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両親の遺産1
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ティナが自由になり、正式に冒険者となった次の日。
いつもの習慣で早い時間に目が覚めたティナは、冒険者達が酔い潰れているのではないかと気になって、酒場に様子を見に行ってみることにした。
ちなみにティナはまだ未成年ということもあり、頃合いを見計らって宴から抜け出し、ギルドに併設されている施設に泊まらせて貰っている。
ティナのお祝いで夜通し騒いでいた酒場は現在、ティナの予想通り盃や食器が散乱し、酔いつぶれた冒険者達で溢れ、酷い惨状となっていた。
「……う~~ん……水ぅ……」
「うあぁ~~……頭いてぇ……」
「酒……酒ぇ……おえっぷっ」
ベルトルドの奢りで遠慮をなくした冒険者達は、浴びるように酒を飲んでいた。そのため、二日酔いになった者が大量発生しているようだ。
「おはようティナ。よく眠れたかい?」
ティナが冒険者達に呆れていると、目の前の惨状と場違いな、爽やか声がホールに響き渡る。
声がした方向へティナが振り向くと、そこにはいつもと変わらずきっちりとした身だしなみのベルトルドが、これまた爽やかな笑顔で立っていた。
「あ、ベルトルドさん、おはようございます! ベルトルドさんは二日酔いじゃないんですね」
酔い潰れている冒険者達とは違い、ベルトルドはいつも服をしっかりと整えている。その姿は冒険者というより優秀な文官のようだ。
「あれぐらいの酒で私が酔う訳ないだろう? こいつらがまだまだ未熟なだけだよ」
ティナは昨日の宴の様子を思い出す。
昨日はベルトルドも珍しくお酒を大量に飲んでいた。それこそ、そこに転がっている冒険者達より飲んでいたかもしれない。
(ランクが高いとお酒にも強くなるのかな……?)
全く隙がないベルトルドを不思議に思いつつ、ティナは今のこの状況をどうにかせねば、と考える。それはベルトルドも同じだったようで、呆れた顔でホールを見渡している。
「……流石にこの状態は見苦しいね。ティナ、すまないけどこいつらを起こしてくれないかな」
「わかりました。では、<ヒール>!!」
ティナが魔法名を唱えると、手のひらから光が溢れ、粒子となって冒険者達に降り注ぐ。
これは<神聖力>を持つ者が使える治癒の魔法で、本来なら呪文を詠唱する必要があるが、ティナは魔法名を唱えるだけで魔法を発動することが出来た。
詠唱破棄で魔法を使えるのは、この世界広しといえど、ティナを含めて十人にも満たない。それはティナが<稀代の聖女>と呼ばれる所以でもある。
「……あれ? ここは……」
「う~ん、頭痛が……ってあれ? 痛くない?」
「お……? 身体がスッキリしてる?」
酒に潰れ、寝っ転がっていた冒険者達が次々と目を覚ましていく。ティナの魔法は効果覿面のようだ。
「あ! ティナが治してくれたのか! サンキューな!」
「あれだけ酷かった二日酔いが綺麗サッパリ治ったぜ! 流石ティナだな!」
「今日一日中動けないところだったよ……有難うな」
「お! 昨日の怪我まで治ってるじゃねぇか! ティナすげぇ!!」
体調どころか怪我まで治り、冒険者達はティナにすごく感謝した。本来であれば怪我をした場合、神殿の神官に高いお布施を払って治癒して貰う必要があったからだ。
「もう腕輪はないし、これからは自由に魔法が使えるからね! 怪我した人がいたら治すよ!」
「おぉーー!! そりゃ助かる!! 俺が怪我した時は頼むわ!」
「俺も俺も!」
「こらこら、ティナが治癒してくれるからと言って無茶は許さないよ。治癒するかどうかは状況で判断させて貰うからね。ティナも気軽に引き受けないように!」
「……は~い」
ベルトルドはティナと冒険者達を諌め、魔法に頼らないようにと念を押す。ティナがいるからと油断し、命を落とすことになったら困るからだ。
ちなみに、今までティナが聖女の証として付けていた腕輪は、魔力を魔石に蓄積させるものであった。その魔力を蓄積した魔石はこの国を守っている結界の原動力となり、一年に一回、結界維持のため交換しなければならないのだ。
