頬を撫でる唇

咲 カヲル

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十三話

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さっきの光景が、目の前に写し出され、私は、パソコンに向かって、その光景を書いた。
文章をフォルダに保存すると、ドアがノックされる音が、部屋に響き、山崎さんが顔を覗かせた。

「行ってきますね」

「あ。じゃ見送りする」

椅子から立ち上がると、下腹部に強い痛みが走り、よろけると、山崎さんが、私の肩を抱いて、支えてくれた。

「無理しないで」

「大丈夫。ちょっと痛んだだけだから」

山崎さんの腕を掴んで、苦笑いして、視線を向けると、スーツを着てるのに気付いた。

「スーツなんて持ってたんだ」

「安物ですけどね」

山崎さんのスーツ姿を見下ろして、自然と、頬が緩み、ネクタイが曲がってることに、クスクスと笑った。

「曲がってる」

ネクタイを直してから見上げると、山崎さんの頬が、少し赤くなった。

「ありがとうございます」

「ネクタイくらいちゃんとしなよ」

「なんか新婚みたいで照れますね」

「ばか」

照れ笑いする山崎さんの肩を軽く叩くと、更に、新婚夫婦みたいで笑えてきた。
微笑み合い、手を繋いで仕事部屋を出て、玄関に向かい、革靴を履く山崎さんの背中を見つめた。
立ち上がり、私と向き合うように、立った山崎さんと微笑み合いながら、視線を合わせて言った。

「ぶつけないでね」

キーケースから車の鍵だけを外し、手のひらに乗せたると、山崎さんは、鍵を握り締めて、私を見つめて、嬉しそうに笑った。

「気を付けます。それじゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

見つめていた山崎さんの目が、淋しそうに少し細められ、首を傾げると、山崎さんの顔が近付いてきた。
山崎さんが、何をしたいのか分かった私は、少し体を屈めて、顔を差し出した。
目を閉じると、山崎さんの唇が、重なったのを静かに受け止めた。
音を発てずに、唇が離れ、目を開けると、目の前の山崎さんの瞳を見つめた。
優しく微笑むと、山崎さんも優しく微笑んで、顔を離して、背中を向けた。

「気を付けてね」

「はい。行ってきます」

「行ってらっしゃい」

微笑み合い、小さく手を振り、戸が締まるのを見つめ、そのまま、エンジン音が遠ざかるのを聞いた。
家の中に、一人になったのを実感し、そよ風の吹き抜ける音の中に、玄関先で、暫く、佇んでいた。
いつまでも玄関先にいても、仕方ないと思い、仕事部屋に向かおうと、後ろに向き直った。
その時、見計らったように、自宅電話が鳴り響いた。
足を止め、自宅電話を睨み付けて、溜め息をついてから、玄関先に戻り、受話器を持ち上げて耳に当てた。

「はい」

『マコトか?』

「清彦さん?ご無沙汰してます」

『元気だったか?』

「おかげさまで。清彦さんは、元気そうですね?」

『あぁ。おかげさまでな。今、大丈夫か?』

「はい。なんでしょうか?」

清彦さんが、黙ってしまい、私は、誰もいないのに首を傾げた。

『今、恋人はいるのか?』

恋人と言う単語に、脳裏にさっきまで、一緒にいた山崎さんが、浮かんできて、目を閉じた。

「…いえ。いません」

震えそうな声を抑え込み、そう答えると、清彦さんは、安心したような、納得したような、溜め息に近い、息を吐いた。

「それが、どうしましたか?」

『いや。何でもないんだ。ところで、もう食事は済ませたか?』

「いえ。まだですけど」

『なら、話でもしながら、ゆっくり食事しないか?』

「そうですね。いつにしますか?」

『今から』

「今からですか?」

『何か、問題あるか?』

「今、車がなくて」

『日和台(ヒヨリダイ)駅まで、出てこれないか?』

「日和台駅ですか」

『駅前なら、車がなくても大丈夫だろう?色々と店もあるから、どうだろうか?』

「そう…ですね。分かりました。何時くらいにしますか?」

『そうだな。八時でどうだろう?』

「分かりました」

『それじゃ、八時に改札前でな』

「はい」

『楽しみにしているよ』

「はい。それじゃ失礼します」

受話器を置いて、電話を切り、時計を確認し、すぐに洗面所に向かい、全身を洗った。
泡を洗い流しながら、膣から、液体を掻き出そうとして手を止めた。
全身を適当に拭き、寝室に行き、スラックスに淡い桃色のブラウスを着て、ショルダーバックを持った。
洗面所に戻り、髪を乾かしてから、仕事部屋に行って、ショルダーバックに財布と携帯を入れる。
ジャケットを着ようと思ったがやめて、マグカップを持って、リビングに向かった。
キッチンに入り、マグカップを洗いながら、時計を見て、まだ少し余裕があるのを確認した。
換気扇を回して、タバコを一本、取り出して、口にくわえ火を点けた。
白い煙を吐き出し、天井を見上げ、やっぱり口に苦味が残り、吸っていられない。
まだ長いタバコを灰皿で揉み消し、キッチンから出ると、山崎さんから借りたカーディガンを羽織った。
ショルダーバックを肩に掛け、玄関に向かい、下駄箱からローファーを取り出し、下駄箱の上に置いといたキーケースを持って、外に出た。
玄関の戸に鍵を掛け、駅に向かって、歩き出した。
目的の駅に着き、改札を出て、時間を確認すると、約束の八時より少し早かった。
私は、改札の前に立ち、うつ向きながら、清彦さんを待った。

