【2章完結/R-18/IF】神様が間違えたから。

花草青依

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1章 神様が間違えたから

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 突然の来訪に、ローズ王女殿下は嫌な顔一つせず、歓迎してくれた。

「久しぶり。・・・・・・少し顔色が良くなったわね?」
 ここ最近は、ストレスが少ないからか、頭痛薬を飲む頻度が減っている。
「はい。これも、お茶とお菓子を送って下さる王女殿下のおかげです」
「そうだと嬉しいわ」
 彼女はそう言うとシトラスの香るお茶を出してくれた。

「良い匂いですね」
「こういう香りは好みかしら?」
「ええ。大好きです」
「それなら、シトラスのアロマオイルを持って帰るといいわ。贔屓にしている商団がサンプルにくれたの」
「良いんですか」
「ええ。量が多くて使いきれなかったから。今は色んな人にお裾分けしている所よ」
 お裾分けという名の宣伝なのだろう。社交界の華であるローズ王女殿下が配れば、流行る事は間違いないから。
「ありがとうございます。マッサージの時に使わせてもらいますね」
「あら、いいわね。リラックス効果が高まりそうだわ」
 私達は笑い合うとお茶を飲んだ。

「それで、今日はどうしたの? あなたが第一王子宮の外を出るだなんて珍しいわね」
「大した事ではないんですよ? ただ、お聞きしたい事がありまして」
 教会への献金について話すと、ローズ王女殿下は「そうね・・・・・・」とつぶやいた。

「ニコラスの名前で勝手に出すのはやめた方がいいわ。王太子妃であるエレノア妃ならまだしも、あなたがそれをやれば、別の意味を持たせようとする人が出てくるでしょうから」
「やはり、そうですか」
「うん。それから、エレノア妃の名前で出すのも良くないわね。王太子妃に充てられたお金を、あなたが勝手に使い込んだと見なされるでしょう」
「はい」
「となると、私との連名にするか、ドルウェルク家に献金を頼む事が無難ではあるんだけれど・・・・・・。それだとあなたの狙いからは外れるのよね?」
「そうですね」
 ローズ王女殿下は口元に手をあててじっくりと考えた。

「これはもう、ニコラスに手紙を出して、彼から献金するように促してもらうしかないわね」
「でも、それだと献金の受付の締め切り日までに間に合わないと思うのですが」
「それは教会側に待ってもらえるように、説明とお願いの手紙を書くのよ」
「私の名義で、ですか」
「心細いなら私の名前も入れる?」
「そうしてもらえると助かります」
「それじゃあ、後で手紙を持って来て。サインするから」
 彼女はそう言うと、お茶を飲んだ。







 ニコラス殿下に献金をお願いする手紙を書いたついでに、私個人の手紙も同封させる事にした。

「あなたの帰りを心待ちにしております」

 一文だけの短い手紙に、私は恋しさを詰め込んだ。

 それから約3週間後、ニコラス殿下から手紙が返ってきた。「追加の献金を彼の名義で出すように」と命令形式で書かれたそれを見て、彼はやっぱり、私の事を分かっているのだと思った。
「ニコラス殿下から献金するようにという命が下ったので、準備をして」
 そう言えば、誰も私に反発できないから。私は随分と楽をさせてもらえた。

 そして、私個人に宛てた手紙。そこには一言だけ「会いたい」と記されていた。
 私はそれを毎日見ている。それはもう、馬鹿馬鹿しい程に、何度も。
 彼が帰ってくるまでずっと繰り返していた。







 "あなたの帰りを心待ちにしております"

 手紙にはそう書いてあったのに、レイチェルは俺の帰りを歓迎せずに、眠っていた。

「レイチェルの体調は優れないのか」
 侍女に尋ねると「いいえ。ただ、昼寝をするから部屋に入って来ないようにと言われまして」
 俺は腹が立った。
 俺は彼女に会いたくて帰りの日を待ちわびたのに。
 第一王子宮の外で迎えを待つ事ができないのは分かっている。だが、彼女の部屋の中で俺の帰りを歓迎する事くらいできるだろう。

 俺は怒りに身を任せて寝室の扉を開けた。
 締め切ったカーテン。薄暗い部屋の中でレイチェルは小さな寝息を立てて眠っている。
 俺は音も立てずにベッドに近づくと、彼女を見下ろした。
 彼女は長時間眠る気満々だったらしく、昼にも関わらず、ネグリジェを着ていた。それに化粧だってしていないのだ。

 ━━憎らしい。

 そう思いながらベッドに腰掛けて、頭を撫でると、彼女は目を開けた。
「おかえりなさい」
 彼女は寝ぼけ眼でそう言うと、俺の頬を撫でた。そして、俺の顔を見て嬉しそうに笑う。

 俺は、それだけで彼女を許した。

 靴を脱ぎ捨て、彼女の隣りに寝転んだ。
「疲れた」
 そう言って彼女の胸に顔を埋める。
 レイチェルは優しく俺を抱きしめて頭を撫でてくる。それが嬉しくて彼女の胸に顔を擦り付けたら「甘えん坊ねえ」と笑われた。
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