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【第一章】シャングリラ
5.キッチン
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設備の整った明るいシステムキッチンに立ち、慣れない手つきで野菜を刻む。
真っ直ぐに下ろしたつもりの包丁の刃がわずかに斜めに滑って左指を掠った。
痛みよりも早く、鮮やかな赤い血がまな板の上に落ちるのを、妙に醒めた気持ちで見つめていた。
「真理」
背後で馨に呼ばれて、左手の人差し指を唇に挟み照れたように笑いながら振り向く。
「また、切っちゃった。ダメだな、オレ。いつまでたっても料理うまくなんない」
「いいのに、料理なんてしなくても。外に食べに行こう」
「でも、おまえだって外食ばかりじゃ飽きるだろ。上手くは作れないけど、たまにはオレだって…」
言いながら料理を再開すべく玉葱を手に取った真理から、馨はやんわりとそれを取り上げる。
「どうしても家庭料理が食べたいって言うなら、オレが作るよ」
「なに言ってんだよ、おまえは仕事で疲れてるんだからオレが…」
馨は流し台に両手をついて真理を台と自分の身体で挟んだ。
「君に怪我されるよりよっぽどマシだ。それに、オレは手料理が食べたくて真理と一緒に暮らしているわけじゃない」
背中に馨の体温を感じて、真理はそわそわする。
「この指の一本だってオレのものなんだから、君にだって好きにさせないよ」
甘い響きで耳元に吹き込み、馨は血の滲んだ真理の指を舐めた。
「あっ、…やだ馨、汚いから」
舌で真理の指や手の甲を愛撫しながら、馨の片方の腕はしっかり真理の腰を抱いている。
その手がエプロンの下に忍び込み、股間で猥褻な悪戯じみた動きをはじめる。
「馨!こんなとこでっ」
「真理、夫婦はね、どこで愛し合ってもいいことになってるんだ」
真理の抵抗をそんなふうに封じて、馨は両手で真理の身体を弄りながら、舌で耳の中を攻めた。
「それに、いつでもどこでもオレをその気にさせる君が悪い」
ああ、と真理は眩暈のような陶酔感に襲われる。
馨の声は甘すぎる。
脳髄を溶かし、身体の隅から隅までが奴隷のように馨の言葉に従順になる。
それを悔しいとは思わなかった。
行為の最中に馨は繰り返し「オレのもの」と囁く。
それは本当にそうなんだろうと真理は思う。
一度捨てた命を救ったのは馨だから、この身体も命も馨のものに違いない。
けれど心は…?
心は愛してはならない人を想い、出口のない昏い道をさ迷っている。
いつのまにかジーンズのフロントを寛げて侵入していた馨の指が、いいように真理の核心に触れ、いたぶっている。
馨の手の中で立ったまま痛いくらい感じていた。
「……あ…んっ!」
指が濡れはじめた先端を掠めるのと同時に、髪をかきあげられて耳の後ろにキスされ、真理は淫らな高い声をあげてしまう。
そこは昼間、不破に責められた秘密の場所だった。
「ここ、そんなに感じるところだったっけ」
笑いながら、愛撫を続けてくる馨に、今頃になって苦い後悔が胸に広がる。
『また会える?』
別れ際不破にそう聞かれて自分はなんて答えた?
どうして強く拒絶することが出来なかったのだろう。
こんなに馨は自分を愛してくれているのに。
「立てない?辛い?」
今にも崩れそうな真理の身体を支えながら馨は真理のジーンズと下着を足首まで下ろしてしまう。
剥き出しの白い尻をゆっくり撫でて、もったいぶったように指を蕾に近づける。
「…ここで、挿れてもいい?」
そっと握られているだけの前が張りつめて限界を迎えたくてムズムズしている。
真理はコクンと頷いて、流し台にしがみつくように前屈みになり、尻を突き出した。
キッチンにあったオリーブオイルで濡らした馨の指が侵入してきて、中を掻きまわす。
昼間の情事の火照りがかすかに残っているそこは過敏だった。
不破のもので満たされ擦られた内壁を、今、馨の指で犯されている。
「あっ!ああ!馨!…もう…も、許してっ」
許して。
なんて今の自分に相応しい言葉だろう。
許して。
流されるように、不破に抱かれてしまったことを。
出来るならすべてを告白して、そう許しを請いたい。
「気持ちよくなりたい?いいよ、自分でしても」
優しい声で「ほら」と真理の手をとって、滴に濡れている前に導いてやる。
自らを握らせた手の上に手を重ねてニ三度動かしてやると、真理は焦れたように自分で自分のペニスを激しく扱きはじめた。
「はっ…ん、…いい…いいよ…気持ちいいっ…んっ」
キッチンで立ったまま、後ろに指を挿れられ自分自身を追いつめる。
こんな淫らな自分を不破が知ったらどう思うだろう。
けれどそう思えば思うほど淫猥な気分が高まる。
「馨…挿れて…っ、馨ので…いかせてっ!大きいの、大きいのちょうだい…」
目尻に涙を溜めながら懇願する。
性の奴隷になることで、罰すればいい。
「真理…もっと乱れてもいいよ。オレの前で、本当の君を見せてごらん。君のことならすべて許してるから」
きつく瞳を閉じた瞬間に涙が頬を滑り落ちた。
自殺未遂のあとで心を閉ざした真理を、馨は肉体を解放させるという方法で救った。
快楽を与えて、乱れさせ、精神を解放させてやる。
苦しそうに白い精液を吐くたびに、真理は少しずつ救われた。
その後遺症のように真理は性に対して貪欲になったが、理由をわかっているから馨は寛容だし、今も同じように真理を抱く。
だから。
いくら、浅ましくはしたなく乱れても馨は罰さえ与えてくれない。
責めてくれれば何かが変わるかもしれないのに。
もう真理にはどうすることも出来ない。
運命という小舟に乗って、愛という嵐の中でただ流されている。
真っ直ぐに下ろしたつもりの包丁の刃がわずかに斜めに滑って左指を掠った。
痛みよりも早く、鮮やかな赤い血がまな板の上に落ちるのを、妙に醒めた気持ちで見つめていた。
「真理」
背後で馨に呼ばれて、左手の人差し指を唇に挟み照れたように笑いながら振り向く。
「また、切っちゃった。ダメだな、オレ。いつまでたっても料理うまくなんない」
「いいのに、料理なんてしなくても。外に食べに行こう」
「でも、おまえだって外食ばかりじゃ飽きるだろ。上手くは作れないけど、たまにはオレだって…」
言いながら料理を再開すべく玉葱を手に取った真理から、馨はやんわりとそれを取り上げる。
「どうしても家庭料理が食べたいって言うなら、オレが作るよ」
「なに言ってんだよ、おまえは仕事で疲れてるんだからオレが…」
馨は流し台に両手をついて真理を台と自分の身体で挟んだ。
「君に怪我されるよりよっぽどマシだ。それに、オレは手料理が食べたくて真理と一緒に暮らしているわけじゃない」
背中に馨の体温を感じて、真理はそわそわする。
「この指の一本だってオレのものなんだから、君にだって好きにさせないよ」
甘い響きで耳元に吹き込み、馨は血の滲んだ真理の指を舐めた。
「あっ、…やだ馨、汚いから」
舌で真理の指や手の甲を愛撫しながら、馨の片方の腕はしっかり真理の腰を抱いている。
その手がエプロンの下に忍び込み、股間で猥褻な悪戯じみた動きをはじめる。
「馨!こんなとこでっ」
「真理、夫婦はね、どこで愛し合ってもいいことになってるんだ」
真理の抵抗をそんなふうに封じて、馨は両手で真理の身体を弄りながら、舌で耳の中を攻めた。
「それに、いつでもどこでもオレをその気にさせる君が悪い」
ああ、と真理は眩暈のような陶酔感に襲われる。
馨の声は甘すぎる。
脳髄を溶かし、身体の隅から隅までが奴隷のように馨の言葉に従順になる。
それを悔しいとは思わなかった。
行為の最中に馨は繰り返し「オレのもの」と囁く。
それは本当にそうなんだろうと真理は思う。
一度捨てた命を救ったのは馨だから、この身体も命も馨のものに違いない。
けれど心は…?
