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九話
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いつの間にか、涙が流れていたらしく、なだめるように、優しく頭を撫でられた。
山崎さんは、全て出し切ったように、ぐったりしながらも、肉棒を引き抜いた。
圧迫感がなくなり、全身の力が抜けた。
「ひぃ!!」
頭上のティッシュが引き抜かれたと思うと、陰部を拭かれ、変な声を出し、膝を抱えて背中を向けた。
「どうしたんですか?」
「急…に…触…ないでよ…」
「敏感ですね」
山崎さんを肩越しに、横目で睨むと、自分の股間を拭こうとした。
私は、咄嗟に、視線を反らした。
今までは、なんとも思わなかったのに、山崎さんは、見てられない。
使い終わったティッシュが、ゴミ箱に投げ入れられ、布団が掛けられた。
暫く、じっとしていて、静かに、上半身を起こして、山崎さんの顔を覗き込んだ。
眠っているのを確認して、布団から、抜け出ようとしたが、腕を引っ張られた。
抱き寄せられ、微笑んでいる山崎さんの顔が、目の前に現れ、ドキッと心臓が跳ねた。
「どこ行くんですか?」
「お…風呂」
「何しにですか?」
「シャワー浴びに」
「掻き出す気ですか?」
その言葉に、頬が熱くなり、真っ赤になった。
「図星ですか」
抱き枕のように、羽交い締めにされ、布団の中に、引き戻されてしまった。
「掻き出したら、もう一回しますからね」
「無理でしょ」
首筋に噛み付かれ、下半身が擦り付けられた。
「ちょ!!やめ!!なんなの!!なんでそんな元気なのよ!!」
「若いですから」
「あーそうですか。いいですね。若くて」
そう言うと、山崎さんの力が抜け、黙ってしまった。
肩越しに、山崎さんを横目で見ると、ちょっと悲しそうに、瞳が潤んでいた。
「若いって、言われるのイヤ?」
背中にオデコが着けられ、小さく頷いたのが分かった。
「もうしない」
そう言うと、山崎さんの腕が、ビクッと動いて、オデコの感覚が離れた。
「アホな事はもうしません。バカな事はもう言いません。だから…」
山崎さんの腕を抱き締めて、今にも消えてしまいそうな程、小さな声で呟いた。
「…そんな顔しないで…」
背中を丸め、赤くなった頬を隠し、山崎さんの腕の中に、すっぽり、収まると、頬擦りされ、ギュっと抱きしめられた。
その夜、背中に山崎さんの暖かさを感じながら、ゆっくり眠ったが、数時間しか寝れなかった。
隣に寝てた山崎さんが居ない。
いつもの胸の締め付けがない。
寝惚けながら、自分の体を見下ろした。
ブラとブラウスが、脱げかかっていて、下半身は何も履いてない。
昨日の事を思い出して、慌てて、布団を引っ張りあげようすると、下腹部に痛みが走り、背中を丸めた。
「ったぁ~」
今まで、感じた事のない痛みを耐え、顔を歪めながら、下着とジャージを引き寄せた。
身なりを整え、お腹を擦りながら、リビングに向かい、ドアを開けると、山崎さんが、キッチンに立っているのが見えた。
「おはようございます」
優しく微笑む山崎さんから、視線を反らして、椅子に座った。
「痛みますか?」
「ばか」
「大丈夫。その内慣れますから」
「…はぁ!?慣れるってなに!?毎日するつもりなの!?」
「はい」
山崎さんを睨んでから、溜め息をつき、目元を隠すように、手で覆い、カウンターに肘を着いて言った。
「無理。体が耐えられない」
コーヒー入りのマグカップが、そっと置かれ、指の隙間から山崎さんを見上げた。
山崎さんは、優しく微笑んだまま、カウンター越しに、私を見下ろしていた。
「大丈夫ですよ。そうなったら、私がいますから」
「元凶のくせに」
「酷いですね。元は、マコトさんの日頃の行いが悪いからですよ?」
その通りで、何も言い返せない。
その笑顔の圧に耐えられなくて、目を閉じると、耳元で囁かれた。
「求めたことなかったでしょ?」
昨日、自分が求めた瞬間が、鮮明に思い浮かび、顔が真っ赤になり、体が熱くなった。
その映像に、頭が沸騰したように、熱くなり、言葉が出てこないでいると、山崎さんが離れた。
「可愛かったですよ」
背中を向け、そう言って、何か始めた山崎さんを睨んでから、コーヒーを一口飲んで、不意に浮かんだ疑問を口に出した。
「仕事。どうすんの?」
「それなら、ご心配なく」
トーストと目玉焼き、彩り鮮やかなサラダが差し出された。
「知り合いに、紹介してもらいました」
「いつから?」
それらを受け取りながら、そう聞くと、山崎さんは、リビングのカレンダーを見ながら、フォークを取り出して答えた。
「明後日です」
「早くない?」
差し出されたフォークを受け取り、レタスを刺して口に運んだ。
「あの店は、前々から辞めようと思ってたので」
「ふ~ん。じゃ、いいきっかけだったのね」
山崎さんの分のトーストとサラダが差し出され、隣に置こうとしたが、一つ向こう側に置いた。
「子供みたいですね」
そう言いながら、笑っているのを睨み、自分のサラダにフォークを刺した。
山崎さんは、クスクスと笑い、キッチンから出ると、私が置いたお皿の前に座った。
サラダを食べ終わり、トーストをかじりながら、新聞を広げた。
山崎さんからの視線が、横顔に突き刺さる。
「今、幸せだなぁって思ってたでしょ」
「よく、分かりましたね」
「でも、心のどこかで、もっと、早く、出会いたかったって思ってる」
山崎さんの瞳が、大きく揺れた。
「図星」
山崎さんは、カウンターに視線を落とした。
そんな山崎さんの姿を横目で、見てから、新聞に視線を戻し、トーストにかじり付いた。
「人も動物も、いつかは死ぬ。生まれなんか関係ないでしょ。早く出会おうが、遅く出会おうが、そこからどうするかじゃない?」
顔を向けると、山崎さんも、驚きと不安が、入り交じったような複雑な表情で、私を見ていた。
「やりたいようにやれば?」
そう言って、トーストをかじり、新聞に視線を戻すと、山崎さんの方から、トーストをかじる音がし始めた。
無言だけど、息苦しくない。
落ち着くし、とても心地良い。
そんな空気が、リビングを満たした。
残りのトーストを口に突っ込み、コーヒーを飲み干し、食器を片付けようと、立ち上がった。
「やるのでいいですよ」
マグカップを持って、私を見上げる山崎さんを見下ろして、自然と、口角を上げて言った。
「そら、どうも」
キッチンに入り、棚からタバコを取り出し、換気扇を回した。
