Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第十六章

第九話 魔王アッテラは強者を求む。

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「さぁ、ワタシは名乗ったぞ。今度は君が名乗る番だ」

 名乗るように言われたけど、俺は別に名乗るほどの者ではないのだけどなぁ。まぁ、ここで無視すると、彼女を傷付けるかもしれない。ここは言われたとおりに名乗るとするか。

「俺は別に、名乗るほどの者ではないぞ。冒険者チーム、エグザイルドのリーダー、シロウだ」

「何? 冒険者だと? 勇者ではないのか?」

「いやいやいや、俺が勇者様なわけがないだろう。世界の平和を守り、この世の救世主とも言えるような存在ではない。仮に俺が勇者パーティーのメンバーだったとしても、ポーター辺りが関の山だろうな」

「ほう、勇者パーティーのポーターか。それは中々侮れないな」

 あれ? どうしてそうなる?

 確かにポーターは、状況を見極めて仲間をサポートする。重要なポジションではあるけど、警戒するほどのものではないだろうに?

「まずは君の実力を測ろう。さぁ、好きなだけ攻撃をするといい。受けたダメージに合わせて、ワタシもレベルを上げていこう」

 うーん。最初も思ったけど、この魔王は俺のイメージからかけ離れているなぁ。少し卑怯な気がするけれど、先制攻撃を許してくれたんだ。早く気絶させて彼女が勘付けないような場所にでも行こう。

「ショック!」

「ガ……ハッ」

 失神魔法を唱える。すると魔王アッテラの神経が活性化され、心臓に戻る血液の量が減少。それにより意識を失った彼女は前方に倒れた。

 これでよし。後は気配でも消して、気づかれないように遠ざかるとするかな。

 踵を返して足を一歩前に出す。

「な、中々やるな。まさかこのワタシが一瞬とは言え、気を失うとは」

 魔王の声が背後から聞こえ、振り返る。彼女は既に立ち上がっており、服についた土埃を払っていた。

 やっぱり魔王だけあって、時間稼ぎにもならないか。こうなったら、別の方法を考えるしかないな。

 姿勢を低くすると、両手を後方に持っていく。そして呪文を唱えた。

「ファイヤージェット!」

 指先から炎が噴射され、揚力を得た俺の体は、空中へと舞い上がる。

「空中戦か。面白い。翼のない人間が、どのような戦いを繰り広げてくれるのか、非常に楽しみだ」

 空中からアッテラを見下ろしていると、彼女の背中から翼が生えた。コウモリのような翼を羽ばたかせると、魔王は俺を追いかける。

「さぁ、次は何をしてくれるのだ?」

 敢えて空中に移動してみたが、やっぱり空を飛ぶことができたか。空中での戦いは、ガーベラから宝玉を取り返そうとしたとき以外はない。

 だけど、やれるだけやってみるか。

「シャクルアイス」

 氷の拘束魔法を唱える。彼女の両腕は氷が張り付き、重みで前傾姿勢になった。

 きっとアッテラは、二つのパターンのどちらかを選ぶ。一つは何もしないで様子を見る。そしてもう一つは炎による熱で氷を溶かすだ。

 だけど、シャクルアイスの拘束を受けた段階で、彼女は俺の罠にかかった。どちらを選ぼうとも、ダメージを受けることになる。

 さあ、どうする?

「ほう、氷の拘束具とは中々面白いことをする。だけど、こんなものは溶かしてしまえば意味がない」

 氷を溶かす方を選んだか。確かにそっちの方がダメージは少ない。

「くっ……ああ! ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 炎で氷を溶かした途端、アッテラは悲鳴を上げる。

 よし、どうにか自滅によるダメージを与えたな。

 氷で覆われたことで体温が低下して凍傷になる。氷を溶かして凍傷の部位を暖めて復温させると、それまで虚血の状態だった部分に急速に血液が流れることで、更に組織が損傷する再灌流さいかんりゅう傷害が起きる。

 今のアッテラは血流がよくなったことが原因で、身体の細胞が死んで痛みを感じている状態だ。

「くくく、あははははは! 痛い、いいぞ! もっと私を痛めつけろ!」

 こいつ、ダメージを受けて喜んでいやがる。

「だけど、この手では魔法剣を握ることができないな。メガヒール!」

 魔王が回復魔法を唱えると、彼女の手が元の状態に戻った。

 ダメージを与えても、すぐに回復されてはあまり意味がないな。

 なら、回復という原理を逆手に取らせてもらう。

「セルデュプリケートミス!」

 異世界の知識を利用した新たな魔法を唱え、アッテラの体内に細工を施す。

 さぁ、種は蒔いた。あとはタイミングだな。変に勘付かれてしまっては失敗する可能性もある。ここは俺に夢中になるように気を逸らせるか。

「ハァー、全然ダメだな」

「うん? 何がダメなんだ?」

「あのなぁ、お前が俺のレベルに合わせて段階的に力を上げているように、俺もお前に合わせてやっているんだぞ。お前が本気にならないと、俺も本気にはなれないって」

 溜め息を吐きながら肩を竦める。

「プッ、アハハ! アハハハハハ! これは面白いことを言う。君がワタシと同じことをしていた? 笑わせてくれるじゃないか。いいだろう。ワタシも君の本気と言うのを是非見てみたい。なら、全力でいかせてもらう」

「ブリザード」

 アッテラが呪文を唱えると、周辺の気温が一気に下がる。そして雪が降ると強風が混ざり合い、吹雪と化した。

「さぁ、身体の芯まで凍るが良い」

 体内の気温が下げられ、身体が震え出す。

 違う。俺が望んでいた攻撃はこれではない。あの魔法を引き出すために、この魔法を敢えて消させる方向にもっていかないと。

「そんな……ので……俺が負ける……とでも思っている……のかよ。おめでたいな」

「ほう、強気だな。だけど口ではそんなことを言っていても、身体のほうは正直だぞ。寒さに震えているではないか」

「今は……な。だけど……こうなるのは……お前の方だ。ストロングウインド!」

 強風を発生させる魔法を唱える。すると、吹雪は俺ではなくアッテラを攻撃し始めた。

「そんなバカな! どうしてワタシの魔法なのに制御が利かない!」

「吹雪と言うものは風が関係する。風は空気の密度が重いところと、空気の密度が軽いところが存在すると、気圧に差が生まれる。そうなると、気圧の高いほうから低いほうへ空気が押し出されて風が吹き出すんだ」

 魔王は悔しそうに顔を歪める。

 風上にいるお陰で、今の俺は吹雪の影響を受けない。今の内に回復をしておくか。

「ネイチャーヒーリング」

 回復の呪文を唱え、細胞を活性化させて傷を癒す。

「自身の魔法でやられるなんて、そんな間抜けなこと、魔王としてあってはならない!」

 アッテラが指をパチンと鳴らすと、吹雪が止む。

「なら、こいつはどうだ! デスボール!」

 人差し指を立てると、上空に直径十メートル以上の巨大な火球が現れる。

 この時を待っていた!
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