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第二章 25th Birth day
まさかの外泊許可でした①
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「はわぁ~~、き、きもちいい...」
カコーン。
ししおどしが鳴る音がした。
「...温泉ってこんなに気持ちいいんだ」
花乃は、うっとりとひとりごとを呟いた。
周りでは虫の鳴く声と、ししおどしの音が一定間隔で響く。ひんやりした外の空気と、夜の静けさも相まって、何とも風流だ。
チャポン。
花乃が動くと、お湯が跳ねた。
肩まで浸かってリラックスしながら、花乃は耳と肌と香りで初めての温泉を満喫する。
「...でも、びっくりしたなあ」
(まさか、外泊許可だったなんて)
*****
それは、仲直りのあとのことーー。
二人で軽食を食べている時、千春に、観覧車に乗ろうと誘われた。
昔、瑠璃と古い遊園地を見てきたあと、花乃が乗り物の話をしていたことを千春は覚えていたのだ。
花乃は喜んで、乗り込んだ。
今日は風もなく、ふわふわ揺れるゴンドラが激しく動くことはない。いつも踏みしめている地面と違って、浮いているなぁと感じるくらいで、怖いと思うことなく乗ることができた。
過保護な千春が、隣に座ってぴったり寄り添っていることの方が、むしろ落ち着かなかったくらいに。
「...ん。...そろそろ着くな」
「...あっという間だったなあ。一日」
「ん?」
「今日、あっという間だった。...帰るのやだな」
そろそろ、外の空気は夕暮れ時。...多分、もうお開きだ。
観覧車を降りたら、車に乗って両親の待つ病院に戻る。そして、また治療が始まる。
盛りだくさんの一日で、花乃の心もふわふわしたり落ち込んだり忙しかったが....とても楽しかった。
もうすぐこの日が終わってしまうのだと思うと、残念な気持ちだ。
すると、隣から衝撃の一言が飛んできたのだ。
「...帰らないぞ?」
「え?」
「まだ帰らないぞ。今日は宿とってるから、そこ泊まるつもり」
「と、泊まる?」
「ああ。荷物、積んでるって言っただろ?」
「...荷物って、そのこと!」
「はは、そう。...ちょっと、サプライズすぎたか?」
「う、うん」
「...嫌だったか?旅行...っていうには大袈裟だけど、宿泊まって、料理食べて。きっと喜ぶかなって考えたんだけど。ご両親にも説明して、許可はもらってる」
花乃は、慌てて首を振った。
昨日、バタバタと母が動き回ってくれていたのは、その荷物の準備をしてくれていたからだと今更気づく。
「ううん、すっごく嬉しい!」
「そっか、良かった」
と、そこまでは良かったのだがーー。
*******
遊園地を出て、遠くない場所に宿はあった。
今日泊まる部屋に通されて、一息つくと、千春が必要な服薬やバイタルチェック、点滴をしてくれる。
「持ってきてたんだね」
「当たり前だろ」
「うん。ありがとう」
点滴を終え、カチャカチャと千春が片付けをする音を聞きながら、花乃はやっと思い至ったのだ。
「...あれ?そういえば、千春はどうするの?」
「ん?」
「部屋通してもらったけど、千春は?...どこに泊まるの?」
案内してもらった部屋は、ひとつ。
「もちろん、ここ」
「...ここって?」
「この部屋だぞ?」
花乃は、首を傾げる。千春も、花乃を見ながら首を傾げる。
「.......?」
「.......?」
間を置いて、花乃が後ろにちょっぴり飛んだ。バビュッと。
「...え、え?同室?」
「ああ」
こともなげに肯定する声が聞こえて、花乃は思考が停止した。
花乃の反応を見て、千春も少しずつ理解したのだろう。
「...千春?さすがに、同室は...」
「あー...まあ、やっぱり気になるよな。泊まるのやめとくか?」
「...それはやだ。泊まりたい」
ふはっと吹き出す千春の方向を、恨めしそうに見遣る花乃。
「...私、一応女なんですが。...千春にとったら『幼子』なんでしょうけどね」
恥ずかしくなって、拗ねたフリで昼間のことを引き合いに出せば、千春がボソリと反論したのが聞こえた。
「幼子なわけないだろ。あんなの冗談だ。...大人の男女で泊まる意味くらい、俺だってわかる」
「......」
「でも、一緒の方が俺が安心なんだよ。様子がわかるし。もちろん、何もしないぞ?」
「わかってる...。千春のこと信用してるもん。そんなの心配してない。...ちょっとびっくりしただけ」
「...そうか。同室でいいか?」
「...うん」
そこから妙な空気感になって、花乃と千春はモゾモゾ落ち着かなくなった。
空気に耐えられなくなったのか、もともとそうするつもりだったのか。
千春が、部屋の中を案内してくれて、露天風呂付きの部屋だとわかった時。花乃のテンションが上がりに上がって、千春にまた笑われてしまったのだ。
*****
「...でも、本当、ありがたい。脱衣所から洗い場、露天風呂までずっと手すりが続いてるなんて」
おそらく千春が、花乃の入りやすい手すり付きの露天風呂を探してくれたのだろう。
興奮する花乃に、夕食まで時間があるからと、千春は早速露天風呂をすすめてくれた。
花乃が困らないよう、中を細かく説明してから。
