辿り着いた先はヒロインとの友情エンド。しかし、それも悪くありません。

花草青依

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6 ブルーナ編(2-1)

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 やっと就職先が決まった。

 ファビオ殿下のせいで、私の評判は地に落ちていた。「卑しくも王太子殿下に色仕掛けで取り入る下級貴族の娘」を雇ってくれる人は誰もおらず、私は長い事、穀潰しの生活をしていた。
 しかし、そんな私にもやっと転機が訪れた。あのパーティーに居合わせた伯爵夫人が、事の真相を知り、私を気の毒がってくれた。そして、私を夫人付きの侍女として雇ってくれる事を約束してくれたのだ。

 ━━これでやっと、両親に恩返しができる!

 二人は私のために一生懸命に働いて教育資金を作ってくれた。そのおかげで行けた学校で、私は一生懸命勉学に励んだものの、ファビオ殿下に付き纏われてしまい、就職はおろか、人脈作りにも失敗してしまった。
 がっかりする様な結果にも関わらず、二人は私を一切責めず、養う事に文句の一つも言わなかった。そんな二人のために、私はもらったお金を使いたい。今まで苦労をかけた分、少しでも恩返しをしたいのだ。

 ━━それから、雇ってくれた伯爵夫人のためにも、これからめいいっぱい働かなきゃ!

 そんな事を考えていると、ジーノが家にやって来た。
「就職おめでとう」
 そう言って彼は小さな箱を私に手渡した。中身を確認すると、それは苺のシフォンケーキだった。
「まあ! 美味しそう」
「喜んでもらえて、選んだ甲斐があったよ」
 ジーノは満面の笑顔で言った。
「折角だから、一緒に食べましょう?」
「うん」
 私は庭のテーブルにジーノを連れていき、そこでお茶をする事にした。

 ジーノの告白から、約半年が経った。あれから私はすぐに彼を受け入れて、お付き合いする事にした。付き合うと言っても、カップルらしい事はほとんどできていない。こうして我が家でお茶をするか、あるいは、近場を散歩するか。たまに文通をするくらい。
 これも、原因は私にお金がなかったから。私はデートに行けるような服を持ち合わせていないのだ。
 地味な服装で彼の隣を歩くと、彼に恥を掻かせてしまいそうで嫌で・・・・・・。かといって、ファビオ殿下から頂いた服を着るわけにもいかず、私は何かと理由を付けてデートを断っていた。

 ━━初任給の半分は、両親のプレゼントを買うとして。残りの半分は、自分の服に回してもバチは当たらないわよね?

 そんな事を考えながらケーキを頬張ると甘酸っぱい味に頬が落ちそうになった。
「ふにゃけた顔をしちゃって」
 ジーノに笑われて、私は慌てて表情を引き締めた。
「かわいい」
 ジーノはつぶやくとケーキを一口食べた。
 私は恥ずかしくなって「最近、どう?」と雑に話題を振った。
「別に? 今まで通りだよ」
「そう」
「ああ。でも、マルコ様が意味深な事を言っていたな・・・・・・」
「どんな?」
「『アデリーナ嬢の事が、分かりそうで分からない』って」
「えっと、それは・・・・・・。どういう意味?」
「さあ? 分からないよ」
 ジーノはそう言うとお茶を飲んだ。

 アデリーナ様とマルコ様の仲は深まりつつある。アデリーナ様を慕っているマルコ様の情熱的な行動は、社交界を賑わせているらしく、私の耳にまでその話が届いている。
 そして、アデリーナ様はそれに満更ではないらしく、時折、私にマルコ様のお話をしてくれる事があった。
 アデリーナ様から聞くマルコ様の印象は、誠実で真面目な人柄の紳士だったから、私は前よりももっと、二人の結婚を望んでいたのだけれど。

 ━━マルコ様は、アデリーナ様に何か不満があるのかしら?

 アデリーナ様は、美人で聡明で身分も高い上にお優しい人だ。そんな人を悪く思っているのだとしたら、何か誤解があるに違いない。マルコ様はどんな誤解をしているのだろう。
「良かったら、マルコ様の相談に乗ってくれないかな?」
 ジーノからの思わぬ提案に私は少し戸惑った。彼から話を聞いてみたいとは思うけれど、私が役に立てるとは思わない。その旨を伝えると、ジーノは「大丈夫だよ」と笑った。
「相談といっても、マルコ様は、アデリーナ様の事を良く知る人に話を聞いてもらいたいだけだから。特段のアドバイスはいらないよ」
「そうなの?」
「うん。ただ、優しく彼に寄り添って話を聞いてあげるだけでいいから。ね?」
 ジーノは懇願の眼差しを私に向けてきた。彼からこういったお願いをされるのは初めてだったから。力になりたいと思うのは当然の事だろう。
「分かったわ。今日のケーキのお礼よ」
 私はそう言ってケーキをまた頬張った。
「ありがとう」
 ジーノは微笑むとお茶を飲んだ。
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