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【第13部】天を衝く悪役令嬢編 ~空に道がないなら、番人をへし折って「お迎え」にすればよろしいのです~
第142話 最強の安全地帯:私を置いていく? そんなことしたら、誰がツッコミを入れるんですか!
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「……あなた達も、島を離れなさい」
タネガシマに吹き荒れる海風の中で、わたしの声は冷たく響いた。
「ビーコンを出したら、あとは野となれ山となれよ。……アリスの『光の繭』の術式は、魔石に登録してもらったわ。ミリアの計算式も、イリスにインストール済みよ」
わたしは二人から視線を逸らし、空を見上げた。
「あとは、私一人でなんとかするわ」
「……何とかするって、どうやってですか?」
ミリアが、静かだが怒りを孕んだ声で問い返す。
「国を一つ焼いて潰すような『システム』が相手になるかもしれないのでしょう? レヴィーネ様といえど、無事で済む保証なんて……」
「ないわよ。だから逃げろと言っているの」
わたしはぴしゃりと言い放ち、二人を睨んだ。
「あなた達、怖くないの? 死ぬかもしれないのよ?」
イリスの試算では、ドラゴンの迎撃能力は未知数。最悪の場合、島ごと消滅させられる可能性だってある。
けれど。
「怖くなんて、ありません!」
ミリアが一歩、前に出た。
いつも冷静沈着な彼女が、眼鏡の奥の瞳を潤ませ、声を張り上げた。
「そんなのが相手になったとしても……レヴィーネ様の側こそが、この世界で最高の安全圏です!!」
「ミリア……」
「私はV&C商会の社長です。社長が、会長の危機に逃げ出すなんてありえません! それに……もしレヴィーネ様がいなくなったら、誰がこの国の経済を回すんですか! 誰が無茶な発注をして、私を困らせてくれるんですか!」
彼女は胸に手を当て、毅然と言った。
「私は離れません。……地獄の底でも、空の果てでも、お供します」
その揺るぎない忠誠心に、わたしは言葉を詰まらせた。
と、その横から。
ペチッ、と軽い音がして、杖の先がわたしの脇腹を突っついた。
「……で、アリス。あんたも……」
「痛いのは嫌だよ?」
アリスがあっけらかんと言った。
「寒いのも嫌だし、怖いのも嫌。……できればこたつで蜜柑食べてたい」
「なら……」
「でーも! 置いていかれるのは、もっと嫌だよ!!」
アリスは頬を膨らませ、わたしの顔を覗き込んだ。
「あのね、レヴィちゃん。もしレヴィちゃん一人で行ってみなよ。……絶対、ろくなことにならないから」
「失礼ね。わたし一人でも……」
「無理無理。絶対、空の遺跡についた瞬間に『あら、邪魔な壁ですわね』って破壊して、貴重な古代遺産をガラクタにしちゃうでしょ?」
「う……」
「それに、もしすごい絶景があっても、一人じゃ写真も撮れないじゃん。……『わぁ、綺麗!』って言い合える相手がいなかったら、どんな景色もただの背景だよ?」
アリスはにへへと笑い、わたしの腕に抱きついた。
「私はレヴィちゃんの相棒だよ? 共犯者だよ? ……レヴィちゃんが暴走しないようにブレーキ踏んで、レヴィちゃんが寂しくないように騒ぐのが、私の役目でしょ」
「アリス……」
「それにね。……私の新しい魔法『光の繭』は、レヴィちゃんを守るために編んだんだよ? 本人がいないで、どうやって使うのさ」
彼女は空を見上げた。
「世界中の子供たちに笑顔と温もりを届けるのが、アイドル聖女の覚悟だよ。……そのためなら、空の大家さんくらい、物理込みの笑顔で説得してみせるよ!」
二人の瞳を見る。
そこには、恐怖よりも強い、信頼と覚悟が宿っていた。
……ああ、本当に。
わたしは、とんでもない部下と相棒を持ってしまったものだ。
「……はぁ。わかったわよ」
わたしは降参するように両手を上げた。
そして、ニヤリと不敵に笑う。
「後悔しても知らないわよ? ……地獄だろうが、宇宙だろうが、付き合ってもらうわ」
「「はいっ!!」」
二人の返事が重なる。
わたしは通信塔の基部に設置された、巨大なレバーに手をかけた。
「さあ、覚悟を決めなさい! ……お迎えのタクシーを呼ぶわよ!」
ガコンッ!!!
