【完結】氷の令嬢は王子様の熱で溶かされる

花草青依

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23-2 エリナの夢物語

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「エリナ、何を言っているの?」
「信じれませんよね。クラスのみんなが。・・・・・・ううん。学園中が、私とフィリップが愛し合っていると信じて疑いませんでしたから」
 エリナはハンカチで涙を拭うと私の顔をじっと見つめた。
「そうよ、あなた達は愛し合って」
「でも、私には分かるんです!」
 エリナは私の言葉を遮った。
「私はフィリップを愛していて、彼の隣にずっといたから! だから、彼の視線の先にはいつもイザベラ様がいた事を知っているんです」
「え?」
 エリナの言葉に私は混乱した。

 ━━フィリップ様が、私を見ていた?

「イザベラ様は知るはずがないですよね。あなたはフィリップに何の興味も持ちませんでしたから」
 そう言われてしまったら、何も言えない。私がフィリップ様に興味がなかったのは事実だ。
「フィリップはいつもイザベラ様の気を引こうと必死でした。私と付き合い出したのだって、きっと、あなたに嫉妬して欲しかったからです」
 エリナはそこまで言うと言葉を詰まらせてまた涙を流し始めた。

 ━━私の興味を引くためにエリナを利用していたなんて、理解できない。

 そんな事をするくらいなら、普通に「好きだ」と言ってくれればよかったのに。彼から愛の言葉なんて聞いた事もない。それどころか、陰で私の悪口を言っていた。

 ━━ただでさえも、人の気持が分からないのに、好意をはっきりと示してくれなければ分からないわ。

 フィリップ様の事がますます分からなくなった。そして、エリナの事も。
「ねえ、エリナ。あなたはそれを知ってもなお、フィリップ様の事が好きだったの?」
 私が聞くとエリナはハンカチで乱暴に顔を拭った。せっかくの化粧が落ちて台無しだけれど、その氷を教えるのは後にしよう。

「すきです」
 彼女は涙を溢し、しゃくりあげながらも、そう言った。
「フィリップも、いつかは私のことを好きになってくれるって、信じてた! 乙女ゲームの選択肢通りに行動していれば、ゲームの中みたいに、"エリナ"を好きになってくれるって」
 でも、違ったらしい。彼女の目からボロボロと涙がこぼれ落ちる。
「そう思ったからエンディングまで頑張ったのにっ・・・・・・」
 エリナは小さな声で呟いた。"エンディング"というものが、何を指しているのかは分からない。

「ゲームのシナリオ通りだったなら、卒業パーティでフィリップが"イザベラ"との婚約破棄を宣言して私達は結ばれるはずだった。数年後に"エリナ"はフィリップと結婚式を挙げてハッピーエンドで終わるはずだったのに・・・・・・」
「それが"エンディング"なの?」
 エリナは頷いた。

「それなら、"エンディング"は終わっていないじゃない。まだ、私との婚約が解消されただけですもの」
 そう言ったら、エリナは信じられないと言った顔で私を見てきた。

 ━━私、間違った事を言ったのかしら?

「そんなに上手くいきませんよ」
「どうして? それなら、卒業パーティでフィリップ様にあんなマネをさせなければよかったじゃない?」
「乙女ゲームのように上手くいかないって、卒業パーティが終わってから、やっと理解したんです!」
 エリナは声を荒げた。
「フィリップはゲームと同じように卒業パーティでイザベラ様との婚約破棄を宣言してくれました。でも、彼はやっぱり私を好きになってくれなかった。エドワード殿下から告白されて会場から去っていくあなたを彼がどんな目で見ていたか・・・・・・。それでやっと、私は思い違いをしているのかもしれないと思ったんです」
「思い違い?」
「私は"乙女ゲームの世界に転生して、物語の主人公になったんだ"と、それまでは思っていました。でも、違ったんです。この世界は確かに乙女ゲームの・・・・・・、『夢見る乙女のメモリアル2』の世界に酷似していたけど、違ったんです」

 ━━"2"ということは、1作目が存在するのかしら?

 それが気になったけれど、さほど重要なことではなさそうだから口にはしなかった。
「違うと言うのは、どういうことなのかしら?」
「この世界の人々は生きた人間です。私やイザベラ様、フィリップ、クラスでほとんど話したことのない人達だってみんな自分の意志があります」
「そうね」
 当たり前のことだ。それがどうしたのだろう?
「ゲームのように、みんなが常に私を称賛し、庇ってくれるわけでもありませんでした」
 きっと卒業パーティの後に、表でも裏でもエリナを悪く言う人がいたのだろう。大衆の面前で略奪婚を成立させようとしていたからそうなってもおかしくはない。
「ゲームでは、フィリップが婚約破棄を宣言して、すぐに私にプロポーズしていました。でも、そうならなかった。そこで私はやっと、シナリオ通りに物事は進まない可能性だってあるのだと。世界は私を中心に回ってはいないのだと理解しました」
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