41 / 103
1章 神様が間違えたから
41
しおりを挟む
※
季節はあっという間に過ぎ去り、20歳の春になった。私はローズ王女殿下とともに、リュミエール王国に向かう事となった。
王国が空間移動の魔法であるゲートを開いてくれたため、旅程は大きく短縮され、僅か3日間で、リュミエール王国の王都へと辿り着けた。
「長旅、お疲れ様でした」
結婚式の準備で忙しいにも関わらず、リュミエール王国の王太子、エドワード殿下は私達を迎えてくれた。
「お迎えいただき、ありがとうございます。そして、結婚、おめでとうございます。義妹共々、結婚式の日を楽しみにしていますね」
ローズ王女殿下は社交辞令を述べると、エドワード殿下はお礼の言葉を返した。
案内された部屋に入り、二人きりになると、私達の緊張は解れた。
「・・・・・・どうせなら、異母弟はあんな子が良かったわ」
王女殿下がぽつりと漏らした言葉に、思わず私は笑ってしまった。
「私は困りますわ。あんな方が義弟なら、ニコラス殿下の機嫌が悪くなってしまいそうで」
「そうね。あの子はエドワード殿下があなたをちょっと見ただけで拗ねちゃいそうだもの」
「ローズ王女殿下! そう言う意味で言ったわけではなく・・・・・・」
彼女はあははと笑って鞄から荷物を取り出した。
「ここは思ったよりも過ごしやすそうだから、観光がてらゆっくりさせてもらいましょう」
彼女の言葉には、これから王宮で生きていく私に対する労いの言葉が含まれているのを感じた。
※
春の柔らかい日差しが降り注ぐ庭で、エドワード王太子夫妻の披露宴が行われた。
そして、私とローズ王女殿下は、改めて王太子夫妻に挨拶をしているのだけれど・・・・・・。
ゲームで見た絶世の美女が、目を輝かせてローズ王女殿下をじっと見つめている。
━━氷の令嬢?
『夢見る乙女のメモリアル2』の悪役令嬢、イザベラ・モランは無表情であるがゆえに、そんな異名で呼ばれていたけれど。
━━普通に表情、あるわよね?
この、ゲームとの変わり様・・・・・・。彼女もまた、私と同じ転生者なのだろうか。
それにしても、彼女はうっとりとした表情で食い入るようにローズ王女殿下を見つめている。それは、もう。失礼なくらいに。
ローズ王女殿下が困り笑いを浮かべると、エドワード殿下がイザベラの腰を引き寄せた。
「ベラ、結婚早々、よそ見はいけないな」
そう言われたイザベラはようやく王女殿下を見るのをやめた。
「まあ、仲がよろしいんですね」
王女殿下は笑って彼女の失礼を許した。
「そうだったわ。エイメル大公からの贈り物を預かって来たんです」
ローズ王女殿下はそう言うと、侍女に指示を出した。
「どうぞ。お納め下さい」
そう言って差し出されたのは揃いのターコイズのブローチだった。
「まあ! エドの瞳と同じ」
イザベラは眩い程の笑顔をエドワード殿下に向ける。
「そうだね」
彼は微笑んでイザベラの頭を撫でた。
━━公然の場でよくもまあ・・・・・・。
いちゃいちゃする二人に「恥ずかしくないのかしら?」と思うものの、不思議と嫌な感じはしなかった。
「素敵な贈り物をありがとうございます。これはもう、家族の記念日の時には、毎回、身につけますわ」
「そこまで気に入ってくれたのなら、エイメル大公もきっとお喜びになる事でしょう」
ローズ王女殿下は笑ってそう言った。
※
結婚式が終わってからも、私達は王宮に滞在させてもらった。
イザベラはローズ王女殿下にすっかりと懐いてしまったらしく、彼女のもとを頻繁に訪れていた。そして、今日も「他国の文化の勉強」という名目でイザベラは王女殿下のもとに教えを乞いに来ている。
対して私は、暇を持て余していた。する事もなかったからお昼寝をしていると、エドワード殿下が来たと侍女に告げられた。
私は急いで起きて彼を迎え入れると、エドワード殿下は老年の男を連れてきていた。
「ご機嫌よう。どうかなさいましたか」
尋ねると彼は、「そのペンダントの補強をさせて欲しい」と言った。
「えっと?」
「そのペンダントに込められた魔法に綻びができていますから。修理した方がいいと思って賢人を呼んだのです」
━━ニコラス殿下にもらったこれが壊れかけているの?
