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トールが一晩中ティナを探してくれていた──その事実に、ティナの心は喜びに満たされる。
もう会えないのだと残念に思っていた相手が、必死になって自分を探してくれたのだ。それが嬉しくない筈はない。
「……探してくれて有難う。私も最後にトールとちゃんとお別れしたかったから、すごく嬉しい」
ティナがトールに向かって微笑むと、一瞬驚いた気配がした後、彼が悔しそうに言った。
「俺が君を探したのは、お別れの挨拶をするためじゃない!」
「……えっ」
トールの辛そうな雰囲気を感じ、ティナの胸がちくりと痛む。まさか自分が姿を消したことで、ここまでトールが傷付くとは思わなかったのだ。
「たとえ離れ離れになっても、君とは何かの形で繋がっていたかったんだ。だから突然いなくなって驚いたし、どうしても君に会いたかった」
まるで告白のようなトールの言葉に、ティナは自分の顔が赤くなっていることを自覚する。
「……っ、そうなんだ! そんな事言って貰えるなんて嬉しいな! あ、ところで、よく私がここにいるってわかったね。誰にも見つからないように来たつもりだったのに!」
勘違いしそうな自分を誤魔化すかのように、ティナはトールが冒険者ギルドに辿り着いた理由を聞く。
ティナがここに来た時はまだ授業が残っていたし、貴族達はこの辺りに足を踏み入れることは無いと思っていたのだ。
「ティナの後を追いかけて門を出る時に守衛さんに聞いたんだけど、確かにティナは門をくぐったはずなのに、忽然を姿を消したって言っていたよ。街で聞いてみても、誰も君の姿を見ていないんだ」
トールの話にティナはギクッとする。ティナが結界や魔法で姿を消すことが出来るのは、ティナとベルトルドだけの秘密なのだ。
もし誰かに知られたらすぐに神殿に報告され、素材をギルドに預けることも出来なくなってしまうだろう。それにこっそり抜け出せる手段を持っておくと、すごく役に立つので誰にも知られてはならない、とベルトルドから言われている。
「それから王都中を探していたんだけど、君のご両親が冒険者だったことを思い出してさ。もしかして、と思ってここに来たんだ」
トールはそう説明すると「会えて良かった……」と、嬉しそうに微笑んだ……ような気がする。
口元が笑みの形を作っているから、きっとそうなのだろうと思うしかないけれど。
トールの表情はわからないものの、何となく醸し出す雰囲気は甘く、ティナと会えたことを隠そうともせず堂々と喜んでいる姿に、ティナの方が恥ずかしくなる。
「……う、うん。有難う……って、あれ? 私、トールに両親が冒険者だったって言ったっけ?」
「え? えっ……と、君はその……有名人だったし、そんな噂をどこかで聞いたのかも……?」
ふと感じた違和感に、ティナがトールに質問する。
いつもはっきりと答える彼にしては、珍しくしどろもどろな様子を不思議に思うものの、そう言えば自分はいつも周りから注目されていたな、と思い出す。
学院にいる頃はいつも周りに気を使って、舐められないように虚勢を張っていたけれど……と思い出して気がついた。
「……あっ!!」
「どうしたの?」
突然声を上げたティナを、トールは不思議そうに見ている。
再会してから今まで、ティナに対してトールはごく自然に接してくれている。だけど、よく考えたらそれはおかしいのだ。
「……トールは私に驚かないの……?」
「何を? ……って、ああ。君の口調のこと?」
ティナの口調が貴族令嬢のそれと違い、砕けたものになっていることにトールも気付いたらしい。
ティナは誰と接する時でも、いつも言葉や振る舞いに注意していた。
それなのに慣れ親しんだギルドにいるものだから、すっかり素が出ていたのだ。
「別に驚かないよ。だって、今の君の方がすごく自然だしね。学院でも無理していたんじゃないかな?」
トールの鋭い指摘にティナは驚愕する。
まさか、自分の猫かぶりに気付く人間がいるとは思っていなかった。
それぐらいティナの猫かぶりは年季が入っていたし、完璧だったので今まで気付いた者は誰もいない。
「……っ、うん……本当はずっと無理してたと思う。でも、そうしないとダメだったから……」
