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最終章 25年後、君と答え合わせ
3.君と答え合わせ
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「美味しかった~。お腹いっぱい」
「はは、めっちゃ食べたな」
「うん!パクパク入っちゃった」
千春が仕事を終えてから、二人で研究所を出て食事に向かった。車の中でも食事中も。他愛無い話をして過ごし、ただのほほんと過ぎていく。
花乃は、楽しくて、嬉しくて。ずっと笑顔だった。
千春も。花乃の話に耳を傾けては、終始頬を緩ませていた。
お店を出ると、すでに時刻は夕刻。
空は薄暗く、夜の帳を下ろそうとしている。
静かな裏路地を、二人は並んで歩いた。
大通りに出るまで、人の姿はまばらで。今は、千春と花乃の二人の姿しか見当たらない。
「....静かだね」
「....だな」
時折、触れ合う手から伝わる温もりは、確かに千春のもので。花乃のもので。会話の切れ間で、二人はどちらからともなく手を繋いだ。それが自然のことのように。
と、大通りがすぐそこまでやって来た時、花乃がピタリと立ち止まって...千春の方に向き直す。手は繋いだまま、じっと視線を合わせて。千春は、花乃の見据えるみたいな視線に動けなくなった。
花乃が、ゆっくり。言葉を探すように、慎重に。口を開いた。
「...ねぇ。千春?」
「...ん?」
「.....私、治ったよ」
「.........」
「私、治ったの。目も...身体も。全部元気になった」
「.........」
「だから....」
そこで、一度俯いて。また視線をあげて....全てを包み込むような顔で、花乃は綺麗に笑った。
そして、言ったのだ。
恨みも、怒りも、苦しみも。何も感じさせない、ただただ、千春への信頼が全面に感じられる声と表情で。
ーー『千春、ありがとう。嘘、ついてくれて』
「.........っ」
「....ふふ。覚えてる?....ほらね。そうなったでしょ?」
「.........」
千春は、何も言葉にならなかった。コクリと静かに頷くしかできなかった。以前した会話。そのままになったから。
◇
『....なぁ、花乃。...もし俺が....嘘をついていたら、どうする?』
『嘘?...千春、私に嘘ついてるの?』
『...はは。例え話。花乃は...どうする?...友達、やめる?』
『例え話...。そうね...もし千春が私に嘘をついていたら...』
『..........』
『私...きっと言うと思うわ』
『..........』
『千春、ありがとう。嘘、ついてくれて。.....って』
『....な、んだよ。それ』
『...だってね?...だって』
ーー千春が自分のために嘘つくと思えないもの。
ーーそれはきっと...私のための嘘、でしょ?
『....花乃は、優しすぎだ』
『....ふふ、それでも。私を思ってついてくれた嘘を、嫌だと思うはずない。私はずっと....千春のそばにいるわ』
◇
千春が嗚咽をこらえて、何とか涙をこぼすまいと耐えていた時。
突然、辺りに....聖なる鐘が鳴り響くーー。
リンゴーン。リンゴーン。
その瞬間、周りが一気に明るくなって。
花乃の背後に....色とりどりのイルミネーションに彩られた、大きな大きなクリスマスツリーが現れた。
同時に流れ始めた、陽気なクリスマスの音楽とともに。
目の前の大通りは、大勢の人で賑わっていて。
花乃は勢いよく振り返って、目をキラキラと輝かせた。
「うわぁ!千春!ねぇ、見て?ほら、すっっごく綺麗!」
間近でツリーを見上げながら、満面の笑みを向ける花乃を、千春はじっと見つめる。その目はうっすらと湿っていた。
気づけば、口から言葉がこぼれ落ちる。
千春と...花乃の、25年後の答え合わせーー。
千春が出した大切な『答え』がーー。
「....花乃。....好きだよ」
「....え?」
花乃は耳に届いたその言葉に、目を大きく見開いて...ツリーから千春へ、ゆっくりと視線を滑らせる。
「....友達じゃ、ない。...花乃は、俺の大切な人。...愛してるんだ。もう友達じゃ、いられない」
「....ち、はる」
花乃の唇は震えていた。信じられないみたいに目を潤ませて、紡ぐ言葉を探している。
「....花乃。俺と結婚、しないか。...俺のいない場所じゃなくて。俺の隣で、幸せになってほしい」
花乃はもう我慢できなかった。
潤んだ瞳から大粒の涙がこぼれ落ちて、泣き笑いで返事をした。
「....はい。...私も、答え合わせしたかったの。離れてみてわかったんだ。千春が...私の中でどんな存在なのか」
「.........」
「....千春、大好き。私も、千春のこと...とっても愛してる」
「花乃....」
繋いでいた手を、指を絡ませ合って握り直す。
大きなツリーが二人を隠すみたいに聳えていて、花乃と千春は引き寄せられるように距離を縮めていった。
そしてーー。
聖なる夜に....二人はそっと、初めてのキスを交わした。