「マコトーーー」

名前を呼ぶ声が聞こえ、顔を上げると、改札口から出てくる清彦さんが見え、小さく会釈した。
人混みの間を縫うようにして、進んで、私の前に立った清彦さんを見上げた。
白髪混じりの短髪が、初めて会った時から変わらないのに、自然と微笑んでいた。

「お久し振りです」

頭を下げると、清彦さんは、私の肩を叩いて、優しく微笑んで言った。

「本当に久々だね?元気だったか?って、さっきも聞いたね」

顔を上げ、クスクスと笑うと、清彦さんも苦笑いしながら、頭を掻いた。

「行こうか」

「はい」

少し先を歩く清彦さんを追うようにして歩き、流れる人混みに紛れた。

「マコト」

「はい」

「今日の食事に、僕の部下も来るから」

唐突に告げられた事に、立ち止まり、先を行く清彦さんの背中を見つめた。

「どうした?」

「なんで」

そう呟くと、清彦さんは、鼻で溜め息をついて、私に向き直った。

「どうして、言ってくれなかったんですか?」

「嫌がると思ったからだよ」

「分かってるなら、なんで」

「会わせたかったからだよ」

「なぜ、そんなに会わせたいんですか?」

「彼は、君のファンでね。僕の娘だと言ったんだが、それまでと態度が変わらなくてね。それで、君に会わせたいと思ったんだよ」

そう言われ、愕然とする私に清彦さんは、困ったような顔をして、隣に立ち、背中を優しく押した。

「大丈夫。彼は悪い奴じゃない」

促されるように歩くと、ちょっと洒落たレストランが見え、そのレストランの前に立つ、人影が見えた。

「僕は、貴美子(キミコ)のように、見合いだの、結婚だのは気にしないよ?」

隣に並ぶ清彦さんを見上げた。

「マコトは、マコトの人生を歩めばいい。でも、僕も、マコトには、幸せになって欲しいんだよ」

穏やかに微笑む清彦さんを見ていると、山崎さんの微笑む顔が浮かんだ。
皆、私を思ってくれてるから、こうして、色んな事を考えてくれてるんだ。
そう思うと、今回の清彦さんが、セッティングしてくれた機会を無駄にしてはならないと、小さく頷いて、レストランに向かって歩いた。

「やぁ。待たせたね」

清彦さんが、そう声を掛けると、立っていた人影が、こっちを見て、慌てて、頭を下げた。

「紹介するよ。僕の部下で、弘瀬新(ヒロセアラタ)くん。こっちが娘のマコト」

「初めまして。マコトです」

「初めまして。弘瀬です」

背が高く、タレ目で、優しそうな顔付き、好青年って言葉が、よく似合う男だった。

「とりあえず、入ろうか」

清彦さんに促され、私は、一番最後にレストランに入った。
ウェイターに案内され、丸テーブルを囲うように座り、手渡されたメニューを広げて、何にするか悩んだ。

「決まったかい?」

「僕は、日替わりのAセットにします」

「いいね。マコトは?」

「オムライスで」

穏やかに微笑んで、頷いた清彦が、片手を上げた。

「マコトさんは、小食なんですか?」

「いえ」

弘瀬さんに聞かれ、少しうつ向いて、答えると、ウェイターが近付く、靴音が聞こえた。

「お待たせしました」

顔を上げずにいると、その声が聞こえに、ゆっくり、顔を上げた。
そこに驚いた顔の山崎さんが、立っていた。

「注文、お願いします」

清彦さんにそう言われ、我に返り、視線を反らした。

「はい」

「日替わりのAセットを二つ、オムライス、あと赤ワインを三つ」

前掛けのポケットから、伝票とボールペンを取り出し、注文を書いて、山崎さんが繰り返した。

「お願いします」

「かしこまりました。ごゆっくりどうぞ」

山崎さんが去っていく靴音に、息を吐き出して、姿が消えたカウンターに視線を向けた。

「大丈夫ですか?」

「へ?」

声を掛けられ、顔を向けると、心配そうに、眉を八の字にした弘瀬さんの顔が見えた。

「何がですか?」

「顔が真っ赤です。体調、良くないんじゃ…」

「大丈夫です」

私がぎこちなく笑うと、弘瀬さんは、眉を八の字にしたままでいた。

「ところで、弘瀬くん。マコトに聞きたい事があったんじゃなかったけか?」

「聞きたい事?」

「あ!!はい。あの、明日は何処への続編は、書かれないんですか?」

「あれで、完結ですけど…ダメでしたか?」

「いえ!!とっっっても、素晴らしくて、素敵なお話です!!ただ、あの後、二人は、どうなったのかなと思いまして」

「弘瀬さんは、どうなったと思いますか?」

「僕は、彼女がデザイナーとして、認められて、日本に戻ってきて、彼と感動的な再会をして欲しいです」

「なら、それが続きです」

驚いた顔をした弘瀬さんに、私は、真面目な顔で見据えた。

「別れて終わったり、続きを思わせるような話は、続編が出版されない限り、続きなんて存在しません。読者の皆様が、想像したことが続きです」

納得するように頷く弘瀬さんを見て、清彦さんは、ニコニコと笑っていた。

「それだけですか?」

「趣味は?」

「…はい!?」

「あの…僕、マコトさんが書く小説が好きで、今まで出版された作品は、ほとんど買って、読破したんですけど、いつしか、著者のマコトさんに興味と言うか、どんな方なんだろうって、思いまして。ネットで、検索しても出てくるのは、結局、雑誌とかで見るような事ばっかりで。そんな時、マコトさんの小説を読んでたら、金山さんがお声を掛けて頂いて。あ。金山さんは、マコトさんの事じゃなくて、清彦さんの方でして」

