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本編
16.【精神科医】青山覚再び②
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映画館を出たときよりもぐったりしている晶を担ぐようにしてホテルに入り、部屋をとって二人でバスに浸かった。
適温のお湯に浸かっているうちに晶は元気と正気を取り戻し、まだ奥が満たされていないことを色っぽい目線で覚に訴えてくる。
「なあ、覚…」
「分かってるよ。僕だって、晶の中に挿れたい」
ストレートな覚の言葉にウレシそうに笑い、バスの中で覚の膝の上に乗って唇を重ねてきた。
舌を使わないフレンチキスを何度もしながら、少しづつ身体の隙間を埋めていく。
お湯の中でぴったりと身体をつけて抱き合うと、二人の身体の間に隙間がなくなったような一体感と安心感があって、いつまでもこうしていたいと思う。
けれど触れ合った二人の下半身は昂ぶり、もっと確かな快感を求めていた。
バスを出て清潔で心地の良いバスタオルで急いでお互いの身体を拭き合った。
バスルームでの戯れで二人のそれはすっかり昂ぶっていたので、お互いに「硬いね」と言いながら握りあってクスクス笑う。
裸のまま抱き合ってベッドに倒れるとスプリングで身体が弾んだ。
腕を背中に回して抱き合って、脚を絡ませながら舌を使った本格的なキスを交わす。
身体中に触れ合って、シックスナインで互いのものを口に含んで愛撫し合う。
恋愛感情の伴わない、与えるのでも奪うのでもないフィフティフィフティのこんなセックスを晶は単純に楽しいと思う。
余計なことは考えなくてもよくて、頭も心も空っぽにして気持ち良さだけを追求できる。
「晶の身体ってね、抱き心地がいいんだ」
「どうせオレは小せえよっ」
「違うよ、サイズのことじゃない。匂いも肌の感触も、敏感なところも最高。君を抱くと、雅治が妬ましくなる」
「雅治に聞かせてやりてえな、そのセリフ」
「嘘、困るくせに」
晶の臍の上で覚は笑って、「くすぐったい」と言って晶も笑う。
それから「早く早く」と覚を急かすように抱き合ったまま回転して、晶は自分が上になった。
すっかり熱く熟れた内部は覚を難なく奥まで飲み込む。
「……うっ…あ…ん…すごい…あっ…奥まで、感じる…」
覚の胸に両手をついて、うっとりと瞼を閉じ、綺麗な喉を逸らして、やっと満たされた快楽を味わっている。
「ああ…ん、気持ちいい…」
「もっと気持ちよくなりたい?」
恍惚とした表情で晶は頷いた。
覚がゆっくりと下から突き上げるように腰を動かす。
応えるように、晶も同じリズムを刻みはじめ、二人は、同じところを目指して昇りつめた。
はぁはぁという荒い呼吸を、晶は覚の胸の上に重なって整える。
満足そうに「気持ち良かった」と呟くけれど、声にいつもの元気と強気が足りない気がした。
晶の様子がいつもと違うことを察しながら、覚は黙って、ただ慰めるように晶の髪を撫でた。
「なあ、覚、オトコって手に入れた相手には興味がなくなるのかな、やっぱり」
珍しく何を悩んでいるのかと思えばそんなことかと、思う。
「そんなこと、悩んでるの。晶らしくないね」
「別に悩んでいるワケじゃねーよ、ただちょっと」
ただ、ちょっと不安に思うこともある。
ガラじゃないと覚に笑われるのを承知で言ってしまったことを後悔しているのか、それともこれ以上は喋らないという意思表示なのか、晶は覚の胸から下りて背中を向けた。
その拗ねた仕草にも可愛げがある。
さすがの覚もこんな晶には優しくしてあげたいと思ってしまう。
「晶、君は、大丈夫だから自分に自信持っていいよ」
背中からそっと抱きしめて耳元でそう言うと、
「ばーか、当たり前だろ。雅治はオレにメロメロなんだから」
弱気な声で強気なことを言った。
「みんな、君に夢中だよ」
晶の身体を抱きしめながら、本当に可哀想なのは、他の男を想い憂う晶を慰めている自分ではないかと、覚はふと思った。
高校時代、雅治が晶と付き合いはじめて3ケ月ほど立った頃、覚はやっかみ半分で雅治に言ったことがある。
「名取晶は尻が軽い。多分、僕が誘っても靡くよ」と。
意外にも雅治は「かもな」と言って笑った。
「いいの?」
「晶はさ、すごい情熱で向かってくるんだ。他のことは何も考えてないようなエネルギーで。それに応えるのは難しいと思わないか。男は恋愛だけにかまけてられないだろ。でも晶にはそれが通用しそうにない。だから、自分が応えてやれない部分を、ゆあいつが他に求めてもしょうがない」
覚は雅治のそのセリフに仰天した。
