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【第13部】天を衝く悪役令嬢編 ~空に道がないなら、番人をへし折って「お迎え」にすればよろしいのです~
第141話 整地(物理):海賊の隠れ家? 今日からここは私の庭(戦場)です
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トヨノクニ南端、タネガシマ。
かつては鉄砲伝来の地として、あるいは海賊たちの巣窟として知られたその島に、漆黒の巨船『ヴィータヴェン号』が接岸した。
上陸するや否や、わたしは島の南岸――「空」への視界が最も開けた岬に陣取った。
そこには、かつてここを拠点としていた海賊の残党たちが、錆びた剣や槍を構えて待ち構えていた。
「おいこらァ! どこのどいつか知らねぇが、ここを誰の島だと思って……」
海賊の頭らしき男が怒鳴る。
だが、わたしは鉄扇で口元を隠し、冷ややかな視線を投げかけただけだった。
「……うるさいわね。工事の邪魔よ」
「あぁ!?」
「聞こえなくて? 今日からここは、私の庭になりますの。……立ち退き料代わりの手切れ金は払ってあげますから、さっさと出てお行きなさい」
わたしは懐から革袋を取り出し、無造作に放り投げた。
中には、彼らが一生遊んで暮らせるほどの金貨が入っている。
だが、海賊たちのプライドがそれを許さなかったらしい。
「ふ、ふざけるな! 俺たちを金で買おうってのか! 野郎ども、やっちまえ!!」
襲いかかる海賊たち。
わたしはため息をつき、近くにあった岩――大人の背丈ほどある巨岩に手をかけた。
「……久しぶりの現場仕事ですもの。準備運動にはちょうどいいかしら」
ズズズッ……バキィッ!!!
わたしは巨岩を「引っこ抜いた」。
地面から根こそぎ剥がし取られた数トンの岩塊を、片手で軽々と持ち上げる。
「な……ッ!?」
海賊たちが凍り付く。
わたしはニッコリと微笑み、
「整地!!」
ドォォォォォォォォォォンッ!!!
岩を、海賊たちの目の前の地面に叩きつけた。
地響きと共に土砂が舞い上がり、衝撃波で海賊たちが木の葉のように吹き飛ぶ。
岬の地形が変わった。
「ひ、ひぃぃぃッ!?」
「ば、化け物だぁぁぁ!!」
腰を抜かす男たちに、わたしは岩の上に座って足を組み、静かに告げた。
「……聞き分けのない人たちね。いいこと? これはあなた達のためを思って言っているのよ」
わたしの声から、笑色が消える。
「ここから先、この場所は『戦場』になりますわ。……相手は人間でも、魔獣でも、国ですらない。とんでもない相手とやり合うことになるかもしれない」
空を見上げる。
蒼穹の彼方、不可視の領域にいる「番人」。
「わたしだって、勝てるかどうかわからない。……国の一つや二つ、簡単に地図から消し飛ばすような相手が来るかもしれないの。巻き込まれたら、その程度の強さじゃ灰も残らないわよ?」
わたしの真剣な眼差しに、海賊の頭が息を呑んだ。
ただの脅しではない。絶対強者が抱く、本物の危機感を感じ取ったのだろう。
「……あ、あんた、本気で言ってやがるのか……?」
「ええ。だから金を持って消えなさい。……命があるうちにね」
海賊たちは顔を見合わせ、そして脱兎のごとく逃げ出した。金貨の袋をしっかりと抱えて。
誰もいなくなった岬で、わたしは鉄扇を開いた。
「さあ、邪魔者は消えました。……始めますわよ!」
そこからは、早かった。
ガンテツとギエモンがヴィータヴェン号から資材を運び出し、ミリアが図面を展開する。
そしてわたしが、杭を打ち(素手で)、鉄骨を曲げ(素手で)、基礎を固める(足踏みで)。
数日後。
何もない荒れ地だった岬には、空を突くような巨大な「通信塔」が完成していた。
