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25-2 私の好きな人は
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「でも、そのくせフィリップはベラの美しさに惹かれてた。ベラがつれない反応で自分に興味を持たないから、フィリップはベラに嫌がらせをしたんだ。子供じみてるよね」
「そうですね。そんな事をされても、私にはフィリップ様の気持ちを理解できませんでした」
「だろうね」
エドはそう言うと、宥めるように私の頭を撫でた。
「フィリップがエリナと付き合い始めたのも、ベラの気を引くための行為の一環だと思う」
「エリナもそう言っていました。・・・・・・エリナが可愛そうだわ」
「ベラは本当にエリナの事を気に入っているんだね」
「気に入っている?」
「だって、そうだろう? ベラは学園中のどの人にも無関心だったのに、エリナの事はよく見ていたから」
「そうかしら?」
そう言われても、今ひとつピンとこない。
「それなら聞くけど、俺の得意だった科目って何か分かる?」
少し考えても答えが全く思いつかない。
「授業の時に、ベラが入らせてもらっていたグループのカミラ嬢のことは覚えている?」
「ええ。勿論」
カミラ嬢は一人でいる私を気遣ってくれて、課題授業の時は同じグループに誘ってくれていた。友人と呼べるほど親しい間ではないのかもしれないけれど、出会えば必ず挨拶をする仲の人だ。
「それならカミラ嬢の婚約者の役職は分かるかな?」
「いいえ。ロバートという名前だったのは記憶しているんですけど」
━━この質問に一体なんの意味があるのかしら?
「それじゃあ、エリナの好きな食べ物は?」
「チョコレートです」
「ほら、すぐに答えられた」
そんなのたまたま知っていただけだ。それなのに、得意気に言われるとむっとする。
「偶然答えを分かっていただけですよ」
「それなら、エリナがフィリップから初めてプレゼントされた物は?」
「サテンのリボンです」
「ほら」
「そんなの、学園中の人が知っています」
赤いサテンのリボンを髪につけたエリナはとても似合っていた。
「そうだね。それなら、フィリップが日頃身につけていた腕輪の宝石は分かる?」
そう言われても、全く思い浮かばない。
「学年中のほとんどの人が知っているんだけどね」
「本当に?」
「フィリップの大叔母から受け継いだ遺産だって噂になっていたんだからさ」
そう言われてやっと、そんな噂があったことを思い出した。
「分かった? ベラは学園の人に興味を持つことはほとんどなかったけれど、エレナにだけは違ったんだ」
自分では意識していなかったけれど、認めざるを得ない。
「エドはよくそんな事を知っていますね」
「当たり前だよ。好きな人の事はよく見るものだよ」
エリナも、似たような事を言っていた。フィリップ様の隣にずっといたから分かったって。
━━私、エドの事をちゃんと見ているのかしら。
彼の好きな物は? 嫌いなものは? 交友関係はどうだったかしら?
考えれば考えるほど不安になっていく。
「ベラ、どうしたの?」
黙っていたせいで、エドに不審がられてしまった。
「私、エドのことをちゃんと見れているのかなって思ったんです」
不安でたまらない気持ちでいっぱいなのに、エドはなぜか笑った。
「そうやって考えてくれたり、俺の事を知ろうとしてくれたりするのは、十分、俺に興味があるって事だよ。だから心配しないで」
そう優しく言ってくれたエドの手に、私は自分の手を重ねた。
「いけない、話が逸れましたね」
「そうだっけ?」
「はい。この間、エリナと話した事はもっと色々あるんです」
私はエリナが自分の過ちに気づいたがために、田舎でひっそりと暮らそうとしていたことを話した。
「それが彼女なりのケジメの付け方だったみたいなんです。でも、それはかわいそうだったから、私はフィリップ様と一緒になるように説得しました」
「え?」
これにはエドも予想していなかったらしく、驚きの声を漏らした。
「ベラはそれでいいの?」
「はい。二人には感謝こそすれども恨みはありませんから」
そう言ったらエドはもっと困惑していた。
「みんなの前で恥を搔かされたんだよ? それに、あることないことをゴシップ紙に書かれるようになったきっかけを作ったのも彼らだと言えるし」
「そんな嫌な事を差し引いても、私は彼らに怒れません。むしろ、私は、あの場でフィリップ様から婚約破棄を宣言されて良かったんだと思います」
「どうして?」
「だって、あのままフィリップ様と結婚していたら、エドとこうして一緒になれる事がなかったですから」
私はエドの手をぎゅっと握った。
