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【第二章】エデンの果実
11.選択の期限
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「フランス、か…」
不破の匂いのするベッドにうずくまりながら、真理は馨とのここ数日の話し合いを反芻していた。
「ここに残って、待ってるよ。オレ、言葉も喋れないし」
真理は建前を本音にして必死で説得したが、馨はがんとして一緒に行くと言い張った。
「真理を一人日本に残しておくほうが心配だよ。例えばまたイタ電とかあったらどうするの。誰が君を守るの」
馨の言う通りだった。
不破が杏理と一緒になってしまった今、真理には本当の意味で頼れるのは馨しかいない。
「真理…一緒に行こう。いいね」
日本に残りたい理由も底をつき、もはや真理は嫌だとは言えなかった。
いつでも真理の気持ちを最優先してくれた馨の、いつになく断定的な決め方も気になった。
なぜだろう、と思う。
何度も感じた疑惑、もしかしたら馨は自分の裏切りを知っているのかもしれないと考えて、真理はとうとう同行することを決めた。
「……わかったよ」
「よかった。ちゃんと安心して暮らせるように準備するから、心配しないで」
「うん…」
フランス行きが決まってすぐ不破に会いたいと連絡をしたものの、お互いに都合がつかずなかなか会うことが出来なかった。
いたずら電話の一件以来、真理のことを心配してなのか、馨は仕事を早めに切り上げて帰ってくるので、外出も自由に出来ない。
フランスへ旅立つ日は目前に迫っていて真理は焦っていた。
早く不破に会って、事情を話さなければ。
一生会えなくなるわけではないけど、きっとこのことは二人にとってターニングポイントになる。
そしてやっと出来た逢瀬の約束。
ベッドに寝転んで真理は考えていた。
もしも、もしも不破が行くなと言ったら…自分はどうするのだろう、と。
馨か、不破か、選択しなければならないのだろうか。
そのとき自分は、どちらを選ぶのか。
***
マンションの入口を出て、車に乗ろうとしていたところで思いがけない人間に出くわして不破は驚く。
「大輔…」
不破と杏理の偽装結婚を反対していた大輔は、あれほど杏理と仲が良かったにもかかわらず二人の新居を訪ねてきたことはなかった。
「杏理なら、部屋にいるよ」
「っていうか、不破君に話があったんだ。杏理のいないところで」
「オレに?悪い、今度にして。今ちょっと急いで…」
「真理君に会いに行くの?」
「……おまえ」
不破は態度を決めかねて、じっと大輔を見つめたあと、諦めたように空を仰いだ。
「なにが目的」
「別に目的なんかないよ。杏理を傷つけないで欲しいだけ」
「大輔…」
そのことに反論の余地はなかった。
ただ真理を愛しているという事実だけで、他の人間を傷つけ裏切っているのは真実だ。
責められても、言い訳の言葉も出ない。
「とにかく今日は杏理の側にいてあげてよ。最近杏理の様子がおかしいことにも、不破君、気付いてないでしょ」
「杏理が?」
「すごく、おかしいよ。多分、軽いノイローゼだと思う」
そう言われても、多少元気がないという認識しかない不破は首を傾げる。
「少しでも心配なら戻ってあげて」
「…わかったよ」
大輔の真意はわからなかったが、仕方なく不破は今出たマンションの中を戻っていく。
今日も、真理に会えない。
エレベーターの中で不破は爪を噛んだ。
こんなに愛しているのに、ただ会うことさえも出来ない。
もう、このままではいられない。
状況を変える勇気が必要だった。
不破の匂いのするベッドにうずくまりながら、真理は馨とのここ数日の話し合いを反芻していた。
「ここに残って、待ってるよ。オレ、言葉も喋れないし」
真理は建前を本音にして必死で説得したが、馨はがんとして一緒に行くと言い張った。
「真理を一人日本に残しておくほうが心配だよ。例えばまたイタ電とかあったらどうするの。誰が君を守るの」
馨の言う通りだった。
不破が杏理と一緒になってしまった今、真理には本当の意味で頼れるのは馨しかいない。
「真理…一緒に行こう。いいね」
日本に残りたい理由も底をつき、もはや真理は嫌だとは言えなかった。
いつでも真理の気持ちを最優先してくれた馨の、いつになく断定的な決め方も気になった。
なぜだろう、と思う。
何度も感じた疑惑、もしかしたら馨は自分の裏切りを知っているのかもしれないと考えて、真理はとうとう同行することを決めた。
「……わかったよ」
「よかった。ちゃんと安心して暮らせるように準備するから、心配しないで」
「うん…」
フランス行きが決まってすぐ不破に会いたいと連絡をしたものの、お互いに都合がつかずなかなか会うことが出来なかった。
いたずら電話の一件以来、真理のことを心配してなのか、馨は仕事を早めに切り上げて帰ってくるので、外出も自由に出来ない。
フランスへ旅立つ日は目前に迫っていて真理は焦っていた。
早く不破に会って、事情を話さなければ。
一生会えなくなるわけではないけど、きっとこのことは二人にとってターニングポイントになる。
そしてやっと出来た逢瀬の約束。
ベッドに寝転んで真理は考えていた。
もしも、もしも不破が行くなと言ったら…自分はどうするのだろう、と。
馨か、不破か、選択しなければならないのだろうか。
そのとき自分は、どちらを選ぶのか。
***
マンションの入口を出て、車に乗ろうとしていたところで思いがけない人間に出くわして不破は驚く。
「大輔…」
不破と杏理の偽装結婚を反対していた大輔は、あれほど杏理と仲が良かったにもかかわらず二人の新居を訪ねてきたことはなかった。
「杏理なら、部屋にいるよ」
「っていうか、不破君に話があったんだ。杏理のいないところで」
「オレに?悪い、今度にして。今ちょっと急いで…」
「真理君に会いに行くの?」
「……おまえ」
不破は態度を決めかねて、じっと大輔を見つめたあと、諦めたように空を仰いだ。
「なにが目的」
「別に目的なんかないよ。杏理を傷つけないで欲しいだけ」
「大輔…」
そのことに反論の余地はなかった。
ただ真理を愛しているという事実だけで、他の人間を傷つけ裏切っているのは真実だ。
責められても、言い訳の言葉も出ない。
「とにかく今日は杏理の側にいてあげてよ。最近杏理の様子がおかしいことにも、不破君、気付いてないでしょ」
「杏理が?」
「すごく、おかしいよ。多分、軽いノイローゼだと思う」
そう言われても、多少元気がないという認識しかない不破は首を傾げる。
「少しでも心配なら戻ってあげて」
「…わかったよ」
大輔の真意はわからなかったが、仕方なく不破は今出たマンションの中を戻っていく。
今日も、真理に会えない。
エレベーターの中で不破は爪を噛んだ。
こんなに愛しているのに、ただ会うことさえも出来ない。
もう、このままではいられない。
状況を変える勇気が必要だった。
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