チェリークール

フジキフジコ

文字の大きさ
16 / 105
本編

16.【精神科医】青山覚再び②

しおりを挟む
映画館を出たときよりもぐったりしている晶を担ぐようにしてホテルに入り、部屋をとって二人でバスに浸かった。

適温のお湯に浸かっているうちに晶は元気と正気を取り戻し、まだ奥が満たされていないことを色っぽい目線で覚に訴えてくる。

「なあ、覚…」
「分かってるよ。僕だって、晶の中に挿れたい」

ストレートな覚の言葉にウレシそうに笑い、バスの中で覚の膝の上に乗って唇を重ねてきた。

舌を使わないフレンチキスを何度もしながら、少しづつ身体の隙間を埋めていく。

お湯の中でぴったりと身体をつけて抱き合うと、二人の身体の間に隙間がなくなったような一体感と安心感があって、いつまでもこうしていたいと思う。
けれど触れ合った二人の下半身は昂ぶり、もっと確かな快感を求めていた。

バスを出て清潔で心地の良いバスタオルで急いでお互いの身体を拭き合った。

バスルームでの戯れで二人のそれはすっかり昂ぶっていたので、お互いに「硬いね」と言いながら握りあってクスクス笑う。

裸のまま抱き合ってベッドに倒れるとスプリングで身体が弾んだ。
腕を背中に回して抱き合って、脚を絡ませながら舌を使った本格的なキスを交わす。

身体中に触れ合って、シックスナインで互いのものを口に含んで愛撫し合う。

恋愛感情の伴わない、与えるのでも奪うのでもないフィフティフィフティのこんなセックスを晶は単純に楽しいと思う。

余計なことは考えなくてもよくて、頭も心も空っぽにして気持ち良さだけを追求できる。

「晶の身体ってね、抱き心地がいいんだ」
「どうせオレは小せえよっ」
「違うよ、サイズのことじゃない。匂いも肌の感触も、敏感なところも最高。君を抱くと、雅治が妬ましくなる」
「雅治に聞かせてやりてえな、そのセリフ」
「嘘、困るくせに」

晶の臍の上で覚は笑って、「くすぐったい」と言って晶も笑う。
それから「早く早く」と覚を急かすように抱き合ったまま回転して、晶は自分が上になった。

すっかり熱く熟れた内部は覚を難なく奥まで飲み込む。

「……うっ…あ…ん…すごい…あっ…奥まで、感じる…」

覚の胸に両手をついて、うっとりと瞼を閉じ、綺麗な喉を逸らして、やっと満たされた快楽を味わっている。

「ああ…ん、気持ちいい…」
「もっと気持ちよくなりたい?」

恍惚とした表情で晶は頷いた。
覚がゆっくりと下から突き上げるように腰を動かす。
応えるように、晶も同じリズムを刻みはじめ、二人は、同じところを目指して昇りつめた。

はぁはぁという荒い呼吸を、晶は覚の胸の上に重なって整える。
満足そうに「気持ち良かった」と呟くけれど、声にいつもの元気と強気が足りない気がした。
晶の様子がいつもと違うことを察しながら、覚は黙って、ただ慰めるように晶の髪を撫でた。

「なあ、覚、オトコって手に入れた相手には興味がなくなるのかな、やっぱり」

珍しく何を悩んでいるのかと思えばそんなことかと、思う。

「そんなこと、悩んでるの。晶らしくないね」
「別に悩んでいるワケじゃねーよ、ただちょっと」

ただ、ちょっと不安に思うこともある。

ガラじゃないと覚に笑われるのを承知で言ってしまったことを後悔しているのか、それともこれ以上は喋らないという意思表示なのか、晶は覚の胸から下りて背中を向けた。
その拗ねた仕草にも可愛げがある。
さすがの覚もこんな晶には優しくしてあげたいと思ってしまう。

「晶、君は、大丈夫だから自分に自信持っていいよ」
背中からそっと抱きしめて耳元でそう言うと、
「ばーか、当たり前だろ。雅治はオレにメロメロなんだから」
弱気な声で強気なことを言った。
「みんな、君に夢中だよ」