おかげで、手すりを辿って洗い場まで行くことができたし、石鹸やシャンプーにも迷わず、露天風呂もなんなく入ることができた。
カコーン。
ししおどしが鳴る音がした。
「...温泉ってこんなに気持ちいいんだ」
花乃は、うっとりとひとりごとを呟いた。
周りでは虫の鳴く声と、ししおどしの音が一定間隔で響く。ひんやりした外の空気と、夜の静けさも相まって、何とも風流だ。
チャポン。
花乃が動くと、お湯が跳ねた。
肩まで浸かってリラックスしながら、花乃は耳と肌と香りで初めての温泉を満喫する。
「...でも、びっくりしたなあ」
(まさか、外泊許可だったなんて)
*****
それは、仲直りのあとのことーー。
二人で軽食を食べている時、千春に、観覧車に乗ろうと誘われた。
昔、瑠璃と古い遊園地を見てきたあと、花乃が乗り物の話をしていたことを千春は覚えていたのだ。
花乃は喜んで、乗り込んだ。
今日は風もなく、ふわふわ揺れるゴンドラが激しく動くことはない。いつも踏みしめている地面と違って、浮いているなぁと感じるくらいで、怖いと思うことなく乗ることができた。
過保護な千春が、隣に座ってぴったり寄り添っていることの方が、むしろ落ち着かなかったくらいに。
「...ん。...そろそろ着くな」
「...あっという間だったなあ。一日」
「ん?」
「今日、あっという間だった。...帰るのやだな」
そろそろ、外の空気は夕暮れ時。...多分、もうお開きだ。
観覧車を降りたら、車に乗って両親の待つ病院に戻る。そして、また治療が始まる。
盛りだくさんの一日で、花乃の心もふわふわしたり落ち込んだり忙しかったが....とても楽しかった。
もうすぐこの日が終わってしまうのだと思うと、残念な気持ちだ。
すると、隣から衝撃の一言が飛んできたのだ。
「...帰らないぞ?」
「え?」
「まだ帰らないぞ。今日は宿とってるから、そこ泊まるつもり」
「と、泊まる?」
「ああ。荷物、積んでるって言っただろ?」
「...荷物って、そのこと!」
「はは、そう。...ちょっと、サプライズすぎたか?」
「う、うん」
「...嫌だったか?旅行...っていうには大袈裟だけど、宿泊まって、料理食べて。きっと喜ぶかなって考えたんだけど。ご両親にも説明して、許可はもらってる」
花乃は、慌てて首を振った。
昨日、バタバタと母が動き回ってくれていたのは、その荷物の準備をしてくれていたからだと今更気づく。
「ううん、すっごく嬉しい!」
「そっか、良かった」
と、そこまでは良かったのだがーー。
*******
遊園地を出て、遠くない場所に宿はあった。
今日泊まる部屋に通されて、一息つくと、千春が必要な服薬やバイタルチェック、点滴をしてくれる。
「持ってきてたんだね」
「当たり前だろ」
「うん。ありがとう」
点滴を終え、カチャカチャと千春が片付けをする音を聞きながら、花乃はやっと思い至ったのだ。
「...あれ?そういえば、千春はどうするの?」
「ん?」
「部屋通してもらったけど、千春は?...どこに泊まるの?」
案内してもらった部屋は、ひとつ。
「もちろん、ここ」
「...ここって?」
「この部屋だぞ?」
花乃は、首を傾げる。千春も、花乃を見ながら首を傾げる。
「.......?」
「.......?」
間を置いて、花乃が後ろにちょっぴり飛んだ。バビュッと。
「...え、え?同室?」
「ああ」
こともなげに肯定する声が聞こえて、花乃は思考が停止した。
花乃の反応を見て、千春も少しずつ理解したのだろう。
「...千春?さすがに、同室は...」
「あー...まあ、やっぱり気になるよな。泊まるのやめとくか?」
「...それはやだ。泊まりたい」
ふはっと吹き出す千春の方向を、恨めしそうに見遣る花乃。
「...私、一応女なんですが。...千春にとったら『幼子』なんでしょうけどね」
恥ずかしくなって、拗ねたフリで昼間のことを引き合いに出せば、千春がボソリと反論したのが聞こえた。
「幼子なわけないだろ。あんなの冗談だ。...大人の男女で泊まる意味くらい、俺だってわかる」
「......」
「でも、一緒の方が俺が安心なんだよ。様子がわかるし。もちろん、何もしないぞ?」
「わかってる...。千春のこと信用してるもん。そんなの心配してない。...ちょっとびっくりしただけ」
「...そうか。同室でいいか?」
「...うん」
そこから妙な空気感になって、花乃と千春はモゾモゾ落ち着かなくなった。
空気に耐えられなくなったのか、もともとそうするつもりだったのか。
千春が、部屋の中を案内してくれて、露天風呂付きの部屋だとわかった時。花乃のテンションが上がりに上がって、千春にまた笑われてしまったのだ。
*****
「...でも、本当、ありがたい。脱衣所から洗い場、露天風呂までずっと手すりが続いてるなんて」
おそらく千春が、花乃の入りやすい手すり付きの露天風呂を探してくれたのだろう。
興奮する花乃に、夕食まで時間があるからと、千春は早速露天風呂をすすめてくれた。
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おかげで、手すりを辿って洗い場まで行くことができたし、石鹸やシャンプーにも迷わず、露天風呂もなんなく入ることができた。
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