火を点けたタバコから、煙を吸い込み、壁に寄り掛かって、山崎さんが、食器を洗うのを見つめた。
「どんな仕事?」
「接客です」
「山崎さん、人当たり良さそうだもんね」
「そんな事ないですよ?」
私はタバコを吹かし、山崎さんは、マグカップにコーヒーを淹れた。
「なんで、カウンターキッチンにしたんですか?」
「祖母の為」
私は、リビングの窓に視線を向けた。
「いつも、背中を向けて、料理してた祖母が、その時だけ、孤独に見えたから。こうすれば、そんな事ないかなって。畳だった茶の間から、フローリングに替えたの。祖母が、怪我しないように」
「優しいんですね」
「私、ばぁちゃんっ子だから」
「墓参りとか、頻繁に行ってるんですか?」
「あんまり」
「なら、今度、一緒に行きましょうか?」
「あ~…いいや」
苦笑いしながら、コーヒーを飲むと、山崎さんは、持っていたマグカップを置いた。
「どうしてですか?」
何も答えず、コーヒーを飲んで、山崎さんを見ると、淋しそうな顔をしていた。
私は、この顔に弱い。
山崎さんに、その表情をされると、胸が、ギュっと、掴まれたように痛む。
「一人になったのを実感する。実際、まだ受け入れきれなくて、墓石を見ると、虚しくなるから行けない。それじゃ、ダメだって、分かってるんだけどね~」
頭では分かっていても、受け入れられない現実が、そこにある。
結局、私は、それからも逃げている。
そう思うと、自分に呆れてしまい、溜め息をついて、体を起こした。
「仕事してる」
「分かりました。でも、その前に」
いつの間にか、近付いていたらしく、山崎さんの腕の中に閉じ込められた。
何度も瞬きをしてると、山崎さんの顔が近付いてきた。
「しましょうか」
「何言って…ん…」
一瞬で、首筋に噛み付かれ、チクッと痛みが走った。
「ちょ!!ばか!!んん~…」
首筋を舐め上げられて体が震えた。
「んな…発情…すんなぁ…」
声を震わせながら、山崎さんの肘を掴むと、山崎さんは、腰を押し当てた。
「欲しくないですか?」
優しい声色で、意地悪を言われ、顔が熱くなる。
「イヤなら、抵抗して下さい」
腰を押し当てられたまま、耳元で呟かれ、耳を舐められた。
「まごっ!!」
脇腹を殴ると、山崎さんは、そこを押さえて背中を丸めた。
「時と場所を選べ。発情猫」
「すみま…せん…でした」
鼻で溜め息をつき、痛みに悶える山崎さんを置いて、仕事部屋に向かった。
デスクにマグカップを置き、パソコンの電源を入れ、椅子に座ると、背もたれに寄り掛かって目を閉じた。
昨日の事を思い出し、私は、官能小説のフォルダを開き、忘れない内に、昨日の事を書き込み、違うフォルダを開いて、違う小説の続きを書いた。
その内、ドアをノックする音に、驚いて、時計を見ると、十二時を過ぎていた。
「お昼出来ましたよ」
椅子から立ち上がり、マグカップを持つと、山崎さんの声が聞こえた。
「マコトさっ!!」
ドアを勢いよく開けた時、ゴンと鈍い音がした。
やっちゃった。
そっと、隙間から顔を出し、廊下を見ると、ドアの前に、山崎さんが踞っていた。
「ごめん」
「…ダイ…ジョブ…」
声を震わせる山崎さんの隣に屈み、微妙に震えてる頭を撫でた。
鼻を擦りながら、顔を上げた山崎さんは、涙目になっていた。
「ぶっけた?」
涙目で頷く山崎さんが可愛い。
撫でていた手を止め、自然と微笑んで、山崎さんを見つめた。
「お昼なに?」
「素うどんです」
「そっか。楽しみ」
私が立ち上がると、山崎さんも立ち上がり、狭い廊下を並んで歩いた。
「マンガみたいになったね」
「痛かったです」
「だろうね」
「他人事だと思ってません?」
「なんで分かった?」
「わざとですか」
二人で笑いながら、リビングのドアを開けて、私がカウンターに座ると、山崎さんは、キッチンに入り、どんぶりをカウンターに置いた。
自分の隣と前に置き、山崎さんが、隣に座ってから、並んで、うどんをすすった。
優しくて暖かい味に、和みながら、無言でも、落ち着く雰囲気に浸った。
「買い物。行こうか」
うどんを食べ終わり、二人で、コーヒーを飲みながら、不意に、私が言うと、山崎さんは、ボケッとした顔をしていた。
「食材、もうほとんどないでしょ?」
「そうですね」
山崎さんから、視線を反らし、頬杖を着いて、前を見たまま、今、食べたい物を言う。
「オムライス」
「…はい!?」
山崎さんを横目で見てから、ニヤっと笑った。
「オムライスが食べたい」
「仕方ないですね。行きましょうか」
苦笑いしながらも、そう言った山崎さんに、ニッコリ笑ってから、ハイネックとジーパンに着替え、ジャケットを持って、玄関に向かうと、障子が開け放たれていた。
和室の中を見ると、庭には、洗濯物とシーツが干されていて、和室の隅には、ダンボールが置かれていた。
仕方ない。
玄関に向かうと、山崎さんが、下駄箱に寄り掛かっていた。
山崎さんも、さっきとは、Tシャツもカーディガンも違った。
「着替えたの?」
「はい。ちょっと、そのまま」
靴を履いて、山崎さんの前に立つと、そう言われ、動きを止めると、山崎さんの手が、伸びてきた。
ドキドキと、心臓を踊らせながら、じっとしてると、山崎さんの手は、私の髪に触れ、すぐに離れた。
「糸屑ですね」
手に持つ糸屑を見せ、ニッコリ笑う山崎さんに、頬を赤らめた。
「どうぞ」
玄関の戸を開けて促され、先に出ようとすると、山崎さんの顔が、目の前に現れ、チュっと音を発てて、キスされた。
山崎さんは、艶やかに笑っていた。
「行きましょう」
囁いてから顔を離し、背中に手を添えられ、近場のスーパーに並んで向かった。
材料とインスタントコーヒー、牛乳をカゴに入れ、店内を見て回っていた。
「マコトちゃん!!」
山崎さんと並んで、通路を歩いていると、後ろから呼ばれ、二人で振り返ると、隣のおばさんが立っていた。
「お揃いで買い物?」
苦笑いしながら、軽くお辞儀をすると、おばさんは、ニコニコと笑いながら、そう言って、近付いてきた。
横目で見上げると、山崎さんも、苦笑いしていた。
「いえ。そこで、会ったんですよ」
「あら。そうだったの?私ったら、勘違いしちゃって。ごめんなさいねぇ」
「いえ」
「でも、そうやって、並んで買い物してると、新婚さんみたいで、初々しいわ~」
そう言われて、互いに顔を見合せて、頬を赤らめ、山崎さんは、後頭部を掻いた。
「それじゃ。頑張ってね」
山崎さんの腕を叩いて、そう言い、おばさんは、ニコニコと、笑いながら去って行った。
