悪役令嬢の兇器はドス黒い鈍器《パイプ椅子》です ~前世は病弱、今世は物理最強。魔法もチートも私には勝てません~

みやもと春九堂@月館望男

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【第11部】トヨノクニ黄金狂時代(ジパング・ラプソディ) ~技術と筋肉の力技で、数百年分の文明開化を「強制執行」しますわ~

第117話 原石の輝き:枯れ野の呪われ子? いいえ、彼女は「豊穣の申し子(ドルイド)」です

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 アリス乳業のデコトラ「パレード壱号」によるシチュー配布ツアーは、順調に……いや、熱狂的に各地を席巻していた。
 温かいシチューと、アリスの歌(奉納舞)。
 それは、娯楽と栄養に飢えていた地方の民衆にとって、まさに救世主の来訪だった。

 ある山深い寒村でのこと。
 ライブ(奉納)と配給を終え、撤収作業をしていたアリスが、村はずれのボロ小屋周辺の「異変」に気づいた。

「……ねえ、レヴィちゃん。あそこを見て」

 アリスが指差した先。そこは、豊かな森に囲まれた村の中で、半径十メートルほどだけが不自然に灰色に染まっていた。草は茶色く枯れ果て、木々は葉を落とし、地面は干からびている。
 村長に尋ねると、彼は顔をしかめて首を振った。

「近づいてはなりませぬ、巫女様。あれは『呪われ子』が住む場所です。……彼女が触れると、花は散り、作物は腐り、大地は死に絶える。不幸を呼ぶ『死神』として、隔離しているのです」

「死神……?」

 アリスの目が鋭くなる。
 彼女は制止を聞かず、枯れ野の中心にある小屋へと向かった。
 わたしはカエデに周囲の警戒を命じ、アリスの後を追った。

 灰色の小屋の中。
 膝を抱えて震えていたのは、ボロボロの麻袋のような服を着た小さな少女だった。
 彼女の周りには、真っ黒に萎びた花や、腐り落ちた果実が転がっている。

「……来ないで……枯れちゃうよ」

 少女が顔を上げる。その瞳は怯えていたが、奥底には底知れぬ魔力の光が宿っていた。
 わたしの魔力のカン目利きが告げている。
 この子の魔力……「闇」だ。それも、生命力を奪い取る方向へ、無自覚かつ強力に作用している。

「わぁ……!」

 だが、アリスは歓声を上げ、無防備に駆け寄った。

「すごい! すごいよこの子! 強力な『闇魔法』の素質があるけど……その根底にあるのは、植物や動物への溢れんばかりの『愛着グリーン・マナ』だよ!」

「……え?」

 少女が、きょとんとする。

「君、植物やお花が大好きでしょ? 『もっと元気に育ってほしい』『実ってほしい』って、強く願ってるでしょ?」

「……う、うん。でも、私が触ると、みんな死んじゃうの……」

「それはね、君の力が強すぎるからだよ! 『育てたい』という願いが強すぎて、逆に植物の許容量を超えたエネルギーを流し込んじゃってるの。その反動オーバーフローで、植物が枯れちゃってるだけ!」

 アリスは、少女の手をぎゅっと握りしめた。
 スズが「あっ!」と手を引っ込めようとするが、アリスは離さない。

「大丈夫。私には『聖女』の加護があるから、吸い取られたりしないよ。 ねえ、君! 名前は?」

「……スズ……」

「スズちゃん! 私と一緒に来ない? その力、制御する方法を教えてあげる。……闇で『剪定』し、光で『開花』させる。君なら、枯れ木を蘇らせて、森だって作れるようになるよ!」

 アリスが微笑みかける。

「私ね、『豊穣慈愛講』っていうグループを作って、この国中の痩せた土地を元気にしようとしてるの。 でも、私一人じゃ手が足りなくて……。君みたいな才能を持った『後継者弟子』を探してたんだ!」

「……私が、土地を元気に……?」

 スズの瞳から、涙が溢れ出した。
 自分の手が、死を招くものではなく、命を育むものになれるかもしれない。
 その希望が、彼女の凍りついた心を溶かしていく。

「……やりたい。私、お花も、動物も……大好きなの」

「決まりだね! 今日から君は、私の最初のお弟子さんだよ!」

 こうして、アリスが主宰する「豊穣慈愛講」に、最初の「生徒」が入った。
 彼女はアリスから光魔法と農業(と、少しのオタク知識)を学び、やがて荒地を瞬く間に緑に変える「森の賢者ドルイド」として才能を開花させることになる。

 ……もっとも、彼女はまだ知らない。
 「豊穣慈愛講」の活動には、農業だけでなく「奉納舞アイドルライブ」も含まれていることを。
 そして近い将来、大博覧会の特設ステージで、数万人の観衆を前にセンターの隣で踊らされる運命にあることを。

「……ちゃっかりしてるわね、アリス」
「えへへ。農業もできて可愛い子なんて、SSR確定ガチャだもん! 将来有望なアイドル候補だよ!」

 わたしは呆れつつも、満足げに笑った。
 人助けと人材発掘スカウト
 聖女のビジネスは、着実にその根を広げていた。
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