レバーが下ろされる。
その瞬間、背後に停泊していた『ヴィータヴェン号』が、獣のような咆哮を上げた。
『ヌヴォオオオオオオオオオオォォォォォンッッッ!!!!』
ドワーフたちが魔改造を施した超高出力魔導エンジンが、リミッターを解除され、臨界点まで回転数を上げたのだ。
船体から伸びる極太の魔導ケーブルを通じて、発電所数基分にも匹敵する莫大な魔力が、通信塔へと暴力的に流し込まれる。
バチバチバチッ……!!!
通信塔の基部が赤熱し、周囲の空間が歪む。
あまりの高エネルギー密度に、タネガシマの岩盤が悲鳴を上げ、島全体が地震のように激しく振動した。
「うわわっ!? じ、地面が揺れてるぅぅ!?」
「エネルギー充填率120%突破! 塔が保ちません、放出します!」
ミリアが叫ぶのと同時。
通信塔の先端、巨大な魔石のアンテナが、太陽ごとき輝きを放った。
「征けぇぇぇぇぇッッ!!!」
わたしの号令と共に、圧縮された魔力の塊が弾け飛ぶ。
それはもはや通信などという生易しいものではなく、空を穿つ「光の槍」だった。
ズドォォォォォォォンッッ!!!!!
『ピーーーーーーーーーヒョロロロロロ…………!!!』
大気を引き裂く衝撃波と、鼓膜をつんざく高周波のデータ音が入り混じり、タネガシマの空へと垂直に射出された。
雲が一瞬で消し飛び、蒼穹に巨大な風穴が開く。
地上の人間が、初めて神の領域へと、全力の拳を叩き込んだ瞬間だった。
空を見上げる。
来るか、お迎え。
それとも、番人。
わたしたちの戦いが、今、幕を開ける。
タネガシマに吹き荒れる海風の中で、わたしの声は冷たく響いた。
「ビーコンを出したら、あとは野となれ山となれよ。……アリスの『光の繭』の術式は、魔石に登録してもらったわ。ミリアの計算式も、イリスにインストール済みよ」
わたしは二人から視線を逸らし、空を見上げた。
「あとは、私一人でなんとかするわ」
「……何とかするって、どうやってですか?」
ミリアが、静かだが怒りを孕んだ声で問い返す。
「国を一つ焼いて潰すような『システム』が相手になるかもしれないのでしょう? レヴィーネ様といえど、無事で済む保証なんて……」
「ないわよ。だから逃げろと言っているの」
わたしはぴしゃりと言い放ち、二人を睨んだ。
「あなた達、怖くないの? 死ぬかもしれないのよ?」
イリスの試算では、ドラゴンの迎撃能力は未知数。最悪の場合、島ごと消滅させられる可能性だってある。
けれど。
「怖くなんて、ありません!」
ミリアが一歩、前に出た。
いつも冷静沈着な彼女が、眼鏡の奥の瞳を潤ませ、声を張り上げた。
「そんなのが相手になったとしても……レヴィーネ様の側こそが、この世界で最高の安全圏です!!」
「ミリア……」
「私はV&C商会の社長です。社長が、会長の危機に逃げ出すなんてありえません! それに……もしレヴィーネ様がいなくなったら、誰がこの国の経済を回すんですか! 誰が無茶な発注をして、私を困らせてくれるんですか!」
彼女は胸に手を当て、毅然と言った。
「私は離れません。……地獄の底でも、空の果てでも、お供します」
その揺るぎない忠誠心に、わたしは言葉を詰まらせた。
と、その横から。
ペチッ、と軽い音がして、杖の先がわたしの脇腹を突っついた。
「……で、アリス。あんたも……」
「痛いのは嫌だよ?」
アリスがあっけらかんと言った。
「寒いのも嫌だし、怖いのも嫌。……できればこたつで蜜柑食べてたい」
「なら……」
