【2章完結/R-18/IF】神様が間違えたから。

花草青依

文字の大きさ
38 / 103
1章 神様が間違えたから

38

しおりを挟む
 国王陛下は玉座に座り、私を見下ろしていた。
「こうして二人で会うのは初めてだな」
「はい。貴重な機会をいただき、光栄でございます」
 国王陛下は冷めた視線を私に送った。まるで何かを品定めするかのように。
 私はそれに気付かないふりをして、微笑んでみせる。

「肝が据わっているな」
 国王陛下はつぶやいた。
「お前はニコラスの伴侶にぴったりだ」
 嫌味な事を言うと思った。
「側室の私には、過ぎた褒め言葉にございます」
「ああ。すまなかった」
 国王陛下は悪びれもせずに形だけの謝罪をする。
「いえ。お気になさらないで下さい」
「うむ。して、今日、ここにお前を呼び出したわけだが」
「はい」
「ドルウェルク辺境伯令嬢には、謝罪と褒美を兼ねて、一つだけ、どんな願いでも叶えてやろう」
「謝罪と褒美・・・・・・ですか」
 謝罪はともかく、褒美を受け取る様な事をした覚えがない。不審がる私を見て、国王陛下は笑った。
「自覚はないのか。お前のおかげで邪魔な第一王妃を処理できたのだ」

 ━━含みのある言い方だわ。

 第一王妃様は、次期王太子の側室に対する殺人未遂並びに、エイメル大公に対する暴行の罪で、地下牢に幽閉されている。
 まだ裁判は開かれておらず、その罪と罰が確定していないけれど。おそらく、彼女は、最北端の刑務所に生涯幽閉されるはずだ。そこは極寒の地であり、整備もほとんどされていない劣悪な環境だと聞く。そして、送り込まれた者は数年も持たずに亡くなってしまうのだそうだ。

「あれは偶発的な出来事です」
 私は国王陛下に向かって言った。
「私如きが陛下の力添えなど、できるわけがないのですから」
 そう言うと、国王陛下はニコラス殿下がよくする、人を小馬鹿にしたような笑いを浮かべた。

「例えばだが」
「はい」
「第一王妃がお前の到着を知っていたのは不審に思わなかったか」
「・・・・・・」
「激情に駆られやすい性格ではあったが、あれでもあの女は王妃だった。あんな場所で暴れたらタダではすまん事を理解できる頭はあるだろう。それがなぜ、あんな暴れ方をしたのか気にならないか。そして、なぜあの日、エイメル大公があの場にいたのかも」
 私は笑った。

「いいえ。私の頭では想像もできませんでした。それに、もし、仮に、誰かが何かをしたとして・・・・・・。それを私が知って何になるのでしょう」
 だから、あれは「偶発的な事件だ」と私は強調した。
 私が国王陛下の謀略に付き合う必要はない。そして、これ以上、何かを言われたとしても、知らぬ存ぜぬ、理解できないと主張するつもりだった。

 国王陛下はふっと笑った。
「ああ、すまない。年寄りの夢物語に付き合わせてしまったな。それで、謝罪なんだが・・・・・・」
 「褒美」という名目が取れて内心ほっとした。あの事件の一端を担わされた事にされてはたまった物ではない。

「先程も言った通り、どんな願いであっても、一つだけ叶えてやろう。お前には多大な迷惑をかけたのだからな。それで今回の事は水に流してもらいたい」
「どんな事でも、ですか」
「ああ。望みとあらば、鉱山の一つや二つ、差し出してもいい。ドルウェルク家の繁栄を望むのなら、辺境伯の息子に高い地位を与えるのが良いかもしれん。もし、お前がニコラスとの関係に不満があるのなら、モニャーク公爵の娘を排すか。あるいは、お前をニコラスから解放してやろう」

 ━━ニコラス殿下からの解放・・・・・・?

「どうだ? 私が言ったものの中で気になるものはあったか」
 国王陛下は揺さぶりをかけるように、言葉を畳み掛けてきた。
「この選択で、お前の人生は大きく変わる事になるだろう。賢いお前なら、それはよく理解できるな?」
「・・・・・・陛下は、私がニコラス殿下の元を去っても問題ないとお思いでしょうか」
 国王陛下は目を細め、冷たい笑みを浮かべた。

「その方が、あれの管理をしやすかろう?」

 ━━ああ、やっぱりこの人も、人の皮を被った化け物だ。

 私は笑った。地獄に落ちてしまえと思いながら、天気の話をしているかのように。平然とした笑みを浮かべた。

「私、こう見えてもニコラス殿下の事が好きですから。例え国王陛下の命であっても、彼から離れたくはないのです」
 私は嘘を吐いた。

 ニコラス殿下を愛した事はなかった。今も、昔も。そして、これからも、愛する事はないだろう。
 しかし、それでも私は、彼を守りたいと思った。
 彼は私にとって、戦友のような存在になっていた。同じ目標に向かって苦労を分かち合い、信頼を寄せ合う。
 彼は私にとって、家族の次に大切な存在となっている。その事実に国王陛下の言葉で気付かされた。

 ━━ニコラス殿下を守らなければ。この地獄から。

 私はそう決意して、国王陛下に臨んだ。
 すると、陛下は私を見て、「そうか」と笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

処理中です...