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2章 世界で一番嫌いな人
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レイチェル嬢とケイン様の仲は上手くいっていないと聞いていたけれど。こんなにも冷え切っているとは思わなかった。
蔑ろにされても黙っている彼女を気の毒に思って、私は彼女の代わりに真実を伝える事にした。
「違います! 私もレイチェル嬢もそんな事を言っていません」
私の言葉に、ニコラス様も便乗した。
「そうそう。『身の程知らずの愛人』と言ったのは俺だから。どうやら、その子の記憶力は壊滅的みたいだね」
すると、彼は何を思ったのか、隣にいるレイチェルの肩を引き寄せた。
「レイチェルはこんなにも大人しくて分別のあるレディなのに」
そう言って彼はレイチェル嬢を優しく見つめながら、彼女の髪を撫でた。
それは、乙女ゲームのイベントスチルかと思うくらいに美しい光景だったけれど━━━━
私とケイン様が目の前にいる事をお構い無しにレイチェル嬢を愛でるのはいかがなものか。この場にいた誰もがそう思ったはずだ。
当事者であるレイチェル嬢は、顔を引き攣らせて、一歩、二歩と下がった。あからさまに嫌がっている。
しかし、そんな彼女に対して、友人達は侮蔑の眼差しを送った。ニコラス様が勝手に彼女を可愛がっただけなのに。理不尽な事に責められるのはレイチェル嬢の方だった。
レイチェル嬢は気まずそうにしながら、私に向き合った。
「私達がここに来る前、モニャーク公爵令嬢とミランダ嬢の間に、何があったのです?」
それは、目に見えて分かる程の話題のすり替えだった。けれど、ニコラス様が引き起こした事に対して、彼女に非難の視線が集まるのがあまりにも不憫だった。
だから、彼女の期待に応えて、簡単に事のあらましを伝えた。それから、ミランダにベッキーの悪口を今すぐ訂正して欲しいと要求したのだ。
しかし、ミランダは「私はそんな事、やってません」と泣いて嘘を吐くばかりで、一言の謝罪すらしない。険しい顔で私の話を聞いていたレイチェル嬢は彼女に向けて謝るようにと言った。
「なぜ君が命令をするんだ!」
途端に、ケイン様は怒号を飛ばした。
レイチェル嬢は正しい事を言っただけなのに、彼女が責め立てられるのはおかしい。
一言物申そうかと思ったら、レイチェル嬢は冷めた視線を彼に送りながらこう言った。
「彼女はケイン殿下の愛人なのですから。当然でしょう?」
その言葉を聞いたミランダは、傷付いたと言わんばかりに、はらはらと涙を流しながらケイン様にしがみついた。ケイン様はレイチェル嬢を睨みつけたけれど、彼女は一歩も引かず、冷ややかな視線で応じるのみだった。
結局、それからもミランダは私に謝罪をする事はなかった。彼女はやってないの一点張りで反省の色はなく、ケイン様は彼女の嘘を信じた。
そして、最終的に、ケイン様はミランダの手を引いてカフェテリアから出て行ったのだ。
━━あり得ない人達。
そう思っている中、レイチェル嬢が私のもとにやって来て、ミランダの代わりに謝罪をしてくれた。レイチェル嬢が悪いわけではないから、そうされるととても心苦しかった。
「それよりも、ありがとうございます。私の幼馴染のために、謝るように言っていただいて」
私は感謝を伝えた。ベッキーのために言ってくれた事が嬉しかったというこの気持ちを彼女に教えたかったのだ。
レイチェル嬢にはそれが伝わったのだと思う。彼女はにこりと笑ってそれを受け入れてくれた。ようやく見れた彼女の笑顔に、私はほんの少し安堵した。散々理不尽な目にあった彼女に、嫌な思いで終わって欲しくないと思っていたから。
でも、彼女の笑顔は長く持たなかった。私の友人がなぜニコラス様と一緒にここへ来たのかと尋ねたからだ。
レイチェル嬢は困った表情のまま、その質問に答えなかった。それを見た友人達が、再び彼女に対して非難の目を向ける。
━━ニコラス様が強引に連れてきただけなのに、責められるなんてあまりにも可哀想だ。
そうは思っても、彼女を庇うための言葉が見つからなかった。ニコラス様は外面がいいから、彼女を強引にここへ連れてきたと私が言っても誰も信じてくれないに決まっている。