互い頬を赤らめて、笑いながら、レジに向かった。
帰り道。
一つずつ、レジ袋を持って、並んで歩いていると、小さな子供を連れた夫婦とすれ違い、私は、振り返り、子供と手を繋いで笑って歩く、その家族を見つめた。
「いいですね」
そう言われ、私は、目を細めて答えた。
「…そうね」
「あんな風になれたら、いいですね。でも…」
私が視線を戻すと、山崎さんは、優しく微笑んで言った。
「私は、マコトさんが居てくれれば、それだけで幸せです。行きましょう」
私に向かって、差し出された手を見つめた。
その手に、空いている手を重ねて、並んで歩く。
心が和む。
安心する。
笑っていられる。
暖かくて、大きな手に包まれ、そう思えた。
彼が好き。
彼の暖かさに、そう考えて、笑いながら歩いた。
そんな私達を見つめる人影が、あった事を知らずに帰宅した。
自宅に着き、食材を冷蔵庫に仕舞って、山崎さんが、コーヒーを淹れている隣で、換気扇を回しながら、タバコを吸っていた。
「山崎さんって、何でも作れるの?」
「何でもじゃないですよ。ある程度です。はい」
「ありがとう」
マグカップを受け取り、コーヒーを飲むと、山崎さんも一緒にコーヒーを飲んだ。
タバコを消し、マグカップを持って、キッチンから出た。
「ご飯、出来たら呼んでね」
「はい」
仕事部屋に行き、仕事を始める。
完全に、男女が逆転して、周りから見たら、変な感じだけど、私には、理想的だった。
仕事を制限される事もなく、家事をしないでも、文句も言われない。
そんな山崎さんに、感謝しながらも、肉食なのか草食なのか、分からない山崎さんが、不思議だった。
山崎さんをもっと知りたい。
でも、心のどこかで、知る事が怖いと思う。
私って臆病だ。
「出来ましたよ~」
仕事をしながら、そんな事を考えていると、ノックと山崎さんの声で、時計を確認し、背伸びをした。
「マコトさん?」
「今行く。ドア、開けるよ~」
椅子から立ち上がり、マグカップを持って、ドアに向かって、そう言って、小さく隙間を開け、顔を覗かせると、山崎さんは、ドアの届かない所に離れて立っていた。
「変なの」
クスクスと笑いながら、そう言うと、山崎さんは、少し、ムッとした顔をした。
「…後でみてろ…」
「なに?」
「何でもありません」
山崎さんに聞き返すと、怒ったように、そう吐き捨てて、先に歩き出してしまった。
その後を追うように、リビングに向かい、山崎さんは、さっきの様子が、嘘のように、普通に話しながら、並んで、オムライスとサラダを食べた。
「私は、洗い物をするので、お先に、お風呂どうぞ」
「了解」
残ったコーヒーを飲み干し、リビングを出て、洗面所に向かった。
ハイネックとジーパンを洗濯機に、放り込んで、洗濯ネットに下着を入れた。
シャワーを頭から浴び、しっかりとした泡を作り、全身を包むように洗う。
シャワーで、泡を流していると、山崎さんの顔が視界の隅に入り、顎を肩に乗せられた。
「ちょ!!何してんの!?」
「一緒に入ろうと思いまして」
「一人で入りなよ」
「イヤです」
艶やかに微笑んで、体に着いた泡を潰しながら、脇腹を撫で下ろされた。
さわさわと、くすぐったい感覚に、体を捩った。
「ぅ…ん…やめ…」
首筋に、ヌルッと舌の感覚に、背中がゾクゾクして、体が震える。
山崎さんの手に、乳首を引っ張られた。
「い…っ…ん…」
耳の裏を舐め、噛み付かれ、顔を逆に向けようとしたが、山崎さんの手が、私の顎を掴んだ。
「やぁ…や…めて…よぉ…」
うなじに、ヌルッとした感覚で、背中がゾクゾクする。
乳首をつまんでいた手が、内腿に触れた。
「だぁ…め…や…ぁ…」
力が入らず、山崎さんの重みが、背中に掛かると、シャワーの中に、頭から入って、壁に手を着いた。
膝が震えて、足の力が抜けそうだった。
「ぁ…やぁ…ふ…ぅ…」
お尻に、硬い物が当たり、昨日の熱が戻ってきたように、背中が熱い。
「も…やぁ…あ!!」
太ももを擦るように、触れていた手に、勃発し始めた蕾を擦られ、背中を反らすと、山崎さんの頭に、後頭部が触れた。
「ぅ…ふ…ん…んん…ぁ…」
直接、蕾を擦られて、膣が、昨日の圧迫感を求めた。
もう自分で、自分の体が分からない。
ただただ、淡い痺れに体が震える。
肩にチクリと痛みが走り、蕾を擦る指が速くなった。
「ん…ぁ…あぁ…ふ…ぅ…ぁ…」
山崎さんの顔が、視界に入り、蕾を回すように、指が動かされた。
体を捩り、山崎さんに顔を向けると、舌が絡まるキスをされた。
山崎さんの荒い鼻息が、頬を掠めて、私の声が、口の中で響く。
体が、物足りないと訴え始めた。
唇が離れ、息を掛け合うように、見つめ合うと、山崎さんの口角が上がり、乳首が弾かれ、背中が震えた。
「ふぅ…ん…んん…ぅ…」
天上に顔を向け、唇を噛み締めて、声を殺すと、乳首と蕾が同時に擦られ、背中を丸めた。
「む…りぃ…ん…もぉ…ふ…ぅ…」
立っているのが辛くて、壁に着いた手が滑り始めた。
「ふ…わ!!」
後ろに引っ張られ、山崎さんに体を預けた。
首元に顔を埋められ、唇が撫でるように、首を動かされ、山崎さんの髪が、首筋と肩を掠めた。
「ん…んん…ぅ…ふ…」
山崎さんの背中が、壁を滑り降りるのと、一緒になって、滑り落ち、足を広げて床に座った。
「あぁ!!」
一気に、二本の指が膣に入り、指の付け根で、露になった蕾を擦りながら、膣を掻き回される。
体が引き上げられると、足の間から、山崎さんの肉棒が頭を出した。
更に、腰を持ち上げられ、膣から指が抜かれると、山崎さんの肉棒が、一気に膣に入ってきた。
「っつ!!あぁ…」
求めていた圧迫感で、体が震えたが、山崎さんの肉棒は、すぐに抜かれた。
床に手を着き、腰を浮かせたまま、横目で、後ろにいる山崎さんに、視線を送る。
山崎さんは、艶やかに微笑んでいるだけで、何もしてこない。
「なん…で…」
体の熱に、声を震わせながら、聞くと、山崎さんは、微笑んだまま、首を傾げて言った。
「どうしたいか言わなきゃ」
そう言いながら、蕾を撫でられ、どうしようもない、熱に頭が麻痺しそう。
「ひど…い…よ…」
蕾に指を突き立てられ、更に、腰を浮かせた。
「見えてるよ?」
「ぅ…るさ…いぁ…あ!!ぁあ…ぅ…」
指を突き立てたまま、円を描くように、指を動かされ、腕の力が抜け、床に頬を着けた。
「んん…ぅ…ん…ふぁ…い…ん…」
床のお湯を飲まないように、口を閉じようとはしたが、擦られる蕾から、体が震えて、閉じられない。
