座を要求しやがった」
「なんて命知らずな。あの男終わったな」
「おい、見ろよ。あの男の言葉に、王様は顔を真赤にしているぞ! 絶対にご立腹だ。あの男、負けた場合は斬首どころでは済まされないぞ」
俺の言葉に、兵士たちはどよめく。
「コーウ! Sランクの実力を見せつけろ! あの男を完膚なきまで叩きのめせば、報酬金額を上乗せしてやる」
「ほう、それはいいな。なら、王様をコケにしてくれた礼を言わせてもらう。お前のお陰で俺の貰える金が増えるのだからな」
「礼なんていいさ。どうせお前は金を貰えない。何せ、この俺に負けるのだからな」
俺の挑発に、コーウと呼ばれた男は乗ったようだ。額に青筋を立て、睨みつけてきた。
「なら、お望みどおりに今すぐ倒してくれる!」
試合の合図もなしに、男は背中にある大剣を引き抜くと、そのまま勢いよく振り下ろしてきた。
相手の攻撃の軌道を見破った俺は、そのまま後方に跳躍して一撃を躱す。
まったく、これだから単細胞は困る。ちょっとつつけばすぐに熱くなるから扱いやすいぜ。
「どうした? そんな遅い攻撃では、一角ウサギですら仕留められないぞ」
「たった一撃を躱した程度で図に乗るな!」
男は大剣を振り上げながらこちらに駆け寄ってくる。
「なら、攻守交替といくか」
ティルヴィングを鞘から抜いた瞬間、十字鍔のキヨンから触手のようなものが飛び出し、俺の手首を刺す。
剣とつながり、文字通り一心同体となった瞬間、剣を水平にする。
やつも次の一撃を当てようと接近しているが、男の動きはまるで亀の歩みのように遅く映った。
のろいんだよ! このノロマ!
このまま一瞬で倒してやろうか。いや、やつはこの俺をコケにしたんだ。一瞬で終わらせるのは面白くない。アリの足を一本、一本毟り取るようにじわじわと追い詰めてやるぜ。
素早く思考を巡らせ、瞬時に戦法を考える。
「食らえ! 一閃突き!」
最も早い技を繰り出し、コーウの持つ大剣を狙う。
ティルヴィングより行われた一閃突きは、狙い通りに男の大剣に直撃。するとやつの持っていた大剣は砕け、地面にボロボロと落ちる。
一撃を当て、コーウの持つ得物を破壊したあと、そのまま通りすぎる。そしてくるりと身体を半回転させ、男を見た。
やつは得物を失っているとも知らずに、無様に刀身を失った剣を振り下ろす。もちろん男の斬撃は空すら切れなかった。
「なん……だと? いったい……何が起きた」
突然刀身がなくなった大剣に、コーウは戸惑いを見せている。背中ががら空きだ。あれでは今すぐ切ってくださいと言っているようなもの。だけど俺はそんなことはしない。だってすぐに終わらせたらつまらないからな。
壊れるまで遊んでやるよ。
「どうした? 得物を失ってビビッているのか? その筋肉は見せかけか?」
「何だと! この俺の鍛え抜かれた筋肉をバカにしやがって! テメ―なんか、絞め殺してくれる!」
握っていた剣を投げ捨て、コーウは両手を前に突き出した状態で無防備に突っ込んできた。
「本当の強者を見破ることができない愚鈍なやつの末路がどうなるのか、この場にいる全員に見せつけてやる」
ティルヴィングを真上に持っていくと、構えた姿勢のまま動きを止める。そして男が間合いに入った瞬間、一気に振り下ろした。
「大切斬!」
技を放った直後、ティルヴィングの刀身は男の右腕を切り落とし、鮮血をぶちまける。
「ギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァ! 腕がアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!」
腕を斬られた男は、左腕で右側の切断面に触れながら、断末魔の叫びを上げた。
「何をギャアギャア叫んでいやがる。俺の攻撃はまだ終わっていないぞ! もう一度大切斬!」
もう一度切断力の高い技をコーウに放つ。
ティルヴィングの刃は男の左腕も両断し、切断された腕が転がると地面を赤く染め上げた。
「ギャアアアアアアアアアァァァァァァァァァ! もう片方の腕がアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!」
両腕を失った男は、再び絶叫する。
ざまあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 俺を見下して侮ったからこうなるんだ!
へへへ、いい気味だ。だけどまだ俺の腹の虫が収まらない。次は右足、そして今度は左足、最後はその首を刎ねてやる!
得物を構え、コーウにゆっくりと近づく。
「ま、待ってくれ! 俺の負けだ。だから、い、命だけは助けてくれ! お前がこの国のナンバーワンだ!」
両腕を失っている男は両の目から涙を流し、哀れにも懇願してきた。その姿を見た途端、俺は腸が煮えくり返る思いに駆られた。
「この俺を侮辱しておいて、何が命乞いだ! テメ―は殺す! 少なくとも元この国で一番の強者なんだろが! それなら武人らしく戦って死ぬ覚悟でいやがれ!」
剣を上段に構え、そのまま振り下ろす。
この俺をイラつかせた罰だ! あの世で後悔しやがれ!
「止めて! レオ!」
刃が男の足に触れようとした瞬間、エリナの声が聞こえた。その声に反応した俺はティルヴィングの勢いを弱め、寸止めの状態で制止する。そして俺の上半身に腕を回されていることに気づいた。
「もういいわよ。それ以上はしなくても、あなたが一番だと言うことは、ここにいる全員が分かっているのだから。だから、それ以上は弱者をいたぶるようなことはしないで! そんなのレオらしくないわ!」
エリナは涙ぐみながら声を荒げる。
チッ、お前に泣かれたら興が醒めるじゃねぇか。ああもういい。この程度で赦してやるよ。なあに、お楽しみはこれからだ。何せ、国王様の土下座が見られるのだからな。
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