いい加減こっち見ろよ!〜見た目だけだとフラれ続ける私は、どうやら幼馴染の執着愛に気づいていなかったようです。〜

こころ ゆい

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懲りずに新しい恋を探しちゃいけませんか?

1. 俺特製のパンケーキ②

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「大丈夫。私、今日は遅番なの。だから9:30くらいに出勤すれば十分だから。一生は?」

 保育士をしている私は、その日のシフトによって早番や遅番がある。家の最寄駅から電車に揺られて二駅のところに職場の保育園があって、いつも始業より一時間ほど早く行き、仕事の準備にとりかかるのだ。

「そうか。俺も、今日は休みだから大丈夫。呼び出しがなければだけど。....どうする、一旦家戻るか?」

「あ、だね。着替えなきゃだし、メイク道具ないし」

「ん。何時に出たい?」

「えっと~。8:15には家に着いておきたいかな?」

「了解。車で送ってく」

「いいの?」

「ああ。今日は冷えるから、家で着替える時あったかくしとけよ」

「わかった。....ありがとう」

「どういたしまして」

 お礼を言えば、一生は見慣れた優しい笑顔を浮かべて、私の頭をぽんぽんした。


 一生とはこちらに引っ越してきて以来、実家がお隣同士だ。子供部屋もちょうど私の部屋の対面で、窓を開けて声をかければ部屋に居ながらお喋りだってできた。

 けれど今も実家で住んでいる私と違って、彼は医師免許をとって研修医として働き始めるタイミングで、一人暮らしを始めた。

 実家から通える距離だったが、確かにその方が病院には近い。きっと仕事に都合がいいのだろう。






 どうやら一晩中占領していたらしいベッドからむくりと起き出して、洗面所を借りたあと食卓に向かう。

 そこには、ほかほかの湯気がたちのぼる朝食が並んでいた。

 広く綺麗なリビングと大きな窓から見える高層階の朝の景色。そして、黒く艶感のあるお洒落なダイニングテーブルに並んだ、美味しそうな朝食。

 ......まさに至れり尽くせりだ。申し訳なさと有り難さでへにょっと私の眉が下がった。

「なーに、変な顔してんだよ。ほら、先に朝ごはん食べちゃえ?」

「....本当にありがとうございます。そして、昨日はまたまたご迷惑をお掛けし、謝罪申し上げ奉り候」

 身体をぴったり二つに折って深々頭を下げれば、「ぶはっ、何者だよ」と盛大に吹いた。

 .....笑い上戸め。

 決まっているではないか。
 親しき仲にもなんとやらだろう。

「....ん。気にすんな。一人で呑む方が危ないしな」

「うん。あ、昨日パフェのお会計....」

 笑いがおさまった穏やかな声に頷きながら、私はふと思い出した。ガサガサと鞄を探る。

「いいっての。俺を誰だと思ってる」

 だが、すぐにその手をパシッと掴まれて。今度は瞼を重くした一生がそんな風に冗談めかしてくる。

「でも。いつも悪いよ」

「じゃ、今度チビの絵描いて。リビングに飾る。八重の絵、個性的で好きだから」

「....それ褒めてるの?」

「....く、くく」

「もう」

 一生いわく、私の絵はユニークで面白いらしい。
 子供の頃から度々言われているが、果たして褒められている気がしないのは私だけだろうか。




 ちなみに、チビは四年前に亡くなった。
 17年ほど生きたチビは犬でいえば長寿だったし、最期も老衰で安らかにこの世を去っていった。

 多分、チビはとても幸せだった。いや、絶対に。
 あれだけ一生や八雲パパ、菜々子ママに可愛がられ、大切に大切に育てられて。皆に見守られながら旅立つことができたのだから。

 でも、一生はもちろん悲しんで、静かに泣いていた。しばらくの間は、普段よく笑う彼の表情は暗く沈んでいて、胸が締め付けられたのを覚えている。

 彼の泣き顔を見るのは、その日で二度目。

 一度目は私が小学3年生で事故に遭って、生死を彷徨った時。

 手術が終わり戻った病室で、大人に何を言われても頑として側を離れなかった一生は、ただじっと両拳を強く握って私を見ていたらしい。そして、私が目を覚ました瞬間にみるみる表情を崩して、大声で泣き始めた。「良かった、良かった」と何度も繰り返しながら。

 私はそんな一生を見たのは初めてで。とても心配をかけたのだと心から申し訳なくなった。

 幸い、私は順調に回復。後遺症ものこらず、今は事故のことなど忘れるくらい元気に過ごしているので、本当に幸運だった。

 話は逸れたけれど。チビは大往生。
 今でも、彼女は一生や大狼家、私達の話題にのぼっては、皆を癒してくれる天使だ。今日の私の夢にも出てきてくれたし。
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