どうすればいいかと思っていた時、ニコラス様がこっちに寄ってきた。
蔑ろにされても黙っている彼女を気の毒に思って、私は彼女の代わりに真実を伝える事にした。
「違います! 私もレイチェル嬢もそんな事を言っていません」
私の言葉に、ニコラス様も便乗した。
「そうそう。『身の程知らずの愛人』と言ったのは俺だから。どうやら、その子の記憶力は壊滅的みたいだね」
すると、彼は何を思ったのか、隣にいるレイチェルの肩を引き寄せた。
「レイチェルはこんなにも大人しくて分別のあるレディなのに」
そう言って彼はレイチェル嬢を優しく見つめながら、彼女の髪を撫でた。
それは、乙女ゲームのイベントスチルかと思うくらいに美しい光景だったけれど━━━━
私とケイン様が目の前にいる事をお構い無しにレイチェル嬢を愛でるのはいかがなものか。この場にいた誰もがそう思ったはずだ。
当事者であるレイチェル嬢は、顔を引き攣らせて、一歩、二歩と下がった。あからさまに嫌がっている。
しかし、そんな彼女に対して、友人達は侮蔑の眼差しを送った。ニコラス様が勝手に彼女を可愛がっただけなのに。理不尽な事に責められるのはレイチェル嬢の方だった。
レイチェル嬢は気まずそうにしながら、私に向き合った。
「私達がここに来る前、モニャーク公爵令嬢とミランダ嬢の間に、何があったのです?」
それは、目に見えて分かる程の話題のすり替えだった。けれど、ニコラス様が引き起こした事に対して、彼女に非難の視線が集まるのがあまりにも不憫だった。
だから、彼女の期待に応えて、簡単に事のあらましを伝えた。それから、ミランダにベッキーの悪口を今すぐ訂正して欲しいと要求したのだ。
しかし、ミランダは「私はそんな事、やってません」と泣いて嘘を吐くばかりで、一言の謝罪すらしない。険しい顔で私の話を聞いていたレイチェル嬢は彼女に向けて謝るようにと言った。
「なぜ君が命令をするんだ!」
途端に、ケイン様は怒号を飛ばした。
レイチェル嬢は正しい事を言っただけなのに、彼女が責め立てられるのはおかしい。
一言物申そうかと思ったら、レイチェル嬢は冷めた視線を彼に送りながらこう言った。
「彼女はケイン殿下の愛人なのですから。当然でしょう?」
その言葉を聞いたミランダは、傷付いたと言わんばかりに、はらはらと涙を流しながらケイン様にしがみついた。ケイン様はレイチェル嬢を睨みつけたけれど、彼女は一歩も引かず、冷ややかな視線で応じるのみだった。
結局、それからもミランダは私に謝罪をする事はなかった。彼女はやってないの一点張りで反省の色はなく、ケイン様は彼女の嘘を信じた。
そして、最終的に、ケイン様はミランダの手を引いてカフェテリアから出て行ったのだ。
━━あり得ない人達。
そう思っている中、レイチェル嬢が私のもとにやって来て、ミランダの代わりに謝罪をしてくれた。レイチェル嬢が悪いわけではないから、そうされるととても心苦しかった。
「それよりも、ありがとうございます。私の幼馴染のために、謝るように言っていただいて」
私は感謝を伝えた。ベッキーのために言ってくれた事が嬉しかったというこの気持ちを彼女に教えたかったのだ。
レイチェル嬢にはそれが伝わったのだと思う。彼女はにこりと笑ってそれを受け入れてくれた。ようやく見れた彼女の笑顔に、私はほんの少し安堵した。散々理不尽な目にあった彼女に、嫌な思いで終わって欲しくないと思っていたから。
でも、彼女の笑顔は長く持たなかった。私の友人がなぜニコラス様と一緒にここへ来たのかと尋ねたからだ。
レイチェル嬢は困った表情のまま、その質問に答えなかった。それを見た友人達が、再び彼女に対して非難の目を向ける。
━━ニコラス様が強引に連れてきただけなのに、責められるなんてあまりにも可哀想だ。
そうは思っても、彼女を庇うための言葉が見つからなかった。ニコラス様は外面がいいから、彼女を強引にここへ連れてきたと私が言っても誰も信じてくれないに決まっている。
どうすればいいかと思っていた時、ニコラス様がこっちに寄ってきた。
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