【2章完結/R-18/IF】神様が間違えたから。

花草青依

文字の大きさ
39 / 103
1章 神様が間違えたから

39

しおりを挟む
「では、お前は何を望む?」
 国王陛下に再度問われて、私は確認をした。
「本当に、何でも叶えてくれますか」
「ああ。私ができる事なら何でもしようではないか」
「多少の不敬も寛大なお心でお許しになられると約束できます?」
「本当に駄目な事なら、聞かなかった事にしてやるから、言ってみなさい」
「では」
 国王陛下は私をじっと見つめた。
「ミランダ・サリューナを国王陛下のとして、王宮に迎え入れて下さい」
 私の申し出に、国王陛下は腹を抱えて笑い始めた。

 ━━怒らせてしまったかしら?

 あまりの笑いように、そう思った。けれど、国王陛下は、一通り笑い終えると、私に向かって言った。
「側室ではなく、で間違いないのだな?」
「はい。卑しき身であり、賢くもない女に、王妃の座は務まりませんから」
「そうよな・・・・・・。彼女はのように狡猾な振る舞いもできまい。そんな者に王妃の座は荷が重かろう」
 寵愛している第二王妃様の事を、「あれの母親」だなんて。国王陛下はやっぱり酷い人だ。

「しかし、お前も酷い女だ」
 国王陛下はそう言ってくつくつと笑う。
 彼には私の真意が理解できているらしい。
「お前の望み通り、ミランダ・サリューナは、この王宮で大切に囲ってやろう。私が死んだ時には、後見してやるのだぞ?」
 国王陛下が亡くなった時、私がミランダの処分を決めていいと匂わせてきた。
「かしこまりました」
「それから、この話は私達二人の秘密にしておこう。その方が、お前にとって都合が良いだろうからな」
「ありがとうございます」
「・・・・・・ああ。久しぶりに楽しい話ができた」
 国王陛下はそうつぶやくと、私に下がるように命令した。







 国王陛下との謁見を終えると、私はニコラス殿下のもとへ向かった。
 彼は私の顔を見るなり、強く抱きしめてきて、そのまま寝室に連れて行った。

「あっ、あっ」
 ベッドの上で、ニコラス殿下にもみくちゃにされて、私は甘い声をあげる。今日は心なしかいつもより激しい気がした。
「んっ、あっ! だめっ!」
 敏感な場所を絶妙に攻められて、気が変になりそうだった。
 私は彼の頬を掴むとキスをした。舌を絡ませて、じっくりと彼の口の中を味わう。彼は、キスだけは私にリードされるのが好きで、長く深く、口付けをすると、彼は目をとろんとさせた。

「国王陛下に嫉妬したの?」
 頷いた彼の瞳から不安げな気持ちを感じ取ったから、私は彼を引き寄せて、ぎゅっと抱きしめた。そして、そのまま髪を撫でて落ち着かせようとしたけれど。ニコラス殿下はまた腰を動かし始めた。
「あっ、待って!」
 彼は聞く耳を持たない。彼は容赦なく腰を動かし、乱れる私の姿をうっとりと眺めている。
「んっ、んっ」
 胸を愛撫され、お腹の奥をくすぐられて。私が果ててしまうのにそんなに時間はなかった。







 目が覚めると、ニコラス殿下は私の胸に顔を埋めていた。私は彼を優しく抱きしめて髪を撫でる。
 彼は寝返りをうって、私の顔色を伺った。
「そんなに私が国王陛下とお話をする事が嫌だったんですか」
 ニコラス殿下は頷いた。
「本当に・・・・・・。嫉妬深いんだから」
 私は笑って彼の頬を撫でた。
 そんな私を見て、ニコラス殿下はつぶやいた。
「陛下は、何と言っていた?」
「第一王妃様の件を謝罪してくれました」
「それだけ?」
「ええ」
 ニコラス殿下は眉間に皺を寄せた。

「嘘だね。あの男は君に何かを吹き込もうとしたはずだ」
「まあ。悪いお口」
「・・・・・・俺のもとから去る方法でも聞いた? それとも、その権利を与えられた? ・・・・・・もしそうなら、俺は絶対に許さない。あの男も、あの女も・・・・・・。何もかもを、俺は全部、ぶっ壊して」
 私は彼の口を手で塞いだ。
「私のために、善き王となるのでしょう? そんな事を言ってはいけません」
 そう言って、塞いだ手を離した。
「私はどこにも行きませんから。私の夫はニコラス殿下だけですよ?」

 言った途端、彼は飛び起きた。彼はキラキラした目で私を見つめてくる。
「期待、してもいい?」
「何をです?」
「君の、愛を」
 私は笑った。
「駄目。夫としてはあなたは最高だけれど、男としてはまだ愛せそうもないですから」
 ニコラス殿下は不満気な顔をして再び私の胸に顔を埋めた。

「レイチェルは酷い女だ。少しくらい夢を見させてくれたっていいじゃないか」
 ぶつぶつと文句を言う彼の頭を撫でる。
「夢なんて、見ない方がいいんです」
 私は言った。
「泥臭く生きている私達に、そんな物は似合わないでしょうから」
 そう言うと、ニコラス殿下は笑った。
「そうだね。これからも地道に頑張るよ」
 私は彼をぎゅっと抱きしめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

悪役皇女は二度目の人生死にたくない〜義弟と婚約者にはもう放っておいて欲しい〜

abang
恋愛
皇女シエラ・ヒペリュアンと皇太子ジェレミア・ヒペリュアンは血が繋がっていない。 シエラは前皇后の不貞によって出来た庶子であったが皇族の醜聞を隠すためにその事実は伏せられた。 元々身体が弱かった前皇后は、名目上の療養中に亡くなる。 現皇后と皇帝の間に生まれたのがジェレミアであった。 "容姿しか取り柄の無い頭の悪い皇女"だと言われ、皇后からは邪険にされる。 皇帝である父に頼んで婚約者となった初恋のリヒト・マッケンゼン公爵には相手にもされない日々。 そして日々違和感を感じるデジャブのような感覚…するとある時…… 「私…知っているわ。これが前世というものかしら…、」 突然思い出した自らの未来の展開。 このままではジェレミアに利用され、彼が皇帝となった後、汚れた部分の全ての罪を着せられ処刑される。 「それまでに…家出資金を貯めるのよ!」 全てを思い出したシエラは死亡フラグを回避できるのか!? 「リヒト、婚約を解消しましょう。」         「姉様は僕から逃げられない。」 (お願いだから皆もう放っておいて!)

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

義兄様と庭の秘密

結城鹿島
恋愛
もうすぐ親の決めた相手と結婚しなければならない千代子。けれど、心を占めるのは美しい義理の兄のこと。ある日、「いっそ、どこかへ逃げてしまいたい……」と零した千代子に対し、返ってきた言葉は「……そうしたいなら、そうする?」だった。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

処理中です...