【2章完結/R-18/IF】神様が間違えたから。

花草青依

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1章 神様が間違えたから

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 あの夜から、エレノアとは夜を共にしていない。彼女に子供を産ませる事を諦めたわけではないが、今はあの女の顔をなるべく見たくはなかった。

 俺達は、険悪な雰囲気の中、各国を巡り、先日まで、ローズ王女とレイチェルがいたリュミエール王国に辿り着いた。

「お会いできる日をお待ちしておりました。ニコラス王太子」
 エドワード王太子はそう言うと俺に手を差し出してきた。
「先日は姉上とレイチェルが世話になったね。・・・・・・ああ、それと。結婚、おめでとう」
 そう言って俺は彼の手を握る。
「そちらも、おめでとうございます」
 エドワード王太子は柔和な笑みを浮かべた。

 エレノアにはリュミエール王太子妃の相手をさせて、俺とエドワード王太子は散歩に出かける事になった。
 彼は、レイチェルから聞いていた通りの理性的かつ理知的な男だった。少し話をしただけでその教養とコミュニケーション能力の高さが伺い知れた。

 ━━これは、レイチェル好みの男じゃないか。

 レイチェルは外面よりも内面を重視していた。
 母親に似て女のように美しいと言われる俺の顔を、彼女は全く評価しない。せいぜい「髪の毛、サラサラでいいわね」と褒める程度だった。
 だが、そんな彼女は内面に関する事となると、注文が激しくなる。
 常に理性的で穏やかでいろ、知性を感じさせない人間は嫌い、王太子として常に国の事を考えておけ、仕事は丁寧かつ迅速に行えないのは嫌。
 レイチェルが欲するのは、そんな完璧な為政者だった。

 ━━この男、レイチェルと頻繁に接触したんだって?

 彼女に付けていた侍女から報告を受けた。この男は俺のレイチェルに媚を売っていたらしく、よく一緒にお茶や散歩をしていたそうだ。

 ━━他国の王太子でなければ酷い目に遭わせてやる所だが・・・・・・。

「ニコラス王太子?」
 エドワード王太子は怪訝そうな顔で俺を見ていた。
「俺の案では、やはり、ロズウェル王国での商売は厳しいのでしょうか」
 俺が険しい表情になっていたのは、彼が話していた商談の内容に関する反応だと思われたらしい。
「いや・・・・・・。姉上から、賛同の声をもらえたのだろう?」
「はい。検討の余地は多いにあるから、一度話を持ち帰らせて欲しいと言っていましたが・・・・・・」
 ローズ王女は、自分が囲っている商会に、エドワード王太子の商談を持っていくつもりなのだろう。
「それなら、下手に事を起こすよりもその返事を待った方がいい。姉上の性格からして、駄目な物は駄目と言うし、もし、別口で契約して彼女のプライドを傷付けたとなると・・・・・・。すごく面倒な事になるぞ」

 ローズ王女は一度敵と見做した者は滅多な事がない限り許す事はない。そういう所は国王陛下にそっくりで、俺と彼女は同じ血を引いているのだと思い知らされる。
「そうなんですね。焦って失礼な事をしそうになりました」
「しかし、写真機とか言ったか・・・・・・。それは魔導技術と上手い事組み合わせれば、使い勝手が良くなるだろうし、普及の余地もありそうだな」
「ええ。それに、記録や証拠品、記念品としての役割を与えられたのなら、大きな需要が生まれると思うのです」
「ああ、俺もそう思うよ」

 ━━この男は、レイチェル相手にもこうやって話していたんだろうか。

 彼女曰く、エドワード王太子は、国力が衰えて「弱小国」と揶揄されるようになったリュミエール王国の再興を目指しているそうだ。彼は、そのために穏やかな形での社会構造の改革を考えているらしい。だから、こうやって新しい道具を他国に販売して、改革に必要な資金を集めようと奔走しているのだそうだが・・・・・・。

 ━━国の事を理知的に考えて理性的に行動を起こし、迅速かつ丁寧に仕事をする・・・・・・。俺は、この男に負けてないか。

 そう思うと余計に腹が立ってきた。

 エドワード王太子は俺の気持ちに気付いていないらしい。穏やかな笑顔をこちらに向けてレイチェルの話題を切り出した。
「ところで、レイチェル様はお元気にされていますか」
「・・・・・・ああ」
 新婚旅行に出発するまでの間。たった3日間ではあるが、彼女の体調は比較的に良かった。
「リュミエールでの暮らしが良かったのか、身体の調子が良いと嬉しそうに言っていたよ」
「そうでしたか。賢人もさぞ、喜ばれる事でしょう」
 エドワード王太子は、心底嬉しそうに笑った。

 そういえば、レイチェルが言っていた。エドワード王太子に言われるがまま、ペンダントを賢人に渡したのだと。
「そんなに壊れていたのか、あれは?」
 魔法の扱いが上手くないロズウェル王国の人間だからだろうか。俺達の目ではあのペンダントの変化に全く気付けなかった。
「ええ」
 そう言ってエドワード王太子はちらりと周囲を確認し、声を顰めた。
「生命力の魔法が大怪我を治し、身体の内側を蝕む病に対抗しているような・・・・・・。そんな淀みを、あのペンダントから感じました」
 言われて俺は笑顔を取り繕う事が出来なくなった。
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