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1章 神様が間違えたから
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国王陛下は玉座に座り、私を見下ろしていた。
「こうして二人で会うのは初めてだな」
「はい。貴重な機会をいただき、光栄でございます」
国王陛下は冷めた視線を私に送った。まるで何かを品定めするかのように。
私はそれに気付かないふりをして、微笑んでみせる。
「肝が据わっているな」
国王陛下はつぶやいた。
「お前はニコラスの伴侶にぴったりだ」
嫌味な事を言うと思った。
「側室の私には、過ぎた褒め言葉にございます」
「ああ。すまなかった」
国王陛下は悪びれもせずに形だけの謝罪をする。
「いえ。お気になさらないで下さい」
「うむ。して、今日、ここにお前を呼び出したわけだが」
「はい」
「ドルウェルク辺境伯令嬢には、謝罪と褒美を兼ねて、一つだけ、どんな願いでも叶えてやろう」
「謝罪と褒美・・・・・・ですか」
謝罪はともかく、褒美を受け取る様な事をした覚えがない。不審がる私を見て、国王陛下は笑った。
「自覚はないのか。お前のおかげで邪魔な第一王妃を処理できたのだ」
━━含みのある言い方だわ。
第一王妃様は、次期王太子の側室に対する殺人未遂並びに、エイメル大公に対する暴行の罪で、地下牢に幽閉されている。
まだ裁判は開かれておらず、その罪と罰が確定していないけれど。おそらく、彼女は、最北端の刑務所に生涯幽閉されるはずだ。そこは極寒の地であり、整備もほとんどされていない劣悪な環境だと聞く。そして、送り込まれた者は数年も持たずに亡くなってしまうのだそうだ。
「あれは偶発的な出来事です」
私は国王陛下に向かって言った。
「私如きが陛下の力添えなど、できるわけがないのですから」
そう言うと、国王陛下はニコラス殿下がよくする、人を小馬鹿にしたような笑いを浮かべた。
「例えばだが」
「はい」
「第一王妃がお前の到着を知っていたのは不審に思わなかったか」
「・・・・・・」
「激情に駆られやすい性格ではあったが、あれでもあの女は王妃だった。あんな場所で暴れたらタダではすまん事を理解できる頭はあるだろう。それがなぜ、あんな暴れ方をしたのか気にならないか。そして、なぜあの日、エイメル大公があの場にいたのかも」
私は笑った。
「いいえ。私の頭では想像もできませんでした。それに、もし、仮に、誰かが何かをしたとして・・・・・・。それを私が知って何になるのでしょう」
だから、あれは「偶発的な事件だ」と私は強調した。
私が国王陛下の謀略に付き合う必要はない。そして、これ以上、何かを言われたとしても、知らぬ存ぜぬ、理解できないと主張するつもりだった。
国王陛下はふっと笑った。
「ああ、すまない。年寄りの夢物語に付き合わせてしまったな。それで、謝罪なんだが・・・・・・」
「褒美」という名目が取れて内心ほっとした。あの事件の一端を担わされた事にされてはたまった物ではない。
「先程も言った通り、どんな願いであっても、一つだけ叶えてやろう。お前には多大な迷惑をかけたのだからな。それで今回の事は水に流してもらいたい」
「どんな事でも、ですか」
「ああ。望みとあらば、鉱山の一つや二つ、差し出してもいい。ドルウェルク家の繁栄を望むのなら、辺境伯の息子に高い地位を与えるのが良いかもしれん。もし、お前がニコラスとの関係に不満があるのなら、モニャーク公爵の娘を排すか。あるいは、お前をニコラスから解放してやろう」
━━ニコラス殿下からの解放・・・・・・?
