【2章完結/R-18/IF】神様が間違えたから。

花草青依

文字の大きさ
50 / 103
1章番外編 ローズ王女の苦悩

1

しおりを挟む
 ニコラスには二人の妻がいる。大衆は彼女達に対して興味津々だ。今日も恐れ知らずな令嬢が、私の前で二人の事を話題にしている。

「この間の王太子妃殿下のパーティーに参加させていただいたんです」
「まあ、羨ましい」
 彼女の開くお茶会やパーティーに参加する事は、社交界でのステータスになりつつある。貴族達はこぞって招待券を手に入れようと躍起になり、エレノア妃に媚を売っているのだと話に聞く。

 ━━社交界の華の立場を譲りたいけれど・・・・・・。

 エレノア妃は優しすぎる。その人柄で人心を掴む能力は高いけれど、良い人で終わってしまっている。
 彼女は他人を利用する事を覚えなければいけない。そして、場を統制し自分の意のままに操る能力も必要だ。もっといえば、他人と争う気力だって持たなければ。
 私は、「社交界の華」として、二人の王妃をひれ伏させた。異母弟達を苦しめる大嫌いな彼女達を、社交活動でねじ伏せてやったのだ。

 彼女達が主催するパーティーの日に、私は毎回、盛大なパーティーをやってのける。そうして、彼女達の方には主要な人物は出席させないようにしているのだ。
 そういう事を何度も繰り返せば、彼女達の勢いが削れていったのは言うまでもない。

 ━━でも、エレノア妃はそんな嫌がらせを人にできない。

 彼女は優しすぎるから。ねじ伏せるべき相手にも、きっと優しく手を差し出すに違いない。かつて、レイチェル妃に対してしたように・・・・・・。

 彼女達がまだ学生で、レイチェル妃がニコラスの愛人になったばかりの頃。レイチェル妃は婚約者の兄に乗り換えた卑しい女というレッテルを貼られた。
 それは、半分正しくて、半分間違った評価なのだけれど。エレノア妃は、「レイチェル・ドルウェルク」という人間を全面的に信じた。
 だから、エレノア妃は、孤立したレイチェル妃を救うために奔走した。そして、結果的に、エレノア妃は彼女に裏切られてしまった。

 しかし、それは、当然の結果に過ぎない。
 レイチェル妃は、情よりも利害で動く人間だから。彼女は差し出された手を取りながらも内心ではほくそ笑み、必要によっては刺しに行くことも厭わないのだ。
 あの時、彼女がそうしなかったのは、「そうする理由がなかったから」に他ならない。レイチェル妃のとなったニコラスにとって、エレノア妃が必要な人材だった。だから、レイチェル妃は何もせずにじっとしていたのだろう。

 ━━あの時、エレノア妃は、レイチェル妃を完膚なきまでに叩き潰しておくべきだったのよ。

 自分の脅威となる人間は早めに潰しておく事に越したことはない。
 もし、あの時、エレノア妃がそうしていたなら、今のような状況にはなっていなかったかもしれないのに・・・・・・。

「そういえば、レイチェル妃様は、社交活動には熱心でないのでしょうか」
 畏れ多くも、若い令嬢が彼女の名前を口にした。
 賢い者や情報通の者は、途端に顔を強張らせる。
「一度お会いしてみたいのですが、どのパーティーにも出席なされませんよね」
「ニコラス殿下の愛を欲しいままにしている妃ですから、きっと殿下が、外出の許可を出さないのでしょう」
 夢見るうら若き彼女のその言葉に悪意はないのだろうけれど。それは、恐ろしい状況を作りかねない発言だった。

 年長の令嬢達は咳払いをして、やめるように促している。おかしな空気になる前に、ここは私が流れを変えるべきなのだろう。

「そういえば、どちらの妃からも愛されている事で知られるフローラ・アイズについてご存知で? 彼女が主演を務める公演を、皆さんはもう見られましたか」
 私が話を振ると、彼女達は何事もなかったかのようにその公演について話し始める。
 私はそれを聞きながら、優雅に微笑みお茶を飲んだ。
 この後、予定しているレイチェル妃との外出について、思いを馳せて。







 晴れた日の午後。春の優しい日射しの下、レイチェル妃は久しぶりの外出を喜んでいた。
 向かった先は王家が管理する自然公園で、王宮から、そんなに離れていない場所だったけれど。彼女は伸び伸びとした様子で散歩をしている。

 今日、彼女が外出を許されたのは、一つは健康のためだった。
 彼女は身体が弱い事を理由に、過保護なニコラスによって第一王子宮の一室に閉じ込められていた。
 引きこもって生活しているがゆえに、運動量が足りないと主治医に叱られたらしい。健康のために、少しは自然の中をゆっくり散歩するようにと勧められて、真面目な彼女はそれに従っている。

 そして、もう一つの理由は、今日がニコラスとエレノア妃の結婚記念日だから。
 この日は、ニコラスに後ろめたさを抱かせるらしい。毎年、結婚記念日になると、彼はレイチェル妃を自由にさせるのだと、彼女はそう言って笑っていた。

 ━━もう彼らの結婚から3年の月日が経ったのね。

 月日が経つのが早く感じる。
 そう思うのは、彼らの関係が結婚当初から何も変わっていないせいかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

処理中です...