オワリ城の放送設備をベースに、イリスの演算ユニットを直結し、魔力増幅炉を組み込んだ、対・天空用ビーコン発信機だ。
「……ふぅ。いい汗かきましたわ」
わたしはタオルで汗を拭い、完成した塔を見上げた。
準備は整った。
あとは、スイッチを押すだけだ。
だが、その前に――やらなければならないことがある。
わたしは、通信機でリョウマを呼び出した。
「リョウマ。……迎えに来て頂戴」
◆◆◆
翌日。
リョウマの船がタネガシマに到着した。
わたしは、作業を終えて泥だらけになったガンテツとギエモンを呼び出した。
「ご苦労様。……あなた達の仕事はここまでよ。リョウマの船で、オワリへ帰りなさい」
「なっ!?」
ガンテツが目を剥いた。
「お嬢、何言ってやがる! これからが本番だろうが! ビーコンが動くかどうかも、お迎えが来るかどうかも、わしらがついてねぇと……」
「いいえ。ここから先は、技術者の領分じゃないわ」
わたしは首を横に振った。
「この塔は、ただの『呼び鈴』よ。……ピンポンを押して、出てくるのが親切なタクシーならいいけれど、いきなり極大ブレスを吐く猛獣かもしれない」
「だ、だからこそ、わしらが……!」
「ダメよ」
ガンテツが食い下がるが、わたしはピシャリと遮った。
「あなた達は『国の宝』よ。トヨノクニの未来を作る手なの。……わたしの勝手な冒険に巻き込んで、失うわけにはいかないわ」
「大将……」
「海賊にも言ったけれど、本当に危険かもしれないの。……ガンテツ、ギエモン。オワリで待っていなさい。何事もなく空まで行けちゃったら、とびきりのお土産を持って帰ってくるから」
わたしは二人の職人の目を真っ直ぐに見つめ、諭すように言った。
「……わかった。そこまで言うなら、大将の勘を信じるぜ」
「死ぬなよ、レヴィーネ様。……あんたがいなくなったら、誰がわしらの作ったモンを豪快に使ってくれるんじゃ」
二人を見送り、船が見えなくなるまで手を振った。
そして。
わたしは振り返り、後ろに控えていた二人――ミリアとアリスに向き直った。
「……さあ、次はあなた達よ」
その言葉に、二人の表情が強張った。
かつては鉄砲伝来の地として、あるいは海賊たちの巣窟として知られたその島に、漆黒の巨船『ヴィータヴェン号』が接岸した。
上陸するや否や、わたしは島の南岸――「空」への視界が最も開けた岬に陣取った。
そこには、かつてここを拠点としていた海賊の残党たちが、錆びた剣や槍を構えて待ち構えていた。
「おいこらァ! どこのどいつか知らねぇが、ここを誰の島だと思って……」
海賊の頭らしき男が怒鳴る。
だが、わたしは鉄扇で口元を隠し、冷ややかな視線を投げかけただけだった。
「……うるさいわね。工事の邪魔よ」
「あぁ!?」
「聞こえなくて? 今日からここは、私の庭になりますの。……立ち退き料代わりの手切れ金は払ってあげますから、さっさと出てお行きなさい」
わたしは懐から革袋を取り出し、無造作に放り投げた。
中には、彼らが一生遊んで暮らせるほどの金貨が入っている。
だが、海賊たちのプライドがそれを許さなかったらしい。
「ふ、ふざけるな! 俺たちを金で買おうってのか! 野郎ども、やっちまえ!!」
襲いかかる海賊たち。
わたしはため息をつき、近くにあった岩――大人の背丈ほどある巨岩に手をかけた。
「……久しぶりの現場仕事ですもの。準備運動にはちょうどいいかしら」
ズズズッ……バキィッ!!!
わたしは巨岩を「引っこ抜いた」。
地面から根こそぎ剥がし取られた数トンの岩塊を、片手で軽々と持ち上げる。
「な……ッ!?」
海賊たちが凍り付く。
わたしはニッコリと微笑み、
「整地!!」
ドォォォォォォォォォォンッ!!!
