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「ビアンカ様! ぜひ我が家へ!」
そう言ったのは、攻略対象の一人だった男だ。騎士となった彼は、ルーナを主人として忠誠を誓っているはずではなかったのか。
「いえ、ビアンカ様には我が公爵家こそが……!」
熱の籠もった口調で言った彼もまた、攻略対象の一人。宰相の一人息子にして、ラウルの右腕である彼は、敵対する家門の娘である私を毛嫌いしているはずだった。この間も、挨拶をした時に素っ気ない態度を取られたのに、なぜ?
戸惑う私に、さらに別の攻略対象が話しかけてきた。
「我が家は伯爵家ですが、負けていません! ビアンカ様には、是非とも、私のもとに来ていただきたい所存です」
魔塔で日々、研究を行っている彼とは何の接点もないのだけれど、一体何の目的なのだろう。
魔法に疎い我が家では、彼を支援するには心許ない。私と結婚するメリットを一体どこに感じているのだろう。
━━みんな、わけが分からない。何が、どうなっているの!?
婚約破棄が公になった次の日に、突如として求婚の申し出が殺到したのだけれど、その理由がさっぱり分からない。
普通なら、婚約破棄された令嬢の評判は地に落ちるはず。それなのに、なぜか私の人気は急上昇 しているらしい。
頭の中で「?」が飛び交う最中も、彼らのアピールは止まらなかった。
「婚約破棄の場で狼狽える事なく、あれほど毅然と振る舞えるとは! その精神力に感服いたしました。」
目を輝かせて言う騎士の彼からは、私を尊敬してやまないという雰囲気が感じられた。
「ああ。本当に素晴らしい! ビアンカ様こそ真の淑女だ。あなたのような方が、うちの家の女主人であると、どれだけ心強いか」
小公爵はそう言って頷く。
騎士の意見に同調しつつ、アピールするなんて抜け目のない男だ。
「公爵家では王室と同様、息が詰まるでしょうから、私とともに魔塔に行きましょう」
伯爵子息の言葉を小公爵は鼻で笑った。
「あんなカビ臭い所に行きたい淑女はいやしないぞ」
「そんな事はない」
伯爵子息の言葉を騎士は即座に否定する。
「いや、公爵子息の言う通りだ。あそこは淑女には向かない場所だろう。しかも、魔塔では、日々、危険な実験も行われているそうじゃないか。そんな所にビアンカ様を連れて行こうなどと━━」
三人が口論を始めた。私は頭を抱える。
━━ちょっと待って! 私、静かに暮らしたいだけなんですけど!?
止まらない口論の中に、私は割って入った。
「とりあえず、今日の所はお引き取りを!!」
私は大声でそう言うと、三人を無理矢理帰らせたのだ。
しかし、三人が帰ってからも、次から次へと貴族の子息が押し寄せて来る。
これでは、折角、家にいるというのに、私の気はちっとも休まらない。
━━だから、仕方なしに街に出たのだけれど……。
馬車を降りてからというもの、私に気付いた貴族の令息達が「是非ともお茶を」としつこく誘ってくる。一人断っても、数メートル先にまた別の人が待機をしていてキリがない。
遠巻きに私の様子を伺い見る貴婦人の目が気になった私は、一般の貴族が入れない馴染みの高級宝石店へと入った。
「いらっしゃいませ」
私を迎え入れてくれた接客員の男は、いつも通りの営業スマイルで迎え入れてくれた。それにほっとすると同時に、「彼まで求婚してきたらどうしよう」と思っていた自分の自意識過剰ぶりが恥ずかしくなった。
「ボルジア公爵令嬢様、今日はどのような商品をお求めで?」
「そうね……」
男達から逃れるために入っただけで、特別欲しいものはなかった。
「何でもいいから新作を見せてちょうだい」
「かしこまりました。準備致しますのでこちらへどうぞ」
接客員は優雅な動作で、いつものVIPルームへと案内してくれた。
ソファに座り、出されたお茶を飲んでいると、程なくして彼はいくつかの宝石を持ってきた。それらはどれも一級品で、一つ買うだけで我が家の使用人の一年分の給料に相当する金額だった。
━━無駄遣いはよくないけれど、ラウルとの婚約破棄の記念と思ったら悪くないわね。
そんな事を思いつつ、指輪を手に取ったその時、VIPルームの扉が開いた。
「え?」
部屋に入って来たのは、攻略対象の一人だった。ルーナ行きつけのブティックのオーナーである彼がなぜここに?
