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【第一章】シャングリラ
4.背徳という快楽
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「馨を…愛してるから」
真理に、それ以上言葉を許さないように、不破は真理を腕に強く抱きしめた。
「聞きたくない!」
「不破…」
「……抱きたい。おまえを抱きたい」
「…不破…」
自分は…。
不破に、抱かれたいのだろうか。
馨を裏切って、不破に抱かれるために、ここに来たのか。
違う、と自分自身に否定したかった。
それなのに抱きしめられた手で身体をまさぐられて、ほんの少しも抗うことが出来ない。
「ダメだ…、オレは、もう…」
突き離すことも逃げることも出来ないから、せめて言葉だけで抵抗する。
「言うなよ。何も言うな…」
不破の荒い息遣いに、激しく求められていることを感じて真理の身体にも火がついていく。
今、自分を抱きしめているのは、狂おしいほどに愛した男だ。
拒めるはずがない。
「不破…ダメ…だっ、…あ、あっ」
後ろから回された不破の指がシャツのボタンをひとつずつ外し、隙間から侵入した手で二つの胸の突起を刺激されて声が出てしまう。
「昔からここ、弱かったよね」
「やめて…オレには馨が…」
「言うなって」
優しく叱るように不破の唇がうなじを吸う。
シャツは肩から落された。
熱い吐息が耳の当たりを執拗に嬲り、首筋から、露になった肩口を辿る。
「あ…ぁっ、た、尊」
弛緩して力の入らなくなった身体を支えられずに真理の膝が崩れ、不破の両腕に支えられた。
腕の中でゆっくり真理の顔を上向かせて、二人は濡れきった視線を交わした。
見つめ合えば理性はあっけなく情熱に飲み込まれる。
罪の意識も良心の呵責も、もう二人を止めることは出来なかった。
「尊…」
何かを諦めたようにつぶやいて、真理は不破の首に腕を回してしがみつく。
二人の唇は引力に導かれるように正確に重なった。
「………はあ、…っん」
眠っていた記憶を呼び覚ますような激しい口づけに、どこか苦しげにも聞える喘ぎが重なった唇の端から漏れる。
離れていた『時間』という距離感は一瞬のうちになくなった。
唇を貪りながら、もつれるようにベッドに倒れ、慌しく上半身の服を脱いだ不破は真理の上に重なる。
その体温も匂いも懐かしくて胸がしめつけられる。
過去を取り戻すように激しく舌を絡ませ、不破は隆起した下半身を真理の腰に押しつけた。
自分を求める不破の熱さを感じて喜んでいる自分が、真理には悲しかった。
不破は自分でジーンズのファスナーを下げると、真理の手をとってその部分に導いた。
「おまえのこと想ってこうなったんだ」
「尊…」
不破に手首を握られたままアンダーウエアの上から膨らみを撫でていた真理の手は、不破の手が離れても動きをやめない。
布の上から形を確かめるように触れ、物足りなくなったようにその手は隙間から侵入し、不破の熱さに直に触れる。
指で感じる弾力だけではない、形も味もよく知っている、その部分に。
「ああ……」
不破のそれを探りながら、真理はまるで自分が触られているように甘い嬌声を上げた。
「真理…これが欲しい?」
「…ほ…欲しい…、尊…欲しい」
我慢が出来ない。
不破の不在だった時間、自分の中身は空っぽで、不破に満たされたいと渇望した。
今、それが手の届くところにある。
地獄に堕ちるとわかっていても、この欲望を止められない。
「欲しいよ……尊が」
本心を告白した瞬間に、懺悔のように涙がこめかみを滑り落ちた。
「真理、泣かないで」
「オレが…、おまえを信じて待てなかった…オレが悪いんだ」
「おまえは悪くない。自分を責めるな」
涙で濡れた真理の顔中に、不破のキスが降り注ぐ。
不破は、わかっていない。
こうして不破に抱かれることは馨を裏切るだけでなく、不破のことも裏切っている。
不破の愛を受け入れることは出来ないのに、こんなふうに愛に迷う自分を狡いと真理は思う。
どんなに激しく求め合ってもこの愛は一時の慰めにしかならず、どこにも行き場がなくて形も残らない。
それでも不破を確かめたいと思う。
今この瞬間に愛されたいと、望んでいる。
真理の手を握って、不破はその細い指を噛む。
他人のものを傷つけることで所有権を犯すように、痛いくらいのきついキスが真理の身体を苛む。
胸の突起を散々弄られながら、後ろを指で解されて、真理の身体はあっけないほど簡単に不破を受け入れる準備をする。
欲しくて欲しくてたまらないというように硬くなったペニスの先端からたっぷりと蜜を垂らし、後ろの孔は妖しく収縮して不破の指を締めつけた。
「…あぁ…いいっ…あっ、尊…もう、お願い…ちょうだい」
「いま、いくよ。おまえの中にいく」
見つめあい、視線でも求め合いながら身体を繋げた。
確かに覚えのある感覚に、真理のこめかみをまた新しい涙が跡を残す。
「相変わらず、きつくて、おまえの中、最高だよ、真理。とろけそう」
根元まで挿入してしばらくその状態を愉しんでから、不破はゆっくり腰を前後させた。
「やぁ…いやだ…尊…たける…」
「イイんだろ…こうされるの、好きだったよな。真理…」
少しづつ腰の動きを大きく、そして早くしていく不破に翻弄され、真理は我を忘れて乱れた。
「ああ!いい!あんっ!イク!尊!あぁぁぁ!」
自分を攻める不破に必死でしがみつきながら真理は、背徳という底知れない快楽の罠の中で昇りつめていった。
真理に、それ以上言葉を許さないように、不破は真理を腕に強く抱きしめた。
「聞きたくない!」
「不破…」
「……抱きたい。おまえを抱きたい」
「…不破…」
自分は…。
不破に、抱かれたいのだろうか。
馨を裏切って、不破に抱かれるために、ここに来たのか。
違う、と自分自身に否定したかった。
それなのに抱きしめられた手で身体をまさぐられて、ほんの少しも抗うことが出来ない。
「ダメだ…、オレは、もう…」
突き離すことも逃げることも出来ないから、せめて言葉だけで抵抗する。
「言うなよ。何も言うな…」
不破の荒い息遣いに、激しく求められていることを感じて真理の身体にも火がついていく。
今、自分を抱きしめているのは、狂おしいほどに愛した男だ。
拒めるはずがない。
「不破…ダメ…だっ、…あ、あっ」
後ろから回された不破の指がシャツのボタンをひとつずつ外し、隙間から侵入した手で二つの胸の突起を刺激されて声が出てしまう。
「昔からここ、弱かったよね」
「やめて…オレには馨が…」
「言うなって」
優しく叱るように不破の唇がうなじを吸う。
シャツは肩から落された。
熱い吐息が耳の当たりを執拗に嬲り、首筋から、露になった肩口を辿る。
「あ…ぁっ、た、尊」
弛緩して力の入らなくなった身体を支えられずに真理の膝が崩れ、不破の両腕に支えられた。
腕の中でゆっくり真理の顔を上向かせて、二人は濡れきった視線を交わした。
見つめ合えば理性はあっけなく情熱に飲み込まれる。
罪の意識も良心の呵責も、もう二人を止めることは出来なかった。
「尊…」
何かを諦めたようにつぶやいて、真理は不破の首に腕を回してしがみつく。
二人の唇は引力に導かれるように正確に重なった。
「………はあ、…っん」
眠っていた記憶を呼び覚ますような激しい口づけに、どこか苦しげにも聞える喘ぎが重なった唇の端から漏れる。
離れていた『時間』という距離感は一瞬のうちになくなった。
唇を貪りながら、もつれるようにベッドに倒れ、慌しく上半身の服を脱いだ不破は真理の上に重なる。
その体温も匂いも懐かしくて胸がしめつけられる。
過去を取り戻すように激しく舌を絡ませ、不破は隆起した下半身を真理の腰に押しつけた。
自分を求める不破の熱さを感じて喜んでいる自分が、真理には悲しかった。
不破は自分でジーンズのファスナーを下げると、真理の手をとってその部分に導いた。
「おまえのこと想ってこうなったんだ」
「尊…」
不破に手首を握られたままアンダーウエアの上から膨らみを撫でていた真理の手は、不破の手が離れても動きをやめない。
布の上から形を確かめるように触れ、物足りなくなったようにその手は隙間から侵入し、不破の熱さに直に触れる。
指で感じる弾力だけではない、形も味もよく知っている、その部分に。
「ああ……」
不破のそれを探りながら、真理はまるで自分が触られているように甘い嬌声を上げた。
「真理…これが欲しい?」
「…ほ…欲しい…、尊…欲しい」
我慢が出来ない。
不破の不在だった時間、自分の中身は空っぽで、不破に満たされたいと渇望した。
今、それが手の届くところにある。
地獄に堕ちるとわかっていても、この欲望を止められない。
「欲しいよ……尊が」
本心を告白した瞬間に、懺悔のように涙がこめかみを滑り落ちた。
「真理、泣かないで」
「オレが…、おまえを信じて待てなかった…オレが悪いんだ」
「おまえは悪くない。自分を責めるな」
涙で濡れた真理の顔中に、不破のキスが降り注ぐ。
不破は、わかっていない。
こうして不破に抱かれることは馨を裏切るだけでなく、不破のことも裏切っている。
不破の愛を受け入れることは出来ないのに、こんなふうに愛に迷う自分を狡いと真理は思う。
どんなに激しく求め合ってもこの愛は一時の慰めにしかならず、どこにも行き場がなくて形も残らない。
それでも不破を確かめたいと思う。
今この瞬間に愛されたいと、望んでいる。
真理の手を握って、不破はその細い指を噛む。
他人のものを傷つけることで所有権を犯すように、痛いくらいのきついキスが真理の身体を苛む。
胸の突起を散々弄られながら、後ろを指で解されて、真理の身体はあっけないほど簡単に不破を受け入れる準備をする。
欲しくて欲しくてたまらないというように硬くなったペニスの先端からたっぷりと蜜を垂らし、後ろの孔は妖しく収縮して不破の指を締めつけた。
「…あぁ…いいっ…あっ、尊…もう、お願い…ちょうだい」
「いま、いくよ。おまえの中にいく」
見つめあい、視線でも求め合いながら身体を繋げた。
確かに覚えのある感覚に、真理のこめかみをまた新しい涙が跡を残す。
「相変わらず、きつくて、おまえの中、最高だよ、真理。とろけそう」
根元まで挿入してしばらくその状態を愉しんでから、不破はゆっくり腰を前後させた。
「やぁ…いやだ…尊…たける…」
「イイんだろ…こうされるの、好きだったよな。真理…」
少しづつ腰の動きを大きく、そして早くしていく不破に翻弄され、真理は我を忘れて乱れた。
「ああ!いい!あんっ!イク!尊!あぁぁぁ!」
自分を攻める不破に必死でしがみつきながら真理は、背徳という底知れない快楽の罠の中で昇りつめていった。
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