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第三章 芽吹き
許さないから(手紙と贈り物)
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翌日。花乃はぐったりしていた。
ガラリ。
病室のドアが開く音がする。
千春?と花乃は耳を澄ませるも、よく知る彼の足音と違っていた。
「東山さん、初めまして。今日から担当医を交代します、上田 道宣(うえだ みちのぶ)です」
「....担当医...変わるんですか?」
「はい。手越先生は、諸事情で...しばらくお休みすることになりまして」
「...休む?千春が?」
「...はい。そう聞いております」
(やっぱり、昨日のことは本当なの?)
花乃は、我慢できずにさらに尋ねた。
「...千春、何かあったんですか?」
「...申し訳ありません。個人的なことはお答えできません」
「........」
(千春...)
花乃は千春がひょっこり現れるのを待っていた。
でも、そんな日は待てども待てども訪れない。
そのうちに、院内で千春の噂をする人もいなくなり、千春の話題が出ることもなくなっていった。
「人の噂も七十五日...て、諺あったなぁ」
もっと早いじゃん、とボソリ呟く。
花乃は、くだらないことを考えていた。そうでもしないと、押しつぶされてしまいそうだったのだ。いつもそばにいた友人の、あたたかな体温や優しい声が、今、花乃の近くにない不安に。
千春が...花乃の前から忽然と姿を消した孤独感に。
******
歌が聞こえる。なめらかなピアノのメロディに合わせて、静かに語りかけるように歌っている。
「...あ、クリスマスか」
今日は、病院のホールでピアノの演奏会があるって看護師さんたちが言っていた。
母がいそいそと出ていったのは、もしかしたらケーキでも買いに行ったのかなと、ふと考える。
花乃は、開いていた病室のドアから出て、いつもより人の気配が少ない廊下を進んだ。
きっと、みんな演奏会に行っているのだ。
「...私も行ってみよう」
****
ホールが近づく。
小さかったメロディが、段々はっきりして...そして、目の前に迫った。
『
凍る空気 君の体温
冷たくなった頬を あたためて
笑って メリークリスマス
君の笑顔が見たいから
街で見つけた贈り物
君にぴったりの贈り物
早く渡したくて かけだした
思い浮かぶのは 君のことだけ 』
ピアノの弾き語り。
そっと鍵盤をたたき流れるメロディ。
ホールを抜ける歌声が、花乃の胸に刺さった。
(あぁ...だめだ。千春)
花乃は泣いていることを誰にも気づかれないよう、伸びた前髪が隠してくれるよう、下を向く。
ポタポタと落ちる涙は、花乃の足を濡らしていった。
(...千春、知ってた?...私たち、出会って二十年経ったんだよ?)
心の中で語りかけても、返事をする優しい声は聞こえない。
****
「かーのーちゃん!」
「...え、瑠璃ちゃん?」
花乃は、病室に戻ってきた。
母は、まだ戻っておらず、ベッドに座って考え事をしていた時だった。
まさか、その声が聞こえてくると思わなかった。
「...もう、ボーっとして。...食べてないんだって?」
「...え?」
「おばさまが、連絡くれたの。...花乃が参ってるから様子を見に来てやってくれって」
「あ....」
「....来て良かった。げっそりしちゃって」
「........」
「はい。これ」
ガサっと何か包みを取り出して、サイドテーブルに置く音がする。
「.....?」
「花乃ちゃんの好きなお店のお饅頭。...千春さんが、花乃が元気ない時はこれなんだって言ってたの思い出して」
「え...瑠璃ちゃんにもそんなこと言ってたの?」
「うん。まだ子供の頃...私がここに入院してた時だけどね。千春さんがよく花乃ちゃんのお見舞いに来てて...たまにこれ持ってたから気になって見てたの。そしたら私にもひとつくれたのよ。花乃が好きなんだって。千春さんがすごく優しく笑って言ってたのが印象的だった」
「...千春」
堪えきれずに、また泣きそうになる花乃の背中を瑠璃が優しく撫でる。
「千春さん、大丈夫だよ。あの人が花乃ちゃんのこと放って、消えちゃうなんてありえない。きっと何か理由があるのよ」
「うん...うん...」
何度も頷きながら、思い出の饅頭を食べた。今までどれほど食べただろう。
この饅頭は、こんな味だっただろうか。
千春が隣にいないだけで、まるで違う饅頭みたいだ。
(千春と食べるものは...全部美味しく感じたなぁ)
どこにいるの?
