【完】25年後、君と答え合わせ

こころ ゆい

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第一章 回想

嘘②

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******


 花乃は、ふわふわ彷徨っていた。ここはどこだろう。
 身体が軽い。どこまでも行けそうだ。

「かの?かーの!」
「...千春?その声...千春でしょ?」
「...すぐわかるんだな」

 そう言われたかと思うと、誰かが隣に腰掛けた気配がした。

 そこはいつの間にか知らない草原で、一本のりんごの木の下に二人は並んで座っていた。木は葉をさわさわ揺らしながら、白い花を咲かせている。

(あら?...どうして、私、見えるの?)

 綺麗な草原、空の色、可愛らしい花の色、大きな木が落とす影。
 細かく見ることのできるここは、どこだろう。
 花乃はすぐに悟った。ここは夢の中なのだ。だからこんなにはっきり、世界が見える。

「...花乃?」

 呼ばれて、花乃は思った。今なら千春の顔も見えるかもしれない。例え、夢の中でも、千春と目を合わせてお話しができるなら、そんな嬉しいことはない。

 そして、ゆっくり顔を上げた。

(...千春?)

 輪郭が見える。綺麗な唇が優しげに弧を描き微笑んでいるのもわかる。でも、そこから先が見えない。陽の光が千春の背中から差し込んで、影になっている。

 花乃はがっかりした。夢の中でさえ、千春の顔を見ることができない。
 いくら想像できても。一度でいいから千春の目を見つめて話してみたい。

 ゆっくり手を伸ばした。千春は、すぐにその動きに気づいてくれる。もう慣れっこみたいに、自ら顔を寄せてその手の元へ来てくれる。
 優しい動きに、花乃は小さく顔を綻ばせてそっと肌に触れた。目や鼻、唇...ペタペタと探っていく。

「...千春。今どんな表情してる?...千春の目は、どんな色をしているの?眉は...鼻は...どんな形?私...あなたの顔を見れないのが時々すごく寂しく感じるの」
「....どうした?」
「あなたの顔が見たいって。目が見えたら、千春と目を合わせてお話ができるでしょう?大切な友達の表情を...見逃さないでいられるもの。想像するのは楽しいし、今でも大好きだけど....本当のあなたが知りたいわ」
「花乃...」

 二人の間に沈黙が落ちる。この感情はなんだろう。

 いつも助けてくれる、気遣ってくれる友人に、目を見てお礼を言うことさえできない無力な自分が、嫌になっているのだろうか。

 胸がきゅっと痛んだ。

 しばらく何も話さなかった唇が動いて、妙に震えた、怯えた声が響いた。


「...なぁ、花乃。...もし俺が....嘘をついていたら、どうする?」
「嘘?...千春、私に嘘ついてるの?」
「...はは。例え話。花乃は...どうする?...友達、やめる?」
「例え話...。そうね...もし千春が私に嘘をついていたら...ーーー」

(あれ?...こんな会話、いつかした気がする。...私、あの時千春になんて答えたんだっけ?)

*******

 花乃は目を覚ました。どうやら、屋上から戻ったあといつの間にか眠っていたらしい。
 パチパチと瞬きしながら、無機質な天井を見つめた。今のは夢だ。でも千春が言っていたこと。あれは...。

 確か、前にもそんな会話をした記憶がある。
 あれはいつだ?

(.....千春、どうしてあんなこと聞いたんだろう)

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