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7 ブルーナ(2-2)
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そして、約束の日。
今日は曇り空のせいもあって、少し肌寒い日だった。外の風が心なしか尖って感じられる。
しかし、指定された喫茶店に行くと、その店内は温かった。
甘い焼き菓子の匂いが鼻をくすぐる。私は席に着いて早々、頼む予定になかったお菓子を注文する羽目になった。
テーブルの向かい側に座っているマルコ様は、既に注文していた紅茶を静かに口にしていた。
その整った顔立ちを間近に見るのは初めてだったけれど、今日はどことなく険しい様な気がする。いつも遠くで目にしていたマルコ様は、優しい笑顔を浮かべている印象だったのに。今の彼は何かを考え込んでいるようだった。
「・・・・・・アデリーナ嬢のことなんだけど」
私の紅茶とお菓子が届くと、すぐに、マルコ様は口を開いた。
「最近、何だか、表情や行動に違和感を覚えることがあって。・・・・・・何て言えばいいのかな。距離があるような、嘘を吐いているような・・・・・・。でも、かといって、悪意の様なものは感じられないし・・・・・・。とにかく、そんな気がすることがあるんだ」
「そう、なんですか」
私は何と言っていいか分からず、言葉を探した。
「でも、それはマルコ様の思い違いではありませんか?」
そう言うと、マルコ様は困ったように眉を寄せた。
「俺もそう思おうとした。でも、どうしても気になる時があって・・・・・・。彼女は誠実な人だと思っている。だからこそ、余計に、分からない。僕が何かを見落としているのかもしれないし、彼女が何かを隠しているのかもしれない・・・・・・」
私はそっとカップを持ち上げ、紅茶に口をつけた。
━━アデリーナ様が何かを隠している、か。
私が彼女をそんな風に思ったことは一度もなかった。
でも、私が知っているのは、あくまで「友人としてのアデリーナ様」だ。男女の関係にあるマルコ様には、また違う一面が見えているのかもしれない。
「アデリーナ様はとても優しい方です。決して人を騙す様な悪い方ではありませんし、そういった噂を耳にした事もございません。その点につきましてはご安心下さい」
「うん」
「ちなみに、距離感があるとか、嘘を吐いているように見えるとか。そういうものはどういった時に感じられるのでしょう?」
「何と言うか、彼女は常に俺の顔色を伺っている様な気がするんだ。それに、話をしていると、時折、反応が嘘くさい時もあるし」
「それは、好きな相手だからこそ、そうなってしまうのでは?」
「そうだといいんだけどね」
マルコ様は少し苦笑して、窓の外を見た。
私も何の気なしに外を見ると雨が降っていた。
「雨、ですね」
「そうだね」
私達の言葉に反応するかのように、雨は次第に激しくなっていった。
「これはしばらくここで雨宿りをした方がいいかな」
彼はそう言いながら、メニューを手に取った。長居するのに紅茶一杯では申し訳ないと考えたのだろう。
私は彼の様子を見ながら焼き菓子を頬張った。
その時だった。
喫茶店のドアベルが、カランカランと軽やかな音を立てて鳴った。そちらを向くと、そこに立っていたのはアデリーナ様だった。
ずぶ濡れになっていた彼女は、店に入るなり、こちらを見て立ち尽くした。彼女の瞳が、私とマルコ様の間を行き来する。そして、その表情は凍りついていて・・・・・・。様子がおかしいのは一目瞭然だった。
「アデリーナ様?」
声を掛けるとアデリーナ様はふっと笑った。それがいつもの笑顔とは違う、作り笑いなのだと、すぐに分かった。
「・・・・・・あら、ブルーナさん。マルコ様とご一緒だったのね」
その声は静かだったけれど、どこか張りつめている。
━━もしかして、誤解されてる?