「もぉ…だ…め…ん…」
蕾を擦っていた山崎さんの手が、止まり、絶頂を逃された。
「も…イキ…たい…」
「このまま?」
「イ…カせて…」
「ダメ」
膝を抜き取られ、私が膝を着くと、のし掛かり、耳に唇を寄せられた。
「それじゃ、物足りないでしょ?」
お尻に、肉棒を擦り付けられ、腰が震える。
「ちゃんと言って」
お尻を撫でられ、体が震える。
私の頭は、真っ白で、何をどう言えば、分からない。
「ヨダレ。スゴいよ」
いつの間にか、ヨダレを垂らしていたらしく、唇に触れられた。
「ひぃ!!…ぅ…」
腰に回していた手が、膣の入口をなぞり、微かに、蕾に触れられたが、体を震わせることが出来ない。
「どうしたい?」
優しい声色で囁かれ、耳に山崎さんの息が掛かった。
髪の隙間から、意地悪な顔の山崎さんが、歪んで見えた。
肉棒の感覚が、膣の入口に移った。
「いれて」
「い…れて…っつ!!あぁ…」
山崎さんの肉棒が、一気に、膣に入って来て、体が求めた圧迫感が、膣を満たし、背中から、山崎さんの重みが消えた。
「ダメだよ。自分で動いちゃ」
膣に肉棒を入れたまま、一切動かないことで、私は、無意識に腰を揺らしていたらしい。
「次は?」
「…せて…」
ゆっくりと、肉棒を出し入れされ、膣が擦れて、背中が熱くなる。
「聞こえないよ?」
「イカ…せ…て…」
膣を擦る肉棒が、少しだけ、強く突き刺さり、指を床に突き立て、オデコを床に擦り付けた。
「聞こえない」
「イカせて!!」
声が、浴室内を反響すると、山崎さんの肉棒が、強く突き刺さり、膣を擦る速さが一気に増した。
「あぁ!!ぁん!!は!!ぁは!!」
太ももの付け根を掴んで、突き上げられる肉棒が、ツボに当たり体が震えた。
「も!!だぁ!!めっつ!!」
叫ぶように訴えると、山崎さんの動きが止まった。
「抜く?」
「いぃ…や…ぁ…」
ニヤリと笑って、山崎さんの腰の動きが速まった。
激しく、肉のぶつかり合う音が響き
、体が震え、背中が熱くなっていく。
「…っつ…」
「あぁーーー!!っふ…」
山崎さんが、膣に射精するのと、同時に、膣に力が入り、絶頂に達した。
全身の力が抜け、肩で息をする。
倦怠感がすごい。
肉棒が小刻みに揺れ、膣に全て出し切ると、肉棒を差したまま、背中に重みがのし掛かった。
肉棒を引き抜かれ、圧迫感から解放されて、そのまま、うつ伏せになろうとするが、抱き起こされた。
足を前に投げ出して広げて、床に座り、息が上がった山崎さんを見上げた。
片腕で私の肩を抱き、もう片方の手で頬を撫でられた。
びちゃびちゃに濡れた前髪を持ち上げれると、オデコが露になった。
そこに、チュっとキスをされ、お姫様抱っこで、浴槽に入れられてから、シャワーかわ止まった。
山崎さんも、浴槽に入り、背中から抱き着くと、そのまま、後ろへと倒れ、寝そべる形になった。
「イジワル」
山崎さんに身を預け、天上に向かって、呟くと、頭上から囁きが聞こえた。
「お互い様です」
視界に入る、山崎さんの表情は、穏やかだった。
「してないし」
「欲情猫って言われました。あと、変なのとも」
「事実を言っただけじゃんか」
「傷付きました」
「メンタル弱」
「今、気付きましたか?」
「ウソばっか」
山崎さんの口角が、上がると、乳首を撫でられそうになって焦った。
「ごめん!!もう言わないから!!」
山崎さんの手が肩に戻った。
「なんで、そんなに怒るのさ」
「怒ってないですよ?ただ、猫って言われるのが、イヤなだけです」
「なんで?」
「十二、三くらいの時に、色んな事を言われたんですよ」
「例えば?」
「家がないから野良猫」
「だけ?」
「他の男子が好きな娘に、平気で手を出すから、泥棒猫。何度、イッても…」
「あ。なんか分かったから、もういいや」
顔を顰めて、そう言うと、山崎さんは、クスクスと笑った。
「でもさ。家がないってのは違うし、好きな娘に手出すってのも、違うんじゃない?」
私が、そう言うと、山崎さんは、目を点にして、首を傾げた。
「帰る場所があるんなら、家がなくても、野良にはならないし。好きな娘って、言うだけであって、その娘は、どうだか分かんないじゃん?自分から、行動しないで、そんな事を言うのはお門違いでしょ」
首を傾げていた山崎さんの瞳が、大きく揺れた。
「まぁ。他人は、どうあれ。私は好きよ?って!!ちょっと!?」
私の首元に、顔を埋めた山崎さんに驚いて、体を起こそうとした。
「ありがとう…」
顔の見えない山崎さんの声が、微かに震えていた。
必死に耐えてたんだな。
容姿で馬鹿にされたり、生い立ちで貶されたり、身勝手で苦しめられたりして、ずっと耐え忍んで、自己嫌悪に陥ることもあったんだろうな。
そんな山崎さんが、すごく愛おしい。
山崎さんの肩に頭を乗せて、天上を見上げた。
「猫がって、意味だからね」
「分かってますよ」
山崎さんの暖かさに、天上に顔を向けたまま、目を閉じた。
暫く、そのままでいたが、逆上せそうになり、山崎さんの頭を軽く叩いて言った。
「ごめん。上がる」
山崎さんは手を離し、浴槽の縁に頭を乗せ、天上に顔を向けると、手で目元を覆った。
「上がんないの?」
目を覆ったまま、頷いた山崎さんを見て、浴室のドアを開けた。
「逆上せないでね?」
それだけ言って、浴室のドアを締めた。
長袖のTシャツとステテコに着替えて、リビングでタバコを吸いながら、アイスコーヒーを作った。
暫くすると、スウェット姿で、頭から湯気を出しながら、山崎さんが、リビングに入ってきた。
カランカランと、氷を鳴らし、グラスをカウンターに置くと、山崎さんは、優しく微笑んで、椅子に座った。
「顔、真っ赤」
「入りすぎました」
「気を付けてよ。私じゃ、何も出来ないんだから」
「そうですね。マコトさんは、私がいますから。安心して下さいね?」
「倒れるような事しませんよ」
笑いながら、他愛ない話をして、私は、仕事部屋に、山崎さんは、和室に、それぞれ入った。
官能小説のフォルダを開き、さっきのことを書いてから、違うフォルダを開いて、続きを書き始めた。
夢中になって、書き進め、アクビが出てきて、時計を見た。
もうすぐ、午前一時になる。
私は、文章を保存して、パソコンの電源を切り、寝室に向かった。
ドアを開けると、綺麗に布団が敷かれ、シーツは、洗いたてのように真っ白だった。
気持ちいい。
「太陽だ」
布団も、干してくれたみたいで、枕から太陽の匂いがした。
何年ぶりだろ。