何があったの?
生きてるの?
どうして話してくれないの?
返事してよ...千春。
次々と湧いて出てくる千春への言葉は、消化されずに花乃の心に積もっていった。
****
落ち着いた頃、花乃は思い至った。
「...ごめんね、瑠璃ちゃん。ここまで遠いのに」
「ううん、大丈夫。私、お父さんたちと遊園地行った時から、車の運転マメにするようになったんだ。車って便利だなって気づいて。だいぶ上達したから、花乃ちゃんのところにもっと通いたいって思ってたところなの」
「瑠璃ちゃん...ありがとう」
すごく心強く感じた時、ガラッとドアが開いた。
「...あら、瑠璃ちゃん!来てくれたの?」
母が戻ってきたようだ。
「おばさま、こんにちは。お邪魔してます」
「こんにちは。ありがとう、瑠璃ちゃん。遠かったでしょ?せっかくのクリスマスなのに、ごめんね...予定大丈夫だった?」
「いえ、何も予定はなかったので大丈夫ですよ。連絡下さって嬉しかったです」
「大きくなったわねぇ...すっかり綺麗になって」
感慨深げな声で、瑠璃に言った。
「えへへ。...あれ?おばさま、それは?」
瑠璃は照れたように笑って、何かに気づく。
「あ...そうそう。花乃、これ」
「え...?」
思い出したとばかりに、カサッと音を立てて何かを差し出された気配がした。
「これね、病院の受付に届いてたのよ。さっき呼ばれて行ったら、花乃にお届け物だって」
ふわっと花の香りが漂ってくる。
「...なに?」
「...薔薇ね。25本の薔薇の花束」
「25本...?」
そっと触れると、花束のフィルムとひんやりふわふわした花びらの感触がした。
「あ...手紙もついてますね。ほら」
瑠璃の声がして、スッと何かを取り出して花乃の手のひらに当ててくれる。
「手紙...」
四角い封筒を撫でると、ザラザラした和紙のような素材だった。封がしてあるのをペリッと剥がす。
取り出した便箋には、点字で文章が書かれていて、花乃は指先で文字をたどった。
「...なんて書いてあったの?」
瑠璃と母が、気にする声がした。
でも花乃は答えられなかった。
手が震えて、喉も震えて...声が出ない。
『
花乃...元気にしてるか?
ちゃんと食べてるか?
寝られてるか?
花乃のことだから、俺のこと心配して
元気、なくなってるんじゃないか?
花乃、俺のことは心配いりません。
大丈夫だから...ほら、笑って。
花乃と出会えて、俺は幸せでした。
笑われるかもしれないけど...
多分...花乃は、俺の人生で一番の贈り物
だったんじゃないかな。
でも...もう俺のことは忘れて下さい。
あ...最後に。
25本の薔薇の意味知ってるか?
メリークリスマス、花乃。
本当に今までありがとう。
どうか...幸せになって。 』
25本の薔薇の意味....“あなたの幸せを祈っています。“
「バカちはるぅ....っ、わけ、わかんないよ」
花乃は、声をあげて泣いた。
もう悔しいのか、寂しいのか、苦しいのか...これがどんな感情なのか全然わからない。
母と瑠璃は、手紙の内容はわからずとも何となく事情を察して...静かに背中に手を添える。
花乃は、知らず知らず入る力にクシャッと折れる手紙の音を聞きながら、堰を切って溢れ出す感情の波と対峙しつづけた。
そして、ひとしきり泣いたあと思ったのだ。
「忘れない...」
それは、花乃には珍しく怒りの気持ちも含んだ声音だった。
(...忘れるわけないじゃない。絶対、忘れない。事情を説明しないで逃げるなんて許さないから。千春...私は、千春のこと必ず見つけるからね...)