私の疑問は、食い入るようにペンダントを見つめる賢人によって吹き飛ばされた。私は慌てて彼に挨拶をする。
「賢人の方とは知らず、挨拶を致さず申し訳ありませんでした」
「いや。構わん」
いくら賢人が優れた魔法使いで敬われる存在だとしても、他国の王太子の側室に対して、それはいささか無礼な物言いだった。
しかし、学者や魔法使いの人々は変わり者が多いから、気にしたら負けだろう。
「それより、それをよく見せてみろ」
そう言って彼は乱暴にも、ペンダントを引ったくろうとした。エドワード殿下は慌てて止めに入ったのは言うまでもない。
「すみません、レイチェル様。彼は、魔塔籠もりの偏屈家で、常識というものを忘れてしまったんです」
内心、ハラハラしているであろう彼がかわいそうになって、私は賢人の無礼を許した。
「しかし、修理をしてもらおうにも。残念ながら、その報酬に相応しいお金を、私は持ち合わせておりませんの」
「リュミエールの王室から既に金はもらっておる」
賢人はそう言うと、早くしろと言わんばかりに手を出してきた。
「えっと・・・・・・?」
エドワード殿下を見れば、彼は作り笑いを浮かべて言った。
「これは『親交の印』と思って、おまかせいただけないでしょうか」
どうやら、彼は私を通して、ニコラス殿下との関係を強く持ちたいらしい。
━━私は、そんなに役に立つ存在じゃないのに。
そう思いながらも、私はペンダントを差し出した。そうしないと、彼らは帰ってくれないと思ったからだ。
季節はあっという間に過ぎ去り、20歳の春になった。私はローズ王女殿下とともに、リュミエール王国に向かう事となった。
王国が空間移動の魔法であるゲートを開いてくれたため、旅程は大きく短縮され、僅か3日間で、リュミエール王国の王都へと辿り着けた。
「長旅、お疲れ様でした」
結婚式の準備で忙しいにも関わらず、リュミエール王国の王太子、エドワード殿下は私達を迎えてくれた。
「お迎えいただき、ありがとうございます。そして、結婚、おめでとうございます。義妹共々、結婚式の日を楽しみにしていますね」
ローズ王女殿下は社交辞令を述べると、エドワード殿下はお礼の言葉を返した。
案内された部屋に入り、二人きりになると、私達の緊張は解れた。
「・・・・・・どうせなら、異母弟はあんな子が良かったわ」
王女殿下がぽつりと漏らした言葉に、思わず私は笑ってしまった。
「私は困りますわ。あんな方が義弟なら、ニコラス殿下の機嫌が悪くなってしまいそうで」
「そうね。あの子はエドワード殿下があなたをちょっと見ただけで拗ねちゃいそうだもの」
「ローズ王女殿下! そう言う意味で言ったわけではなく・・・・・・」
彼女はあははと笑って鞄から荷物を取り出した。
「ここは思ったよりも過ごしやすそうだから、観光がてらゆっくりさせてもらいましょう」
彼女の言葉には、これから王宮で生きていく私に対する労いの言葉が含まれているのを感じた。
※
春の柔らかい日差しが降り注ぐ庭で、エドワード王太子夫妻の披露宴が行われた。
そして、私とローズ王女殿下は、改めて王太子夫妻に挨拶をしているのだけれど・・・・・・。
ゲームで見た絶世の美女が、目を輝かせてローズ王女殿下をじっと見つめている。
━━氷の令嬢?
『夢見る乙女のメモリアル2』の悪役令嬢、イザベラ・モランは無表情であるがゆえに、そんな異名で呼ばれていたけれど。
━━普通に表情、あるわよね?