証の腕輪を付けている間はずっと魔力が魔石に吸収されていたため、ティナの魔力はかなり制限を受けていた。フレードリクがティナの魔力を低いと言ったのもそのためだ。
いつもの習慣で早い時間に目が覚めたティナは、冒険者達が酔い潰れているのではないかと気になって、酒場に様子を見に行ってみることにした。
ちなみにティナはまだ未成年ということもあり、頃合いを見計らって宴から抜け出し、ギルドに併設されている施設に泊まらせて貰っている。
ティナのお祝いで夜通し騒いでいた酒場は現在、ティナの予想通り盃や食器が散乱し、酔いつぶれた冒険者達で溢れ、酷い惨状となっていた。
「……う~~ん……水ぅ……」
「うあぁ~~……頭いてぇ……」
「酒……酒ぇ……おえっぷっ」
ベルトルドの奢りで遠慮をなくした冒険者達は、浴びるように酒を飲んでいた。そのため、二日酔いになった者が大量発生しているようだ。
「おはようティナ。よく眠れたかい?」
ティナが冒険者達に呆れていると、目の前の惨状と場違いな、爽やか声がホールに響き渡る。
声がした方向へティナが振り向くと、そこにはいつもと変わらずきっちりとした身だしなみのベルトルドが、これまた爽やかな笑顔で立っていた。
「あ、ベルトルドさん、おはようございます! ベルトルドさんは二日酔いじゃないんですね」
酔い潰れている冒険者達とは違い、ベルトルドはいつも服をしっかりと整えている。その姿は冒険者というより優秀な文官のようだ。
「あれぐらいの酒で私が酔う訳ないだろう? こいつらがまだまだ未熟なだけだよ」
ティナは昨日の宴の様子を思い出す。
昨日はベルトルドも珍しくお酒を大量に飲んでいた。それこそ、そこに転がっている冒険者達より飲んでいたかもしれない。
(ランクが高いとお酒にも強くなるのかな……?)
全く隙がないベルトルドを不思議に思いつつ、ティナは今のこの状況をどうにかせねば、と考える。それはベルトルドも同じだったようで、呆れた顔でホールを見渡している。
「……流石にこの状態は見苦しいね。ティナ、すまないけどこいつらを起こしてくれないかな」
「わかりました。では、<ヒール>!!」
ティナが魔法名を唱えると、手のひらから光が溢れ、粒子となって冒険者達に降り注ぐ。
これは<神聖力>を持つ者が使える治癒の魔法で、本来なら呪文を詠唱する必要があるが、ティナは魔法名を唱えるだけで魔法を発動することが出来た。
詠唱破棄で魔法を使えるのは、この世界広しといえど、ティナを含めて十人にも満たない。それはティナが<稀代の聖女>と呼ばれる所以でもある。
「……あれ? ここは……」
「う~ん、頭痛が……ってあれ? 痛くない?」
「お……? 身体がスッキリしてる?」
酒に潰れ、寝っ転がっていた冒険者達が次々と目を覚ましていく。ティナの魔法は効果覿面のようだ。
「あ! ティナが治してくれたのか! サンキューな!」
「あれだけ酷かった二日酔いが綺麗サッパリ治ったぜ! 流石ティナだな!」
「今日一日中動けないところだったよ……有難うな」
「お! 昨日の怪我まで治ってるじゃねぇか! ティナすげぇ!!」
体調どころか怪我まで治り、冒険者達はティナにすごく感謝した。本来であれば怪我をした場合、神殿の神官に高いお布施を払って治癒して貰う必要があったからだ。
「もう腕輪はないし、これからは自由に魔法が使えるからね! 怪我した人がいたら治すよ!」
「おぉーー!! そりゃ助かる!! 俺が怪我した時は頼むわ!」
「俺も俺も!」
「こらこら、ティナが治癒してくれるからと言って無茶は許さないよ。治癒するかどうかは状況で判断させて貰うからね。ティナも気軽に引き受けないように!」
「……は~い」
ベルトルドはティナと冒険者達を諌め、魔法に頼らないようにと念を押す。ティナがいるからと油断し、命を落とすことになったら困るからだ。
ちなみに、今までティナが聖女の証として付けていた腕輪は、魔力を魔石に蓄積させるものであった。その魔力を蓄積した魔石はこの国を守っている結界の原動力となり、一年に一回、結界維持のため交換しなければならないのだ。
証の腕輪を付けている間はずっと魔力が魔石に吸収されていたため、ティナの魔力はかなり制限を受けていた。フレードリクがティナの魔力を低いと言ったのもそのためだ。
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