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【第二章】エデンの果実
10.身体の隙間
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「ん……」
ベッドの上で馨と抱き合うのは久し振りにもかかわらず、真理はその滑らかな愛撫にぎこちなく応えることしか出来なかった。
「気が乗らない?いいよ、無理しなくて」
「違う…なんか、緊張して…」
「今夜はやめようか」
「でも…いまやめたら、おまえ、ツライだろ」
半分勃ちかけた馨の分身をつかむと、真理はためらわずに口に含んだ。
馨の指が真理の髪を優しく撫でる。
それが無理しなくていいんだよと言ってるようで、真理は反対にムキにならずにいられなかった。
「う…んっ……」
馨を昂ぶらせようとして必死で舌を使っているのは自分なのに、だんだんと容量を増していくそれに口を犯されているような気分になる。
唇で味わう快感を思い出した真理は、知らないうちにシーツに押し付けた腰を揺らしていた。
それに気づいて馨は真理の身体を起して自分の膝の上に座らせる。
「解すから、腰少しあげてね」
言われた通り、ベッドヘッドに持たれて座っている馨の足を跨いでしゃがみ、馨の肩に手を置いく。
オイルで濡らした馨の指が、真理の後ろの入口を突く。
指が1本から2本、3本に増やされていくたび、真理の開いた唇から溢れる甘い嬌声が大きくなる。
「…ああ…ん、馨…そこ、気持ち…いい」
馨の指がイイところに当たるように、自ら腰を前後に揺らす。
指で内側を擦られるだけでも充分に気持ちがいいけれど、奥が物足りなくなってくる。
「もう…欲しい…ちょうだい…」
「そのまま、腰を下して、挿れられる?」
真理は言われたまま自分から馨を受け入れるため、腰を落とし、起立した馨のものを自分のそこにあてがう。
「……はっ…うっ」
熱く濡れた先端が触れただけで、背筋に甘い期待が走る。
馨の首に腕を回して、視線を合わせながらゆっくりと身体を沈めた。
少しずつ、自分の中に馨のペニスが入っていく感触を愉しむ。
「…あっ…はぁ…」
何度味わっても、この感覚は麻薬のように身体を、心を、蕩けさせる。
「…ん、挿った…」
肉体の欠けてる部分を埋めてくれるような充足感は、それが馨のものだからだろうか。
それとも、この身体の隙間を埋めてくれるものならなんでもいいのだろうか。
愛なんて、この快感の前で綺麗ないい訳に過ぎないのかもしれない。
自分はきっと、淫乱なだけだ。
「大丈夫?」
真理の目尻に浮かんだ涙を唇で舐めて、顔が言った。
コクンと頷いて、自分から馨の唇にキスする。
舌を絡めあいながら、腰を振っているうちに、頭の中は真っ白になった。
慣れ過ぎた快楽を貪ったあと、馨の腕に抱かれてまどろんでいたとき、突然馨が言った。
「ねえ真理、一緒にフランスに行かない?」
「……え?」
馨が何を言ってるのか、瞬間には理解さえ出来なかった。
「なに、言ってるの」
「実は、日仏合同の映画のオファーがあるんだ。撮影はほとんどパリの郊外でおこなわれるんだ。半年以上かかると思うし、真理に一緒に行って欲しい」
そのとき真理の頭に浮んだのは、どうして、という疑問でも日本を離れる心配でもなく、ましてや頭を悩ませているいたずら電話のことでもなかった。
真理を愛してるというもう一人の男、不破の顔だった。
***
静まり返った部屋のなかで無機質な電話のベルが鳴る。
寝室に置いている子機の方は真理が充電を切ったのか鳴らず、細い音はリビングから聞えた。
馨にはそれがいたずらだとわかっていたが、放っておくわけにもいかなかった。
隣で寝ている真理を起さないようにそっとベッドを出る。
けたたましく鳴り続ける電話を見下ろして、馨は昼間会った彼女のことを思い出していた。
テレビ局で一緒になった彼女は、幸せいっぱいのはずなのにどこか疲れた表情をしていた。
それが気になって、仕事が片付いたら食事に行こうかと誘うつもりだった。
仕事を終え、控え室から出ると彼女の姿は薄暗い廊下で見つけることが出来た。
不思議なことに彼女は、携帯を耳に当てたまま、電話をかけては切るという動作を繰り返していた。