千春の目は優しく蕩けて。甘く...甘く....花乃を見つめていた。
「美味しかった~。お腹いっぱい」
「はは、めっちゃ食べたな」
「うん!パクパク入っちゃった」
千春が仕事を終えてから、二人で研究所を出て食事に向かった。車の中でも食事中も。他愛無い話をして過ごし、ただのほほんと過ぎていく。
花乃は、楽しくて、嬉しくて。ずっと笑顔だった。
千春も。花乃の話に耳を傾けては、終始頬を緩ませていた。
お店を出ると、すでに時刻は夕刻。
空は薄暗く、夜の帳を下ろそうとしている。
静かな裏路地を、二人は並んで歩いた。
大通りに出るまで、人の姿はまばらで。今は、千春と花乃の二人の姿しか見当たらない。
「....静かだね」
「....だな」
時折、触れ合う手から伝わる温もりは、確かに千春のもので。花乃のもので。会話の切れ間で、二人はどちらからともなく手を繋いだ。それが自然のことのように。
と、大通りがすぐそこまでやって来た時、花乃がピタリと立ち止まって...千春の方に向き直す。手は繋いだまま、じっと視線を合わせて。千春は、花乃の見据えるみたいな視線に動けなくなった。
花乃が、ゆっくり。言葉を探すように、慎重に。口を開いた。
「...ねぇ。千春?」
「...ん?」
「.....私、治ったよ」
「.........」
「私、治ったの。目も...身体も。全部元気になった」
「.........」
「だから....」
そこで、一度俯いて。また視線をあげて....全てを包み込むような顔で、花乃は綺麗に笑った。
そして、言ったのだ。
恨みも、怒りも、苦しみも。何も感じさせない、ただただ、千春への信頼が全面に感じられる声と表情で。
ーー『千春、ありがとう。嘘、ついてくれて』
「.........っ」
「....ふふ。覚えてる?....ほらね。そうなったでしょ?」
「.........」
千春は、何も言葉にならなかった。コクリと静かに頷くしかできなかった。以前した会話。そのままになったから。
◇
『....なぁ、花乃。...もし俺が....嘘をついていたら、どうする?』
『嘘?...千春、私に嘘ついてるの?』
『...はは。例え話。花乃は...どうする?...友達、やめる?』
『例え話...。そうね...もし千春が私に嘘をついていたら...』
『..........』
『私...きっと言うと思うわ』
『..........』
『千春、ありがとう。嘘、ついてくれて。.....って』
『....な、んだよ。それ』
『...だってね?...だって』
ーー千春が自分のために嘘つくと思えないもの。
ーーそれはきっと...私のための嘘、でしょ?
『....花乃は、優しすぎだ』
『....ふふ、それでも。私を思ってついてくれた嘘を、嫌だと思うはずない。私はずっと....千春のそばにいるわ』
◇
千春が嗚咽をこらえて、何とか涙をこぼすまいと耐えていた時。
突然、辺りに....聖なる鐘が鳴り響くーー。
リンゴーン。リンゴーン。
その瞬間、周りが一気に明るくなって。
花乃の背後に....色とりどりのイルミネーションに彩られた、大きな大きなクリスマスツリーが現れた。
同時に流れ始めた、陽気なクリスマスの音楽とともに。
目の前の大通りは、大勢の人で賑わっていて。
花乃は勢いよく振り返って、目をキラキラと輝かせた。
「うわぁ!千春!ねぇ、見て?ほら、すっっごく綺麗!」
間近でツリーを見上げながら、満面の笑みを向ける花乃を、千春はじっと見つめる。その目はうっすらと湿っていた。
気づけば、口から言葉がこぼれ落ちる。
千春と...花乃の、25年後の答え合わせーー。
千春が出した大切な『答え』がーー。
「....花乃。....好きだよ」
「....え?」
花乃は耳に届いたその言葉に、目を大きく見開いて...ツリーから千春へ、ゆっくりと視線を滑らせる。
「....友達じゃ、ない。...花乃は、俺の大切な人。...愛してるんだ。もう友達じゃ、いられない」
「....ち、はる」
花乃の唇は震えていた。信じられないみたいに目を潤ませて、紡ぐ言葉を探している。
「....花乃。俺と結婚、しないか。...俺のいない場所じゃなくて。俺の隣で、幸せになってほしい」
花乃はもう我慢できなかった。
潤んだ瞳から大粒の涙がこぼれ落ちて、泣き笑いで返事をした。
「....はい。...私も、答え合わせしたかったの。離れてみてわかったんだ。千春が...私の中でどんな存在なのか」
「.........」
「....千春、大好き。私も、千春のこと...とっても愛してる」
「花乃....」
繋いでいた手を、指を絡ませ合って握り直す。
大きなツリーが二人を隠すみたいに聳えていて、花乃と千春は引き寄せられるように距離を縮めていった。
そしてーー。
聖なる夜に....二人はそっと、初めてのキスを交わした。
千春の目は優しく蕩けて。甘く...甘く....花乃を見つめていた。
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