ティナは本当の自分にトールが気付いてくれたことを嬉しく思う。
もう会えないのだと残念に思っていた相手が、必死になって自分を探してくれたのだ。それが嬉しくない筈はない。
「……探してくれて有難う。私も最後にトールとちゃんとお別れしたかったから、すごく嬉しい」
ティナがトールに向かって微笑むと、一瞬驚いた気配がした後、彼が悔しそうに言った。
「俺が君を探したのは、お別れの挨拶をするためじゃない!」
「……えっ」
トールの辛そうな雰囲気を感じ、ティナの胸がちくりと痛む。まさか自分が姿を消したことで、ここまでトールが傷付くとは思わなかったのだ。
「たとえ離れ離れになっても、君とは何かの形で繋がっていたかったんだ。だから突然いなくなって驚いたし、どうしても君に会いたかった」
まるで告白のようなトールの言葉に、ティナは自分の顔が赤くなっていることを自覚する。
「……っ、そうなんだ! そんな事言って貰えるなんて嬉しいな! あ、ところで、よく私がここにいるってわかったね。誰にも見つからないように来たつもりだったのに!」
勘違いしそうな自分を誤魔化すかのように、ティナはトールが冒険者ギルドに辿り着いた理由を聞く。
ティナがここに来た時はまだ授業が残っていたし、貴族達はこの辺りに足を踏み入れることは無いと思っていたのだ。
「ティナの後を追いかけて門を出る時に守衛さんに聞いたんだけど、確かにティナは門をくぐったはずなのに、忽然を姿を消したって言っていたよ。街で聞いてみても、誰も君の姿を見ていないんだ」
トールの話にティナはギクッとする。ティナが結界や魔法で姿を消すことが出来るのは、ティナとベルトルドだけの秘密なのだ。
もし誰かに知られたらすぐに神殿に報告され、素材をギルドに預けることも出来なくなってしまうだろう。それにこっそり抜け出せる手段を持っておくと、すごく役に立つので誰にも知られてはならない、とベルトルドから言われている。
「それから王都中を探していたんだけど、君のご両親が冒険者だったことを思い出してさ。もしかして、と思ってここに来たんだ」
トールはそう説明すると「会えて良かった……」と、嬉しそうに微笑んだ……ような気がする。
口元が笑みの形を作っているから、きっとそうなのだろうと思うしかないけれど。
トールの表情はわからないものの、何となく醸し出す雰囲気は甘く、ティナと会えたことを隠そうともせず堂々と喜んでいる姿に、ティナの方が恥ずかしくなる。
「……う、うん。有難う……って、あれ? 私、トールに両親が冒険者だったって言ったっけ?」
「え? えっ……と、君はその……有名人だったし、そんな噂をどこかで聞いたのかも……?」
ふと感じた違和感に、ティナがトールに質問する。
いつもはっきりと答える彼にしては、珍しくしどろもどろな様子を不思議に思うものの、そう言えば自分はいつも周りから注目されていたな、と思い出す。
学院にいる頃はいつも周りに気を使って、舐められないように虚勢を張っていたけれど……と思い出して気がついた。
「……あっ!!」
「どうしたの?」
突然声を上げたティナを、トールは不思議そうに見ている。
再会してから今まで、ティナに対してトールはごく自然に接してくれている。だけど、よく考えたらそれはおかしいのだ。
「……トールは私に驚かないの……?」
「何を? ……って、ああ。君の口調のこと?」
ティナの口調が貴族令嬢のそれと違い、砕けたものになっていることにトールも気付いたらしい。
ティナは誰と接する時でも、いつも言葉や振る舞いに注意していた。
それなのに慣れ親しんだギルドにいるものだから、すっかり素が出ていたのだ。
「別に驚かないよ。だって、今の君の方がすごく自然だしね。学院でも無理していたんじゃないかな?」
トールの鋭い指摘にティナは驚愕する。
まさか、自分の猫かぶりに気付く人間がいるとは思っていなかった。
それぐらいティナの猫かぶりは年季が入っていたし、完璧だったので今まで気付いた者は誰もいない。
「……っ、うん……本当はずっと無理してたと思う。でも、そうしないとダメだったから……」
ティナは本当の自分にトールが気付いてくれたことを嬉しく思う。
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