そんなはずはない。だって、私とジーノが付き合っている事をアデリーナ様は知っている。その報告をした時、彼女は私に弾ける笑顔とともに祝福の言葉をくれたもの。
それに、マルコ様のような紳士が私と釣り合うはずがなかった。今日、私が着ている服だって、清潔感はあるものの、古臭くて、とてもデートに適している服ではなかった。
だから、こうして二人でお茶をしていたって私達が男女の仲に見えるはずがないのに。
それなのに、アデリーナ様は踵を返し、店の外へと飛び出してしまった。
そして、約束の日。
今日は曇り空のせいもあって、少し肌寒い日だった。外の風が心なしか尖って感じられる。
しかし、指定された喫茶店に行くと、その店内は温かった。
甘い焼き菓子の匂いが鼻をくすぐる。私は席に着いて早々、頼む予定になかったお菓子を注文する羽目になった。
テーブルの向かい側に座っているマルコ様は、既に注文していた紅茶を静かに口にしていた。
その整った顔立ちを間近に見るのは初めてだったけれど、今日はどことなく険しい様な気がする。いつも遠くで目にしていたマルコ様は、優しい笑顔を浮かべている印象だったのに。今の彼は何かを考え込んでいるようだった。
「・・・・・・アデリーナ嬢のことなんだけど」
私の紅茶とお菓子が届くと、すぐに、マルコ様は口を開いた。
「最近、何だか、表情や行動に違和感を覚えることがあって。・・・・・・何て言えばいいのかな。距離があるような、嘘を吐いているような・・・・・・。でも、かといって、悪意の様なものは感じられないし・・・・・・。とにかく、そんな気がすることがあるんだ」
「そう、なんですか」
私は何と言っていいか分からず、言葉を探した。
「でも、それはマルコ様の思い違いではありませんか?」
そう言うと、マルコ様は困ったように眉を寄せた。
「俺もそう思おうとした。でも、どうしても気になる時があって・・・・・・。彼女は誠実な人だと思っている。だからこそ、余計に、分からない。僕が何かを見落としているのかもしれないし、彼女が何かを隠しているのかもしれない・・・・・・」
私はそっとカップを持ち上げ、紅茶に口をつけた。
━━アデリーナ様が何かを隠している、か。
私が彼女をそんな風に思ったことは一度もなかった。
でも、私が知っているのは、あくまで「友人としてのアデリーナ様」だ。男女の関係にあるマルコ様には、また違う一面が見えているのかもしれない。
「アデリーナ様はとても優しい方です。決して人を騙す様な悪い方ではありませんし、そういった噂を耳にした事もございません。その点につきましてはご安心下さい」
「うん」
「ちなみに、距離感があるとか、嘘を吐いているように見えるとか。そういうものはどういった時に感じられるのでしょう?」
「何と言うか、彼女は常に俺の顔色を伺っている様な気がするんだ。それに、話をしていると、時折、反応が嘘くさい時もあるし」
「それは、好きな相手だからこそ、そうなってしまうのでは?」
「そうだといいんだけどね」
マルコ様は少し苦笑して、窓の外を見た。
私も何の気なしに外を見ると雨が降っていた。
「雨、ですね」
「そうだね」
私達の言葉に反応するかのように、雨は次第に激しくなっていった。
「これはしばらくここで雨宿りをした方がいいかな」
彼はそう言いながら、メニューを手に取った。長居するのに紅茶一杯では申し訳ないと考えたのだろう。
私は彼の様子を見ながら焼き菓子を頬張った。
その時だった。
喫茶店のドアベルが、カランカランと軽やかな音を立てて鳴った。そちらを向くと、そこに立っていたのはアデリーナ様だった。
ずぶ濡れになっていた彼女は、店に入るなり、こちらを見て立ち尽くした。彼女の瞳が、私とマルコ様の間を行き来する。そして、その表情は凍りついていて・・・・・・。様子がおかしいのは一目瞭然だった。
「アデリーナ様?」
声を掛けるとアデリーナ様はふっと笑った。それがいつもの笑顔とは違う、作り笑いなのだと、すぐに分かった。
「・・・・・・あら、ブルーナさん。マルコ様とご一緒だったのね」
その声は静かだったけれど、どこか張りつめている。
━━もしかして、誤解されてる?
そんなはずはない。だって、私とジーノが付き合っている事をアデリーナ様は知っている。その報告をした時、彼女は私に弾ける笑顔とともに祝福の言葉をくれたもの。
それに、マルコ様のような紳士が私と釣り合うはずがなかった。今日、私が着ている服だって、清潔感はあるものの、古臭くて、とてもデートに適している服ではなかった。
だから、こうして二人でお茶をしていたって私達が男女の仲に見えるはずがないのに。
それなのに、アデリーナ様は踵を返し、店の外へと飛び出してしまった。
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