まるでいたずら電話をかけてるみたいだと馨は不審に思った。
そのときはそれよりも彼女の暗く、どこか思いつめたような表情が心配になって深く考えなかった。
馨はタイミングを計って、彼女が携帯をバックに入れたときに声をかけた。
「…有沢さん」
杏理は驚いているというより、まるで動揺しているようだった。
「年末にパーティ会場で会って以来だね。髪、切ったんだ」
馨が知る限り、杏理はずっとロングヘアーだった。
艶のある綺麗な髪で、最近では人気メーカーのシャンプーのコマーシャルに出ていた。
それが今は見間違えるほど短い。
正面で対峙すると、真理にそっくりだった。
「ええ…気分転換に」
「でも杏理、シャンプーのCMやってただろう。いいの」
杏理は「降ろされちゃった」と苦笑いした。
それから少し世間話をして食事に誘ったが、「尊が待っているから、早く帰ってあげないと」と言って、立ち去った。
言葉ほど幸せそうには見えず、馨には痛々しい笑顔に見えた。
目の前の電話は一度切れて、またすぐに鳴り出した。
今度は馨はすぐに電話をとった。
そして相手が切る前に口を開いた。
「杏理?」
電話の向こうでかすかに息を飲む気配がして、馨は静かに受話器を置いた。
しばらくその場で待ったが、電話はかかってこなかった。
携帯の留守電もファックスも、すべて杏理がやったことだとは思いたくない。
どうして杏理がこんなことをするのか、その理由がわかるようでわからなかった。
しかしすぐに分からない振りをしようとしている自分に気付いて苦い思いが込み上げる。
ギシッと音を立ててベッドに潜り込むと、真理がすぐに擦り寄ってきた。
「………イタ電?」
「違うよ。だけど、もうかかってこないから…安心しておやすみ」
寝ぼけた目にそっとキスをすると、甘えたように真理が抱きついてきた。
その細い身体を抱きしめかえして、馨もゆっくり瞼を閉じた。
真理を連れて日本を離れることは、自分だけでなく、杏理や、真理にとってもいいことに違いない。
そうじゃない。
自分にとって都合がいいだけだ。
エゴだ、ということはわかっている。
けれどどんな手段を使っても、真理を守りたいと馨は思う。
真理と、自分の生活を。
神経質な真理に外国の生活は辛いだろう。
そう思って一度は断ろうとしたその仕事を、受けることを馨は決心した。
ベッドの上で馨と抱き合うのは久し振りにもかかわらず、真理はその滑らかな愛撫にぎこちなく応えることしか出来なかった。
「気が乗らない?いいよ、無理しなくて」
「違う…なんか、緊張して…」
「今夜はやめようか」
「でも…いまやめたら、おまえ、ツライだろ」
半分勃ちかけた馨の分身をつかむと、真理はためらわずに口に含んだ。
馨の指が真理の髪を優しく撫でる。
それが無理しなくていいんだよと言ってるようで、真理は反対にムキにならずにいられなかった。
「う…んっ……」
馨を昂ぶらせようとして必死で舌を使っているのは自分なのに、だんだんと容量を増していくそれに口を犯されているような気分になる。
唇で味わう快感を思い出した真理は、知らないうちにシーツに押し付けた腰を揺らしていた。
それに気づいて馨は真理の身体を起して自分の膝の上に座らせる。
「解すから、腰少しあげてね」
言われた通り、ベッドヘッドに持たれて座っている馨の足を跨いでしゃがみ、馨の肩に手を置いく。
オイルで濡らした馨の指が、真理の後ろの入口を突く。
指が1本から2本、3本に増やされていくたび、真理の開いた唇から溢れる甘い嬌声が大きくなる。
「…ああ…ん、馨…そこ、気持ち…いい」
馨の指がイイところに当たるように、自ら腰を前後に揺らす。
指で内側を擦られるだけでも充分に気持ちがいいけれど、奥が物足りなくなってくる。
「もう…欲しい…ちょうだい…」
「そのまま、腰を下して、挿れられる?」
真理は言われたまま自分から馨を受け入れるため、腰を落とし、起立した馨のものを自分のそこにあてがう。
「……はっ…うっ」
熱く濡れた先端が触れただけで、背筋に甘い期待が走る。
馨の首に腕を回して、視線を合わせながらゆっくりと身体を沈めた。
少しずつ、自分の中に馨のペニスが入っていく感触を愉しむ。
「…あっ…はぁ…」
何度味わっても、この感覚は麻薬のように身体を、心を、蕩けさせる。
「…ん、挿った…」