自然と顔が綻び、久々に、太陽の匂いに抱かれ、暖かい気持ちになり、いつの間にか、掛け布団の上で、寝てしまったが、空が明るくなって、目を覚ました。
山崎さんは、全て出し切ったように、ぐったりしながらも、肉棒を引き抜いた。
圧迫感がなくなり、全身の力が抜けた。
「ひぃ!!」
頭上のティッシュが引き抜かれたと思うと、陰部を拭かれ、変な声を出し、膝を抱えて背中を向けた。
「どうしたんですか?」
「急…に…触…ないでよ…」
「敏感ですね」
山崎さんを肩越しに、横目で睨むと、自分の股間を拭こうとした。
私は、咄嗟に、視線を反らした。
今までは、なんとも思わなかったのに、山崎さんは、見てられない。
使い終わったティッシュが、ゴミ箱に投げ入れられ、布団が掛けられた。
暫く、じっとしていて、静かに、上半身を起こして、山崎さんの顔を覗き込んだ。
眠っているのを確認して、布団から、抜け出ようとしたが、腕を引っ張られた。
抱き寄せられ、微笑んでいる山崎さんの顔が、目の前に現れ、ドキッと心臓が跳ねた。
「どこ行くんですか?」
「お…風呂」
「何しにですか?」
「シャワー浴びに」
「掻き出す気ですか?」
その言葉に、頬が熱くなり、真っ赤になった。
「図星ですか」
抱き枕のように、羽交い締めにされ、布団の中に、引き戻されてしまった。
「掻き出したら、もう一回しますからね」
「無理でしょ」
首筋に噛み付かれ、下半身が擦り付けられた。
「ちょ!!やめ!!なんなの!!なんでそんな元気なのよ!!」
「若いですから」
「あーそうですか。いいですね。若くて」
そう言うと、山崎さんの力が抜け、黙ってしまった。
肩越しに、山崎さんを横目で見ると、ちょっと悲しそうに、瞳が潤んでいた。
「若いって、言われるのイヤ?」
背中にオデコが着けられ、小さく頷いたのが分かった。
「もうしない」
そう言うと、山崎さんの腕が、ビクッと動いて、オデコの感覚が離れた。
「アホな事はもうしません。バカな事はもう言いません。だから…」
山崎さんの腕を抱き締めて、今にも消えてしまいそうな程、小さな声で呟いた。
「…そんな顔しないで…」
背中を丸め、赤くなった頬を隠し、山崎さんの腕の中に、すっぽり、収まると、頬擦りされ、ギュっと抱きしめられた。
その夜、背中に山崎さんの暖かさを感じながら、ゆっくり眠ったが、数時間しか寝れなかった。
隣に寝てた山崎さんが居ない。
いつもの胸の締め付けがない。
寝惚けながら、自分の体を見下ろした。
ブラとブラウスが、脱げかかっていて、下半身は何も履いてない。
昨日の事を思い出して、慌てて、布団を引っ張りあげようすると、下腹部に痛みが走り、背中を丸めた。
「ったぁ~」
今まで、感じた事のない痛みを耐え、顔を歪めながら、下着とジャージを引き寄せた。
身なりを整え、お腹を擦りながら、リビングに向かい、ドアを開けると、山崎さんが、キッチンに立っているのが見えた。
「おはようございます」
優しく微笑む山崎さんから、視線を反らして、椅子に座った。
「痛みますか?」
「ばか」
「大丈夫。その内慣れますから」
「…はぁ!?慣れるってなに!?毎日するつもりなの!?」
「はい」
山崎さんを睨んでから、溜め息をつき、目元を隠すように、手で覆い、カウンターに肘を着いて言った。
「無理。体が耐えられない」
コーヒー入りのマグカップが、そっと置かれ、指の隙間から山崎さんを見上げた。
山崎さんは、優しく微笑んだまま、カウンター越しに、私を見下ろしていた。
「大丈夫ですよ。そうなったら、私がいますから」
「元凶のくせに」
「酷いですね。元は、マコトさんの日頃の行いが悪いからですよ?」
その通りで、何も言い返せない。
その笑顔の圧に耐えられなくて、目を閉じると、耳元で囁かれた。
「求めたことなかったでしょ?」
昨日、自分が求めた瞬間が、鮮明に思い浮かび、顔が真っ赤になり、体が熱くなった。
その映像に、頭が沸騰したように、熱くなり、言葉が出てこないでいると、山崎さんが離れた。
「可愛かったですよ」
背中を向け、そう言って、何か始めた山崎さんを睨んでから、コーヒーを一口飲んで、不意に浮かんだ疑問を口に出した。
「仕事。どうすんの?」
「それなら、ご心配なく」
トーストと目玉焼き、彩り鮮やかなサラダが差し出された。
「知り合いに、紹介してもらいました」
「いつから?」
それらを受け取りながら、そう聞くと、山崎さんは、リビングのカレンダーを見ながら、フォークを取り出して答えた。
「明後日です」
「早くない?」
差し出されたフォークを受け取り、レタスを刺して口に運んだ。
「あの店は、前々から辞めようと思ってたので」
「ふ~ん。じゃ、いいきっかけだったのね」
山崎さんの分のトーストとサラダが差し出され、隣に置こうとしたが、一つ向こう側に置いた。
「子供みたいですね」
そう言いながら、笑っているのを睨み、自分のサラダにフォークを刺した。
山崎さんは、クスクスと笑い、キッチンから出ると、私が置いたお皿の前に座った。
サラダを食べ終わり、トーストをかじりながら、新聞を広げた。
山崎さんからの視線が、横顔に突き刺さる。
「今、幸せだなぁって思ってたでしょ」
「よく、分かりましたね」
「でも、心のどこかで、もっと、早く、出会いたかったって思ってる」
山崎さんの瞳が、大きく揺れた。
「図星」
山崎さんは、カウンターに視線を落とした。
そんな山崎さんの姿を横目で、見てから、新聞に視線を戻し、トーストにかじり付いた。
「人も動物も、いつかは死ぬ。生まれなんか関係ないでしょ。早く出会おうが、遅く出会おうが、そこからどうするかじゃない?」
顔を向けると、山崎さんも、驚きと不安が、入り交じったような複雑な表情で、私を見ていた。
「やりたいようにやれば?」
そう言って、トーストをかじり、新聞に視線を戻すと、山崎さんの方から、トーストをかじる音がし始めた。
無言だけど、息苦しくない。
落ち着くし、とても心地良い。
そんな空気が、リビングを満たした。
残りのトーストを口に突っ込み、コーヒーを飲み干し、食器を片付けようと、立ち上がった。
「やるのでいいですよ」
マグカップを持って、私を見上げる山崎さんを見下ろして、自然と、口角を上げて言った。
「そら、どうも」
キッチンに入り、棚からタバコを取り出し、換気扇を回した。
火を点けたタバコから、煙を吸い込み、壁に寄り掛かって、山崎さんが、食器を洗うのを見つめた。
「どんな仕事?」
「接客です」
「山崎さん、人当たり良さそうだもんね」
「そんな事ないですよ?」