ガラリ。
病室のドアが開く音がする。
千春?と花乃は耳を澄ませるも、よく知る彼の足音と違っていた。
「東山さん、初めまして。今日から担当医を交代します、上田 道宣(うえだ みちのぶ)です」
「....担当医...変わるんですか?」
「はい。手越先生は、諸事情で...しばらくお休みすることになりまして」
「...休む?千春が?」
「...はい。そう聞いております」
(やっぱり、昨日のことは本当なの?)
花乃は、我慢できずにさらに尋ねた。
「...千春、何かあったんですか?」
「...申し訳ありません。個人的なことはお答えできません」
「........」
(千春...)
花乃は千春がひょっこり現れるのを待っていた。
でも、そんな日は待てども待てども訪れない。
そのうちに、院内で千春の噂をする人もいなくなり、千春の話題が出ることもなくなっていった。
「人の噂も七十五日...て、諺あったなぁ」
もっと早いじゃん、とボソリ呟く。
花乃は、くだらないことを考えていた。そうでもしないと、押しつぶされてしまいそうだったのだ。いつもそばにいた友人の、あたたかな体温や優しい声が、今、花乃の近くにない不安に。
千春が...花乃の前から忽然と姿を消した孤独感に。
******
歌が聞こえる。なめらかなピアノのメロディに合わせて、静かに語りかけるように歌っている。
「...あ、クリスマスか」
今日は、病院のホールでピアノの演奏会があるって看護師さんたちが言っていた。
母がいそいそと出ていったのは、もしかしたらケーキでも買いに行ったのかなと、ふと考える。
花乃は、開いていた病室のドアから出て、いつもより人の気配が少ない廊下を進んだ。
きっと、みんな演奏会に行っているのだ。
「...私も行ってみよう」
****
ホールが近づく。
小さかったメロディが、段々はっきりして...そして、目の前に迫った。
『
凍る空気 君の体温
冷たくなった頬を あたためて
笑って メリークリスマス
君の笑顔が見たいから
街で見つけた贈り物
君にぴったりの贈り物
早く渡したくて かけだした
思い浮かぶのは 君のことだけ 』
ピアノの弾き語り。
そっと鍵盤をたたき流れるメロディ。
ホールを抜ける歌声が、花乃の胸に刺さった。
(あぁ...だめだ。千春)
花乃は泣いていることを誰にも気づかれないよう、伸びた前髪が隠してくれるよう、下を向く。
ポタポタと落ちる涙は、花乃の足を濡らしていった。
(...千春、知ってた?...私たち、出会って二十年経ったんだよ?)
心の中で語りかけても、返事をする優しい声は聞こえない。
****
「かーのーちゃん!」
「...え、瑠璃ちゃん?」
花乃は、病室に戻ってきた。
母は、まだ戻っておらず、ベッドに座って考え事をしていた時だった。
まさか、その声が聞こえてくると思わなかった。
「...もう、ボーっとして。...食べてないんだって?」
「...え?」
「おばさまが、連絡くれたの。...花乃が参ってるから様子を見に来てやってくれって」
「あ....」
「....来て良かった。げっそりしちゃって」
「........」
「はい。これ」
ガサっと何か包みを取り出して、サイドテーブルに置く音がする。
「.....?」
「花乃ちゃんの好きなお店のお饅頭。...千春さんが、花乃が元気ない時はこれなんだって言ってたの思い出して」
「え...瑠璃ちゃんにもそんなこと言ってたの?」
「うん。まだ子供の頃...私がここに入院してた時だけどね。千春さんがよく花乃ちゃんのお見舞いに来てて...たまにこれ持ってたから気になって見てたの。そしたら私にもひとつくれたのよ。花乃が好きなんだって。千春さんがすごく優しく笑って言ってたのが印象的だった」
「...千春」
堪えきれずに、また泣きそうになる花乃の背中を瑠璃が優しく撫でる。
「千春さん、大丈夫だよ。あの人が花乃ちゃんのこと放って、消えちゃうなんてありえない。きっと何か理由があるのよ」
「うん...うん...」
何度も頷きながら、思い出の饅頭を食べた。今までどれほど食べただろう。
この饅頭は、こんな味だっただろうか。
千春が隣にいないだけで、まるで違う饅頭みたいだ。
(千春と食べるものは...全部美味しく感じたなぁ)
どこにいるの?