頬を赤くしながら、必死に話す姿に私は、クスクスと笑ってしまい、弘瀬さんは、頭を掻いて、困った顔をした。

「お待たせしました。お先に、赤ワインになります」

山崎さんが、周りを回りながら、グラスに注がれたワインをそれぞれの手元に置き、一礼して、去っていった。
その背中に淋しさを覚え、私は、鼻で溜め息をついた。

「乾杯しようか?」

清彦さんにグラスを待って、そう言われ、私と弘瀬さんもグラスを持った。

「何もないけど。乾杯」

弘瀬さんは、苦笑い、私は、クスクスと笑って、グラスを小さく掲げてから、ワインを口に含んだ。
だが、それから、私は、グラスのワインに口を付けなかった。
口が渋い。
アルコールで、具合悪くなりそう。
どうしたんだろうか。
そう思っていると、弘瀬さんが眉を八の字にして、私を見つめていた。

「趣味と言える事はないんです。強いて言えば、読書くらいです」

苦笑いしながら、そう答えると、弘瀬さんの表情が晴れ、嬉しそうに笑った。

「そうなんですか。女性だから、てっきり、料理とか裁縫とか、そうゆうのかと思いました」

「いえ。そういった女性らしい事は、苦手なんです」

「そうなんですか?細かな部分も書かれているので、てっきり、お上手なのかと思いました」

「それは、知識だけなんです」

「そう言えば、弘瀬くんは、料理も裁縫も上手だったよね?」

急に会話に割り込むようにして、清彦さんにそう言われ、弘瀬さんは、顔を赤くした。

「あ…いや…その…学生の時から、好きだったんです。それで、上手くなっただけですよ」

「いいじゃないか。好きな事を続けるのは、難しいからね。なぁ?マコト」

「そ…ですね」

確かに難しい。
好きな事だからって、何か一つを続けられないのが、普通だと思う。
それが、仕事になれば、余計に難しい。
仕事だから、イヤになっても辞められない。
人を好きでいるのも同じくらい、難しいと思う。
永遠の愛を誓う。
永遠なんて、ありはしない。
早かれ遅かれ、いつかは死んでいく。
死ぬと決まってる時間の中に、永遠なんて存在しない。
それが、私の見解だった。
そして、人は、とても無力で儚いなのも知ってる。
必死に生きても、一人の力だけでは周りを変えられない。
自分を変える事しか出来ない。
変わろうと、必死になって生きても、些細な事で死んでしまう。
短いかもしれない時間の中で、人を好きでいるなんて、最後が苦しくて、哀しくて、空しくなるだけで、そう思うと、無力で、儚くて、自分がイヤになるだけだ。
笑い合って、話をしてる弘瀬さんと清彦さんを見つめながら、私は、頭の中は、そんな事を考えていた。

「お待たせしました」

不意に聞こえた声で、我に返ると、私の前に、オムライスが置かれた。
お皿を持っている手を伝い、見上げた先には、山崎さんが微笑んでいた。

「オムライスでございます」

ただ、貼り付けただけの微笑み。

「どうも」

軽く一礼して去っていく背中を見つめ、私は、作られた山崎さんの微笑みに、哀しみが沸き上がってくる。

「食べようか」

「はい!!美味(ウマ)そうですね?マコトさん」

「そ…ですね」

オムライスを口に入れた。

「美味い。なぁ?」

「はい。来てよかったですね?マコトさん」

「そうですね」

嘘だった。
本当は、味なんて分からなかった。
さっきの山崎さんの顔が、頭から離れなくて、哀しい気持ちが、私を支配して、味覚がおかしくなっていた。
誰かと一緒に食事をするのは、楽しくて、美味しいはずなのに、楽しくもなければ、美味しいと思わない。
それでも、清彦さんに悟られないように、とにかく、笑って、適当に話を合わせて、食事を終わらせると、早々にレストランを出る為に会計をした。

「ありがとうございました」

振り返り、作られた微笑みをした山崎さんを見て、レストランを出た。

「すっかり遅くなってしまいましたね」

「あぁ。早く帰らなきゃ、怒られてしまいそうだ」

「そうですね。マコトさん?」

私の脳裏から離れない山崎さんの笑みに、気持ちがついていかず、気付けば、うつ向いていた。

「マコト!!」

肩を揺らされ、我に返り、顔を上げると、眉を八の字にした弘瀬さんと首を傾げた清彦さんの顔が見え、私は、苦笑いした。

「すみません。何の話でしたか?」

「大丈夫か?」

私が首を傾げると、清彦さんの手が、オデコに触れて、熱を測るような仕草をした。

「熱はないみたいだな」

「大丈夫ですよ」

「本当ですか?どこか辛いんじゃないですか?」

「本当に大丈夫です」

「でも、半分も残してましたよね?」

「それは…あまり、口に合わなくて」

「あまり、無理するなよ?」

「はい」

ぎこちなく笑い、頷きながら、返事をして、清彦さんについて行くように、弘瀬さんと並んで駅に向かった。

「あの…よかったら、今度は、僕からお食事に誘ってもいいですか?」

「え…えぇ。もちろん」

弘瀬さんは、背中を向けて、小さく、ガッツポーズをした。
その背中に、私が、クスクス笑うと、弘瀬さんは、頬を赤くしながら、頭を掻いて、照れ笑いしていた。

「連絡先、教えてもらえませんか?」

「あ。はい。えっと…自宅電話で大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

弘瀬さんが、携帯を取り出すのを待ってから、自宅電話の番号を言うと、弘瀬さんは、携帯のアドレス帳に登録した。
清彦さんは、後ろを歩く私と弘瀬さんのやり取りに、顔だけ向けて、安心したように微笑んでいた。
駅に着き、券売機で切符を買って、改札の前で、待っている清彦さんと弘瀬さんの元に急いで戻った。
改札を通り抜けて、立ち止まり、向き直った清彦さんに、私は、頭を下げながら言った。

「ありがとうございました」

清彦さんの手に、ワシャワシャと、髪を乱しながら、頭を撫でられ、顔を上げた。
清彦さんは、照れたような、困ったような微笑みで、私を見ていた。

「親子なんだから、そんなかしこまらないで」

「すみません」

「僕も久々に楽しかったよ。今度は、家族で行こうな」

「そ…ですね。気が向いたら」

清彦さんが、鼻で溜め息をついて、私の頭から手を離し、後ろに立つ、弘瀬さんに視線を向けた。

「じゃ。あとは頼んだよ」

「はい」

弘瀬さんが、返事をすると、階段に向かいながら、手を振る清彦さんの背中に軽く会釈をした。
向かいのホームに見えた立ち姿を本当の父親のように思いながら、見つめていると、気付いた清彦さんが、小さく手を上げた。
そんな清彦さんに、私も、小さく手を振り返すと、アナウンスが流れ、清彦さんのホームに電車が停止した。
その電車に、乗り込んだ清彦さんの姿を目で、追うように見つめ、走り出した電車を見つめ続けた。

「弘瀬さんは、同じ電車ですか?」

「はい」

「そうですか」

弘瀬さんと並んで、電車を待ち、アナウンスが流れ、ホームに入ってきた電車に乗り込んだ。
隣駅で降りると、弘瀬さんも一緒に電車を降りた。
改札を通り抜け、弘瀬さんに向き直った私は、頭を下げながら言った。

「ありがとうございました」

そんな私を見下ろした弘瀬さんは、少し、強張った顔をしていた。

「送ります」

「いえ。そう遠くないので、一人で大丈夫です」

「ダメですよ!!こんな時間に一人で歩くなんて危ないです!!」

必死な弘瀬さんが、おかしくて、クスクスと笑うと、頬を赤くしながら、苦笑いする弘瀬さんが、本当に好青年なんだと思った。

「それじゃ。お願いします」

「はい」

嬉しそうに笑いながら、並んで、私の自宅に向かって、歩き出すと、弘瀬さんは、前を向いたまま、何かを言いたそうだった。

「どこにお住まいなんですか?」

言いたかった事を先に聞くと、驚いた顔のまま、ボーッとしながら、自分の住んでる場所を言った。
  
「桑原(クワハラ)です」

「すぐそこじゃないですか。いいんですか?」

「大丈夫です。マコトさんは、どちらなんですか?」

「すみません。言えないんです」

「え?あ!!そそうですよね。どこから情報が漏れるか、分かりませんもんね。すみません」

「いえ。私こそ、聞いておいて、すみません」

「いいんです。いいんです。僕が勝手に言っただけですから」

「私が、聞かれなければ、言わなかったんじゃないですか」

「そんなことは…その…あの…」

しどろもどろになって、言い淀む弘瀬さんが、おかしくて笑えてきて、クスクスと笑うと、弘瀬さんも困った顔をしながら、笑っていた。

「マコトさんは、おいくつなんですか?」

「今年で、二十八になります」

「そうなんですか。僕は、今年の七月で、二十九になるんです。誕生日は?」

「五月です」

「来月ですね。日にちは?」

「十日です」

「あと、二週間くらいなんですね」

「そうですね」

「因みに、僕は七夕です」

「七月七日ですか?」

「そうです。マコトさんの血液型は?」

「あの」

自宅近くで、私が立ち止まり、弘瀬さんに向き直って言った。

「誕生日も血液型も、ある程度の情報は、雑誌とかでも公表してますよ」

怪訝そうな顔で、そう言うと、弘瀬さんは、困った顔になって、頭を掻いた。

「すみません。雑誌とか、ネットの情報は、信用してないんです」

「どうしてですか?」

「でっちあげやデマが、ほとんどなので。信用出来ないんです」

「そうなんですか。それじゃ、私は、これで」

「あ。家の前まで送りますよ」

「大丈夫です。すぐそこなので。それじゃ。おやすみなさい」

頭を下げて、すぐに弘瀬さんに背中を向けて走り出した。
自宅の門を開けて、ショルダーバックから、キーケースを出して、玄関の戸を開けようとした。

「おかえり~」

声が聞こえ、急いで振り返ると、あの山崎さんが、殴った男が門の前に立っていた。

「やっぱり出掛けてたんだ」

「なんでいんのよ」

「今日は休みなんだよ。だから、センセと遊ぼうかと思って」

そう言った男に背中を向け、玄関の鍵を開けたが、中には入れなかった。

「いたっ!!何すんのよ!!」

いつの間にか、私のすぐ後ろにいたらしく、首根っこを掴まれ押されて、咄嗟に横を向くと、玄関の戸に頬を打ち付けた。

「酷いなぁ~。一緒に楽しもうよ」

「ひぃ!!」

私を首根っこを押さえたまま、男の唇が耳に寄せられ、耳裏を舌で、ベロっと舐められた。
気持ち悪い。
暴れて、玄関の戸が、ガタガタと揺れるが、男は気にしてなかった。

「オレ、結構上手いんだよ?」

「ざけんな!!離せ!!」

「わぁ~。センセって、結構、口悪いんだね。でもさ」

ブラウスの上から、脇腹を撫でるように触れながら、男に、耳元で囁くように話されて吐き気がした。
男の触れた所が、嫌悪感で鳥肌が立つ。
本当は、殴り飛ばしてやりたいが、首根っこを掴まれ、玄関の戸に押さえ付けれていて腕が回らない。

「いい加減に!!」

かかとで蹴ろうとした時、手が離れていき、首根っこを掴んでいた手の感覚が消えた。
怒声に似た男の声が聞こえたが、何を言ってるのかは、分からなかった。
首を擦りながら、振り返ると、弘瀬さんが、男の手首を掴んで、腕をねじ上げていた。

「離せ!!」

男を突き飛ばしながら、手首を離した弘瀬さんは、私に背を向けて、男と対立するように立った。

「なんだ。てめぇ」

黙ったまま、男を睨む弘瀬さんは、さっきまで、見ていた表情とは、違って凛々しくなっていた。
そんな弘瀬さんを睨んでいた男は、暫くして、ニヤリと笑い、スラックスのポケットに手を突っ込んで、ニヤニヤと笑いながら言った。

「なに?センセって、そっちの趣味もあるの?」

「…はぁ!?」

男が何を言いたいのか分からず、変な声を出した私を無視し、男は、前髪をかき上げて、弘瀬さんに言った。

「君もセンセに誘われたんだろ?確かに、センセって、節操ないって噂だけど。まさか、二人も相手しちゃうなんて、ホント、エロいよね。あ。オレ、本名、南山創一(ミナミヤマソウイチ)。よろしく」

差し出された手を無視して、弘瀬さんは、ずっと南山を睨んでた。
手を引っ込めて、ニヤニヤと笑いながら、近付こうとしたが、弘瀬さんが、南山の前に立ち阻止する。
南山が動けば、弘瀬さんも同じ方向に動き、それ以上、私に近付くことを絶対にさせなかった。

「なに?一人いじめ?ズルいでしょ?」

そう言って、南山は、肩を掴んで押し退けようとしたが、弘瀬さんは、肩を掴んだ手首を掴んで振り払った。
また、互いに睨み合っていたが、南山が、鼻で笑って背中を向けた。

「今日はもういいや。でも、センセ?」

南山は、肩越しに、横目で見た私に向かって、ニヤリと笑って言った。

「君は、きっと、オレの所に来る。絶対に」

捨て台詞のように、そう言って、南山が去っていった。
南山の姿が、見えなくなってから、弘瀬さんは、私の前に立ち、手を伸ばしてきた。
咄嗟に目を閉じると、手が頭に乗って、ぎこちなく撫でる感覚に、恐る恐る目を開けて、視線を上げた。

「もう怖くないですよ」

「…へ?」

「あんなのに襲われて、怖かったでしょ?でも、もう大丈夫です。僕がいますから」

「あの。そこまでしていただかなくても」

「僕が守りますから」

「だから、そんな風にしていただく、関係じゃないですから」

「好きです!!」

その言葉に私は、顔が熱くなった。
暗くても分かるくらい、赤くなってる。
でも、それに負けないくらい、弘瀬さんの顔も真っ赤だった。

「本を読んでいて、素敵な人だろうなって思ってたんだけど、今日、実際に会って、想像以上に素敵な人で、一目惚れしました」

「あの…私…その…」

嬉しいような、困ったような、感情が混ざり合い、なんて答えたらいいのか分からない。
何より、今の私の頭に浮かぶのは、山崎さんの微笑みだった。

「…ごめんなさい」

私の中に浮き上がる山崎さんの姿で、無意識に、謝罪の言葉が出た。
いつの間にか、足元に視線を落とし、前髪で顔を隠すと、弘瀬さんも、足元に視線を落とした。

「いえ。僕の方こそすみませんでした」

弘瀬さんの靴音が、遠ざかるのを聞いていて、不意に、すぐに門から出て叫んでいた。

「弘瀬さん!!」

振り返った弘瀬さんに近付き、顔を見上げて言った。

「友達では、ダメですか?」

弘瀬さんの顔が、驚きから徐々に喜びに変わって、私の手を握ると、目線の高さに合わせて腰を屈めた。

「喜んで!!よろしくお願いします!!」

「あの…手」

振り回すように、動かしていた手が、私の手を握っていたことに、初めて気付いたように、弘瀬さんは、顔を真っ赤にして手を離した。

「すみません!!」

焦ったように、頭を下げた弘瀬さんの姿に、クスクスと笑うと、弘瀬さんも頭を上げ、照れ笑いしながら、頭を掻いた。
その後、家の中に入るまで、弘瀬さんは、見送ってくれた。
靴を脱ぎ捨て、電気も点けずに、寝室に行き、着替えもせず、布団に倒れるようにうつ伏せに寝転んだ。
よかったのか。
別に私と山崎さんは、付き合ってる訳じゃない。
だから、弘瀬さんと友達になっても、何の問題もないはずなのに、罪悪感が私を支配している。
なんでなのか。
どうしてなのか。
頭の中が、グチャグチャだった。

