HEAVENーヘヴンー

フジキフジコ

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【第二章】エデンの果実

5.海の見える部屋

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「ほら、真理見て。天気のいい日には窓から東京湾が見えるんだ」
お互いの都合がなかなか合わずに、久し振りの逢瀬だった。

人目を避けてホテルの地下駐車場で真理を待っていた不破は、そのまま真理を車に乗せて移動した。
都心から少し離れたベイエリアの新築のマンションに着いて、真理の手の中に小さな銀色の鍵を握らせ「プレゼント」と言って笑った。

「いつもホテルばかりで会ってると、なんか後ろめたい気持ちばかりが増幅するだろ?だから」
二人のために借りたんだ、と言う。

二人の生活レベルにしてみれば、決して広いとは言えない2DKのマンションは、不破が揃えたのか電化製品や生活用品も揃っていて、そのまま新婚夫婦が住めそうな感じだった。

パステルグリーンのカーテンの明るさに、真理は目を細める。
確かに、再会してからはホテルでばかりで会っていた。
ホテルの部屋の高級だが味気無いカーテンが脳裏に浮んで、不破がどんな気持ちでこれを選んだのだろうかと思って、胸に甘い切なさが広がる。

「だけど、こんな部屋借りて、おまえ大丈夫なの」
その表情から、真理が杏理のことを心配してることがわかって、不破は動揺した。

「馬鹿だな、気にすんなよ、そんなこと」
そう言って、後ろから抱き締めてくる。
「不破……」
不破の腕の中で真理は、杏理と会った、二週間前のことを思い出していた。



***



それは、馨に連れていかれたパーティのあった、翌日だった。
不意に杏理が、自宅に真理を訪ねてきた。
久しぶりに顔を合わせた妹は、早々に用件を切り出した。

「尊との結婚、決まったわ。明日、マスコミに発表する」
挑むような視線で慶事を告げた妹を、真理はまるで心配するような眼差しで見つめた。
「驚かないのね。やっぱり、尊から聞いてるんだ」
そう言って、一旦言葉を切ったあと杏理は「偽装ってことも」と、付け足した。

「杏理、どうしてそんなことをするんだ」
労わるように聞いた真理に、杏理は大きなため息を返した。
「理由も尊から聞いてるんでしょう。言いたくないけど、真理が有沢さんと男同士で結婚して、家は大変だったの。お父さんは後援会の人たちから猛抗議を受けて、市議会議員を辞めることになったわ。その後継に秘書の小田が決まったのよ。水波の基盤を存続させるために、私を小田と結婚させたいの」
それは事実であったとしても、杏理が偽装結婚を選んだ理由にはならない。

「どうして、不破を選んだ」
心を決めたように、真理は本当に聞きたかったことを、問いかけた。
「そんなこと決まってる、尊を、愛しているからよ」
そうではないかと思っていた通りのことを杏理の口から言われて、真理はショックを隠し切れなかった。
「不破は…不破も、おまえを、愛しているのか」

そう聞く真理を、杏理は醒めた目で、見つめる。
「尊が愛しているのは、昔から今でも、真理よ。そのことは、わかってるの。でも、真理は尊を裏切って、有沢さんと一緒になったんでしょう。尊ね、とても傷ついていたのよ。だから私が、慰めてあげたいと思ったの。それって、いけないこと?」
「杏理……」
「大丈夫、真理は心配しないで。私が、尊を立ち直らせてみせるから」
昔と変わらない、肉親の情のこもった笑顔を見せてそう言ったあとで、杏理は表情を一変させて、挑戦的に言い放った。
「兄さん、尊は私を抱くわよ。必ずね」



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