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本編3
23-6 昔の私
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「まずは私の魔力を受け止めてね」
「どうやって?」
「手の平から私の魔力が流れ出るのを感じると思うから、それを心臓にまで流し込むようにイメージするの。集中する必要があるから目を閉じて」
目を閉じると、フェイは妖精語の呪文を唱え始めた。すると、重ねた手の平が温かくなるのを感じた。
━━これが、フェイの力なのね。
ぽかぽかした温かさは手の平から私の内側に徐々に入り込んでくる。ゆっくりと優しく伝っていくその力を、私は言われた通りに心臓へと向かわせるようにイメージした。
手から腕、腕から胸に温かみが伝わると、そこから一気に全身へと力が駆け巡った。
「もう目を開けてもいいわよ」
フェイに言われて目を開ける。
「次は私の力をフェイにあげるの?」
「そうね」
フェイはそう言うと、目を閉じた。何の変化も感じないけれど、きっと、さっきと同じ事をしているのだろう。
それからしばらくして、フェイは目を開けた。
「これで契約は終了よ」
「うん。それにしても、案外、何も変化がないのね」
「そんなことはないわよ。あなたはもう空を駆け巡る事ができるんだから」
そう言うと、フェイは私の遥か頭上に飛び立った。
「ほら、早く飛んでご覧なさいな」
「飛ぶってどうやって?」
「難しく考える必要はないわ。人間が地面を歩くのと大差ないはずよ。空を飛ぶと思うだけだから」
━━そんなこと、できるわけがないじゃない。
そう思っていたのに、足元の感覚がふっと消え、風が体を支えているような不思議な軽さに包まれた。私の身体は自然と宙に浮いていたのだ。“フェイの隣に行きたい”と思っただけで、特別なことはしていないのに。
空高く舞い上がったことに最初こそ戸惑った。でも、それは喜びから来る興奮によってすぐに掻き消されてしまった。
「すごい!」
フェイの隣に駆け寄ると、私は日頃彼女がやるようにくるりと回ってみせた。それを見たフェイも私と同じように回る。
「きっと、アンディが見たら驚くわね」
私がそう言うと、フェイはあははと笑った。
「そうね。心配性なあの子は卒倒しちゃうかも」
フェイの言う通りかもしれない。
アンディは無骨で愛想のない人だけれど、とても優しい心を持っている。私が怪我をしないようにいつも気を遣ってくれて、怖い思いをしないように守ろうとしてくれるのをひしひしと感じる。
アンディは「自分はただの平民の子だ」と言っていたけれど、とてもそんな風には思えない。彼は腕っぷしも強くて心の優しい、まるで物語の騎士のような人だった。
「本当に見せちゃだめよ」
先程までとは打って変わってフェイが真面目な顔で言った。
「うん……」
本当はアンディにもこの感動を伝えたかったけれど、これはフェイと私だけの秘密にしておくことにした。
もし、妖精の魔法を使えることが噂になってしまったら、お母様とジェシカとこの地で静かに暮らすことが難しくなるだろう。最悪、お父様に私の居場所がバレてしまうかもしれない。
この平穏な日々を守るためには、誰にも話してはいけない。例え大切な友達であるアンディにも。
ううん。大切な友達だからこそ、言ってはいけないのだ。アンディに迷惑をかけたくないし、何よりも彼となるべく長く一緒にいたいから。
「仲間外れみたいになっちゃうけど……、これは私達二人だけの秘密ね」
打ち明けたい思いを胸の奥に押し込んで、私は笑った。そうすると、フェイも少し困ったような顔で笑顔を返したのだ。
「どうやって?」
「手の平から私の魔力が流れ出るのを感じると思うから、それを心臓にまで流し込むようにイメージするの。集中する必要があるから目を閉じて」
目を閉じると、フェイは妖精語の呪文を唱え始めた。すると、重ねた手の平が温かくなるのを感じた。
━━これが、フェイの力なのね。
ぽかぽかした温かさは手の平から私の内側に徐々に入り込んでくる。ゆっくりと優しく伝っていくその力を、私は言われた通りに心臓へと向かわせるようにイメージした。
手から腕、腕から胸に温かみが伝わると、そこから一気に全身へと力が駆け巡った。
「もう目を開けてもいいわよ」
フェイに言われて目を開ける。
「次は私の力をフェイにあげるの?」
「そうね」
フェイはそう言うと、目を閉じた。何の変化も感じないけれど、きっと、さっきと同じ事をしているのだろう。
それからしばらくして、フェイは目を開けた。
「これで契約は終了よ」
「うん。それにしても、案外、何も変化がないのね」
「そんなことはないわよ。あなたはもう空を駆け巡る事ができるんだから」
そう言うと、フェイは私の遥か頭上に飛び立った。
「ほら、早く飛んでご覧なさいな」
「飛ぶってどうやって?」
「難しく考える必要はないわ。人間が地面を歩くのと大差ないはずよ。空を飛ぶと思うだけだから」
━━そんなこと、できるわけがないじゃない。
そう思っていたのに、足元の感覚がふっと消え、風が体を支えているような不思議な軽さに包まれた。私の身体は自然と宙に浮いていたのだ。“フェイの隣に行きたい”と思っただけで、特別なことはしていないのに。
空高く舞い上がったことに最初こそ戸惑った。でも、それは喜びから来る興奮によってすぐに掻き消されてしまった。
「すごい!」
フェイの隣に駆け寄ると、私は日頃彼女がやるようにくるりと回ってみせた。それを見たフェイも私と同じように回る。
「きっと、アンディが見たら驚くわね」
私がそう言うと、フェイはあははと笑った。
「そうね。心配性なあの子は卒倒しちゃうかも」
フェイの言う通りかもしれない。
アンディは無骨で愛想のない人だけれど、とても優しい心を持っている。私が怪我をしないようにいつも気を遣ってくれて、怖い思いをしないように守ろうとしてくれるのをひしひしと感じる。
アンディは「自分はただの平民の子だ」と言っていたけれど、とてもそんな風には思えない。彼は腕っぷしも強くて心の優しい、まるで物語の騎士のような人だった。
「本当に見せちゃだめよ」
先程までとは打って変わってフェイが真面目な顔で言った。
「うん……」
本当はアンディにもこの感動を伝えたかったけれど、これはフェイと私だけの秘密にしておくことにした。
もし、妖精の魔法を使えることが噂になってしまったら、お母様とジェシカとこの地で静かに暮らすことが難しくなるだろう。最悪、お父様に私の居場所がバレてしまうかもしれない。
この平穏な日々を守るためには、誰にも話してはいけない。例え大切な友達であるアンディにも。
ううん。大切な友達だからこそ、言ってはいけないのだ。アンディに迷惑をかけたくないし、何よりも彼となるべく長く一緒にいたいから。
「仲間外れみたいになっちゃうけど……、これは私達二人だけの秘密ね」
打ち明けたい思いを胸の奥に押し込んで、私は笑った。そうすると、フェイも少し困ったような顔で笑顔を返したのだ。
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