「あーーーもう!!」

仰向けになって騒ぎ、暴れたい思いを押し込めて、腕で、目元を覆うと、微かに山崎さんの香りがした。
腕をよけると、香りが消えた。
天井に向かって、手を伸ばして、山崎さんから借りたカーディガンを着てる事を思い出した。
うつ伏せになり、枕を抱えるようにして、鼻を腕に押し付け、山崎さんの香りに埋もれた。

「山崎さん…」

目を閉じて、そう呟くと、私の背中に重みが掛かり、驚いて顔を上げると、後頭部に、ゴツンと何かがぶつかった。
その痛みに、ぶつかった後頭部を両手で覆い、ゆっくり顔を横に向け、肩越しに後ろに視線を向けた。

「急に頭上げないで下さいよ」

そこには、私の上に覆い被さるようにして、スーツ姿の山崎さんが、鼻を片手で覆っていた。

「なんでいんのよ」

「なんでって。もう十二時になりますよ?」

「うそ」

「そんなことに嘘つかないですから」

後頭部の手を離し、私は、ショルダーバックに手を伸ばし、携帯を取り出して時間を確認した。

「ホントだ」

携帯の時計は、夜の十二時少し前だった。

「こんな遅くまで、何してたんですか?」

「何って…なに?」

携帯を枕元に置いて、枕を抱えるようにして、私は、山崎さんから顔を隠した。

「若い男性を家に上げたり。一緒に楽しんじゃったり」

「いやいや。してないから。てか、今、帰ってきたばっかだし」

うつ伏せのまま、顔の横で、小さく手を振ると、そのまま枕の横に投げ出した。

「本当ですか?」

「だから、前に言ったじゃん。二時間くらいは掛かるって」

「そういえば、そうでしたね。でも、出掛けるなんて、聞いてないですよ?」

「だって、山崎さんがいなくなってから、連絡きたから」

「そうなんでしたか」

山崎さんは、無表情になり、自分の顔を覆ってい手を離して、馬乗りになると、上着を脱いで、ネクタイに手を掛けた。

「ちゃんと連絡先教えとけば、よかったですね」

「教えてくれなかったのは、そっちじゃん」

「聞かれませんでしたから。別にいいのかと思いまして」

「あの…何してんの?」

背中にのし掛かって、顔の横に山崎が顔を出すと、両手のひらを向かい合わせるようにして、私の手首を掴んだ。

「そこは、お互い様として。ずいぶん、楽しそうでしたね?」

「まぁ…そこそこ」

横目で山崎さんを見ると、あの貼り付けたような笑みのまま、手首をネクタイでキツく縛った。

「いった!!」

「へぇ~。そうなんだ」

山崎さんの手が、体を撫で下ろし、下腹部に無理矢理手を回すと、スラックスのボタンを外した。

「ちょ!!なに!?何すんの!!」

何も言わず、山崎さんの手が、脇腹を上り、胸を掴むと、強く握られ、痛みが走った。

「いっ!!ちょ…痛い」

体を起こされ、山崎さんの前に座り、股の間に縛られた手をぶら下げた。

「ちょっと…何し…いっ!!」

ブラウスの襟を顎でよけると、首筋に噛み付かれ、言葉が途切れた。
かなり強く噛まれ、痛みに体を捩らさせ、腰を浮かせて暴れたが、脇腹を抱えるように移動した手に、強く握られて、腰を下ろした。

「いっ!!痛いってば!!」

爪や歯が食い込み、痛みに暴れると、山崎さんの体が、後ろに傾き、バランスを崩した。
足を投げ出し、山崎さんに背中を預けた。
首筋から口が離れ、脇腹の手の力が抜け、痛みが緩んで体の強張りが解けた。
見上げると、微かに見える山崎さんの顔が涙で歪んでいた。
無表情の山崎さんに、私は、恐怖を覚え、背中に寒気が走った。

「やめて…」

震える声で訴えても、山崎さんは、無表情のまま、私の脇腹から片手を離し、スラックスの中に手を入れた。
内腿に触れると、爪を食い込ませるように、強く握った。

「ひぃた!!痛い!!痛い!!」

縛られた両手で、山崎さんのYシャツの袖を掴み、痛みに顔を振り回すと、溜まってた涙が周りに飛び散る。

「い…た…い…やめ…て…あ!!」

私の手を振り払い、両手で内腿を掴むと、股を広げながら、太ももを後ろに引かれた。
咄嗟に山崎さんの腕を離し、胸の前で敷き布団に手を着いたが、更に、足を引かれ、枕に顔を埋めるように倒された。
太ももを持ち上げられ、腰が上がると、スラックスと下着を一緒に脱がされた。

「やま…あぁーーーーーー!!」

腰を下ろす前に、お尻の方から、山崎さんの指が二本、一気に乾いた膣に押し込まれた。
膣が無理矢理、し広げられ、裂けるような痛みが、全身を走り抜け、叫びながら肩を震わせた。

