【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい

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⑥嫉妬と、その先の真実(4)

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「...いただきます」




 しばらくキラキラ瞳を輝かせてクッキーを見つめていたリードネストは、パクリと一枚を口に含んだ。


 ゴクンと呑み込んでから、「おいしい」と蕩けた笑顔で言うリードネストにドキドキが止まらない。



 .......なんて幸せそうに笑うのかしら。




 その顔をさせているのが自分だと思うと、胸の中が温かなもので満たされていく感じがした。



「.......モモネリアも食べるか?」



「え?」



 言われたかと思ったら、ひょいっと、突然身体が宙に浮いた。


 そして、すぐに隣に座っていたリードネストの膝に横抱きに乗せられていた。


 背は、リードネストの右腕に支えられている。



「........はへ?」



 驚き過ぎて、間の抜けた声が出た。



 リードネストは満足そうに頷いて、左手で掴んだクッキーをモモネリアの小さな口に運ぶ。



「はい、あーん」



 ものすごくいい笑顔で、モモネリアが口を開くのを待つリードネストに.......負けた。



 恥ずかしくて穴に入りたいくらいだが、口を開くまで待ち続けるであろう、この大きな狼の手の中のクッキーをパクっと食べる。



 .......いや、おいしいよ?うん、味はおいしい。


 .......でも.....下ろしてほしい。




「.......おいひぃ、です」


 デロデロに溶けてしまいそうなほど、甘い雰囲気を醸し出す狼に、顔が真っ赤になる。




「可愛いなぁ......」



 .....いやいや、あなたねぇ。漫画みたいに目がハートマークになってるわよ。




「.....モモネリア。求愛行動って、知ってるか?」



「求愛、行動?.....好きです、って伝えるときにとる行動だよね?」



 突然、話題を振られて首を傾げたモモネリアは、迷いながら答えた。



「あぁ、そうだ。.....狼獣人の男は、愛する番に様々な求愛をする。毎日愛を囁き、プレゼントを贈り、番が望む場所へ連れていき、番が喜ぶことは何でもする。.....じゃぁ、狼獣人の愛を受け入れた番は、どんな求愛行動をとると思う?」



 リードネストの質問の意図がわからない。




「んー.....告白を受け入れる?」



「まぁ.....確かにそれもあるが.....愛を受け入れた番は、狼獣人の男に自分で作ったものを贈るんだ。中でも手作りの食べ物を贈るということは、俺たちにとって、あなたは最愛だという意味の求愛行動なんだ」



「..........へ?」




 モモネリアは、硬直した。



 それでは、手作りのクッキーとハンカチをプレゼントしたモモネリアは、リードネストに求愛したことになる。



 リードネストの愛に、しっかり答えた形になっている、ということか。



 知らなかったとは言え、意味を知った今、徐々にことの重大さがわかってきた。




「........えっと。.......知らなかった、の」



「.....だろうな。......なぁ、モモネリアは......少しは俺を好意的に見てくれているんだろうか。嫌われては、いないんだよな?」




 リードネストの嬉しげだった表情が少し曇って、困った顔になる。





「......っっ!!嫌い、なわけないっ!!」




 咄嗟に、口をついて出た強い否定に、リードネストも、モモネリア自身も驚いている。




「.....じゃぁ、俺をどう思ってるんだ?」




 不安に揺れる瞳で、躊躇いながら問うリードネスト。




 .....私は....リードを、どう思っているの?


 ......喜んで、ほしい。支えてあげたい。大切にしたい。


 .......ずっと、そばに居てほしい。


 ......そんなふうに思ったのは、リードが初めて。



 今までモモネリアには何も求めず、愛情を注ぎ続けてくれていたリードネストが、初めてモモネリアに返事を求めてくれている。



 そんなことに、一切重荷を感じず、むしろ愛してくれているから、モモネリアを求めてくれているから、故の行動なのだと嬉しく思っている。




 それに気づいた瞬間、モモネリアにとってその気持ちこそが答えなのだと感じた。



 ......私、リードに愛されて、求められて、嬉しく思っている。


 .......私は、リードが好き、なんだわ。





 胸にストンとハマったピースは、今までぽっかり空いていた心の穴を埋めてくれた気がした。




「......私は....私は、リードが......好き」




 気持ちを問うてきたはずのリードが、目を見開き固まって、何の反応も見せない。



 気持ちを明確に意識した今、その顔もさらに可愛く感じて、モモネリアは再度伝えた。



「......リード、好きよ」



 その言葉で、我に返ったリードネストは、ぶわっと涙を溢れさせた。



 今度は、モモネリアが固まる。



 リードネストが泣いたところなど、見たことがない。



「すっ、すまない。情けない、が......嬉しくて......止まらない。モモネリアに、そう言ってもらえたことが、奇跡のようで。....モモネリア。.....俺の唯一無二の番。愛する人。......ありがとう、俺もお前を.....お前だけを愛している」




 端正な顔を歪ませて、喜びの涙を流すリードネストは、とても美しかった。



 
 ......こんな綺麗な泣き顔見たことないなぁ。


 .......与えてもらうばかりでなくて、私もこの人に幸せをたくさんあげたい。


 .......守ってあげたい。




 モモネリアは自分のハンカチで、リードネストの涙を優しく拭う。



 リードネストが涙で赤くなった目を向け、モモネリアを見つめる。



 二人を幸せな空気が包んで、どちらからともなく微笑み合ったーーーーー。












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