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1章 神様が間違えたから
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※
学園を卒業して数週間経った19歳の春、国王陛下はニコラス殿下を王太子にすると宣言した。
━━やっと、後継者争いに終止符を打てた。
そう思って油断をしていたのがいけなかった。
私はニコラス殿下に召集されて、第一王子宮に訪れていた。彼が王太子となり、エレノアと結婚した後に、私の宮入りが決まっていたから。その話の詳細を聞くために呼ばれたのだけれど。
「この売女!」
第一王妃様がその情報をどこからか聞きつけたらしく、第一王子宮に入る直前の、王宮の廊下で私は彼女に襲われた。
「お前のせいだ! お前のせいで!!」
そんな事を喚き散らしながら、彼女は血走った目で私に調度品の壺で殴りかかってくる。
「第一王妃様、どうか、おやめ下さい!」
ニコラス殿下の侍女が彼女を止めようとすると、第一王妃様は彼女を突き飛ばし、その頭を蹴り飛ばした。侍女が気を失った事を確認すると、第一王妃様は再び私に壺を振りかざした。
私は咄嗟に腕で頭を庇い、何とか急所には当たらずに済んだけれど。腕から血が激しくぼたぼたと垂れてきて、とてもじゃないけれど、軽傷では済まなかった。
腕を押さえ込み、激痛に堪えていると第一王妃様は割れた壺の破片を持って私に拳を振りかざした。
「何をやっているんだ!」
男の叫び声に、第一王妃様は一瞬怯んだ。
私はその隙に僅かだけれど距離を取った。
走り寄ってきたエイメル公国のアーサー殿下は、第一王妃様を突き飛ばした。そして、彼女を取り押さえたのだけれど。第一王妃様は大人の男に押さえつけられているにも関わらず、もの凄い勢いで暴れていた。
「ライオネル、彼女を安全な所へ!」
「分かった」
ライオネルと呼ばれた男は私に肩をかして歩き始める。
そして、私はローズ王女殿下のいる王女宮へと連れて行かれた。
「どうしたの!?」
ローズ王女殿下は私を見て青ざめた。ライオネル卿が第一王妃様に襲われた事を知らせると、彼女は使用人に指示を出し、応援と救急を呼んだ。
「レイチェル嬢、こっちで楽にして」
ローズ王女殿下に言われるがまま、私はソファで横になった。
「大丈夫よ。すぐにニコラスが来るから」
彼女はそう言って、怪我をしていない方の手を握って私を励ました。
そうこうしている間にも、医者の先生がやって来て私の腕を診てくれた。
先生は私の腕を見て首を傾げた。
「流れた血の量から察するに、縫合が必要なはずなんだが・・・・・・」
そんな事をつぶやいて、彼は結局、傷口を消毒をした。それが滲みて痛くて喚いたけれど、先生は私の反応には目もくれず、傷口をじっくりと観察して薬を塗った。そして、「おかしいな」とつぶやきながら包帯を巻いていく。
「レイチェル!」
ちょうど包帯を巻き終えた時、ニコラス殿下が駆けつけた。
「怪我は大丈夫か」
「ええ。お薬を塗ってもらいましたから、大丈夫です」
そう言って起き上がろうとしたけれど、上手く力が入らなかった。
私の様子を見たニコラス殿下は、先生を睨みつける。
「ちゃんと処置はしたんだろうな」
「ええ勿論」
先生から話を聞いた彼は、しゃがみ込んで私のペンダントに触れた。
「軽症で済んだのは、これのおかげか」
言われてはっとした。
ペンダントに込められた魔法が傷を塞いだとしたら、この不思議な現象に合点がいく。
流れた血の量が多かったから、きっと貧血を起こして立ち上がれなくなっているのだろうけれど。
それでも、これがなけば、先生の言う通り、縫合が必要だったはずで、止血にももっと時間がかかったはずだ。
こんなに役に立ってくれる物の効果を疑っていただなんて。何だかとても恥ずかしい。
「ニコラス殿下のおかげです」
流れる血の量が多かった事から察するに、ペンダントがなければ重症だったのかもしれない。
私はそう思ったから彼に感謝を伝えたのだけれど、彼はどこか不満気だった。
「この程度の効果じゃ、期待できないな」
「何にです?」
彼は答える事もなく、私にお姫様抱っこをした。
「姉上、保護してくれてありがとうございます」
「お礼ならお兄様とライオネルに言って」
「・・・・・・分かりました。後で言っておきます」
そう言って彼は私を抱きかかえたまま、王女宮を出て行った。
※
王宮でのあの事件以来、ニコラス殿下は私に対して酷く過保護になってしまった。
私が家の外へ出るのを酷く嫌い、少し出かけるだけでも大人数の護衛を付けさせた。それに、我が家の中にまで護衛を駐在させたのだ。私が少し部屋から出て行くだけでも彼らは私の周りをうろつき、これはやり過ぎだと思った。
しかし、そんな護衛達も、私について来られない場所があった。