「エド、私はあなたが好きです」
前を向いていて良かった。私の顔はきっと、みっともないくらいに赤いはずだから。
「そうですね。そんな事をされても、私にはフィリップ様の気持ちを理解できませんでした」
「だろうね」
エドはそう言うと、宥めるように私の頭を撫でた。
「フィリップがエリナと付き合い始めたのも、ベラの気を引くための行為の一環だと思う」
「エリナもそう言っていました。・・・・・・エリナが可愛そうだわ」
「ベラは本当にエリナの事を気に入っているんだね」
「気に入っている?」
「だって、そうだろう? ベラは学園中のどの人にも無関心だったのに、エリナの事はよく見ていたから」
「そうかしら?」
そう言われても、今ひとつピンとこない。
「それなら聞くけど、俺の得意だった科目って何か分かる?」
少し考えても答えが全く思いつかない。
「授業の時に、ベラが入らせてもらっていたグループのカミラ嬢のことは覚えている?」
「ええ。勿論」
カミラ嬢は一人でいる私を気遣ってくれて、課題授業の時は同じグループに誘ってくれていた。友人と呼べるほど親しい間ではないのかもしれないけれど、出会えば必ず挨拶をする仲の人だ。
「それならカミラ嬢の婚約者の役職は分かるかな?」
「いいえ。ロバートという名前だったのは記憶しているんですけど」
━━この質問に一体なんの意味があるのかしら?
「それじゃあ、エリナの好きな食べ物は?」
「チョコレートです」
「ほら、すぐに答えられた」
そんなのたまたま知っていただけだ。それなのに、得意気に言われるとむっとする。
「偶然答えを分かっていただけですよ」
「それなら、エリナがフィリップから初めてプレゼントされた物は?」
「サテンのリボンです」
「ほら」
「そんなの、学園中の人が知っています」
赤いサテンのリボンを髪につけたエリナはとても似合っていた。
「そうだね。それなら、フィリップが日頃身につけていた腕輪の宝石は分かる?」
そう言われても、全く思い浮かばない。
「学年中のほとんどの人が知っているんだけどね」
「本当に?」
「フィリップの大叔母から受け継いだ遺産だって噂になっていたんだからさ」
そう言われてやっと、そんな噂があったことを思い出した。
「分かった? ベラは学園の人に興味を持つことはほとんどなかったけれど、エレナにだけは違ったんだ」
自分では意識していなかったけれど、認めざるを得ない。
「エドはよくそんな事を知っていますね」
「当たり前だよ。好きな人の事はよく見るものだよ」
エリナも、似たような事を言っていた。フィリップ様の隣にずっといたから分かったって。
━━私、エドの事をちゃんと見ているのかしら。
彼の好きな物は? 嫌いなものは? 交友関係はどうだったかしら?
考えれば考えるほど不安になっていく。
「ベラ、どうしたの?」
黙っていたせいで、エドに不審がられてしまった。
「私、エドのことをちゃんと見れているのかなって思ったんです」
不安でたまらない気持ちでいっぱいなのに、エドはなぜか笑った。
「そうやって考えてくれたり、俺の事を知ろうとしてくれたりするのは、十分、俺に興味があるって事だよ。だから心配しないで」
そう優しく言ってくれたエドの手に、私は自分の手を重ねた。
「いけない、話が逸れましたね」
「そうだっけ?」
「はい。この間、エリナと話した事はもっと色々あるんです」
私はエリナが自分の過ちに気づいたがために、田舎でひっそりと暮らそうとしていたことを話した。
「それが彼女なりのケジメの付け方だったみたいなんです。でも、それはかわいそうだったから、私はフィリップ様と一緒になるように説得しました」
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「はい。二人には感謝こそすれども恨みはありませんから」
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「みんなの前で恥を搔かされたんだよ? それに、あることないことをゴシップ紙に書かれるようになったきっかけを作ったのも彼らだと言えるし」
「そんな嫌な事を差し引いても、私は彼らに怒れません。むしろ、私は、あの場でフィリップ様から婚約破棄を宣言されて良かったんだと思います」
「どうして?」
「だって、あのままフィリップ様と結婚していたら、エドとこうして一緒になれる事がなかったですから」
私はエドの手をぎゅっと握った。
「エド、私はあなたが好きです」
前を向いていて良かった。私の顔はきっと、みっともないくらいに赤いはずだから。
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