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第100話 全員、抹殺

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「とりゃああっ!」
「うりあああっ!」

一行の頭上から一斉に飛び降りる盗賊達。
茂った木々の枝に潜む事、数10分。
やっと巡って来た好機。
逃すか!
狙うは相手全員の命。
一人一殺いちにんいっさつ
それ位の覚悟。



「うわっ!」

背中に張り付かれるロッシェ。
張り付いた盗賊は、ナイフを持った右手を上げて。
自分の心臓めがけてロッシェの胸を前から刺そうとする。
『それはたまらん』と、振り落とそうとするロッシェ。
しかし運悪く、鎧の隙間からナイフの刃が食い込んでしまった。
貫かれる心臓。
苦しみ悶えて、崩れ落ちるロッシェ。
胸の痛みを感じながらも、これで本望と気を失う盗賊。
これで一殺。



他の仲間にも、上からの急襲にたじろぐ者が居た。
槍をブンブン振り回すトクシー。
しかし一旦間合いに入られると、どうしようも無い。
トクシーの腰の下に素早く潜り込むと、えぐる様にナイフを突き上げる盗賊。
確かな手応え。
それと同時に。
無理やり槍の先端を叩き折ったトクシーが、こぼれ落ちる槍先を盗賊の目に目がけて刺し通した。
トクシーが倒れる光景を最後に、盗賊の記憶がそこで終わった。
これで一殺。



馬車を操っていたセレナ、同乗していたラヴィにも毒牙が向く。
地面からい出した盗賊2人が、大剣を床ごとぶっ刺した。
辛うじて避けた2人が馬車から転げ落ちる。
大剣を引き抜いた盗賊達は追撃。
大きく振り被って、頭上からそれぞれ一撃を食らわす。

「うっ!」

右鎖骨を折られ、腕をダランと降ろすセレナ。

「いっ!」

左足の半月板を割られ、膝からガクッとしゃがむラヴィ。

「「貰った!」」

更に盗賊達の追撃。
そうはさせじと。
セレナとラヴィも懐から短剣を取り出し、一矢報いようと盗賊達の首を狙う。
盗賊達の攻撃は2人の頭に、2人の攻撃は盗賊達の首に。
それぞれヒット。
呻き声を上げながら、バタッと倒れる2人。
首を刺され、血飛沫しぶきを上げながら倒れる盗賊達。
意識が遠のく中、2人の死亡を確認。
『役目は果たした』と納得しながら、意識が遠のく。
これで二殺。



鬱蒼うっそうと茂った森から飛び出し、アンの胸に一閃。
ベルズは素早さには自信がある。
確実に捉えた!
何も言葉を発する事無く、あっけなく倒れるアン。
馬車の下に潜り込み向こう側へ抜けると、今度はクライスへ。
詠唱する間も無く。
クライスはベルズに左腕を刺され、根元からもがれた。
痛いのをグッとこらえて、ギロッとベルズを睨むクライス。
ボタボタ滴り落ちる血の量を見て死期を悟ったのか、構わず詠唱を始めるクライス。

「無駄だ!」

今度は顔を目がけて殴りかかるベルズ。
クライスの口と鼻がひん曲がり、詠唱が止まった。
それと同時にベルズの両手両足が破裂。
詠唱が間に合ったのだ。
血をダラダラ流しながら、クライスは前のめりに倒れ。
血の色がスウッと引いて行ったかと思うと、ピクリとも動かなくなった。
四肢をもがれそのまま落下する、ベルズの胴体と頭。
やった!
やってやった!
どうだ、ざまあみろ!
お前らの旅もここで終わりだ!
フハハハハハ!
高笑いしたかったが、代償は大きかった。
大ダメージを追い、もはやこれまで。
悔いがないと言えば嘘になる人生。
もっとデカい事をしたかったぜ……。
あばよ、世界。
俺は……。
そこで意識が途切れた。
これで二殺。



抹殺完了。
犠牲者多数。
それでも。
奴等の。
旅を。
終わらせてやった。
これで。
俺も。
俺は。
俺は……。



……。






…………。





………………。













段々意識がはっきりして来るベルズ。
意識がある?
俺は死んでいないのか?
いや、待て!
俺は両手両足をもがれた筈。
なのにこの感覚は何だ?
まるで繋がっているかの様な……。
……ハッ!
まさか!

「そのまさかだよ。もろに声に出てるぞ。」

その声の主。
クライス。
平然とそこに立っていた。
ベルズは辺りを見回す。
……見回せる!
驚きながらも、平静さを取り戻そうとする。
そこで目にした光景は。
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