【2章完結/R-18/IF】神様が間違えたから。

花草青依

文字の大きさ
10 / 103
1章 神様が間違えたから

10

しおりを挟む
 エレノアによると、彼女達のクラスの文化祭実行委員会のメンバーは、作業を終えてカフェテリアでお茶をしていたそうだ。
 そこにやって来たミランダが、他に席が空いているのにも関わらず、エレノアに対して席を譲るようにと主張した。エレノアがそれを断ると口論になり、やがてミランダは、ここにはいないエレノアの幼馴染の悪口を言い始めたそうだ。

 説明を終えると、エレノアはミランダに謝罪を求めた。
「お気に入りの席だからどいてと言った事や、私への暴言は聞かなかった事にできますが、レベッカ・ライネ伯爵令嬢に対する悪口だけは許せません! 訂正して下さい!」
 ライネ伯爵家は、わが国ロズウェルの建国史に登場する由緒ある家門だった。そして、現ライネ伯爵は、王権の中枢を担う人物の一人であるのに、そこの娘を侮辱するだなんて・・・・・・。

 ━━ミランダは愚かにも程がある。

 私は、呆れ果てて首を振った。
「ミランダ嬢、モニャーク公爵令嬢に謝って」
 私が言うとミランダはわざとらしく怯えた目付きで私を見てきた。
「なぜ君が命令をするんだ!」
 ケイン殿下がミランダを庇う。
「彼女はケイン殿下の愛人なのですから。当然でしょう?」
 愛人の管理をする事は、正妻の務めだ。彼女がケイン殿下に不利をもたらす行為をするのなら、私がそれを咎めるのは、当然の事だった。

 ミランダはわざとらしくもはらはらと涙を流してケイン殿下にしがみついた。ケイン殿下は私を睨みつけるけれど、そんな事はどうでもよかった。

 ━━ライネ伯爵家の支持を、第一王子派に奪われるわけにはいかないわ。

 ライネ伯爵家は、現状、どちらの王子も支持していない。モニャーク公爵家と親交が深いため、「いずれ第一王子を支持するのでは?」と言われてきたが、それでも、長い間、中立を守ってきた家門だ。
 しかし、この事がライネ伯爵の耳に入ったら? ケイン殿下の愛人が娘を馬鹿にした上、彼自身がたしなめる事をしなかったとなると、ライネ伯爵の目にどの様に映るかは明白だろう。

 現状、第一王子を支持する家門が増えつつある。それは、学園生活でのケイン殿下の素行が悪さを諸侯が憂慮した結果だった。

 だから、私はケイン殿下とミランダの行動に口を挟んでいるというのに・・・・・・。当の本人達には、それが理解できないらしい。
 ミランダは「そんな事をしていない」の一点張りで、どれだけ多くの証人がいようとも、そういえば押し通せると思っているらしい。
 一方のケイン殿下は、相変わらずミランダ以外の意見は聞くつもりがないらしい。私の話を聞かないのは勿論の事、観衆の非難する視線すら、彼は無視を決め込んだ。

「行こう」
 そして、最終的に、ケイン殿下はミランダの手を引いてカフェテリアから出て行った。

 ━━ああ、最悪だ。

 結局、こうなってしまうのか。
 どうして、ケイン殿下は分かってくれないのだろう。王太子の座を望むのなら、いい加減、少しは賢くなって欲しい。

 私は、酷い無力感を胸の奥に仕舞い込み、エレノアのもとに向かった。
 本当は、彼らの尻拭いなどしたくはないのだけれど、そうしないとますます状況が悪化する事は目に見えていたからだ。

「ごめんなさい。教育のなっていない子で」
 なじられる事を覚悟して言うと、エレノアは穏やかな表情で首を振った。
「いえ・・・・・・。レイチェル嬢が悪いわけではありませんから」
 エレノアは謝罪を拒否したのではなく、単純に、私に対して怒りを抱けないでいる様に見えた。
「それよりも、ありがとうございます。私の幼馴染のために、謝る様に言っていただいて」
 別にライネ伯爵令嬢のためを思ってした行動ではなかった。
 しかし、このいかにも善良そうな彼女には、私の意図を想像する事さえ、できないのだろう。

 ━━羨ましい。

 きっと彼女は蝶よ花よと大切に育てられたのだ。婚約者のために戦略的に立ち回る事を親から期待される事もないに違いない。
 だから、彼女は穏やかに暮らせているのだろう。

 ピキリと、頭の中に痛みが走った。

「ところで、ドルウェルク辺境伯令嬢」
 今まで、私達の様子を静かに伺っていたエレノアの友人が、声をかけてきた。
「どうして、ニコラス殿下と一緒にここへいらしたのです?」
 彼女の質問のせいだろうか。また、頭痛がした。
「それは・・・・・・」
 口を開いて、何と言えばいいのか迷った。

 自分より家柄の低い令嬢達に舐められた挙句、文化祭に関する雑務を押し付けられたとは言いたくなかった。第二王子の婚約者がそんな目に遭っているとなると、社交界でかろうじて私を支持してくれている人達が何と思うだろうか。
 でも、適当な嘘や言い訳も想い浮かばない。

 ━━ああ。何でもいいから、早く何かを言わないと。ニコラス殿下との関係を疑われる・・・・・・。

「勘違いしないで」
 まごついているとニコラス殿下が言った。そして、彼は私の隣りにやって来ると、令嬢に対峙したのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

処理中です...