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両親の遺産2
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「それにしても証の腕輪をただの証明だと勘違いしている者は愚かだね。本来の用途を知れば誰も身に付けようとは思わないだろうに」
フレードリクが正にその勘違いしている者だった。アンネマリーが知らないのは仕方がないものの、王族である彼が知らない筈はないのだが、フレードリクだからな、とティナは密かに思う。
しかしその勘違いのお陰で腕輪を外すことが出来たのだから、フレードリクには感謝しなければならない。
「そう言えば、よくあの腕輪を外すことが出来たね。アンネマリーという令嬢も結構な魔力保持者なのかな?」
例の腕輪を外すためには一定量の魔力が必要となる。しかし常に魔力を吸収されていたティナは腕輪を外せるほどの魔力を注ぎ込むことが出来なかったのだ。
「そうですね、恐らく学院で一番だった可能性がありますね」
魔力保持者と言えば同級生のトールもかなり魔力量が多かった。王族であるフレードリクよりも遥かに多かった気がする。それこそアンネマリーと同じぐらいに。
「それでもティナには遠く及ばないだろうけどね。その令嬢もこれから大変かもしれないね……っと、そうだ。ティナに渡したいものがあるんだった。一緒に上に来てくれないかな?」
「……あ! は、はい! わかりました!」
思わずトールのことを思い出してしまったティナは、慌てて頭の中からトールのことを消去する。
もう会うことがない相手なのにふとした瞬間、トールのことが頭をよぎってしまう。ティナにとって彼の存在は予想以上に大きいのかもしれない。
ティナは雑念を取り払いながらベルトルドの後をついて行き、そして昨日と同じようにギルド長の執務室へと入る。
するとベルトルドが机の引き出しをゴソゴソと漁り、何かを取り出した。
「えっと、ティナが今まで討伐してきた魔物の素材があっただろう? それを換金した分がこれだよ。ざっと金貨二百枚ぐらいだね」
ベルトルドはそう言うと、膨らんだ革の袋を机の上に置いた。
置いた瞬間、ズシッとした音と金貨が擦れる音がして、かなり多い金額が入っていることがわかる。
「……えぇっ?! こんなに?!」
今までティナは、魔物の素材をギルドに預けっぱなしにしていたので、いくら貯まっているのか全くわからなかった。
正直、ギルドの役に立てば良いかと思っていたので、こうしてお金が残っているとは思わなかったのだ。
この国では金貨一枚で四人家族が半年は生活できる。ティナ一人であれば一年は普通に暮らせるだろう。
しかし冒険者を目指すなら、武器や防具を揃えるのに結構な金額が掛かるので、ティナにとってはとても助かる資金となる。
「それで驚かれると困るなぁ。ティナの両親の遺産も預かっていたんだけど、そっちは桁違いだよ」
「え……?! 両親に遺産があったんですか?」
「うん。私が頼まれて預かっていたんだ。自分達にもしものことがあったらティナに渡して欲しいってね。本当は二人が亡くなった時に渡すつもりだったんだけど、神殿がティナの身柄を孤児院預かりにしちゃっただろう? あいつらに取り上げられたらたまらないからね。だからずっと渡せなかったんだ」
ベルトルドは「ようやく渡すことが出来て良かったよ」と、晴れ晴れとした表情をして微笑んだ。
「ベルトルドさん……本当に有難うございます……! どう恩を返せばいいのか……」
ティナはベルトルドの配慮に感謝する。両親が残してくれたものは金額関係なく、ティナにとって大切な宝物だ。もし神殿の者の手に渡っていたら今頃どうなっていたかわからない。
「私はティナの両親に命を助けられたことがあるからね。その時の恩を少しでも返せたのなら嬉しいよ。だからティナも気にしなくて良いんだよ」
ベルトルドの優しさに触れて、ティナの胸に熱いものがこみ上げて来る。いつも彼はこうしてティナが気負わないように気遣ってくれるのだ。
「ほらほら、これが二人の残したものだよ。この箱を開けてみて」
しんみりとした雰囲気をぶち壊すかのように、ベルトルドが大きな木箱を持ってきた。先程の金貨の袋とは比べ物にならないぐらい重量がありそうだ。
「えっと、じゃあ失礼して……」
ベルトルドに促されたティナが恐る恐る箱を開けると、そこには溢れんばかりの白金貨と、宝石に何かの魔道具が入っていた。
「ひ、ひえぇ~~?! こ、これは……?!」
白金貨一枚は金貨十枚分だ。それが大きめの箱に大量に入っている。
