43 / 206
契約3
しおりを挟む
「じゃあ、いくよ」
トールはそう言うと精神を集中させていく。
すると、トールの身体から魔力の光が溢れ、渦を巻いたかと思うと、魔力の渦が魔法陣へと変化して、ティナの足元に現れた。
『我が力の源よ 絆を結ぶ鎖となり その盟約の繋がりとなれ 彼の者の意のままに 彼の者の為すままに 汝、主に付き従え その命尽きるまで──<アエテルニターティス・パクトゥム>』
トールの詠唱に反応するかのように、ティナの足元の魔法陣が光り輝く。
そして魔法陣から溢れた光が、ティナとアウルムを包み込んだ。
光の奔流の中で、ティナは不思議な魔力の存在を感じた。トールの優しい魔力とは違う、温かい魔力だ。
温かい魔力がティナの身体を包み込むと、すうっと溶けていく感覚がした。
きっとこの温かい魔力はアウルムの魔力だろう。
先程まで溢れていた光が少なくなっていき、魔法陣が消えていった。どうやら無事に獣魔契約が完了したらしい。
「……ふう。終わったよティナ。アウルムもティナを主と認めたみたいだよ。良かったね」
かなり魔力を消費したのだろう、いつも飄々としているトールが珍しく気怠げだ。
「トール大丈夫?!」
ティナは慌ててトールに駆け寄った。もしかするとトールの魔力が枯渇した可能性があるのだ。
「うん、大丈夫だから……」
「でも……っ」
獣魔契約には魔術師が三人必要だ。それは即ちトールが三人分の魔力を消費したことになる。学院でも一、二を争う魔力量を誇るトールでもかなり厳しかったはずだ。
しかも予め設置している魔法陣を使うところを、自前の魔力で魔法陣を描いたのだ。その魔力の消費量は量り知れず、一般人であれば魔法陣を描くことすら出来なかっただろう。
「少し休めば回復するから、心配しないで」
トールはティナを安心させたくて笑顔を浮かべる。しかし、顔が半分隠れているので、上手く伝わっていないかもしれない。
こういう時素顔が晒せればいいのに、とトールは歯がゆく思う。
「私が回復するよ! あ、えっと……そのためにはトールに触れないと駄目だけど……」
聖女であるティナなら、トールの魔力を回復させるのは簡単だ。しかしその場合、回復させる対象に触れる必要がある。
触れる場所は手でも頭でもどこでも良いのだが、トールのことを好きだと自覚したティナは変に意識してしまい、顔が真っ赤になっていた。
「──っ」
上気した頬に潤んだ瞳のティナはやけに扇情的で、その色香にトールの理性がクラっとなる。
正直、魔力が枯渇しかかっているトールに、今のティナはすごく目の毒だ。
トールは鉄壁を誇ると自負している自分の理性が、簡単に崩れそうになっているのを自覚してしまう。
そんなトールの状況を知らないティナが、トールの手に触れようとした時、突然トールがティナを強く抱きしめ、その場に押し倒した。
驚きで見開いたティナの目に、光の矢が映る。
それは、さっきまでトールがいた場所を通過する軌道を描いていて──。
「──クリスティナ様っ!!」
見覚えがある魔法に、聞き覚えのある声を聞いたティナが、混乱しながら顔を向けると──。
そこには、ラーシャルード神を崇拝する神殿の守り手で、聖女を守護する役目を持つ聖騎士団団員──アレクシスがいた。
トールはそう言うと精神を集中させていく。
すると、トールの身体から魔力の光が溢れ、渦を巻いたかと思うと、魔力の渦が魔法陣へと変化して、ティナの足元に現れた。
『我が力の源よ 絆を結ぶ鎖となり その盟約の繋がりとなれ 彼の者の意のままに 彼の者の為すままに 汝、主に付き従え その命尽きるまで──<アエテルニターティス・パクトゥム>』
トールの詠唱に反応するかのように、ティナの足元の魔法陣が光り輝く。
そして魔法陣から溢れた光が、ティナとアウルムを包み込んだ。
光の奔流の中で、ティナは不思議な魔力の存在を感じた。トールの優しい魔力とは違う、温かい魔力だ。
温かい魔力がティナの身体を包み込むと、すうっと溶けていく感覚がした。
きっとこの温かい魔力はアウルムの魔力だろう。
先程まで溢れていた光が少なくなっていき、魔法陣が消えていった。どうやら無事に獣魔契約が完了したらしい。
「……ふう。終わったよティナ。アウルムもティナを主と認めたみたいだよ。良かったね」
かなり魔力を消費したのだろう、いつも飄々としているトールが珍しく気怠げだ。
「トール大丈夫?!」
ティナは慌ててトールに駆け寄った。もしかするとトールの魔力が枯渇した可能性があるのだ。
「うん、大丈夫だから……」
「でも……っ」
獣魔契約には魔術師が三人必要だ。それは即ちトールが三人分の魔力を消費したことになる。学院でも一、二を争う魔力量を誇るトールでもかなり厳しかったはずだ。
しかも予め設置している魔法陣を使うところを、自前の魔力で魔法陣を描いたのだ。その魔力の消費量は量り知れず、一般人であれば魔法陣を描くことすら出来なかっただろう。
「少し休めば回復するから、心配しないで」
トールはティナを安心させたくて笑顔を浮かべる。しかし、顔が半分隠れているので、上手く伝わっていないかもしれない。
こういう時素顔が晒せればいいのに、とトールは歯がゆく思う。
「私が回復するよ! あ、えっと……そのためにはトールに触れないと駄目だけど……」
聖女であるティナなら、トールの魔力を回復させるのは簡単だ。しかしその場合、回復させる対象に触れる必要がある。
触れる場所は手でも頭でもどこでも良いのだが、トールのことを好きだと自覚したティナは変に意識してしまい、顔が真っ赤になっていた。
「──っ」
上気した頬に潤んだ瞳のティナはやけに扇情的で、その色香にトールの理性がクラっとなる。
正直、魔力が枯渇しかかっているトールに、今のティナはすごく目の毒だ。
トールは鉄壁を誇ると自負している自分の理性が、簡単に崩れそうになっているのを自覚してしまう。
そんなトールの状況を知らないティナが、トールの手に触れようとした時、突然トールがティナを強く抱きしめ、その場に押し倒した。
驚きで見開いたティナの目に、光の矢が映る。
それは、さっきまでトールがいた場所を通過する軌道を描いていて──。
「──クリスティナ様っ!!」
見覚えがある魔法に、聞き覚えのある声を聞いたティナが、混乱しながら顔を向けると──。
そこには、ラーシャルード神を崇拝する神殿の守り手で、聖女を守護する役目を持つ聖騎士団団員──アレクシスがいた。
応援ありがとうございます!
13
お気に入りに追加
1,966
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる