HEAVENーヘヴンー

フジキフジコ

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【第一章】シャングリラ

7.白昼堂々

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「ごめん、オレ、馨に…」
不破の腕から逃れるようにして、今まで寄せ合った顔を背けて言う。
「…馨?」
出来れば不破の前で馨のことは言いたくなかった。
口にすることで自分の気持ちが不破を傷つけていることを痛感する。
手から落ちた荷物を拾うために腰を屈めると、頭上から不破の静かな声が聞えた。

「そっか、そうだよな。そうじゃなきゃ、こんなとこでおまえに会うはずないよな…。オレ、自分に都合のいいこと考えていた」
はっとして見上げると、いつもの不破らしくない表情を浮かべていた。
「でも、もしかしたらオレに会うかもしれないって、思わなかった?」
「え…?」

その言葉に真理は戸惑った。
不破に会うなんて思ってもみなかったと言いきれるだろうか。
心のどこかで、偶然を装って、馨を理由に、白昼堂々と不破に会えるかもしれない。
見かけるだけかもしれない。
それでも真理には充分だった。
不破が一番輝いている場所で、生き生きとしている姿が見られるなら。
そう思い、思うことだけでもどんなに酷いことか、分かっているから気がつかない振りをしていたのかもしれない。
真理は自分の中にある無邪気な残酷さを思い知る。

「思ったろ?」
不破は真理を腕に囲う。
「尊…だめ、だめだ」
「なにが駄目なんだ?こうなることを少しも考えてなかったって、言える?」
真理はぎゅっと不破の服を掴んだ。
この気持ちを認めてはいけないと分かっていながら、止める術を知らない。
気持ちにブレーキをかければかけるほど、身体は互いを求めて引き合うように反応する。

「…尊…お願いだから」
馨が待っているから、離して。
言葉にならない真理の願いに応えることはなく、不破の指は服の上から細い身体を撫でる。

「真理、愛してる」
耳元で囁かれる求愛の言葉が、切なくて涙が流れる。
不破はその涙を唇で拭うとやさしく唇を重ねてきた。
鼻先を合わせて視線を交わすと、不破も泣きそうな顔をしていた。
「尊…、たける…たける…」
壊れた機械のように、真理は不破の名前を呼んだ。
傷ついているのは自分だけではない。
不破もまた、求めながら傷ついているのだ。

真理は、なにかを諦めたように、不破の背中に腕を回した。
深く深く唇を合わせながら、二人はずるずると床の上に座り込んだ。
壁に持たれて足を投げ出して座り込んだ不破は、自分の太腿の上を跨がせて向かい合う格好で真理を乗せ、髪をかきあげながら首筋に舌を這わせる。

「ああ…あっ!やあ」
真理は深く甘い吐息を漏らした。
不破の唇は真理の仰け反った喉を滑り落ち、鎖骨を齧った。
啄ばむように与えられる愛撫に身を捩りながら、真理は出口のない甘い渦の中に身を投じた。

薄い扉の向こう側を歩く足音が響く。
いつ誰が不破を呼びに来てもおかしくはない。
もしかしたら、馨もドアの向こうを通るかもしれない。
禁じられたシチュエイションのせいか、真理の身体はいつもより敏感になっていた。

「何も考えるな、オレのことだけ、感じて」
不破は真理の意識を自分に向けさせると、シャツの裾から忍ばせた手で、胸の突起をいたぶる。
服を脱ぐことができないことがもどかしいけれど、見えない分、愛撫を与えられる真理の身体は余計に感じて、不破の足の上で切なく身悶えた。
「あっ…あっ…ん!」

「真理、下だけ脱げる?」
言われた通り、真理はジーンズとアンダーウェアを脱いで、下半身だけを露出させた格好で、再び、不破を跨いだ。
シャツの裾からは、硬く反り勃った性器が丸見えになっている。
不破の方は、ジーンスのフロントを寛げて、性器だけを取り出した。
「オレのも硬くなってる。真理が欲しくて、ほらこんなに」
真理の手を導いて自身を握らせ、不破の手は真理の果実を握った。
お互いの快楽を刺激しながら、深い口付けに溺れる。
飲み込めない唾液が唇の端から零れおちるような、淫らな口付けだった。

「…ああ、真理、気持ちいいよ。おまえの中に入りたい。だめ?」
そう言われて、真理は表情を曇らせる。
自分だって、中に不破を感じたい。
身体はすでに、熱い肉の杭が欲しくて、疼いてしかたない。

「だけど…時間が…」
時間もないし、準備も出来ない。うまく、繋がれるかわからない。
「ごめん、我慢できない…」
そう言うと、不破はまだ慣らしてもいない真理の蕾にペニスの先端を擦りつけた。
「あっ!尊!そんなことっ…あん!」
先走りの露で濡れた不破のペニスは、真理の固い入口を蕩けさせていく。
「ほら、開いていく。真理のここ、ヒクヒクしてる。…挿りそうだよ…オレの、挿っちゃうよ、真理の中に」
「ああ!尊!尊!いや、だめ!」
準備の足りない状態で、大きなペニスを受け入れるのは怖いし、痛みもある。
それなのに、痛みを凌駕するほどの快感が背筋を這う。
全身が痺れるほどに感じている。
「ああっ…中に、尊が…挿ってく…んっ、あん、熱い…んっ」

「うん、全部挿ったよ。すげえ、気持ちいい、真理に抱きしめらてるみたい」
不破は肉の締め付けを、真理は深い充足感を、互いに感じて甘苦しい息を吐く。
けれどこれだけではイケない、まだ、満足出来ない。
もっと、深い快楽がある。二人なら、味わえる。

「…ねえ真理、動いて、自分で気持ちよくなって」
目と目を合わせて、不破が言う。
愛しい人のおねだり。
拒否することなど、考えられない。
真理は従順に頷くと、尊の首に両手を回して、腰を動かした。
はじめはゆっくりと上下に、そして前後に、大きく回すように。
「…いっ…イイ…、尊のが…んっ、イイところに、当たるっ…当たってる…」
不破は目を細めて、満足そうに淫らなダンスを眺めている。

「すげえ、奇麗だ。真理…」
やがて不破が真理の奥ではじけると、真理も触れられてもいないペニスから白い液を迸らせた。
下肢を繋いだまま、ぐったりと不破の胸にもたれかかり、乱れた呼吸を整える。
頭の中は真っ白だった。
ふと、床に投げ出された馨の忘れものが目に入った。

真理はゆっくり、目を閉じた。
己の罪深さに、目を瞑るように。


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