心は愛してはならない人を想い、出口のない昏い道をさ迷っている。
いつのまにかジーンズのフロントを寛げて侵入していた馨の指が、いいように真理の核心に触れ、いたぶっている。
馨の手の中で立ったまま痛いくらい感じていた。
「……あ…んっ!」
指が濡れはじめた先端を掠めるのと同時に、髪をかきあげられて耳の後ろにキスされ、真理は淫らな高い声をあげてしまう。
そこは昼間、不破に責められた秘密の場所だった。
「ここ、そんなに感じるところだったっけ」
笑いながら、愛撫を続けてくる馨に、今頃になって苦い後悔が胸に広がる。
『また会える?』
別れ際不破にそう聞かれて自分はなんて答えた?
どうして強く拒絶することが出来なかったのだろう。
こんなに馨は自分を愛してくれているのに。
「立てない?辛い?」
今にも崩れそうな真理の身体を支えながら馨は真理のジーンズと下着を足首まで下ろしてしまう。
剥き出しの白い尻をゆっくり撫でて、もったいぶったように指を蕾に近づける。
「…ここで、挿れてもいい?」
そっと握られているだけの前が張りつめて限界を迎えたくてムズムズしている。
真理はコクンと頷いて、流し台にしがみつくように前屈みになり、尻を突き出した。
キッチンにあったオリーブオイルで濡らした馨の指が侵入してきて、中を掻きまわす。
昼間の情事の火照りがかすかに残っているそこは過敏だった。
不破のもので満たされ擦られた内壁を、今、馨の指で犯されている。
「あっ!ああ!馨!…もう…も、許してっ」
許して。
なんて今の自分に相応しい言葉だろう。
許して。
流されるように、不破に抱かれてしまったことを。
出来るならすべてを告白して、そう許しを請いたい。
「気持ちよくなりたい?いいよ、自分でしても」
優しい声で「ほら」と真理の手をとって、滴に濡れている前に導いてやる。
自らを握らせた手の上に手を重ねてニ三度動かしてやると、真理は焦れたように自分で自分のペニスを激しく扱きはじめた。
「はっ…ん、…いい…いいよ…気持ちいいっ…んっ」
キッチンで立ったまま、後ろに指を挿れられ自分自身を追いつめる。
こんな淫らな自分を不破が知ったらどう思うだろう。
けれどそう思えば思うほど淫猥な気分が高まる。
「馨…挿れて…っ、馨ので…いかせてっ!大きいの、大きいのちょうだい…」
目尻に涙を溜めながら懇願する。
性の奴隷になることで、罰すればいい。
「真理…もっと乱れてもいいよ。オレの前で、本当の君を見せてごらん。君のことならすべて許してるから」
きつく瞳を閉じた瞬間に涙が頬を滑り落ちた。
自殺未遂のあとで心を閉ざした真理を、馨は肉体を解放させるという方法で救った。
快楽を与えて、乱れさせ、精神を解放させてやる。
苦しそうに白い精液を吐くたびに、真理は少しずつ救われた。
その後遺症のように真理は性に対して貪欲になったが、理由をわかっているから馨は寛容だし、今も同じように真理を抱く。
だから。
いくら、浅ましくはしたなく乱れても馨は罰さえ与えてくれない。
責めてくれれば何かが変わるかもしれないのに。
もう真理にはどうすることも出来ない。
運命という小舟に乗って、愛という嵐の中でただ流されている。
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