みんなから崇め奉られる生徒会長が、実はその爽やかで高潔な見かけほどには誠実ではないと、知っていたからだ。
それまでの雅治の女の子との付き合い方は、いつも強引で自己中心的だった。
告白して来た女の子と付き合ったことはなく、自分から気に入った子としか付き合わない。
告白して交際してもらっているわりに、恋人の行動には口煩く制限をする。
夜遅くまで出歩くな、派手な服を着るな、自分以外の男と口を聞くなと、ありえない要求で縛る。
それでも女の子たちは「雅治の恋人」という地位を守りたいために努力する。
傍から見れば大層健気に見えるが、雅治にとってはそんな努力は評価の対照にはならない。
時期が来れば「楽しかったよ」とお別れのキスひとつで精算されてしまうのだ。
普通の男なら刺し殺されているところだが、それで誰からも恨みを買わないのだから、さすが、と言っていいのかどうか。
そんな男が、最近付き合いはじめた同性の恋人には浮気を容認するようなことを言う。
もしかして雅治は本気じゃないのかもしれない、と覚は思った。
雅治は本気で名取晶を好きになったのではなく、物珍しさだけで付き合っているのだろうと。
「雅治の言葉とは思えない殊勝なセリフだね。じゃあ、遠慮なく味見させてもらおうかなあ」
「ただし」
陽気な声で、雅治は覚を呼びとめた。
「晶を泣かせたら、覚、おまえでも許さない。晶の嫌がることもするな。身体を傷つけるのもNGだ。オレが許さないっていうのは、どういう意味かわかるよな」
雅治に逆らって酷い目に合った人間を何人も知っているので覚は頷いた。
「それにオレは聖人君子じゃない。オレの知らないところで起こることには目をつむれても、誰かがオレの目の前で晶にちょっかいを出すのは、やっぱり気分がよくないんじゃないかな。そう言えばこの前、部室で晶にキスしていた不届き者の後輩がいて、危うくあの世に送りそうになったよ。あはははは」
名取晶に手を出すのは、相当リスクが高いと、覚は理解した。
晶は、あの雅治を、本気にさせた、多分、唯一の人間だ。
晶はそのことを知らない。
わざわざ教えてやるほど親切ではないので、覚はただ抱きしめた身体を慰めるように撫でる。
「…晶、ね、もういっかい、しよっか」
後ろ向きのまま晶がコクンと頷いた。
身体ならいくらでも慰めてあげる。
淫らな身体と正反対の純真な心を、慰めることは出来ないけれど。
雅治、この貸しは高くつくからね。
覚は、晶を寂しくさせているオトコに向かって、胸の中で苦々しく呟いた。
To be continued➡
適温のお湯に浸かっているうちに晶は元気と正気を取り戻し、まだ奥が満たされていないことを色っぽい目線で覚に訴えてくる。
「なあ、覚…」
「分かってるよ。僕だって、晶の中に挿れたい」
ストレートな覚の言葉にウレシそうに笑い、バスの中で覚の膝の上に乗って唇を重ねてきた。
舌を使わないフレンチキスを何度もしながら、少しづつ身体の隙間を埋めていく。
お湯の中でぴったりと身体をつけて抱き合うと、二人の身体の間に隙間がなくなったような一体感と安心感があって、いつまでもこうしていたいと思う。
けれど触れ合った二人の下半身は昂ぶり、もっと確かな快感を求めていた。
バスを出て清潔で心地の良いバスタオルで急いでお互いの身体を拭き合った。
バスルームでの戯れで二人のそれはすっかり昂ぶっていたので、お互いに「硬いね」と言いながら握りあってクスクス笑う。
裸のまま抱き合ってベッドに倒れるとスプリングで身体が弾んだ。
腕を背中に回して抱き合って、脚を絡ませながら舌を使った本格的なキスを交わす。
身体中に触れ合って、シックスナインで互いのものを口に含んで愛撫し合う。
恋愛感情の伴わない、与えるのでも奪うのでもないフィフティフィフティのこんなセックスを晶は単純に楽しいと思う。
余計なことは考えなくてもよくて、頭も心も空っぽにして気持ち良さだけを追求できる。
「晶の身体ってね、抱き心地がいいんだ」
「どうせオレは小せえよっ」
「違うよ、サイズのことじゃない。匂いも肌の感触も、敏感なところも最高。君を抱くと、雅治が妬ましくなる」
「雅治に聞かせてやりてえな、そのセリフ」
「嘘、困るくせに」
晶の臍の上で覚は笑って、「くすぐったい」と言って晶も笑う。
それから「早く早く」と覚を急かすように抱き合ったまま回転して、晶は自分が上になった。
すっかり熱く熟れた内部は覚を難なく奥まで飲み込む。
「……うっ…あ…ん…すごい…あっ…奥まで、感じる…」
覚の胸に両手をついて、うっとりと瞼を閉じ、綺麗な喉を逸らして、やっと満たされた快楽を味わっている。
「ああ…ん、気持ちいい…」