そう思って私は接客員の男を見た。
━━どうして彼が? 早く追い出してよ。
目で訴えかけると、接客員の男はにこりと作り笑いを浮かべた。
「ボルジア公爵令嬢、こちらは当店のオーナーでして」
続けて彼は、オーナーの名前を言った。
紹介されたオーナーの男は一礼をする。
「こちらの店では初めてお会いしましたね。ビアンカ様」
「ええ、そうね。……それで、どうして、私に会いに?」
恐る恐る尋ねると、オーナーの男はにこりと笑った。
「それは勿論、婚約の解消をなさったビアンカ様に、愛の告白をするためです」
彼はそう言うと、テーブルに置いてあった、婚約解消記念品候補の指輪を手に取った。
「ビアンカ様、ずっとお慕いしておりました。私と結婚して下さい」
突然の愛の告白に、私は「あなたもなの!?」と叫びたくなるのをぐっと堪えた。
「そんなに急に言われましてもねぇ……、オホホホホ」
笑って誤魔化した。そして、急用を思い出したと言って、店から飛び出したのだ。
宝石店から出れば、令息達が待ち構えていたと言わんばかりに押し寄せてきて、私は慌てて馬車のもとへと走る。
━━おかしい。これから穏やかな毎日を過ごせるはずだったのに……。何で前より慌ただしくなっているのよ!?
そんな事を思いながら、髪を振り乱し、必死になって走った。
そう言ったのは、攻略対象の一人だった男だ。騎士となった彼は、ルーナを主人として忠誠を誓っているはずではなかったのか。
「いえ、ビアンカ様には我が公爵家こそが……!」
熱の籠もった口調で言った彼もまた、攻略対象の一人。宰相の一人息子にして、ラウルの右腕である彼は、敵対する家門の娘である私を毛嫌いしているはずだった。この間も、挨拶をした時に素っ気ない態度を取られたのに、なぜ?
戸惑う私に、さらに別の攻略対象が話しかけてきた。
「我が家は伯爵家ですが、負けていません! ビアンカ様には、是非とも、私のもとに来ていただきたい所存です」
魔塔で日々、研究を行っている彼とは何の接点もないのだけれど、一体何の目的なのだろう。
魔法に疎い我が家では、彼を支援するには心許ない。私と結婚するメリットを一体どこに感じているのだろう。
━━みんな、わけが分からない。何が、どうなっているの!?
婚約破棄が公になった次の日に、突如として求婚の申し出が殺到したのだけれど、その理由がさっぱり分からない。
普通なら、婚約破棄された令嬢の評判は地に落ちるはず。それなのに、なぜか私の人気は急上昇 しているらしい。
頭の中で「?」が飛び交う最中も、彼らのアピールは止まらなかった。
「婚約破棄の場で狼狽える事なく、あれほど毅然と振る舞えるとは! その精神力に感服いたしました。」
目を輝かせて言う騎士の彼からは、私を尊敬してやまないという雰囲気が感じられた。
「ああ。本当に素晴らしい! ビアンカ様こそ真の淑女だ。あなたのような方が、うちの家の女主人であると、どれだけ心強いか」
小公爵はそう言って頷く。
騎士の意見に同調しつつ、アピールするなんて抜け目のない男だ。
「公爵家では王室と同様、息が詰まるでしょうから、私とともに魔塔に行きましょう」
伯爵子息の言葉を小公爵は鼻で笑った。
「あんなカビ臭い所に行きたい淑女はいやしないぞ」
「そんな事はない」
伯爵子息の言葉を騎士は即座に否定する。
「いや、公爵子息の言う通りだ。あそこは淑女には向かない場所だろう。しかも、魔塔では、日々、危険な実験も行われているそうじゃないか。そんな所にビアンカ様を連れて行こうなどと━━」
三人が口論を始めた。私は頭を抱える。
━━ちょっと待って! 私、静かに暮らしたいだけなんですけど!?