岩を、海賊たちの目の前の地面に叩きつけた。
地響きと共に土砂が舞い上がり、衝撃波で海賊たちが木の葉のように吹き飛ぶ。
岬の地形が変わった。
「ひ、ひぃぃぃッ!?」
「ば、化け物だぁぁぁ!!」
腰を抜かす男たちに、わたしは岩の上に座って足を組み、静かに告げた。
「……聞き分けのない人たちね。いいこと? これはあなた達のためを思って言っているのよ」
わたしの声から、笑色が消える。
「ここから先、この場所は『戦場』になりますわ。……相手は人間でも、魔獣でも、国ですらない。とんでもない相手とやり合うことになるかもしれない」
空を見上げる。
蒼穹の彼方、不可視の領域にいる「番人」。
「わたしだって、勝てるかどうかわからない。……国の一つや二つ、簡単に地図から消し飛ばすような相手が来るかもしれないの。巻き込まれたら、その程度の強さじゃ灰も残らないわよ?」
わたしの真剣な眼差しに、海賊の頭が息を呑んだ。
ただの脅しではない。絶対強者が抱く、本物の危機感を感じ取ったのだろう。
「……あ、あんた、本気で言ってやがるのか……?」
「ええ。だから金を持って消えなさい。……命があるうちにね」
海賊たちは顔を見合わせ、そして脱兎のごとく逃げ出した。金貨の袋をしっかりと抱えて。
誰もいなくなった岬で、わたしは鉄扇を開いた。
「さあ、邪魔者は消えました。……始めますわよ!」
そこからは、早かった。
ガンテツとギエモンがヴィータヴェン号から資材を運び出し、ミリアが図面を展開する。
そしてわたしが、杭を打ち(素手で)、鉄骨を曲げ(素手で)、基礎を固める(足踏みで)。
数日後。
何もない荒れ地だった岬には、空を突くような巨大な「通信塔」が完成していた。
オワリ城の放送設備をベースに、イリスの演算ユニットを直結し、魔力増幅炉を組み込んだ、対・天空用ビーコン発信機だ。
「……ふぅ。いい汗かきましたわ」
わたしはタオルで汗を拭い、完成した塔を見上げた。
準備は整った。
あとは、スイッチを押すだけだ。
だが、その前に――やらなければならないことがある。
わたしは、通信機でリョウマを呼び出した。
「リョウマ。……迎えに来て頂戴」
◆◆◆
翌日。
リョウマの船がタネガシマに到着した。
わたしは、作業を終えて泥だらけになったガンテツとギエモンを呼び出した。
「ご苦労様。……あなた達の仕事はここまでよ。リョウマの船で、オワリへ帰りなさい」
「なっ!?」
ガンテツが目を剥いた。
「お嬢、何言ってやがる! これからが本番だろうが! ビーコンが動くかどうかも、お迎えが来るかどうかも、わしらがついてねぇと……」
「いいえ。ここから先は、技術者の領分じゃないわ」
わたしは首を横に振った。
「この塔は、ただの『呼び鈴』よ。……ピンポンを押して、出てくるのが親切なタクシーならいいけれど、いきなり極大ブレスを吐く猛獣かもしれない」
「だ、だからこそ、わしらが……!」
「ダメよ」
ガンテツが食い下がるが、わたしはピシャリと遮った。
「あなた達は『国の宝』よ。トヨノクニの未来を作る手なの。……わたしの勝手な冒険に巻き込んで、失うわけにはいかないわ」
「大将……」
「海賊にも言ったけれど、本当に危険かもしれないの。……ガンテツ、ギエモン。オワリで待っていなさい。何事もなく空まで行けちゃったら、とびきりのお土産を持って帰ってくるから」
わたしは二人の職人の目を真っ直ぐに見つめ、諭すように言った。
「……わかった。そこまで言うなら、大将の勘を信じるぜ」
「死ぬなよ、レヴィーネ様。……あんたがいなくなったら、誰がわしらの作ったモンを豪快に使ってくれるんじゃ」
二人を見送り、船が見えなくなるまで手を振った。
そして。
わたしは振り返り、後ろに控えていた二人――ミリアとアリスに向き直った。
「……さあ、次はあなた達よ」
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