他にも高そうな宝石などもあり、この箱の中身だけで立派な城が買えるぐらいの金額は十分ありそうだった。
フレードリクが正にその勘違いしている者だった。アンネマリーが知らないのは仕方がないものの、王族である彼が知らない筈はないのだが、フレードリクだからな、とティナは密かに思う。
しかしその勘違いのお陰で腕輪を外すことが出来たのだから、フレードリクには感謝しなければならない。
「そう言えば、よくあの腕輪を外すことが出来たね。アンネマリーという令嬢も結構な魔力保持者なのかな?」
例の腕輪を外すためには一定量の魔力が必要となる。しかし常に魔力を吸収されていたティナは腕輪を外せるほどの魔力を注ぎ込むことが出来なかったのだ。
「そうですね、恐らく学院で一番だった可能性がありますね」
魔力保持者と言えば同級生のトールもかなり魔力量が多かった。王族であるフレードリクよりも遥かに多かった気がする。それこそアンネマリーと同じぐらいに。
「それでもティナには遠く及ばないだろうけどね。その令嬢もこれから大変かもしれないね……っと、そうだ。ティナに渡したいものがあるんだった。一緒に上に来てくれないかな?」
「……あ! は、はい! わかりました!」
思わずトールのことを思い出してしまったティナは、慌てて頭の中からトールのことを消去する。
もう会うことがない相手なのにふとした瞬間、トールのことが頭をよぎってしまう。ティナにとって彼の存在は予想以上に大きいのかもしれない。
ティナは雑念を取り払いながらベルトルドの後をついて行き、そして昨日と同じようにギルド長の執務室へと入る。
するとベルトルドが机の引き出しをゴソゴソと漁り、何かを取り出した。
「えっと、ティナが今まで討伐してきた魔物の素材があっただろう? それを換金した分がこれだよ。ざっと金貨二百枚ぐらいだね」
ベルトルドはそう言うと、膨らんだ革の袋を机の上に置いた。
置いた瞬間、ズシッとした音と金貨が擦れる音がして、かなり多い金額が入っていることがわかる。
「……えぇっ?! こんなに?!」
今までティナは、魔物の素材をギルドに預けっぱなしにしていたので、いくら貯まっているのか全くわからなかった。
正直、ギルドの役に立てば良いかと思っていたので、こうしてお金が残っているとは思わなかったのだ。
この国では金貨一枚で四人家族が半年は生活できる。ティナ一人であれば一年は普通に暮らせるだろう。
しかし冒険者を目指すなら、武器や防具を揃えるのに結構な金額が掛かるので、ティナにとってはとても助かる資金となる。
「それで驚かれると困るなぁ。ティナの両親の遺産も預かっていたんだけど、そっちは桁違いだよ」
「え……?! 両親に遺産があったんですか?」
「うん。私が頼まれて預かっていたんだ。自分達にもしものことがあったらティナに渡して欲しいってね。本当は二人が亡くなった時に渡すつもりだったんだけど、神殿がティナの身柄を孤児院預かりにしちゃっただろう? あいつらに取り上げられたらたまらないからね。だからずっと渡せなかったんだ」
ベルトルドは「ようやく渡すことが出来て良かったよ」と、晴れ晴れとした表情をして微笑んだ。
「ベルトルドさん……本当に有難うございます……! どう恩を返せばいいのか……」
ティナはベルトルドの配慮に感謝する。両親が残してくれたものは金額関係なく、ティナにとって大切な宝物だ。もし神殿の者の手に渡っていたら今頃どうなっていたかわからない。
「私はティナの両親に命を助けられたことがあるからね。その時の恩を少しでも返せたのなら嬉しいよ。だからティナも気にしなくて良いんだよ」
ベルトルドの優しさに触れて、ティナの胸に熱いものがこみ上げて来る。いつも彼はこうしてティナが気負わないように気遣ってくれるのだ。
「ほらほら、これが二人の残したものだよ。この箱を開けてみて」
しんみりとした雰囲気をぶち壊すかのように、ベルトルドが大きな木箱を持ってきた。先程の金貨の袋とは比べ物にならないぐらい重量がありそうだ。
「えっと、じゃあ失礼して……」
ベルトルドに促されたティナが恐る恐る箱を開けると、そこには溢れんばかりの白金貨と、宝石に何かの魔道具が入っていた。
「ひ、ひえぇ~~?! こ、これは……?!」
白金貨一枚は金貨十枚分だ。それが大きめの箱に大量に入っている。
他にも高そうな宝石などもあり、この箱の中身だけで立派な城が買えるぐらいの金額は十分ありそうだった。
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