「もっと気持ちよくなりたい?」
恍惚とした表情で晶は頷いた。
覚がゆっくりと下から突き上げるように腰を動かす。
応えるように、晶も同じリズムを刻みはじめ、二人は、同じところを目指して昇りつめた。
はぁはぁという荒い呼吸を、晶は覚の胸の上に重なって整える。
満足そうに「気持ち良かった」と呟くけれど、声にいつもの元気と強気が足りない気がした。
晶の様子がいつもと違うことを察しながら、覚は黙って、ただ慰めるように晶の髪を撫でた。
「なあ、覚、オトコって手に入れた相手には興味がなくなるのかな、やっぱり」
珍しく何を悩んでいるのかと思えばそんなことかと、思う。
「そんなこと、悩んでるの。晶らしくないね」
「別に悩んでいるワケじゃねーよ、ただちょっと」
ただ、ちょっと不安に思うこともある。
ガラじゃないと覚に笑われるのを承知で言ってしまったことを後悔しているのか、それともこれ以上は喋らないという意思表示なのか、晶は覚の胸から下りて背中を向けた。
その拗ねた仕草にも可愛げがある。
さすがの覚もこんな晶には優しくしてあげたいと思ってしまう。
「晶、君は、大丈夫だから自分に自信持っていいよ」
背中からそっと抱きしめて耳元でそう言うと、
「ばーか、当たり前だろ。雅治はオレにメロメロなんだから」
弱気な声で強気なことを言った。
「みんな、君に夢中だよ」
晶の身体を抱きしめながら、本当に可哀想なのは、他の男を想い憂う晶を慰めている自分ではないかと、覚はふと思った。
高校時代、雅治が晶と付き合いはじめて3ケ月ほど立った頃、覚はやっかみ半分で雅治に言ったことがある。
「名取晶は尻が軽い。多分、僕が誘っても靡くよ」と。
意外にも雅治は「かもな」と言って笑った。
「いいの?」
「晶はさ、すごい情熱で向かってくるんだ。他のことは何も考えてないようなエネルギーで。それに応えるのは難しいと思わないか。男は恋愛だけにかまけてられないだろ。でも晶にはそれが通用しそうにない。だから、自分が応えてやれない部分を、ゆあいつが他に求めてもしょうがない」
覚は雅治のそのセリフに仰天した。
みんなから崇め奉られる生徒会長が、実はその爽やかで高潔な見かけほどには誠実ではないと、知っていたからだ。
それまでの雅治の女の子との付き合い方は、いつも強引で自己中心的だった。
告白して来た女の子と付き合ったことはなく、自分から気に入った子としか付き合わない。
告白して交際してもらっているわりに、恋人の行動には口煩く制限をする。
夜遅くまで出歩くな、派手な服を着るな、自分以外の男と口を聞くなと、ありえない要求で縛る。
それでも女の子たちは「雅治の恋人」という地位を守りたいために努力する。
傍から見れば大層健気に見えるが、雅治にとってはそんな努力は評価の対照にはならない。
時期が来れば「楽しかったよ」とお別れのキスひとつで精算されてしまうのだ。
普通の男なら刺し殺されているところだが、それで誰からも恨みを買わないのだから、さすが、と言っていいのかどうか。
そんな男が、最近付き合いはじめた同性の恋人には浮気を容認するようなことを言う。
もしかして雅治は本気じゃないのかもしれない、と覚は思った。
雅治は本気で名取晶を好きになったのではなく、物珍しさだけで付き合っているのだろうと。
「雅治の言葉とは思えない殊勝なセリフだね。じゃあ、遠慮なく味見させてもらおうかなあ」
「ただし」
陽気な声で、雅治は覚を呼びとめた。
「晶を泣かせたら、覚、おまえでも許さない。晶の嫌がることもするな。身体を傷つけるのもNGだ。オレが許さないっていうのは、どういう意味かわかるよな」
雅治に逆らって酷い目に合った人間を何人も知っているので覚は頷いた。
「それにオレは聖人君子じゃない。オレの知らないところで起こることには目をつむれても、誰かがオレの目の前で晶にちょっかいを出すのは、やっぱり気分がよくないんじゃないかな。そう言えばこの前、部室で晶にキスしていた不届き者の後輩がいて、危うくあの世に送りそうになったよ。あはははは」
名取晶に手を出すのは、相当リスクが高いと、覚は理解した。
晶は、あの雅治を、本気にさせた、多分、唯一の人間だ。
晶はそのことを知らない。
わざわざ教えてやるほど親切ではないので、覚はただ抱きしめた身体を慰めるように撫でる。
「…晶、ね、もういっかい、しよっか」
後ろ向きのまま晶がコクンと頷いた。
身体ならいくらでも慰めてあげる。
淫らな身体と正反対の純真な心を、慰めることは出来ないけれど。
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