私はタバコを吹かし、山崎さんは、マグカップにコーヒーを淹れた。
「なんで、カウンターキッチンにしたんですか?」
「祖母の為」
私は、リビングの窓に視線を向けた。
「いつも、背中を向けて、料理してた祖母が、その時だけ、孤独に見えたから。こうすれば、そんな事ないかなって。畳だった茶の間から、フローリングに替えたの。祖母が、怪我しないように」
「優しいんですね」
「私、ばぁちゃんっ子だから」
「墓参りとか、頻繁に行ってるんですか?」
「あんまり」
「なら、今度、一緒に行きましょうか?」
「あ~…いいや」
苦笑いしながら、コーヒーを飲むと、山崎さんは、持っていたマグカップを置いた。
「どうしてですか?」
何も答えず、コーヒーを飲んで、山崎さんを見ると、淋しそうな顔をしていた。
私は、この顔に弱い。
山崎さんに、その表情をされると、胸が、ギュっと、掴まれたように痛む。
「一人になったのを実感する。実際、まだ受け入れきれなくて、墓石を見ると、虚しくなるから行けない。それじゃ、ダメだって、分かってるんだけどね~」
頭では分かっていても、受け入れられない現実が、そこにある。
結局、私は、それからも逃げている。
そう思うと、自分に呆れてしまい、溜め息をついて、体を起こした。
「仕事してる」
「分かりました。でも、その前に」
いつの間にか、近付いていたらしく、山崎さんの腕の中に閉じ込められた。
何度も瞬きをしてると、山崎さんの顔が近付いてきた。
「しましょうか」
「何言って…ん…」
一瞬で、首筋に噛み付かれ、チクッと痛みが走った。
「ちょ!!ばか!!んん~…」
首筋を舐め上げられて体が震えた。
「んな…発情…すんなぁ…」
声を震わせながら、山崎さんの肘を掴むと、山崎さんは、腰を押し当てた。
「欲しくないですか?」
優しい声色で、意地悪を言われ、顔が熱くなる。
「イヤなら、抵抗して下さい」
腰を押し当てられたまま、耳元で呟かれ、耳を舐められた。
「まごっ!!」
脇腹を殴ると、山崎さんは、そこを押さえて背中を丸めた。
「時と場所を選べ。発情猫」
「すみま…せん…でした」
鼻で溜め息をつき、痛みに悶える山崎さんを置いて、仕事部屋に向かった。
デスクにマグカップを置き、パソコンの電源を入れ、椅子に座ると、背もたれに寄り掛かって目を閉じた。
昨日の事を思い出し、私は、官能小説のフォルダを開き、忘れない内に、昨日の事を書き込み、違うフォルダを開いて、違う小説の続きを書いた。
その内、ドアをノックする音に、驚いて、時計を見ると、十二時を過ぎていた。
「お昼出来ましたよ」
椅子から立ち上がり、マグカップを持つと、山崎さんの声が聞こえた。
「マコトさっ!!」
ドアを勢いよく開けた時、ゴンと鈍い音がした。
やっちゃった。
そっと、隙間から顔を出し、廊下を見ると、ドアの前に、山崎さんが踞っていた。
「ごめん」
「…ダイ…ジョブ…」
声を震わせる山崎さんの隣に屈み、微妙に震えてる頭を撫でた。
鼻を擦りながら、顔を上げた山崎さんは、涙目になっていた。
「ぶっけた?」
涙目で頷く山崎さんが可愛い。
撫でていた手を止め、自然と微笑んで、山崎さんを見つめた。
「お昼なに?」
「素うどんです」
「そっか。楽しみ」
私が立ち上がると、山崎さんも立ち上がり、狭い廊下を並んで歩いた。
「マンガみたいになったね」
「痛かったです」
「だろうね」
「他人事だと思ってません?」
「なんで分かった?」
「わざとですか」
二人で笑いながら、リビングのドアを開けて、私がカウンターに座ると、山崎さんは、キッチンに入り、どんぶりをカウンターに置いた。
自分の隣と前に置き、山崎さんが、隣に座ってから、並んで、うどんをすすった。
優しくて暖かい味に、和みながら、無言でも、落ち着く雰囲気に浸った。
「買い物。行こうか」
うどんを食べ終わり、二人で、コーヒーを飲みながら、不意に、私が言うと、山崎さんは、ボケッとした顔をしていた。
「食材、もうほとんどないでしょ?」
「そうですね」
山崎さんから、視線を反らし、頬杖を着いて、前を見たまま、今、食べたい物を言う。
「オムライス」
「…はい!?」
山崎さんを横目で見てから、ニヤっと笑った。
「オムライスが食べたい」
「仕方ないですね。行きましょうか」
苦笑いしながらも、そう言った山崎さんに、ニッコリ笑ってから、ハイネックとジーパンに着替え、ジャケットを持って、玄関に向かうと、障子が開け放たれていた。
和室の中を見ると、庭には、洗濯物とシーツが干されていて、和室の隅には、ダンボールが置かれていた。
仕方ない。
玄関に向かうと、山崎さんが、下駄箱に寄り掛かっていた。
山崎さんも、さっきとは、Tシャツもカーディガンも違った。
「着替えたの?」
「はい。ちょっと、そのまま」
靴を履いて、山崎さんの前に立つと、そう言われ、動きを止めると、山崎さんの手が、伸びてきた。
ドキドキと、心臓を踊らせながら、じっとしてると、山崎さんの手は、私の髪に触れ、すぐに離れた。
「糸屑ですね」
手に持つ糸屑を見せ、ニッコリ笑う山崎さんに、頬を赤らめた。
「どうぞ」
玄関の戸を開けて促され、先に出ようとすると、山崎さんの顔が、目の前に現れ、チュっと音を発てて、キスされた。
山崎さんは、艶やかに笑っていた。
「行きましょう」
囁いてから顔を離し、背中に手を添えられ、近場のスーパーに並んで向かった。
材料とインスタントコーヒー、牛乳をカゴに入れ、店内を見て回っていた。
「マコトちゃん!!」
山崎さんと並んで、通路を歩いていると、後ろから呼ばれ、二人で振り返ると、隣のおばさんが立っていた。
「お揃いで買い物?」
苦笑いしながら、軽くお辞儀をすると、おばさんは、ニコニコと笑いながら、そう言って、近付いてきた。
横目で見上げると、山崎さんも、苦笑いしていた。
「いえ。そこで、会ったんですよ」
「あら。そうだったの?私ったら、勘違いしちゃって。ごめんなさいねぇ」
「いえ」
「でも、そうやって、並んで買い物してると、新婚さんみたいで、初々しいわ~」
そう言われて、互いに顔を見合せて、頬を赤らめ、山崎さんは、後頭部を掻いた。
「それじゃ。頑張ってね」
山崎さんの腕を叩いて、そう言い、おばさんは、ニコニコと、笑いながら去って行った。
互い頬を赤らめて、笑いながら、レジに向かった。
帰り道。
一つずつ、レジ袋を持って、並んで歩いていると、小さな子供を連れた夫婦とすれ違い、私は、振り返り、子供と手を繋いで笑って歩く、その家族を見つめた。