「痛い!!いや!!やめ!!」

腕を伸ばし、上半身を起こして、髪の隙間から横目で見ると、山崎さんは、無表情のまま、私を見据えていた。

「抜いてよぉ…」

頬を涙が流れ落ちた。
痛む膣に入れられた指が、爪を立て、更に、強い痛みでお尻を上げた。
山崎さんの指から逃げようとしたが、片膝を掴まれ、横に倒れた。
食い込んだ爪が、膣の壁を引っ掻き、床に寝転ぶと、掴まれている片膝が、持ち上げられた。
大きく股を広げる形になり、恥ずかしさが込み上げ、足を閉じようとしたが、体を近付けられ出来なかった。
もうイヤだ。
無意識に、涙が溢れ出して、流れ落ちた。
強引でも優しかったのに、今は、怖いくらい無理矢理で、感情も体も意識も、全部投げ出したい。
苦しい。
空しい。
哀しい。
何より、無表情のまま見据えて、力任せに、私を振り回す山崎さんが怖い。

「や…も…やだ」

声を震わせながら、そう呟くと、膣に入れてる山崎さんの指が、奥まで押し込まれ、ツボに爪が食い込んだ。

「い!!あぁーーーーーー!!」

背中を反らし、天井に向かって、叫び、顔を左右に激しく振ると、山崎さんの爪が、ツボを引っ掻いた。

「痛い!!」

山崎さんの指から力が抜け、やっと、痛みから解放され、私は、縛られた手で涙を隠すように、眉間に両手の親指を着けた。

「家に入れた?」

「いれて…ない…」

「じゃ、ホテルにでも行った?」

「いって…ない…」

「じゃ、どうしてこんな遅くなったの?」

「はなし…しながら…えきからあるいたから…」

「へぇ~」

山崎さんの指に力が入り、内腿を掴んでる手と膣のツボに爪が食い込み、私は、痛みを堪えて、肩を震わせた。

「じゃぁ、なんでだろうね?あの人、嬉しそうに、ニヤニヤしながら歩いてたよ?」

「みな…みやまが…」

南山の名前を出すと、山崎さんの指から力が抜けた。

「なんで、アイツが出てくんの」

「みなみやま…に…まちぶせ…されて…」

「…はぁ!?」

「それで…げんかんさきで…おそわれそうになったのを…たすけてもらったの…それで…」

そこまで言って、私が黙ると、山崎さんは、溜め息をついて、膣から指を引き抜き、膝を掴んでた手を離しながら、私にのし掛かった。

「勢いで告白でもされた?」

私が、ゆっくり頷くと、山崎さんは、私に息が掛からないように、横を向き、また溜め息をついた。

「それで?どうしたの?」

「ことわ…った…」

山崎さんが、肘の間から顔を覗かせ、泣きそうにな私を見上げて、体に息を掛けるように、更に、溜め息をついた。

「それなら、落ち込むでしょ?相手を喜ばせるようなこと言ったんじゃないの?」

「たすけてもらったから…とも…だちに…って…」

ちょっと怒ったような顔をしたが、降参したように、鼻で溜め息をついて、体を滑り降りて、内腿に手を着いて、閉じ掛けていた股を広げた。

「な…に…すん…」

「お詫び」

山崎さんは、そう言うと、陰部に顔を寄せ、蕾を舌先で弾いた。

「はあ…あ…ぁ…い…ぃふ…ん…ふぅ…」

舌を押し付けるように舐められ、勃起し始めた蕾を吸われた。

「あぁ!!やん!!ぁ!!ん!!んん!!」

吸い付きながら、舌先で、蕾の先を撫でられ、腰を浮かせると、淡い痺れが、背中を掛け上がってくる。
内腿から、山崎さんの手が離れ、ベルトがはずれる音がして、布が擦れる音が聞こえた。
眉間に着けていた手を離し、見下ろすと、山崎さんは、スラックスと下着を脱ぎ捨てた。
山崎さんの手が、また内腿に置かれ、撫でるように動かされた。
蕾から膣の方に舌を滑らせ、膣の入口にあるヒダを一周するように、舐めると、舌を膣に押し入れた。

「あぁ…あ…ん…ふ…ぅん…んん…」

グチュグチュと、湿り始めた音がすると、ジュルジュルと、膣から溢れ出る液体を音をさせながら吸い出す。

「やめ…やめて…やま…ざぁ…あ!!」

内腿を撫でていた手が、太ももの付け根に移動し、指先で蕾を擦られ、背中を反らして、体を震わせた。

「あ!!あぁ!!あ!!い!!ん!!んん!!ふぁ!!」

膣から舌が抜け、蕾を舐め上げられた。
体が痺れ、体を捩ると、山崎さんの唇が離れ、私を真上から見下ろした。

「とって…」

ネクタイで、縛られた手首を山崎さんに見せると、山崎さんは、優しく微笑んだ。

「だめ」

山崎さんは、肉棒の頭を蕾に押し付け、擦るように左右に揺らした。

「ん…なん…でぇ…」

「お仕置き」

「なぁ!!あぁーーー!!あ!!あぁ!!」

肉棒が、一気に膣に押し込まれ、圧迫感に体が震えた。
肉棒が、膣の奥を突き上げられ、後頭部を床に擦り付けながら、背中を反らした。

「あぁーーー!!ぁふ!!ふん!!」

「男は、単純なんだから、些細なことで、期待するんだよ?」

腰を持ち上げ、肉棒を奥に打ち付けながら、そう言う山崎さんの声が、優しいのに怖い。

「断るなら、ちゃんと、断らなきゃ」

「ん!!ん!!んん!!」

背中を床に着け、喘ぎ声を殺しながら、何度も頷くと、腰を押し付けられ、肉棒が奥深くに突き刺さる。
腰から手を離し、また真上から見下ろす山崎さんは、意地悪な微笑みを作った。

