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高梨弘樹
【3】キス
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江梨子はオレの隣りに座って、黙って話を聞いてくれた。
途中から、慰めるように江梨子の右手はオレの背中を撫でた。
最後まで話し終わると、「美沙都はそのこと、知らないのね?」と聞いた。
「知らない。言えるはず、ないだろ。美沙都は、男はオレしか知らないんだ」
美沙都との交わりは、ごく普通だと思う。
美沙都は性的に淡泊だ。
自分から求めるようなことは一度もなかった。
オレが求めて拒んだこともないけど、積極的かと言えば、そうではない。
オレは美紗都とのごく当たり前の普通のセックスに満足しているし、美紗都もそうだと思う。
「じゃあ、あなた、美紗都と結婚してから、一度も浮気してないの?」
「浮気か…。いや、一度あったよ。会社の飲み会のあと、年下の同僚の女の子に誘われて…」
「それで?」
「3回くらい、寝たかな。部署が変わって顔を合わせなくなって、それっきりだ。熱烈に迫ってきたわりに、あっさりしていた」
多分、彼女はオレとのセックスが物足りなかったのだろう。
態度で、なんとなくそう思った。
それ以来オレは、会社の同僚や、仕事の付き合いで行く夜の店の女の子に、どんなに誘われても浮気はしていない。
見かけからオレは女好きで軽薄に見えるらしく、既婚者だとわかっていても誘ってくる女は大勢いた。
オレはそういう女たちを軽蔑した。
浮気をする女、人のものだと知りながら身体を求めてくる女は汚い。
勝手に期待して、がっかりされることにもうんざりだ。
「でもあなた、わたしがセカンドパートナーを提案したとき、随分、乗り気だったじゃない。なぜあのとき、断らなかったの?」
「それは…美紗都の手前もあって、見栄を張ったんだ。普通の男なら、あの場合、喜んで話にノルだろ?」
「呆れた。そんな見栄の張り方ってあるかしら。女は、きっぱり断ってくれたほうが、嬉しいものよ」
そうなんだろうか。オレは失敗したのか。
江梨子は、考え込んでしまったオレの顔を覗き込むように見て、妖艶に微笑んだ。
「いいわ、弘樹。わたしが、あなたに教えてあげる。セックスの愉しみ方を」
「なに…言ってるんだよ」
こんな煽情的な部屋にいて、セクシーで美しい女が手の届く距離にいても、オレはまったくその気になれない。
『弘樹とは感じない』
そう言われたことは、今でも心の深いところで傷になっている。
「大丈夫、わたしにまかせて」
江梨子は、オレの膝の上に乗ってきた。
両手で、オレの顔を挟む。
そうしながら、顔を近付けて、キスした。
美紗都とは違い、女の匂いがするキスだった。
途中から、慰めるように江梨子の右手はオレの背中を撫でた。
最後まで話し終わると、「美沙都はそのこと、知らないのね?」と聞いた。
「知らない。言えるはず、ないだろ。美沙都は、男はオレしか知らないんだ」
美沙都との交わりは、ごく普通だと思う。
美沙都は性的に淡泊だ。
自分から求めるようなことは一度もなかった。
オレが求めて拒んだこともないけど、積極的かと言えば、そうではない。
オレは美紗都とのごく当たり前の普通のセックスに満足しているし、美紗都もそうだと思う。
「じゃあ、あなた、美紗都と結婚してから、一度も浮気してないの?」
「浮気か…。いや、一度あったよ。会社の飲み会のあと、年下の同僚の女の子に誘われて…」
「それで?」
「3回くらい、寝たかな。部署が変わって顔を合わせなくなって、それっきりだ。熱烈に迫ってきたわりに、あっさりしていた」
多分、彼女はオレとのセックスが物足りなかったのだろう。
態度で、なんとなくそう思った。
それ以来オレは、会社の同僚や、仕事の付き合いで行く夜の店の女の子に、どんなに誘われても浮気はしていない。
見かけからオレは女好きで軽薄に見えるらしく、既婚者だとわかっていても誘ってくる女は大勢いた。
オレはそういう女たちを軽蔑した。
浮気をする女、人のものだと知りながら身体を求めてくる女は汚い。
勝手に期待して、がっかりされることにもうんざりだ。
「でもあなた、わたしがセカンドパートナーを提案したとき、随分、乗り気だったじゃない。なぜあのとき、断らなかったの?」
「それは…美紗都の手前もあって、見栄を張ったんだ。普通の男なら、あの場合、喜んで話にノルだろ?」
「呆れた。そんな見栄の張り方ってあるかしら。女は、きっぱり断ってくれたほうが、嬉しいものよ」
そうなんだろうか。オレは失敗したのか。
江梨子は、考え込んでしまったオレの顔を覗き込むように見て、妖艶に微笑んだ。
「いいわ、弘樹。わたしが、あなたに教えてあげる。セックスの愉しみ方を」
「なに…言ってるんだよ」
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「大丈夫、わたしにまかせて」
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美紗都とは違い、女の匂いがするキスだった。
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