「でーも! 置いていかれるのは、もっと嫌だよ!!」
アリスは頬を膨らませ、わたしの顔を覗き込んだ。
「あのね、レヴィちゃん。もしレヴィちゃん一人で行ってみなよ。……絶対、ろくなことにならないから」
「失礼ね。わたし一人でも……」
「無理無理。絶対、空の遺跡についた瞬間に『あら、邪魔な壁ですわね』って破壊して、貴重な古代遺産をガラクタにしちゃうでしょ?」
「う……」
「それに、もしすごい絶景があっても、一人じゃ写真も撮れないじゃん。……『わぁ、綺麗!』って言い合える相手がいなかったら、どんな景色もただの背景だよ?」
アリスはにへへと笑い、わたしの腕に抱きついた。
「私はレヴィちゃんの相棒だよ? 共犯者だよ? ……レヴィちゃんが暴走しないようにブレーキ踏んで、レヴィちゃんが寂しくないように騒ぐのが、私の役目でしょ」
「アリス……」
「それにね。……私の新しい魔法『光の繭』は、レヴィちゃんを守るために編んだんだよ? 本人がいないで、どうやって使うのさ」
彼女は空を見上げた。
「世界中の子供たちに笑顔と温もりを届けるのが、アイドル聖女の覚悟だよ。……そのためなら、空の大家さんくらい、物理込みの笑顔で説得してみせるよ!」
二人の瞳を見る。
そこには、恐怖よりも強い、信頼と覚悟が宿っていた。
……ああ、本当に。
わたしは、とんでもない部下と相棒を持ってしまったものだ。
「……はぁ。わかったわよ」
わたしは降参するように両手を上げた。
そして、ニヤリと不敵に笑う。
「後悔しても知らないわよ? ……地獄だろうが、宇宙だろうが、付き合ってもらうわ」
「「はいっ!!」」
二人の返事が重なる。
わたしは通信塔の基部に設置された、巨大なレバーに手をかけた。
「さあ、覚悟を決めなさい! ……お迎えのタクシーを呼ぶわよ!」
ガコンッ!!!
レバーが下ろされる。
その瞬間、背後に停泊していた『ヴィータヴェン号』が、獣のような咆哮を上げた。
『ヌヴォオオオオオオオオオオォォォォォンッッッ!!!!』
ドワーフたちが魔改造を施した超高出力魔導エンジンが、リミッターを解除され、臨界点まで回転数を上げたのだ。
船体から伸びる極太の魔導ケーブルを通じて、発電所数基分にも匹敵する莫大な魔力が、通信塔へと暴力的に流し込まれる。
バチバチバチッ……!!!
通信塔の基部が赤熱し、周囲の空間が歪む。
あまりの高エネルギー密度に、タネガシマの岩盤が悲鳴を上げ、島全体が地震のように激しく振動した。
「うわわっ!? じ、地面が揺れてるぅぅ!?」
「エネルギー充填率120%突破! 塔が保ちません、放出します!」
ミリアが叫ぶのと同時。
通信塔の先端、巨大な魔石のアンテナが、太陽ごとき輝きを放った。
「征けぇぇぇぇぇッッ!!!」
わたしの号令と共に、圧縮された魔力の塊が弾け飛ぶ。
それはもはや通信などという生易しいものではなく、空を穿つ「光の槍」だった。
ズドォォォォォォォンッッ!!!!!
『ピーーーーーーーーーヒョロロロロロ…………!!!』
大気を引き裂く衝撃波と、鼓膜をつんざく高周波のデータ音が入り混じり、タネガシマの空へと垂直に射出された。
雲が一瞬で消し飛び、蒼穹に巨大な風穴が開く。
地上の人間が、初めて神の領域へと、全力の拳を叩き込んだ瞬間だった。
空を見上げる。
来るか、お迎え。
それとも、番人。
わたしたちの戦いが、今、幕を開ける。
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