「ボタン外して?」

「じぶんぁあーーー!!」

押し付けられた腰を左右に揺らし、蕾を擦りながら、肉棒を奥に突き立てられた。

「早く」

見つめる山崎さんのYシャツに腕を伸ばし、震える手で、ゆっくり、ボタンを外し始めた。

「あ!!ぃん!!」

半分まで外すと、山崎さんの肉棒が、膣の奥に、強く打ち付けられて、Yシャツを掴んで、背中を丸めた。

「うごか…ないで…よ…」

「早く脱ぎたいな」

明るく言った山崎さんは、意地悪に微笑んだまま、肉棒を奥に突き立てたまま、腰を左右に揺らした。

「ふ…く…ん…」

山崎さんが蕾を擦りながら、揺らす腰から、体を震わせながらも、必死になって、Yシャツのボタンを外した。
やっとの思いで、ボタンを外し終えると、口角を上げて笑った山崎さんは、上半身を起こして、私を見下ろした。
袖のボタンを外しながら、腰も動かされて、足裏で床を蹴って、背中を滑らせて、逃げようとした。
だが、肩を掴まれてしまい、逃げられなかった。
腰を前に出しながら、肩を押して、肉棒を奥に突き立てる。

「あぁあーーーーーー!!」

「逃げない」

Yシャツを脱がず、前をはだけさせたままの山崎さんの肉棒が膣を突き上げる。
自分でも、うるさいと思うくらいの大声で、顔を振り回しながら喘ぎ、足裏で床を擦った。
もう意識が飛びそう。

「ふぁ!!あぁ!!ぅ!!ん!!んん!!んぅ!!あ!!」

「熱い?」

喘ぎ声を抑えながら、頷くと、山崎さんの腰の動きが緩み、肩を掴んでた手が、私のブラウスのボタンを外し始めた。

「ちょっと邪魔」

胸の前に置いてた縛った手を持ち上げ、頭の上の床に押し付けた。

「このままね?」

小さく頷くと、山崎さんは、ニコニコと笑いながら、ブラウスのボタンを外した。
ブラのカップを下にずらし、露になった乳首の先っぽを指で撫でられ、背中を浮かせた。

「はあ!!ぁ…ん…んん…」

全身を駆け抜ける痺れと熱が、膣に集まり、疼きを大きくさせられ、足裏で床を擦り、縛られた手に拳を作った。

「あ!!あぁあーーーーーー!!」

乳首に吸い付き、舌先で先っぽを舐めながら、膣の奥に肉棒を突き上げられ、大きな口を開けて騒いだ。

「ひや!!ぁ!!あぁあ!!ぁふ!!ぅん!!んん!!んぁ!!あ!!あぁ!!ぃふ!!ん!!んん!!ぁ!!あ!!ぁん!!んーーー!!」

突き上げていた肉棒を止め、片手は、胸を掴み、乳首に吸い付きながら、もう片手は、乳首を指で挟んだ。
爪で先っぽをコリコリと軽く引っ掻かれ、腰を押し付けたまま、左右に揺らされた。
頭上で拳を作っていた腕を下ろそうとした時、肘を掴まれて押し上げられた。

「あ!!ぁ!!あぁ!!ん!!」

チュッと音をさせながら唇を離し、腕を自分の首に回させ、腰を抱いて、私の体を持ち上げた。
もう自分の欲に従順になった私は、目の前の唇に、唇を寄せたが、山崎さんは、顔を反らした。

「今はだめ」

そう言って、腰を前後に動かしながら、腰を引き寄せられ、ツボを肉棒で突き上げられた。
背中を反らすと、足に力が入り、床を蹴り、後ろに倒れそうになったが、首に回した腕で倒れなかった。

「あぁーーー!!あ!!ぁ!!ぁふ!!ぅん!!ん!!んん!!ぅ!!ふぁ!!あ!!あぁ!!あぁあ!!」

「これいい?」

熱と痺れで何も言えず、天井に向かって、騒ぐように喘ぐしか出来なかった。
腰を動かしながら、そう聞いた山崎さんは、唇を寄せ、何度も、頭の位置を変えながら、喉や鎖骨に吸い付いた。

「やま…」

「ん?」

「も…ほど…いてぇ…あ!!あぁーーー!!」

腰の動きを速め、突き上げる肉棒が、強くツボに突き立てられ、震えるしか出来なかった。

「言ったよ?だめって」

「ひぃ!!あ!!あぁ!!あぁあ!!あ!!ぁ!!ん!!あぁあーーー!!」

腰の動きが、また速くなり、膣が痙攣するように震えた。

「も!!ぁ!!むり!!イク!!あ!!あぁあーーーーーー!!」

山崎さんの顔が歪んで、腕を回した腰を強く引き寄せながら、強く打ち付ける。
肉棒が熱くなると、同調するように膣の熱も上がって腰が震えた。

「イク!!イク!!」

騒ぐ私を見上げながら山崎さんは、優しく微笑んで、顔を近付けた。

「射精(デ)るよ」

噛み付くように唇を重ねて、声が頭に響くと、山崎さんにしがみつき、膣に力を入れ、膣の奥に肉棒から溢れる液体を飲み込ませた。
山崎さんの肉棒が、上下に揺れるのが収まるまで、そのままでいた。
唇が離れてから、私は、山崎さんの首に回した自分の腕に頬を着けて寄り掛かった。
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