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遊佐和也
【1】偽りの幸福
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軽井沢の別荘は、亡くなった父から贈与されたものだ。
建物は古いが、ログハウス風で洒落た外観と内装をしている。
わたしたち4人は、わたしの車で別荘までやってきた。
わたしが運転し、助手席には美沙都さんが座り、江梨子と高梨さんは後部座席に座った。
車内ではしゃいでいたのは江梨子一人だった。
わたしたちはこの異常なシチュエイションに戸惑っていた。
途中でスーパーに寄り、食材を買う。
真剣に吟味する江梨子は、ときどき、高梨さんに意見を求める。
車中では黙り込んでいた高梨さんが、おどけて何か言う江梨子に笑っていた。
華やかで明るい江梨子は人を楽しませることがうまい。
わたしと美沙都さんはその後ろをついて歩く。
まるで、本当に夫婦が変わってしまったような錯覚に陥る。
江梨子の夫が高梨さんで、わたしの妻が美沙都さん。
たぶん、周りにいる誰の目にもそう映っているのだろう。
別荘に着くと江梨子は張り切った。
「さあ、男性陣はリビングを掃除して、寝室と客間のベッドメイキング、あと浴室のお掃除もお願いね。わたしと美紗都は、晩ご飯を作りましょう」
山のような食材を、わたしと高梨さんに運ばせたあとは、キッチンからわたしたちを追い出した。
「美紗都、手伝ってね」
まるで仲の良い親友に向けるような笑顔で言う。
美紗都さんは、江梨子に圧倒されたように、「ええ」と返事をして従った。
江梨子に言われた掃除やベッドメイキングを終えて、リビングで寛いでいると、キッチンからは肉を焼く良い匂いと、女二人の声が聞こえて来た。
「江梨子がこんなに料理上手だなんて、知らなかったわ」
「専業主婦ですもの。教室にも通ったしね。でも結局、お料理はセンスよ」
「そうなのよね、わたしにはセンスがないの」
「本当ね、このサラダの盛り付けはないわ」
「ひどいわ、江梨子」
美紗都さんが声を出して笑っていた。
彼女も、江梨子の魔法にかかっている。
江梨子が作った、偽りの幸福な空間が整っていた。
建物は古いが、ログハウス風で洒落た外観と内装をしている。
わたしたち4人は、わたしの車で別荘までやってきた。
わたしが運転し、助手席には美沙都さんが座り、江梨子と高梨さんは後部座席に座った。
車内ではしゃいでいたのは江梨子一人だった。
わたしたちはこの異常なシチュエイションに戸惑っていた。
途中でスーパーに寄り、食材を買う。
真剣に吟味する江梨子は、ときどき、高梨さんに意見を求める。
車中では黙り込んでいた高梨さんが、おどけて何か言う江梨子に笑っていた。
華やかで明るい江梨子は人を楽しませることがうまい。
わたしと美沙都さんはその後ろをついて歩く。
まるで、本当に夫婦が変わってしまったような錯覚に陥る。
江梨子の夫が高梨さんで、わたしの妻が美沙都さん。
たぶん、周りにいる誰の目にもそう映っているのだろう。
別荘に着くと江梨子は張り切った。
「さあ、男性陣はリビングを掃除して、寝室と客間のベッドメイキング、あと浴室のお掃除もお願いね。わたしと美紗都は、晩ご飯を作りましょう」
山のような食材を、わたしと高梨さんに運ばせたあとは、キッチンからわたしたちを追い出した。
「美紗都、手伝ってね」
まるで仲の良い親友に向けるような笑顔で言う。
美紗都さんは、江梨子に圧倒されたように、「ええ」と返事をして従った。
江梨子に言われた掃除やベッドメイキングを終えて、リビングで寛いでいると、キッチンからは肉を焼く良い匂いと、女二人の声が聞こえて来た。
「江梨子がこんなに料理上手だなんて、知らなかったわ」
「専業主婦ですもの。教室にも通ったしね。でも結局、お料理はセンスよ」
「そうなのよね、わたしにはセンスがないの」
「本当ね、このサラダの盛り付けはないわ」
「ひどいわ、江梨子」
美紗都さんが声を出して笑っていた。
彼女も、江梨子の魔法にかかっている。
江梨子が作った、偽りの幸福な空間が整っていた。
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