それが、ここ、国王陛下の謁見の間だった。
学園を卒業して数週間経った19歳の春、国王陛下はニコラス殿下を王太子にすると宣言した。
━━やっと、後継者争いに終止符を打てた。
そう思って油断をしていたのがいけなかった。
私はニコラス殿下に召集されて、第一王子宮に訪れていた。彼が王太子となり、エレノアと結婚した後に、私の宮入りが決まっていたから。その話の詳細を聞くために呼ばれたのだけれど。
「この売女!」
第一王妃様がその情報をどこからか聞きつけたらしく、第一王子宮に入る直前の、王宮の廊下で私は彼女に襲われた。
「お前のせいだ! お前のせいで!!」
そんな事を喚き散らしながら、彼女は血走った目で私に調度品の壺で殴りかかってくる。
「第一王妃様、どうか、おやめ下さい!」
ニコラス殿下の侍女が彼女を止めようとすると、第一王妃様は彼女を突き飛ばし、その頭を蹴り飛ばした。侍女が気を失った事を確認すると、第一王妃様は再び私に壺を振りかざした。
私は咄嗟に腕で頭を庇い、何とか急所には当たらずに済んだけれど。腕から血が激しくぼたぼたと垂れてきて、とてもじゃないけれど、軽傷では済まなかった。
腕を押さえ込み、激痛に堪えていると第一王妃様は割れた壺の破片を持って私に拳を振りかざした。
「何をやっているんだ!」
男の叫び声に、第一王妃様は一瞬怯んだ。
私はその隙に僅かだけれど距離を取った。
走り寄ってきたエイメル公国のアーサー殿下は、第一王妃様を突き飛ばした。そして、彼女を取り押さえたのだけれど。第一王妃様は大人の男に押さえつけられているにも関わらず、もの凄い勢いで暴れていた。
「ライオネル、彼女を安全な所へ!」
「分かった」
ライオネルと呼ばれた男は私に肩をかして歩き始める。
そして、私はローズ王女殿下のいる王女宮へと連れて行かれた。
「どうしたの!?」
ローズ王女殿下は私を見て青ざめた。ライオネル卿が第一王妃様に襲われた事を知らせると、彼女は使用人に指示を出し、応援と救急を呼んだ。
「レイチェル嬢、こっちで楽にして」
ローズ王女殿下に言われるがまま、私はソファで横になった。
「大丈夫よ。すぐにニコラスが来るから」
彼女はそう言って、怪我をしていない方の手を握って私を励ました。
そうこうしている間にも、医者の先生がやって来て私の腕を診てくれた。
先生は私の腕を見て首を傾げた。
「流れた血の量から察するに、縫合が必要なはずなんだが・・・・・・」
そんな事をつぶやいて、彼は結局、傷口を消毒をした。それが滲みて痛くて喚いたけれど、先生は私の反応には目もくれず、傷口をじっくりと観察して薬を塗った。そして、「おかしいな」とつぶやきながら包帯を巻いていく。
「レイチェル!」
ちょうど包帯を巻き終えた時、ニコラス殿下が駆けつけた。
「怪我は大丈夫か」
「ええ。お薬を塗ってもらいましたから、大丈夫です」
そう言って起き上がろうとしたけれど、上手く力が入らなかった。
私の様子を見たニコラス殿下は、先生を睨みつける。
「ちゃんと処置はしたんだろうな」
「ええ勿論」
先生から話を聞いた彼は、しゃがみ込んで私のペンダントに触れた。
「軽症で済んだのは、これのおかげか」
言われてはっとした。
ペンダントに込められた魔法が傷を塞いだとしたら、この不思議な現象に合点がいく。
流れた血の量が多かったから、きっと貧血を起こして立ち上がれなくなっているのだろうけれど。
それでも、これがなけば、先生の言う通り、縫合が必要だったはずで、止血にももっと時間がかかったはずだ。
こんなに役に立ってくれる物の効果を疑っていただなんて。何だかとても恥ずかしい。
「ニコラス殿下のおかげです」
流れる血の量が多かった事から察するに、ペンダントがなければ重症だったのかもしれない。
私はそう思ったから彼に感謝を伝えたのだけれど、彼はどこか不満気だった。
「この程度の効果じゃ、期待できないな」
「何にです?」
彼は答える事もなく、私にお姫様抱っこをした。
「姉上、保護してくれてありがとうございます」
「お礼ならお兄様とライオネルに言って」
「・・・・・・分かりました。後で言っておきます」
そう言って彼は私を抱きかかえたまま、王女宮を出て行った。
※
王宮でのあの事件以来、ニコラス殿下は私に対して酷く過保護になってしまった。
私が家の外へ出るのを酷く嫌い、少し出かけるだけでも大人数の護衛を付けさせた。それに、我が家の中にまで護衛を駐在させたのだ。私が少し部屋から出て行くだけでも彼らは私の周りをうろつき、これはやり過ぎだと思った。
しかし、そんな護衛達も、私について来られない場所があった。
それが、ここ、国王陛下の謁見の間だった。
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