「いいですね」
そう言われ、私は、目を細めて答えた。
「…そうね」
「あんな風になれたら、いいですね。でも…」
私が視線を戻すと、山崎さんは、優しく微笑んで言った。
「私は、マコトさんが居てくれれば、それだけで幸せです。行きましょう」
私に向かって、差し出された手を見つめた。
その手に、空いている手を重ねて、並んで歩く。
心が和む。
安心する。
笑っていられる。
暖かくて、大きな手に包まれ、そう思えた。
彼が好き。
彼の暖かさに、そう考えて、笑いながら歩いた。
そんな私達を見つめる人影が、あった事を知らずに帰宅した。
自宅に着き、食材を冷蔵庫に仕舞って、山崎さんが、コーヒーを淹れている隣で、換気扇を回しながら、タバコを吸っていた。
「山崎さんって、何でも作れるの?」
「何でもじゃないですよ。ある程度です。はい」
「ありがとう」
マグカップを受け取り、コーヒーを飲むと、山崎さんも一緒にコーヒーを飲んだ。
タバコを消し、マグカップを持って、キッチンから出た。
「ご飯、出来たら呼んでね」
「はい」
仕事部屋に行き、仕事を始める。
完全に、男女が逆転して、周りから見たら、変な感じだけど、私には、理想的だった。
仕事を制限される事もなく、家事をしないでも、文句も言われない。
そんな山崎さんに、感謝しながらも、肉食なのか草食なのか、分からない山崎さんが、不思議だった。
山崎さんをもっと知りたい。
でも、心のどこかで、知る事が怖いと思う。
私って臆病だ。
「出来ましたよ~」
仕事をしながら、そんな事を考えていると、ノックと山崎さんの声で、時計を確認し、背伸びをした。
「マコトさん?」
「今行く。ドア、開けるよ~」
椅子から立ち上がり、マグカップを持って、ドアに向かって、そう言って、小さく隙間を開け、顔を覗かせると、山崎さんは、ドアの届かない所に離れて立っていた。
「変なの」
クスクスと笑いながら、そう言うと、山崎さんは、少し、ムッとした顔をした。
「…後でみてろ…」
「なに?」
「何でもありません」
山崎さんに聞き返すと、怒ったように、そう吐き捨てて、先に歩き出してしまった。
その後を追うように、リビングに向かい、山崎さんは、さっきの様子が、嘘のように、普通に話しながら、並んで、オムライスとサラダを食べた。
「私は、洗い物をするので、お先に、お風呂どうぞ」
「了解」
残ったコーヒーを飲み干し、リビングを出て、洗面所に向かった。
ハイネックとジーパンを洗濯機に、放り込んで、洗濯ネットに下着を入れた。
シャワーを頭から浴び、しっかりとした泡を作り、全身を包むように洗う。
シャワーで、泡を流していると、山崎さんの顔が視界の隅に入り、顎を肩に乗せられた。
「ちょ!!何してんの!?」
「一緒に入ろうと思いまして」
「一人で入りなよ」
「イヤです」
艶やかに微笑んで、体に着いた泡を潰しながら、脇腹を撫で下ろされた。
さわさわと、くすぐったい感覚に、体を捩った。
「ぅ…ん…やめ…」
首筋に、ヌルッと舌の感覚に、背中がゾクゾクして、体が震える。
山崎さんの手に、乳首を引っ張られた。
「い…っ…ん…」
耳の裏を舐め、噛み付かれ、顔を逆に向けようとしたが、山崎さんの手が、私の顎を掴んだ。
「やぁ…や…めて…よぉ…」
うなじに、ヌルッとした感覚で、背中がゾクゾクする。
乳首をつまんでいた手が、内腿に触れた。
「だぁ…め…や…ぁ…」
力が入らず、山崎さんの重みが、背中に掛かると、シャワーの中に、頭から入って、壁に手を着いた。
膝が震えて、足の力が抜けそうだった。
「ぁ…やぁ…ふ…ぅ…」
お尻に、硬い物が当たり、昨日の熱が戻ってきたように、背中が熱い。
「も…やぁ…あ!!」
太ももを擦るように、触れていた手に、勃発し始めた蕾を擦られ、背中を反らすと、山崎さんの頭に、後頭部が触れた。
「ぅ…ふ…ん…んん…ぁ…」
直接、蕾を擦られて、膣が、昨日の圧迫感を求めた。
もう自分で、自分の体が分からない。
ただただ、淡い痺れに体が震える。
肩にチクリと痛みが走り、蕾を擦る指が速くなった。
「ん…ぁ…あぁ…ふ…ぅ…ぁ…」
山崎さんの顔が、視界に入り、蕾を回すように、指が動かされた。
体を捩り、山崎さんに顔を向けると、舌が絡まるキスをされた。
山崎さんの荒い鼻息が、頬を掠めて、私の声が、口の中で響く。
体が、物足りないと訴え始めた。
唇が離れ、息を掛け合うように、見つめ合うと、山崎さんの口角が上がり、乳首が弾かれ、背中が震えた。
「ふぅ…ん…んん…ぅ…」
天上に顔を向け、唇を噛み締めて、声を殺すと、乳首と蕾が同時に擦られ、背中を丸めた。
「む…りぃ…ん…もぉ…ふ…ぅ…」
立っているのが辛くて、壁に着いた手が滑り始めた。
「ふ…わ!!」
後ろに引っ張られ、山崎さんに体を預けた。
首元に顔を埋められ、唇が撫でるように、首を動かされ、山崎さんの髪が、首筋と肩を掠めた。
「ん…んん…ぅ…ふ…」
山崎さんの背中が、壁を滑り降りるのと、一緒になって、滑り落ち、足を広げて床に座った。
「あぁ!!」
一気に、二本の指が膣に入り、指の付け根で、露になった蕾を擦りながら、膣を掻き回される。
体が引き上げられると、足の間から、山崎さんの肉棒が頭を出した。
更に、腰を持ち上げられ、膣から指が抜かれると、山崎さんの肉棒が、一気に膣に入ってきた。
「っつ!!あぁ…」
求めていた圧迫感で、体が震えたが、山崎さんの肉棒は、すぐに抜かれた。
床に手を着き、腰を浮かせたまま、横目で、後ろにいる山崎さんに、視線を送る。
山崎さんは、艶やかに微笑んでいるだけで、何もしてこない。
「なん…で…」
体の熱に、声を震わせながら、聞くと、山崎さんは、微笑んだまま、首を傾げて言った。
「どうしたいか言わなきゃ」
そう言いながら、蕾を撫でられ、どうしようもない、熱に頭が麻痺しそう。
「ひど…い…よ…」
蕾に指を突き立てられ、更に、腰を浮かせた。
「見えてるよ?」
「ぅ…るさ…いぁ…あ!!ぁあ…ぅ…」
指を突き立てたまま、円を描くように、指を動かされ、腕の力が抜け、床に頬を着けた。
「んん…ぅ…ん…ふぁ…い…ん…」
床のお湯を飲まないように、口を閉じようとはしたが、擦られる蕾から、体が震えて、閉じられない。
「もぉ…だ…め…ん…」
蕾を擦っていた山崎さんの手が、止まり、絶頂を逃された。
「も…イキ…たい…」
「このまま?」
「イ…カせて…」
「ダメ」
膝を抜き取られ、私が膝を着くと、のし掛かり、耳に唇を寄せられた。