何があったの?
生きてるの?
どうして話してくれないの?
返事してよ...千春。
次々と湧いて出てくる千春への言葉は、消化されずに花乃の心に積もっていった。
****
落ち着いた頃、花乃は思い至った。
「...ごめんね、瑠璃ちゃん。ここまで遠いのに」
「ううん、大丈夫。私、お父さんたちと遊園地行った時から、車の運転マメにするようになったんだ。車って便利だなって気づいて。だいぶ上達したから、花乃ちゃんのところにもっと通いたいって思ってたところなの」
「瑠璃ちゃん...ありがとう」
すごく心強く感じた時、ガラッとドアが開いた。
「...あら、瑠璃ちゃん!来てくれたの?」
母が戻ってきたようだ。
「おばさま、こんにちは。お邪魔してます」
「こんにちは。ありがとう、瑠璃ちゃん。遠かったでしょ?せっかくのクリスマスなのに、ごめんね...予定大丈夫だった?」
「いえ、何も予定はなかったので大丈夫ですよ。連絡下さって嬉しかったです」
「大きくなったわねぇ...すっかり綺麗になって」
感慨深げな声で、瑠璃に言った。
「えへへ。...あれ?おばさま、それは?」
瑠璃は照れたように笑って、何かに気づく。
「あ...そうそう。花乃、これ」
「え...?」
思い出したとばかりに、カサッと音を立てて何かを差し出された気配がした。
「これね、病院の受付に届いてたのよ。さっき呼ばれて行ったら、花乃にお届け物だって」
ふわっと花の香りが漂ってくる。
「...なに?」
「...薔薇ね。25本の薔薇の花束」
「25本...?」
そっと触れると、花束のフィルムとひんやりふわふわした花びらの感触がした。
「あ...手紙もついてますね。ほら」
瑠璃の声がして、スッと何かを取り出して花乃の手のひらに当ててくれる。
「手紙...」
四角い封筒を撫でると、ザラザラした和紙のような素材だった。封がしてあるのをペリッと剥がす。
取り出した便箋には、点字で文章が書かれていて、花乃は指先で文字をたどった。
「...なんて書いてあったの?」
瑠璃と母が、気にする声がした。
でも花乃は答えられなかった。
手が震えて、喉も震えて...声が出ない。
『
花乃...元気にしてるか?
ちゃんと食べてるか?
寝られてるか?
花乃のことだから、俺のこと心配して
元気、なくなってるんじゃないか?
花乃、俺のことは心配いりません。
大丈夫だから...ほら、笑って。
花乃と出会えて、俺は幸せでした。
笑われるかもしれないけど...
多分...花乃は、俺の人生で一番の贈り物
だったんじゃないかな。
でも...もう俺のことは忘れて下さい。
あ...最後に。
25本の薔薇の意味知ってるか?
メリークリスマス、花乃。
本当に今までありがとう。
どうか...幸せになって。 』
25本の薔薇の意味....“あなたの幸せを祈っています。“
「バカちはるぅ....っ、わけ、わかんないよ」
花乃は、声をあげて泣いた。
もう悔しいのか、寂しいのか、苦しいのか...これがどんな感情なのか全然わからない。
母と瑠璃は、手紙の内容はわからずとも何となく事情を察して...静かに背中に手を添える。
花乃は、知らず知らず入る力にクシャッと折れる手紙の音を聞きながら、堰を切って溢れ出す感情の波と対峙しつづけた。
そして、ひとしきり泣いたあと思ったのだ。
「忘れない...」
それは、花乃には珍しく怒りの気持ちも含んだ声音だった。
(...忘れるわけないじゃない。絶対、忘れない。事情を説明しないで逃げるなんて許さないから。千春...私は、千春のこと必ず見つけるからね...)
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