止まらない口論の中に、私は割って入った。
「とりあえず、今日の所はお引き取りを!!」
私は大声でそう言うと、三人を無理矢理帰らせたのだ。
しかし、三人が帰ってからも、次から次へと貴族の子息が押し寄せて来る。
これでは、折角、家にいるというのに、私の気はちっとも休まらない。
━━だから、仕方なしに街に出たのだけれど……。
馬車を降りてからというもの、私に気付いた貴族の令息達が「是非ともお茶を」としつこく誘ってくる。一人断っても、数メートル先にまた別の人が待機をしていてキリがない。
遠巻きに私の様子を伺い見る貴婦人の目が気になった私は、一般の貴族が入れない馴染みの高級宝石店へと入った。
「いらっしゃいませ」
私を迎え入れてくれた接客員の男は、いつも通りの営業スマイルで迎え入れてくれた。それにほっとすると同時に、「彼まで求婚してきたらどうしよう」と思っていた自分の自意識過剰ぶりが恥ずかしくなった。
「ボルジア公爵令嬢様、今日はどのような商品をお求めで?」
「そうね……」
男達から逃れるために入っただけで、特別欲しいものはなかった。
「何でもいいから新作を見せてちょうだい」
「かしこまりました。準備致しますのでこちらへどうぞ」
接客員は優雅な動作で、いつものVIPルームへと案内してくれた。
ソファに座り、出されたお茶を飲んでいると、程なくして彼はいくつかの宝石を持ってきた。それらはどれも一級品で、一つ買うだけで我が家の使用人の一年分の給料に相当する金額だった。
━━無駄遣いはよくないけれど、ラウルとの婚約破棄の記念と思ったら悪くないわね。
そんな事を思いつつ、指輪を手に取ったその時、VIPルームの扉が開いた。
「え?」
部屋に入って来たのは、攻略対象の一人だった。ルーナ行きつけのブティックのオーナーである彼がなぜここに?
そう思って私は接客員の男を見た。
━━どうして彼が? 早く追い出してよ。
目で訴えかけると、接客員の男はにこりと作り笑いを浮かべた。
「ボルジア公爵令嬢、こちらは当店のオーナーでして」
続けて彼は、オーナーの名前を言った。
紹介されたオーナーの男は一礼をする。
「こちらの店では初めてお会いしましたね。ビアンカ様」
「ええ、そうね。……それで、どうして、私に会いに?」
恐る恐る尋ねると、オーナーの男はにこりと笑った。
「それは勿論、婚約の解消をなさったビアンカ様に、愛の告白をするためです」
彼はそう言うと、テーブルに置いてあった、婚約解消記念品候補の指輪を手に取った。
「ビアンカ様、ずっとお慕いしておりました。私と結婚して下さい」
突然の愛の告白に、私は「あなたもなの!?」と叫びたくなるのをぐっと堪えた。
「そんなに急に言われましてもねぇ……、オホホホホ」
笑って誤魔化した。そして、急用を思い出したと言って、店から飛び出したのだ。
宝石店から出れば、令息達が待ち構えていたと言わんばかりに押し寄せてきて、私は慌てて馬車のもとへと走る。
━━おかしい。これから穏やかな毎日を過ごせるはずだったのに……。何で前より慌ただしくなっているのよ!?
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