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1章 神様が間違えたから
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そして、入学を記念するパーティーでも、彼らのイベントは起こった。
ケイン殿下は私の婚約者だから、私をエスコートして入場した。そして、しばらくは二人で一緒にいたけれど、挨拶の兼ね合いで私達は離れた。それは、全くと言っておかしい事ではない。
しかし、その隙に、ケイン殿下がミランダとファーストダンスを踊るのはいかがなものだろう。舞い踊る彼らを見てそのイベントを思い出した私は、愕然とせざるを得なかった。
━━ケイン殿下は、何をやっているのかしら?
私と彼の関係は、決して悪い物ではなかったはずだ。
親同士が決めた婚約だから、互いに恋愛感情はなかった。しかし、それでも、私達は互いを尊敬し、尊重し合う関係を築けていたと思っていたのに・・・・・・。
━━とんだ恥を搔かされたわ。
怒りでわなわなと震えている事に気がついて、私は拳を握りしめた。
遠巻きに私を見る人々の視線が痛かった。彼らは私を値踏みしている。そして、"第二王子"と私の関係が盤石な物でないと思ったに違いない。
━━あれ程、ニコラス殿下に対抗心を持っているくせに。なぜ、付け入る隙を与えるの?
私は疑問を抱かざるを得なかった。
ケイン殿下はニコラス殿下を嫌っている。天才的に何でも卒なくニコラス殿下に対して、彼はかなりの劣等感を抱いているのだ。
それを搔き消そうとするかのように、ケイン殿下は「後継者争いでは負けていられない」と息巻いていた。
それなのに彼は、私とケイン殿下の仲が疑われるような事を彼自身がしでかしたのだ。これをきっかけに、貴族達が第一王子の側に付くべきと考え始めるかもしれないのに。
━━まずいわ。
私はバッドエンド回避のために、いくつかのプランを練っていた。
もし、ゲームのシナリオが始まり、ケイン殿下とミランダが恋に落ちたのなら。私はミランダを側妃にする事を許すつもりだった。
そして、私自身はケイン殿下を徹底的にサポートし、彼を王太子にさせる算段までつけていたのだ。私が彼にとっての最大の後ろ楯であると証明できれば、ケイン殿下は安易に私を殺せないだろうと思っていたからだ。
だから、私は常日頃から彼に伝えていた。
「もし、ケイン殿下に好きな人ができても、私はその仲を引き裂くつもりはございません。しかし、公の場では、私を第一にすると約束して下さい。第一王子派から、いらぬ攻撃を受けてはいけませんから」
彼はその話を聞く度に、「分かった」と答えていたのだけれど・・・・・・。
━━何も分かっていないじゃない!
苛立つ私の耳にヒソヒソと話す声が耳に入った。
「彼女、ケイン殿下から軽んじられているのね」
「折角、挨拶を交わしましたのに。時間の無駄でしたわ」
彼女達は私を「取るに足らない存在だ」と、判断したようだ。一度、そんな烙印を押されてしまっては、挽回するのにどれだけの時間がかかるのか・・・・・・。これからの社交活動を思うと、頭が痛くなってきた。
「レイチェル」
親しげに呼びかけられて、私は振り返った。
「・・・・・・ニコラス、殿下?」
彼は碧い目を細めて穏やかに笑っている。
「入学おめでとう」
「ありがとうございます」
彼がこのタイミングで話しかけてくるのは不自然だった。何か意図があるのかもしれないと身構えていると、彼はふっと笑った。
「祝いの言葉をかける事すら、いけないのかい?」
「いいえ。そんな事は・・・・・・」
しかし、彼はケイン殿下の異母兄であり、彼にとって私は政敵だ。そんな私に声をかける理由などないだろうに。
━━本当に、彼は何を考えているの?