この、ゲームとの変わり様・・・・・・。彼女もまた、私と同じ転生者なのだろうか。
それにしても、彼女はうっとりとした表情で食い入るようにローズ王女殿下を見つめている。それは、もう。失礼なくらいに。
ローズ王女殿下が困り笑いを浮かべると、エドワード殿下がイザベラの腰を引き寄せた。
「ベラ、結婚早々、よそ見はいけないな」
そう言われたイザベラはようやく王女殿下を見るのをやめた。
「まあ、仲がよろしいんですね」
王女殿下は笑って彼女の失礼を許した。
「そうだったわ。エイメル大公からの贈り物を預かって来たんです」
ローズ王女殿下はそう言うと、侍女に指示を出した。
「どうぞ。お納め下さい」
そう言って差し出されたのは揃いのターコイズのブローチだった。
「まあ! エドの瞳と同じ」
イザベラは眩い程の笑顔をエドワード殿下に向ける。
「そうだね」
彼は微笑んでイザベラの頭を撫でた。
━━公然の場でよくもまあ・・・・・・。
いちゃいちゃする二人に「恥ずかしくないのかしら?」と思うものの、不思議と嫌な感じはしなかった。
「素敵な贈り物をありがとうございます。これはもう、家族の記念日の時には、毎回、身につけますわ」
「そこまで気に入ってくれたのなら、エイメル大公もきっとお喜びになる事でしょう」
ローズ王女殿下は笑ってそう言った。
※
結婚式が終わってからも、私達は王宮に滞在させてもらった。
イザベラはローズ王女殿下にすっかりと懐いてしまったらしく、彼女のもとを頻繁に訪れていた。そして、今日も「他国の文化の勉強」という名目でイザベラは王女殿下のもとに教えを乞いに来ている。
対して私は、暇を持て余していた。する事もなかったからお昼寝をしていると、エドワード殿下が来たと侍女に告げられた。
私は急いで起きて彼を迎え入れると、エドワード殿下は老年の男を連れてきていた。
「ご機嫌よう。どうかなさいましたか」
尋ねると彼は、「そのペンダントの補強をさせて欲しい」と言った。
「えっと?」
「そのペンダントに込められた魔法に綻びができていますから。修理した方がいいと思って賢人を呼んだのです」
━━ニコラス殿下にもらったこれが壊れかけているの?
私の疑問は、食い入るようにペンダントを見つめる賢人によって吹き飛ばされた。私は慌てて彼に挨拶をする。
「賢人の方とは知らず、挨拶を致さず申し訳ありませんでした」
「いや。構わん」
いくら賢人が優れた魔法使いで敬われる存在だとしても、他国の王太子の側室に対して、それはいささか無礼な物言いだった。
しかし、学者や魔法使いの人々は変わり者が多いから、気にしたら負けだろう。
「それより、それをよく見せてみろ」
そう言って彼は乱暴にも、ペンダントを引ったくろうとした。エドワード殿下は慌てて止めに入ったのは言うまでもない。
「すみません、レイチェル様。彼は、魔塔籠もりの偏屈家で、常識というものを忘れてしまったんです」
内心、ハラハラしているであろう彼がかわいそうになって、私は賢人の無礼を許した。
「しかし、修理をしてもらおうにも。残念ながら、その報酬に相応しいお金を、私は持ち合わせておりませんの」
「リュミエールの王室から既に金はもらっておる」
賢人はそう言うと、早くしろと言わんばかりに手を出してきた。
「えっと・・・・・・?」
エドワード殿下を見れば、彼は作り笑いを浮かべて言った。
「これは『親交の印』と思って、おまかせいただけないでしょうか」
どうやら、彼は私を通して、ニコラス殿下との関係を強く持ちたいらしい。
━━私は、そんなに役に立つ存在じゃないのに。
そう思いながらも、私はペンダントを差し出した。そうしないと、彼らは帰ってくれないと思ったからだ。
10
あなたにおすすめの小説
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる