【完結】月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

五城楼スケ(デコスケ)

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噂2

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(落ち着いたらアレクシスに手紙でも書こうかな。ベルトルドさんから渡して貰ったら大丈夫だろうし)

 直接手紙を出してもアレクシスには届かないかもしれない。それに忙しい彼だから、きっと手紙の確認もろくにしないだろう。

 アレクシスにものすごく世話になったティナは、彼に直接感謝を伝えることが出来ずに心苦しく思う。
 今頃、きっと彼は新しい聖女──アンネマリーの護衛に任命されているだろう。

「ティナ?」

 アレクシスのことを思い出していたティナは、トールに声を掛けられて我に返る。

「あっ、ゴメンゴメン。つい考え事してたよ」

「こっちこそ中断させてゴメン。今モルガンさんとルートをどうしようかって話していたんだけど、ティナはどう思う?」

 今から迂回ルートで隣国クロンクヴィストに行く場合、予定より二週間ほど到着が遅れてしまう。その遅れはモルガンの立場を考えると致命的かもしれない。
 しかし、それでもモルガンは安全を最優先し、ティナたちの判断に任せると言ってくれているのだ。

「……なるほど。でもステュムパリデスとシェロブなら、私とトールで討伐できるんじゃないかな?」

「ティナならそういうと思ったよ。モルガンさん、僕たち二人は予定通りのルートで大丈夫です」

「本当か? そりゃ、俺たちは助かるけどよ……。生命に関わることなんだぞ? 無理してないか?」

「これでも私、ステュムパリデスを討伐したことがあるんですよ。やつの弱点なら知っているし、シェロブの攻略法も知ってますから大丈夫です!」

 心配していたモルガンだったが、ティナの笑顔と堂々とした姿に安堵する。

「なら、ティナを信じるぜ。引き続きよろしく頼む」

「はい! イロナさんとアネタちゃんもちゃんと守りますから! ご安心下さい!」

「フフ、頼もしいわ。よろしくお願いね」

 ティナはモルガン家族が物分りのいい人で良かった、と思う。実際ティナも早く隣国クロンクヴィストへ行きたかったのだ。

 それに、魔物に関してティナはそんなに心配していない。トールがかなり強いのは知っているし、いざとなれば自分が神聖力で防御結界をはれば良いし浄化も出来る。
 それに魔物が自らやって来て素材を提供してくれるのだ。これからのことを考えると良い収入源になるだろう。もし人間を襲うなら自分のところに来て欲しいぐらいだ。

「よし、行くぞ!」

 準備が終わったティナ達は、予定通り街道を進む。
 魔物の噂が広まっているのだろう、いつもは人の通りが多い道も、今は人が少ない状態だった。



 そうして何事もなく街道を進み、日が暮れようとする頃、ティナ達は街道から少し離れた場所で野営することにした。

 遂にベルトルドが準備してくれた野営道具の出番がやって来た、とティナはワクワクしながら魔法鞄を漁る。

 テントにマット、ランタンに毛布、テーブルと椅子に調理器具と食材、食器まで、どれも高級品が用意されていた。
 ティナも一度はリストを確認したものの、その用意周到さには改めて驚かされる。

「おうおう、随分良い装備を揃えてんなぁ。もしかしてティナは貴族の嬢ちゃんか?」

 モルガンも野営道具を見て驚いている。
 商人の目利きで、その品質の良さを一瞬で見定めたようだ。

「い、いえ! 違います! これはベルトルドさんが……」

「んん? ああ、ベルトルドさんが用意したのか。そりゃ良い装備になるわなぁ」

 ティナの言葉に、モルガンは持ち前の察しの良さでその意味を理解したようだ。
 王都のギルド長であるベルトルドが用意した装備なら、このレベルが当然なのだろう。

 取り敢えずティナたちはタープを張るために地面を整地する。
 ある程度石を取り除くとタープを設営し、テントを組み立てマットを敷いて寝床を作った。ちなみにテントの入口はちゃんとタープに向けている。
 寝床の準備が終わったらタープの下にテーブルや椅子をセッティングし、少し離れたところに調理場を作る。
 テントやタープの風下に焚火台を配置すれば、野営の準備は完了だ。

 旅慣れたモルガンや器用なトールのお陰で、野営の設営はあっという間に終わることが出来た。

 野営を心待ちにしていたティナは、設営を手伝おうとしたものの、男二人の手際の良さにただ見守ることしか出来ず、何となく負けた気になったのだった。
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