肉体の欠けてる部分を埋めてくれるような充足感は、それが馨のものだからだろうか。
それとも、この身体の隙間を埋めてくれるものならなんでもいいのだろうか。
愛なんて、この快感の前で綺麗ないい訳に過ぎないのかもしれない。
自分はきっと、淫乱なだけだ。
「大丈夫?」
真理の目尻に浮かんだ涙を唇で舐めて、顔が言った。
コクンと頷いて、自分から馨の唇にキスする。
舌を絡めあいながら、腰を振っているうちに、頭の中は真っ白になった。
慣れ過ぎた快楽を貪ったあと、馨の腕に抱かれてまどろんでいたとき、突然馨が言った。
「ねえ真理、一緒にフランスに行かない?」
「……え?」
馨が何を言ってるのか、瞬間には理解さえ出来なかった。
「なに、言ってるの」
「実は、日仏合同の映画のオファーがあるんだ。撮影はほとんどパリの郊外でおこなわれるんだ。半年以上かかると思うし、真理に一緒に行って欲しい」
そのとき真理の頭に浮んだのは、どうして、という疑問でも日本を離れる心配でもなく、ましてや頭を悩ませているいたずら電話のことでもなかった。
真理を愛してるというもう一人の男、不破の顔だった。
***
静まり返った部屋のなかで無機質な電話のベルが鳴る。
寝室に置いている子機の方は真理が充電を切ったのか鳴らず、細い音はリビングから聞えた。
馨にはそれがいたずらだとわかっていたが、放っておくわけにもいかなかった。
隣で寝ている真理を起さないようにそっとベッドを出る。
けたたましく鳴り続ける電話を見下ろして、馨は昼間会った彼女のことを思い出していた。
テレビ局で一緒になった彼女は、幸せいっぱいのはずなのにどこか疲れた表情をしていた。
それが気になって、仕事が片付いたら食事に行こうかと誘うつもりだった。
仕事を終え、控え室から出ると彼女の姿は薄暗い廊下で見つけることが出来た。
不思議なことに彼女は、携帯を耳に当てたまま、電話をかけては切るという動作を繰り返していた。
まるでいたずら電話をかけてるみたいだと馨は不審に思った。
そのときはそれよりも彼女の暗く、どこか思いつめたような表情が心配になって深く考えなかった。
馨はタイミングを計って、彼女が携帯をバックに入れたときに声をかけた。
「…有沢さん」
杏理は驚いているというより、まるで動揺しているようだった。
「年末にパーティ会場で会って以来だね。髪、切ったんだ」
馨が知る限り、杏理はずっとロングヘアーだった。
艶のある綺麗な髪で、最近では人気メーカーのシャンプーのコマーシャルに出ていた。
それが今は見間違えるほど短い。
正面で対峙すると、真理にそっくりだった。
「ええ…気分転換に」
「でも杏理、シャンプーのCMやってただろう。いいの」
杏理は「降ろされちゃった」と苦笑いした。
それから少し世間話をして食事に誘ったが、「尊が待っているから、早く帰ってあげないと」と言って、立ち去った。
言葉ほど幸せそうには見えず、馨には痛々しい笑顔に見えた。
目の前の電話は一度切れて、またすぐに鳴り出した。
今度は馨はすぐに電話をとった。
そして相手が切る前に口を開いた。
「杏理?」
電話の向こうでかすかに息を飲む気配がして、馨は静かに受話器を置いた。
しばらくその場で待ったが、電話はかかってこなかった。
携帯の留守電もファックスも、すべて杏理がやったことだとは思いたくない。
どうして杏理がこんなことをするのか、その理由がわかるようでわからなかった。
しかしすぐに分からない振りをしようとしている自分に気付いて苦い思いが込み上げる。
ギシッと音を立ててベッドに潜り込むと、真理がすぐに擦り寄ってきた。
「………イタ電?」
「違うよ。だけど、もうかかってこないから…安心しておやすみ」
寝ぼけた目にそっとキスをすると、甘えたように真理が抱きついてきた。
その細い身体を抱きしめかえして、馨もゆっくり瞼を閉じた。
真理を連れて日本を離れることは、自分だけでなく、杏理や、真理にとってもいいことに違いない。
そうじゃない。
自分にとって都合がいいだけだ。
エゴだ、ということはわかっている。
けれどどんな手段を使っても、真理を守りたいと馨は思う。
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