そもそも、私達と同い年である彼の婚約者のエレノアは、どこにいるのだろう。本来なら、彼にエスコートされて、一緒にいるはずなのに。
「モニャーク公爵令嬢は?」
「エレノアは、親友と歓談中だ」
ニコラス殿下の視線を辿ると、彼女は確かに同い年の令嬢達と楽しそうに話していた。
「それより、レイチェル」
彼は手を差し出してきた。
「俺と踊ってくれない?」
彼の言葉に、私は目を丸くさせた。
そして、入学を記念するパーティーでも、彼らのイベントは起こった。
ケイン殿下は私の婚約者だから、私をエスコートして入場した。そして、しばらくは二人で一緒にいたけれど、挨拶の兼ね合いで私達は離れた。それは、全くと言っておかしい事ではない。
しかし、その隙に、ケイン殿下がミランダとファーストダンスを踊るのはいかがなものだろう。舞い踊る彼らを見てそのイベントを思い出した私は、愕然とせざるを得なかった。
━━ケイン殿下は、何をやっているのかしら?
私と彼の関係は、決して悪い物ではなかったはずだ。
親同士が決めた婚約だから、互いに恋愛感情はなかった。しかし、それでも、私達は互いを尊敬し、尊重し合う関係を築けていたと思っていたのに・・・・・・。
━━とんだ恥を搔かされたわ。
怒りでわなわなと震えている事に気がついて、私は拳を握りしめた。
遠巻きに私を見る人々の視線が痛かった。彼らは私を値踏みしている。そして、"第二王子"と私の関係が盤石な物でないと思ったに違いない。
━━あれ程、ニコラス殿下に対抗心を持っているくせに。なぜ、付け入る隙を与えるの?
私は疑問を抱かざるを得なかった。
ケイン殿下はニコラス殿下を嫌っている。天才的に何でも卒なくニコラス殿下に対して、彼はかなりの劣等感を抱いているのだ。
それを搔き消そうとするかのように、ケイン殿下は「後継者争いでは負けていられない」と息巻いていた。
それなのに彼は、私とケイン殿下の仲が疑われるような事を彼自身がしでかしたのだ。これをきっかけに、貴族達が第一王子の側に付くべきと考え始めるかもしれないのに。
━━まずいわ。
私はバッドエンド回避のために、いくつかのプランを練っていた。
もし、ゲームのシナリオが始まり、ケイン殿下とミランダが恋に落ちたのなら。私はミランダを側妃にする事を許すつもりだった。
そして、私自身はケイン殿下を徹底的にサポートし、彼を王太子にさせる算段までつけていたのだ。私が彼にとっての最大の後ろ楯であると証明できれば、ケイン殿下は安易に私を殺せないだろうと思っていたからだ。
だから、私は常日頃から彼に伝えていた。
「もし、ケイン殿下に好きな人ができても、私はその仲を引き裂くつもりはございません。しかし、公の場では、私を第一にすると約束して下さい。第一王子派から、いらぬ攻撃を受けてはいけませんから」
彼はその話を聞く度に、「分かった」と答えていたのだけれど・・・・・・。
━━何も分かっていないじゃない!
苛立つ私の耳にヒソヒソと話す声が耳に入った。
「彼女、ケイン殿下から軽んじられているのね」
「折角、挨拶を交わしましたのに。時間の無駄でしたわ」
彼女達は私を「取るに足らない存在だ」と、判断したようだ。一度、そんな烙印を押されてしまっては、挽回するのにどれだけの時間がかかるのか・・・・・・。これからの社交活動を思うと、頭が痛くなってきた。
「レイチェル」
親しげに呼びかけられて、私は振り返った。
「・・・・・・ニコラス、殿下?」
彼は碧い目を細めて穏やかに笑っている。
「入学おめでとう」
「ありがとうございます」
彼がこのタイミングで話しかけてくるのは不自然だった。何か意図があるのかもしれないと身構えていると、彼はふっと笑った。
「祝いの言葉をかける事すら、いけないのかい?」
「いいえ。そんな事は・・・・・・」
しかし、彼はケイン殿下の異母兄であり、彼にとって私は政敵だ。そんな私に声をかける理由などないだろうに。
━━本当に、彼は何を考えているの?
そもそも、私達と同い年である彼の婚約者のエレノアは、どこにいるのだろう。本来なら、彼にエスコートされて、一緒にいるはずなのに。
「モニャーク公爵令嬢は?」
「エレノアは、親友と歓談中だ」
ニコラス殿下の視線を辿ると、彼女は確かに同い年の令嬢達と楽しそうに話していた。
「それより、レイチェル」
彼は手を差し出してきた。
「俺と踊ってくれない?」
彼の言葉に、私は目を丸くさせた。
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