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月下草2
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「ベルトルドさんお願いします! 絶対無茶はしませんから! 何かあればすぐ連絡しますし、その地のギルドに駆け込みます!」
ティナの必死さに、ベルトルドは思わずため息を漏らす。
ずっとこの国に縛られていた彼女に自由を──好きなことをさせてあげたいという気持ちを、ベルトルドはずっと持っていたのだ。
「そうだねぇ。ティナの実力はわかっているし、隣国に行くぐらいなら大丈夫だと思うけれど、誰か護衛として連れて行くなら良いよ」
「護衛?!」
「うん。Dランクとは言え女の子の一人旅なんて危ないからね。信頼出来る人間を連れてきて。私が面接するから」
ベルトルドの提案にティナは確かに、と思う。それに彼にしてはかなり譲歩してくれたのだろう。
「……わかりました。誰にお願いするか考えます」
「決まったら教えてね。そう言えばこのお金どうする? ギルドに口座を作ってそこに預ける?」
「はい。是非それでお願いします」
ギルドに登録している冒険者が口座を作ってお金を預けておけば、各国にある支部で自由に引き出すことができる。大金を持ち歩くより安全で効率的だ。
ティナはベルトルドに挨拶をすると、執務室から出て一階のホールへと足を向ける。
護衛を引き受けてくれる冒険者を探そうと思ったのだ。
「ティナっ!!」
「?!」
ティナが一階に降りた瞬間、聞き覚えがある声がホールにこだまする。
驚いたティナが振り返ると、そこには同級生だったトールが息を切らして立っていた。
「トール!? どうしてここに……?!」
ティナはトールの姿を見て驚愕する。
学院から去ったティナが冒険者ギルドにいるなんて、生徒達の誰もが気付かないだろうと思っていた。
普通なら神殿に身を寄せるだろうと考えるはずだ。
「おうおう、どうしたティナ? 何かトラブルか?」
「困ってたら言えよ! 加勢してやっからよ!」
戸惑うティナの様子に、冒険者達が心配して声をかけてくれる。それだけで相手にとって十分な牽制になるだろうが、トールは怯むことなく立ち続けている。
「有難う。でもこの人は私の友達なんだ。だから大丈夫だよ」
ティナの言葉に、冒険者達は「なら良いけどよ……」「何かあったら言えよ」と言って身を引いてくれた。強面だが優しい人達なのだ。
「……トール、場所を変えて話そう」
ティナはそう言うと、受付にいる職員に声をかけて、会議室の一室を借りたいと伝える。
会議室は冒険者達が依頼を受けた後、打ち合わせに使う部屋だ。
そして二人で会議室に入った瞬間、トールがティナを強く抱きしめた。
「──っ?!」
あまりの驚きに、ティナは抵抗を忘れ、抱きしめられたままになってしまう。
「ち、ちょっと!! トール!! どうしたの?!」
我に返ったティナがトールの背中を叩くと、現在の状況に気づいたトールが慌ててティナから離れた。
「ご、ごめん……!! ティナの……クリスティナの姿を見たらつい……!」
トールの顔はよく見えないけれど、顔が赤くなっているのは何となくわかる。
いつもボサボサの髪は更にボサボサになっているし、よく見ると制服もくたびれている。
「……もしかして、私を探してくれていたの……?」
まさか、と思ったティナだったが、トールの戸惑った様子に確信する。
──彼は学院から姿を消したティナを、ずっと探し回っていたのだ。
「先生に呼び出された後戻ってみたら、もう学院中が大騒ぎで……。何があったのか聞いたら、君が婚約破棄された挙げ句学院から出て行ったって。それからすぐ追いかけたんだけど、既に君の姿は無くて、だから──……」
……今まで探していたのだと、トールは恥ずかしそうに呟いた。
ティナの必死さに、ベルトルドは思わずため息を漏らす。
ずっとこの国に縛られていた彼女に自由を──好きなことをさせてあげたいという気持ちを、ベルトルドはずっと持っていたのだ。
「そうだねぇ。ティナの実力はわかっているし、隣国に行くぐらいなら大丈夫だと思うけれど、誰か護衛として連れて行くなら良いよ」
「護衛?!」
「うん。Dランクとは言え女の子の一人旅なんて危ないからね。信頼出来る人間を連れてきて。私が面接するから」
ベルトルドの提案にティナは確かに、と思う。それに彼にしてはかなり譲歩してくれたのだろう。
「……わかりました。誰にお願いするか考えます」
「決まったら教えてね。そう言えばこのお金どうする? ギルドに口座を作ってそこに預ける?」
「はい。是非それでお願いします」
ギルドに登録している冒険者が口座を作ってお金を預けておけば、各国にある支部で自由に引き出すことができる。大金を持ち歩くより安全で効率的だ。
ティナはベルトルドに挨拶をすると、執務室から出て一階のホールへと足を向ける。
護衛を引き受けてくれる冒険者を探そうと思ったのだ。
「ティナっ!!」
「?!」
ティナが一階に降りた瞬間、聞き覚えがある声がホールにこだまする。
驚いたティナが振り返ると、そこには同級生だったトールが息を切らして立っていた。
「トール!? どうしてここに……?!」
ティナはトールの姿を見て驚愕する。
学院から去ったティナが冒険者ギルドにいるなんて、生徒達の誰もが気付かないだろうと思っていた。
普通なら神殿に身を寄せるだろうと考えるはずだ。
「おうおう、どうしたティナ? 何かトラブルか?」
「困ってたら言えよ! 加勢してやっからよ!」
戸惑うティナの様子に、冒険者達が心配して声をかけてくれる。それだけで相手にとって十分な牽制になるだろうが、トールは怯むことなく立ち続けている。
「有難う。でもこの人は私の友達なんだ。だから大丈夫だよ」
ティナの言葉に、冒険者達は「なら良いけどよ……」「何かあったら言えよ」と言って身を引いてくれた。強面だが優しい人達なのだ。
「……トール、場所を変えて話そう」
ティナはそう言うと、受付にいる職員に声をかけて、会議室の一室を借りたいと伝える。
会議室は冒険者達が依頼を受けた後、打ち合わせに使う部屋だ。
そして二人で会議室に入った瞬間、トールがティナを強く抱きしめた。
「──っ?!」
あまりの驚きに、ティナは抵抗を忘れ、抱きしめられたままになってしまう。
「ち、ちょっと!! トール!! どうしたの?!」
我に返ったティナがトールの背中を叩くと、現在の状況に気づいたトールが慌ててティナから離れた。
「ご、ごめん……!! ティナの……クリスティナの姿を見たらつい……!」
トールの顔はよく見えないけれど、顔が赤くなっているのは何となくわかる。
いつもボサボサの髪は更にボサボサになっているし、よく見ると制服もくたびれている。
「……もしかして、私を探してくれていたの……?」
まさか、と思ったティナだったが、トールの戸惑った様子に確信する。
──彼は学院から姿を消したティナを、ずっと探し回っていたのだ。
「先生に呼び出された後戻ってみたら、もう学院中が大騒ぎで……。何があったのか聞いたら、君が婚約破棄された挙げ句学院から出て行ったって。それからすぐ追いかけたんだけど、既に君の姿は無くて、だから──……」
……今まで探していたのだと、トールは恥ずかしそうに呟いた。
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