「どうだ? 私が言ったものの中で気になるものはあったか」
国王陛下は揺さぶりをかけるように、言葉を畳み掛けてきた。
「この選択で、お前の人生は大きく変わる事になるだろう。賢いお前なら、それはよく理解できるな?」
「・・・・・・陛下は、私がニコラス殿下の元を去っても問題ないとお思いでしょうか」
国王陛下は目を細め、冷たい笑みを浮かべた。
「その方が、あれの管理をしやすかろう?」
━━ああ、やっぱりこの人も、人の皮を被った化け物だ。
私は笑った。地獄に落ちてしまえと思いながら、天気の話をしているかのように。平然とした笑みを浮かべた。
「私、こう見えてもニコラス殿下の事が好きですから。例え国王陛下の命であっても、彼から離れたくはないのです」
私は嘘を吐いた。
ニコラス殿下を愛した事はなかった。今も、昔も。そして、これからも、愛する事はないだろう。
しかし、それでも私は、彼を守りたいと思った。
彼は私にとって、戦友のような存在になっていた。同じ目標に向かって苦労を分かち合い、信頼を寄せ合う。
彼は私にとって、家族の次に大切な存在となっている。その事実に国王陛下の言葉で気付かされた。
━━ニコラス殿下を守らなければ。この地獄から。
私はそう決意して、国王陛下に臨んだ。
すると、陛下は私を見て、「そうか」と笑った。
「こうして二人で会うのは初めてだな」
「はい。貴重な機会をいただき、光栄でございます」
国王陛下は冷めた視線を私に送った。まるで何かを品定めするかのように。
私はそれに気付かないふりをして、微笑んでみせる。
「肝が据わっているな」
国王陛下はつぶやいた。
「お前はニコラスの伴侶にぴったりだ」
嫌味な事を言うと思った。
「側室の私には、過ぎた褒め言葉にございます」
「ああ。すまなかった」
国王陛下は悪びれもせずに形だけの謝罪をする。
「いえ。お気になさらないで下さい」
「うむ。して、今日、ここにお前を呼び出したわけだが」
「はい」
「ドルウェルク辺境伯令嬢には、謝罪と褒美を兼ねて、一つだけ、どんな願いでも叶えてやろう」
「謝罪と褒美・・・・・・ですか」
謝罪はともかく、褒美を受け取る様な事をした覚えがない。不審がる私を見て、国王陛下は笑った。
「自覚はないのか。お前のおかげで邪魔な第一王妃を処理できたのだ」
━━含みのある言い方だわ。
第一王妃様は、次期王太子の側室に対する殺人未遂並びに、エイメル大公に対する暴行の罪で、地下牢に幽閉されている。
まだ裁判は開かれておらず、その罪と罰が確定していないけれど。おそらく、彼女は、最北端の刑務所に生涯幽閉されるはずだ。そこは極寒の地であり、整備もほとんどされていない劣悪な環境だと聞く。そして、送り込まれた者は数年も持たずに亡くなってしまうのだそうだ。
「あれは偶発的な出来事です」
私は国王陛下に向かって言った。
「私如きが陛下の力添えなど、できるわけがないのですから」
そう言うと、国王陛下はニコラス殿下がよくする、人を小馬鹿にしたような笑いを浮かべた。
「例えばだが」
「はい」
「第一王妃がお前の到着を知っていたのは不審に思わなかったか」
「・・・・・・」
「激情に駆られやすい性格ではあったが、あれでもあの女は王妃だった。あんな場所で暴れたらタダではすまん事を理解できる頭はあるだろう。それがなぜ、あんな暴れ方をしたのか気にならないか。そして、なぜあの日、エイメル大公があの場にいたのかも」
私は笑った。
「いいえ。私の頭では想像もできませんでした。それに、もし、仮に、誰かが何かをしたとして・・・・・・。それを私が知って何になるのでしょう」
だから、あれは「偶発的な事件だ」と私は強調した。
私が国王陛下の謀略に付き合う必要はない。そして、これ以上、何かを言われたとしても、知らぬ存ぜぬ、理解できないと主張するつもりだった。
国王陛下はふっと笑った。
「ああ、すまない。年寄りの夢物語に付き合わせてしまったな。それで、謝罪なんだが・・・・・・」
「褒美」という名目が取れて内心ほっとした。あの事件の一端を担わされた事にされてはたまった物ではない。
「先程も言った通り、どんな願いであっても、一つだけ叶えてやろう。お前には多大な迷惑をかけたのだからな。それで今回の事は水に流してもらいたい」
「どんな事でも、ですか」
「ああ。望みとあらば、鉱山の一つや二つ、差し出してもいい。ドルウェルク家の繁栄を望むのなら、辺境伯の息子に高い地位を与えるのが良いかもしれん。もし、お前がニコラスとの関係に不満があるのなら、モニャーク公爵の娘を排すか。あるいは、お前をニコラスから解放してやろう」
━━ニコラス殿下からの解放・・・・・・?
「どうだ? 私が言ったものの中で気になるものはあったか」
国王陛下は揺さぶりをかけるように、言葉を畳み掛けてきた。
「この選択で、お前の人生は大きく変わる事になるだろう。賢いお前なら、それはよく理解できるな?」
「・・・・・・陛下は、私がニコラス殿下の元を去っても問題ないとお思いでしょうか」
国王陛下は目を細め、冷たい笑みを浮かべた。
「その方が、あれの管理をしやすかろう?」
━━ああ、やっぱりこの人も、人の皮を被った化け物だ。
私は笑った。地獄に落ちてしまえと思いながら、天気の話をしているかのように。平然とした笑みを浮かべた。
「私、こう見えてもニコラス殿下の事が好きですから。例え国王陛下の命であっても、彼から離れたくはないのです」
私は嘘を吐いた。
ニコラス殿下を愛した事はなかった。今も、昔も。そして、これからも、愛する事はないだろう。
しかし、それでも私は、彼を守りたいと思った。
彼は私にとって、戦友のような存在になっていた。同じ目標に向かって苦労を分かち合い、信頼を寄せ合う。
彼は私にとって、家族の次に大切な存在となっている。その事実に国王陛下の言葉で気付かされた。
━━ニコラス殿下を守らなければ。この地獄から。
私はそう決意して、国王陛下に臨んだ。
すると、陛下は私を見て、「そうか」と笑った。
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