【2章完結/R-18/IF】神様が間違えたから。

花草青依

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2章 世界で一番嫌いな人

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「魔導四輪車が完成すれば、世紀の大発明になると思います。それを作る一助になれたらとは思うのですが……」
「何か問題が?」
「それをニコラス様やレイチェル妃が許してくれるかどうか」
 そう言うと、アーサー様とニュルンデル伯爵は顔を見合わせた。

「ニコラスはともかく、どうしてレイチェル妃の顔色を伺わなければいけないんだい?」
「え? だって、私達に充てられた予算を使う訳ですから、彼女にも確認を取らないと」
「彼女がそうしろと?」
「いいえ、そんな事はないです」
 レイチェル妃とは、もう何年もまともに話していない。私達は特段、連絡を取り合う事もなく、話をしても必要最低限の形式的なやり取りだけだった。

「レイチェル妃からは、『王太子妃の権限に踏み込むつもりはない』とはっきり言われてますから」
 そう言うと、アーサー様は息を吐いた。それから、小さな声で「それなら良かった」とつぶやいた。
 なぜそんな反応をされるのだろうと思って見つめていると、彼は慌て始めた。

「支援金をどうしてももらいたいわけじゃないからね?」
「ええ……。あの、どうしたんですか、急に?」
 尋ねると、伯爵は吹き出した。
「アーサー、素直に言ったら? エレノア様を心配しているだけだって」
「心配?」
「充てられたお金の使い道を側室レイチェル妃様に確認すると言われたら、普通は焦りますよ? エレノア様が不遇な扱いを受けてるんじゃないかって」
「そんなつもりじゃ……」
 アーサー様は伯爵を睨みつけた。

「ライオネル、余計な事は言わなくていい」
「でもね。俺も心配なんだ」
 笑っていた伯爵の顔が急に引き締まった。
「エレノア様の事だから、レイチェル妃様に優しさで配慮をしていると思うんですけど。ただ、もし、レイチェル妃様が『ダメだ』と言ったらどうするつもりですか」
「え……。それは、理由を聞いてみてから決めると思います」
「彼女はあなたを補佐する侍女ではないのですから、そうする必要はないのですよ」
「ライオネル。王太子妃が予算の振り分けをどのように行おうとも、それは俺達が口を挟んでいい事じゃない」
 いつになく真剣な眼差しでアーサー様は言った。ニュルンデル伯爵はどことなくさみしげな顔で「そうだね」とつぶやいた。

「すまない、ライオネルが失礼な事を言って」
「いえ。私を心配してくれての事ですから」
「魔導四輪車の開発の援助に関しては、君の判断に任せるから。嫌だと思うなら遠慮なく断ってもらっていい。それで、俺達の縁が切れる訳ではないから」
「はい。……決めるのにお時間をいただいても?」
「勿論。納得がいくまでゆっくりと考えて」
 アーサー様はそう言うと優しく笑った。

 それから、私は他の開発中の魔導具を見せてもらった。ニュルンデル伯爵は用事があるからと言って、途中で帰ってしまったけれど、その後もアーサー様は、熱心に説明をしてくれた。

「すごいですね」
 見せられたヘアアイロンに対して称賛の言葉を投げかけると、アーサー様はふふっと笑った。
「褒めてもらえるのはありがたいけど、その言葉はもう何度も聞いているよ」
 言われて、無意識に同じ言葉を繰り返している事に気が付いた。

「でも、本当にすごいんですから。早く私の手元に届くくらい、普及して欲しいと思ってるくらいに」
「それなら、後で試作品を一つ送らせてもらうよ」
「え……」
 物をねだってしまったみたいになってしまった。そう思っていると、アーサー様はまた笑った。

「遠慮しなくていいんだ。王太子妃が使用しているとなれば、宣伝になる上、商品に箔が付くから」
「そうなんですか」
「ローズが良い例だろう?」
「ああ……」
 ローズ王女殿下の持ち物は話題に上がるようになると、爆発的に流行する傾向にあった。
「私が王女殿下のように流行らせる事ができるのでしょうか」
「大丈夫だよ。王太子妃の動向にみんな注目しているから。君が振る舞ったお茶菓子は、絶賛されていて、工房が大忙しになっているくらいだからね」
 アーサー様に微笑みかけられて、気恥ずかしくなった。

「それに君も最近は社交活動を頑張っているそうじゃないか」
 そう言われて思わず苦笑いを浮かべそうになった。ニコラス様から逃れるためにしていた行動がまさか、役に立つとは思わなかった。
「だから、遠慮しないで。ね?」
 優しく微笑まれて、私はつい頷いてしまった。
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