【完】25年後、君と答え合わせ

こころ ゆい

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第二章 25th Birth day

如月 慎也(きさらぎ しんや)②

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「ああ。この子は、東山 花乃さん。....俺の、幼馴染。...花乃、こいつは如月 慎也(きさらぎ しんや)。大学の頃の友人で、今は医者仲間だ」
「あ...この子があの花乃ちゃんか」

 挨拶しようとしたところで、如月が気になることを言って花乃は首を傾げた。

「...“あの“?」
「...おい、余計なこと言うな」

 その質問を遮るように、千春の低い声が響く。如月は意に介した様子もなく、軽い口調でそれを受け止めた。

「ごめんごめん。えっと、花乃ちゃん。如月です。手越とは、大学で出会って意気投合しちゃってね。...本当は俺の病院で働かないかって誘ってたんだけど、断られちゃって」

 花乃が、初めて聞く話しだった。花乃は、どう反応したものかわからず曖昧に頷く。

「...おい、馴れ馴れしいな。お前...そういうところだぞ?軽いって言われるの」

 千春がまた低い声で、如月に言った。

「何、怒ってんだよ。...ちっさいねぇ」
「怒ってない。ちっさくもない」
「はいはい。...じゃ、東山さん」

 千春と如月の気安い会話を聞きながら、花乃は切れ目を探していた。よくわからないが、如月が言い直したので、ちょうどいいと会話に入っていく。

「あ...名前で大丈夫ですよ?...あの、改めまして。東山 花乃です。よろしくお願いします」
「...だってさ。...睨むな」
「.......?」

 如月の声だ。花乃は、思った反応と違うものが返ってきて、再び首を傾げた。

「ああ、いや何でもない。....じゃ、お言葉に甘えて。花乃ちゃん、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」

 花乃は手を差し出す。そっと如月が手を握り、握手を交わした。と、今度は千春が会話に入ってくる。

「...花乃、如月はまぁ...ちょっと軽いところがあるけど信用できるから。多分...頼りになる」
「え...?う、うん」
「....あ、これ。名刺。渡しとくね」

 如月がそう言ったかと思うと、花乃の小さな手に四角い紙が当たる。それは、点字も記されていて名前と電話番号が読み取れた。

「ありがとう、ございます」
「うん。何かあれば連絡して?」
「....はい」

 花乃は、ゆっくり頷いた。それを見届けて、千春がまた体の向きを変える気配がした。大きな手が、花乃の手をグッと握り直す。

「...じゃ、忙しいのに悪かったな。またゆっくり」
「ああ。またゆっくり」

 花乃も、小さく頭を下げた。そして二人で歩き出したが、すぐに如月が引き止める。思い出したかのように、千春に尋ねた。

「あ...そういえば、“あの子“...どうしてる?」
「...ああ。どうしてるって...いつも通り。今からちょうど....って、なんで?」

 千春が足を止めて、また小さく振り返る感じがして、花乃は黙って耳を澄ませた。

「あー...いや、別に何もないけど。なんとなく」
「...ふぅん。お前、いつも“あの子“のこと、やたらと気にするよな。...もしかして」

 茶化すような声音だ。

「はぁ?...うるさい。もう行け!」
「はは、はいはい。...ちょうどいいから、お前が気にしてたって伝えといてやるよ」
「ああ?いいっつうの。...早く行け」

 如月の「シッシッ」と千春を追い払う声がした。

「はいよ!じゃ、またな」
「またな」

 やはりよくわからない会話の内容だったが、一段落した所で、また千春が歩き始める。花乃を優しく気遣いながら。


******

 如月とわかれてから一言も話さない花乃に、千春がゆっくり口を開いた。


「....驚いたか?」
「...ねぇ、千春。どうして?」
「ん?」
「どうして、如月さんを紹介してくれたの?」
「あー...まぁ、ちょっとな」
「...千春。何か隠してる?」
「.......」
「...私には言えないこと?」

 花乃は何だか胸がザワザワした。
 結婚の話しや、千春の腕や顔に出ていた発疹らしきあと、それに突然如月を紹介されたことも。
 ひとつ引っかかるとどんどん気になってきて、止められなかった。

 でも、千春が花乃の質問に答えることはなく、静かな沈黙が落ちただけ。花乃は、それ以上何も言えない。

「...花乃。ごめんな」
「.......」

 それは何の謝罪だろう。千春がよくわからない。花乃は、言い知れぬ不安に襲われて、黙ってしまった。


*****


「花乃、着いた」
「....え?」

 花乃と千春は、しばらく歩いていた。
 街中に戻ったのかガヤガヤと周りで音がして、花乃の気が少し紛れてきたところで、千春が声をかけた。

「...花乃ちゃん!!」

 その時、すぐ向こうでよく知る声がしたかと思うと、走り寄る足音が響いて、あたたかな温もりに包まれた。
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