晶の身体を抱きしめながら、本当に可哀想なのは、他の男を想い憂う晶を慰めている自分ではないかと、覚はふと思った。

高校時代、雅治が晶と付き合いはじめて3ケ月ほど立った頃、覚はやっかみ半分で雅治に言ったことがある。
「名取晶は尻が軽い。多分、僕が誘っても靡くよ」と。
意外にも雅治は「かもな」と言って笑った。
「いいの?」
「晶はさ、すごい情熱で向かってくるんだ。他のことは何も考えてないようなエネルギーで。それに応えるのは難しいと思わないか。男は恋愛だけにかまけてられないだろ。でも晶にはそれが通用しそうにない。だから、自分が応えてやれない部分を、ゆあいつが他に求めてもしょうがない」
覚は雅治のそのセリフに仰天した。

みんなから崇め奉られる生徒会長が、実はその爽やかで高潔な見かけほどには誠実ではないと、知っていたからだ。

それまでの雅治の女の子との付き合い方は、いつも強引で自己中心的だった。
告白して来た女の子と付き合ったことはなく、自分から気に入った子としか付き合わない。
告白して交際してもらっているわりに、恋人の行動には口煩く制限をする。
夜遅くまで出歩くな、派手な服を着るな、自分以外の男と口を聞くなと、ありえない要求で縛る。

それでも女の子たちは「雅治の恋人」という地位を守りたいために努力する。
傍から見れば大層健気に見えるが、雅治にとってはそんな努力は評価の対照にはならない。
時期が来れば「楽しかったよ」とお別れのキスひとつで精算されてしまうのだ。
普通の男なら刺し殺されているところだが、それで誰からも恨みを買わないのだから、さすが、と言っていいのかどうか。

そんな男が、最近付き合いはじめた同性の恋人には浮気を容認するようなことを言う。
もしかして雅治は本気じゃないのかもしれない、と覚は思った。
雅治は本気で名取晶を好きになったのではなく、物珍しさだけで付き合っているのだろうと。

「雅治の言葉とは思えない殊勝なセリフだね。じゃあ、遠慮なく味見させてもらおうかなあ」
「ただし」
陽気な声で、雅治は覚を呼びとめた。

「晶を泣かせたら、覚、おまえでも許さない。晶の嫌がることもするな。身体を傷つけるのもNGだ。オレが許さないっていうのは、どういう意味かわかるよな」
雅治に逆らって酷い目に合った人間を何人も知っているので覚は頷いた。

「それにオレは聖人君子じゃない。オレの知らないところで起こることには目をつむれても、誰かがオレの目の前で晶にちょっかいを出すのは、やっぱり気分がよくないんじゃないかな。そう言えばこの前、部室で晶にキスしていた不届き者の後輩がいて、危うくあの世に送りそうになったよ。あはははは」
名取晶に手を出すのは、相当リスクが高いと、覚は理解した。

晶は、あの雅治を、本気にさせた、多分、唯一の人間だ。
晶はそのことを知らない。
わざわざ教えてやるほど親切ではないので、覚はただ抱きしめた身体を慰めるように撫でる。

「…晶、ね、もういっかい、しよっか」
後ろ向きのまま晶がコクンと頷いた。
身体ならいくらでも慰めてあげる。
淫らな身体と正反対の純真な心を、慰めることは出来ないけれど。

雅治、この貸しは高くつくからね。
覚は、晶を寂しくさせているオトコに向かって、胸の中で苦々しく呟いた。










To be continued➡




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

FBI連邦捜査官: The guard FBI連邦捜査官シリーズ Ⅲ

蒼月さわ
BL
脅迫状が届いたニューヨーク市長を護衛するためFBIから派遣された3人の捜査官たちの活躍を書いた表題作他、表向きは犬猿の仲、けれど裏では極秘に付きあっているクールで美形な金髪碧眼のエリート系×ジョーク好きな男前のセクシィ天然イタリア系の二人を中心とした本編「FBI連邦捜査官シリーズ」の番外編や登場人物たちの短いエピソードなど。 以前にアルファさんで連載していたアメリカを舞台に事件を捜査する連邦捜査官たちの物語です。 表紙イラストは長月京子様です。

処理中です...