いい加減こっち見ろよ!〜見た目だけだとフラれ続ける私は、どうやら幼馴染の執着愛に気づいていなかったようです。〜

こころ ゆい

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敵ということで宜しいですか?

1. 昔の記憶

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「......んん」

(なんだろう?ふわふわする....。あったかくて、心地良くって、瞼が重い....)

『....おい、八重。準備しろ。お隣にご挨拶に伺うぞ』

『はーい』

(....お父さんの声?....あれ?私、さっきまで何してたんだっけ?....磯村さんのお店で一生とご飯食べてて....)

『あら、あなた。もう行くの?まだお隣さんも、帰宅されてないんじゃない?』

『....16:30か。うーん、じゃあ一度伺ってみて、もしいらっしゃらなかったらまた後で改めてご挨拶に行こう』

(お母さんも?.....隣って、もしかして一生のお隣に引っ越してきた日のこと?)

 わかった瞬間、目の前に昔の光景が広がった。

(.....夢?)

 夢というのは不思議だ。今見ているのは自分の記憶なのに、ふんわり柔らかな色合いで彩られて、まるで映画のワンシーンをみている気分になる。

『そう?わかったわ。私も用意しますね』

『ああ、頼む』

 引越しの荷物が散乱したリビングで、たった今引越し業者にお礼を言って戻ってきた父・宮島 弥太郎やたろう が、私と母・重梨えり に声をかけていた。

 父がもっと良い待遇の会社へ転職を決めて、それに合わせて家族で新しい街へ引っ越してきた。

 父の実家がある北海道の銘菓を綺麗な紙袋に入れて、母が玄関の鏡の前に立つ。父もスーッと隣を通りながら、横目で髪型や服装を軽くチェックしている。

 と、父が一度足を止めて、前髪を整える母に微笑んだ。

『大丈夫。今日も、母さんは可愛いよ』

『あらやだ。もう、あなたったら。八重の前で、恥ずかしいわ。うふふ』

 父の言葉に、母がうっすら頬を染めて笑う。子供の前でと言いながら、なんだかんだと嬉しそうだ。

『お母さん、お父さん。私、先に出てるね』

 両親のやりとりに、いつものことだと我関せずの態度で言って、私は先に玄関の扉をくぐって駆け出した。

『あ、八重。車に気をつけるのよ』

『はーい』

 あと数日で小学生の仲間入りをする私は、お気に入りの桜色のスカートとクリーム色のトップス、真っ白なスニーカーを履いて、ご機嫌だった。

『うわぁ...虹だぁ~』

 外に出た瞬間、さっきまで降っていた小雨は止んでいて、分厚い雲の隙間からお日様が顔をのぞかせていた。

 真っ直ぐに私のところまで伸びた陽の光は、途中、キラキラと空中に橋をかける虹も、雨の名残の水滴たちも。皆をまんべんなく照らしていて、絵本の世界を見ているようだ。

『何かいいことありそう!』

 これから、私たち家族はこの街で新しく生活する。
 そう思うと今日がとても特別な日に感じて、そんな日に虹まで見られるなんて私たちはツイている。

『お母さん、お父さん!ラブラブするのはあとにして、早くこっちに来て!すっごいんだよ?』

 はしゃいだ声で両親を呼ぶと、恥ずかしそうにしながら二人は私の居る場所まで出てきてくれた。

『ほら、見て!綺麗な虹!』

『本当だ』

『あら、すごいわねえ。お母さん、こんなにハッキリした虹は初めて見たわ』

『でしょ?きっとこの家での生活も、楽しくなるね!』

 私の指さす先を見て目を丸くしている二人に、得意に胸をはって、私は今日から毎日を過ごす家を振り返った。

 クリーム色の壁に赤い三角屋根。
 可愛らしい色合いの、庭付き一軒家。

 差し込んだ光に、家も嬉しそうに微笑んでくれている気がして、私はニッと大きく笑って息を吸い込む。

『これから宜しくねー!可愛いお家さん!』

 突然家に向かって叫んだ私に、まだ虹を見つめていた両親はぎょっと振り返った。そして慌てる父と母に、私はニシシ、と子供らしく笑った。
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