「それじゃ、物足りないでしょ?」
お尻に、肉棒を擦り付けられ、腰が震える。
「ちゃんと言って」
お尻を撫でられ、体が震える。
私の頭は、真っ白で、何をどう言えば、分からない。
「ヨダレ。スゴいよ」
いつの間にか、ヨダレを垂らしていたらしく、唇に触れられた。
「ひぃ!!…ぅ…」
腰に回していた手が、膣の入口をなぞり、微かに、蕾に触れられたが、体を震わせることが出来ない。
「どうしたい?」
優しい声色で囁かれ、耳に山崎さんの息が掛かった。
髪の隙間から、意地悪な顔の山崎さんが、歪んで見えた。
肉棒の感覚が、膣の入口に移った。
「いれて」
「い…れて…っつ!!あぁ…」
山崎さんの肉棒が、一気に、膣に入って来て、体が求めた圧迫感が、膣を満たし、背中から、山崎さんの重みが消えた。
「ダメだよ。自分で動いちゃ」
膣に肉棒を入れたまま、一切動かないことで、私は、無意識に腰を揺らしていたらしい。
「次は?」
「…せて…」
ゆっくりと、肉棒を出し入れされ、膣が擦れて、背中が熱くなる。
「聞こえないよ?」
「イカ…せ…て…」
膣を擦る肉棒が、少しだけ、強く突き刺さり、指を床に突き立て、オデコを床に擦り付けた。
「聞こえない」
「イカせて!!」
声が、浴室内を反響すると、山崎さんの肉棒が、強く突き刺さり、膣を擦る速さが一気に増した。
「あぁ!!ぁん!!は!!ぁは!!」
太ももの付け根を掴んで、突き上げられる肉棒が、ツボに当たり体が震えた。
「も!!だぁ!!めっつ!!」
叫ぶように訴えると、山崎さんの動きが止まった。
「抜く?」
「いぃ…や…ぁ…」
ニヤリと笑って、山崎さんの腰の動きが速まった。
激しく、肉のぶつかり合う音が響き
、体が震え、背中が熱くなっていく。
「…っつ…」
「あぁーーー!!っふ…」
山崎さんが、膣に射精するのと、同時に、膣に力が入り、絶頂に達した。
全身の力が抜け、肩で息をする。
倦怠感がすごい。
肉棒が小刻みに揺れ、膣に全て出し切ると、肉棒を差したまま、背中に重みがのし掛かった。
肉棒を引き抜かれ、圧迫感から解放されて、そのまま、うつ伏せになろうとするが、抱き起こされた。
足を前に投げ出して広げて、床に座り、息が上がった山崎さんを見上げた。
片腕で私の肩を抱き、もう片方の手で頬を撫でられた。
びちゃびちゃに濡れた前髪を持ち上げれると、オデコが露になった。
そこに、チュっとキスをされ、お姫様抱っこで、浴槽に入れられてから、シャワーかわ止まった。
山崎さんも、浴槽に入り、背中から抱き着くと、そのまま、後ろへと倒れ、寝そべる形になった。
「イジワル」
山崎さんに身を預け、天上に向かって、呟くと、頭上から囁きが聞こえた。
「お互い様です」
視界に入る、山崎さんの表情は、穏やかだった。
「してないし」
「欲情猫って言われました。あと、変なのとも」
「事実を言っただけじゃんか」
「傷付きました」
「メンタル弱」
「今、気付きましたか?」
「ウソばっか」
山崎さんの口角が、上がると、乳首を撫でられそうになって焦った。
「ごめん!!もう言わないから!!」
山崎さんの手が肩に戻った。
「なんで、そんなに怒るのさ」
「怒ってないですよ?ただ、猫って言われるのが、イヤなだけです」
「なんで?」
「十二、三くらいの時に、色んな事を言われたんですよ」
「例えば?」
「家がないから野良猫」
「だけ?」
「他の男子が好きな娘に、平気で手を出すから、泥棒猫。何度、イッても…」
「あ。なんか分かったから、もういいや」
顔を顰めて、そう言うと、山崎さんは、クスクスと笑った。
「でもさ。家がないってのは違うし、好きな娘に手出すってのも、違うんじゃない?」
私が、そう言うと、山崎さんは、目を点にして、首を傾げた。
「帰る場所があるんなら、家がなくても、野良にはならないし。好きな娘って、言うだけであって、その娘は、どうだか分かんないじゃん?自分から、行動しないで、そんな事を言うのはお門違いでしょ」
首を傾げていた山崎さんの瞳が、大きく揺れた。
「まぁ。他人は、どうあれ。私は好きよ?って!!ちょっと!?」
私の首元に、顔を埋めた山崎さんに驚いて、体を起こそうとした。
「ありがとう…」
顔の見えない山崎さんの声が、微かに震えていた。
必死に耐えてたんだな。
容姿で馬鹿にされたり、生い立ちで貶されたり、身勝手で苦しめられたりして、ずっと耐え忍んで、自己嫌悪に陥ることもあったんだろうな。
そんな山崎さんが、すごく愛おしい。
山崎さんの肩に頭を乗せて、天上を見上げた。
「猫がって、意味だからね」
「分かってますよ」
山崎さんの暖かさに、天上に顔を向けたまま、目を閉じた。
暫く、そのままでいたが、逆上せそうになり、山崎さんの頭を軽く叩いて言った。
「ごめん。上がる」
山崎さんは手を離し、浴槽の縁に頭を乗せ、天上に顔を向けると、手で目元を覆った。
「上がんないの?」
目を覆ったまま、頷いた山崎さんを見て、浴室のドアを開けた。
「逆上せないでね?」
それだけ言って、浴室のドアを締めた。
長袖のTシャツとステテコに着替えて、リビングでタバコを吸いながら、アイスコーヒーを作った。
暫くすると、スウェット姿で、頭から湯気を出しながら、山崎さんが、リビングに入ってきた。
カランカランと、氷を鳴らし、グラスをカウンターに置くと、山崎さんは、優しく微笑んで、椅子に座った。
「顔、真っ赤」
「入りすぎました」
「気を付けてよ。私じゃ、何も出来ないんだから」
「そうですね。マコトさんは、私がいますから。安心して下さいね?」
「倒れるような事しませんよ」
笑いながら、他愛ない話をして、私は、仕事部屋に、山崎さんは、和室に、それぞれ入った。
官能小説のフォルダを開き、さっきのことを書いてから、違うフォルダを開いて、続きを書き始めた。
夢中になって、書き進め、アクビが出てきて、時計を見た。
もうすぐ、午前一時になる。
私は、文章を保存して、パソコンの電源を切り、寝室に向かった。
ドアを開けると、綺麗に布団が敷かれ、シーツは、洗いたてのように真っ白だった。
気持ちいい。
「太陽だ」
布団も、干してくれたみたいで、枕から太陽の匂いがした。
何年ぶりだろ。
自然と顔が綻び、久々に、太陽の匂いに抱かれ、暖かい気持ちになり、いつの間にか、掛け布団の上で、寝てしまったが、空が明るくなって、目を覚ました。
0
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