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聖騎士1
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多忙で大神殿を留守がちなオスカリウスであったが、彼は常にクリスティナの身を案じ、可愛がっていた。
時々垣間見える不安そうな瞳もきっと、王妃になることへの不安なのだろうと思っていた──いや、思い込んでいたのだ。
オスカリウスは自分の浅慮に後悔する。どうしてクリスティナをもっと慮らなかったのか、と。
初めはその魔力量や、聖女としての素質が惜しくて強引に神殿入りとした。しかし、クリスティナと共に過ごすうちに情が湧いてしまったのだ。まるで本当の孫娘のような親愛の情が。
クリスティナが落ち着き、自身も多忙だったため、彼女を他の神官に任せてしまったのが間違いだった。
王室との関係を配慮する余り、クリスティナの気持ちを蔑ろにしていたことに気付かなかった自分の至らなさと、クリスティナの血が滲むような努力を踏みにじったバカ王子に、オスカリウスは腸が煮えくり返って仕方がない。
そしてクリスティナが──代々聖女がその身を削ってまで大切にしてきた、その聖宝を、卑しい身に纏わせ、穢したこの少女が、オスカリウスは絶対に許せなかった。
「……あ、ぅ……あ、あ、あ……っ、ゆ、許し……っ!!」
広い神殿内を満たすほどの、濃厚な殺気に、アンネマリーは恐怖で顔がぐちゃぐちゃになる。ちなみにフレードリクはとうの昔に気絶してしまっている。
オスカリウスが手に魔力を集めると、青白い炎が現れた。これは大神官が大罪人に罰を与える<裁きの炎>だ。
そうしてオスカリウスがアンネマリーに向かって青白い炎を向けた瞬間、神殿のドアが大きく開け放たれた。
「オスカリウス様っ!!」
突然現れた予想外の人物に、オスカリウスの放っていた殺気が霧散した。
オスカリウスの怒りに巻き込まれていた神官たちは、殺気の重圧からようやく開放されて安堵する。
そして本来であれば、ここにいないはずの人物──聖女の、クリスティナの聖騎士であるアレクシスに感謝した。
「オスカリウス様、どうか怒りをお収め下さい! この者たちを害してはいけません!!」
「……くっ!」
アレクシスに諌められたオスカリウスが魔力を断つと、青白い炎が揺らめきながら消えていった。
オスカリウスが怒りを収め、炎を消したことで、アンネマリーはようやく自分の命が助かったと実感できた。
アンネマリーは絶体絶命のところを救ってくれた人物の方へ顔を向け、そして絶句する。
「──っ!!」
怒りに我を忘れたオスカリウスを諌めることが出来るほどの、胆力を持つこの人物は一体誰なのかと思い顔を見てみれば、そこには眩いほど顔が整った青年がいた。
(……やだ、すごく格好良い……っ!! この人は一体……? 聖騎士、よね?)
そこで転がっている王子より遥かに見目が良い聖騎士に、アンネマリーは一瞬で恋に落ちた。命の恩人という吊り橋効果もあったかもしれない。しかし目の前の美しい聖騎士はアンネマリーの好みドンピシャだったのだ。
アンネマリーがアレクシスに見惚れる中、アレクシスはオスカリウスから事の顛末を聞かされていた。
──曰く。
フレードリクが一方的にクリスティナとの婚約を破棄したこと。
勝手にクリスティナから聖女の称号を剥奪し、しかも聖女の腕輪まで取り上げたこと。
身分不相応なアンネマリーを聖女だと祭り上げ、腕輪を渡したこと。
そして極めつけは、クリスティナを偽物の聖女だと糾弾し、学院から追い出したこと──。
オスカリウスから簡単に説明されただけでも、その内容がひどいことがアレクシスに理解できた。
時々垣間見える不安そうな瞳もきっと、王妃になることへの不安なのだろうと思っていた──いや、思い込んでいたのだ。
オスカリウスは自分の浅慮に後悔する。どうしてクリスティナをもっと慮らなかったのか、と。
初めはその魔力量や、聖女としての素質が惜しくて強引に神殿入りとした。しかし、クリスティナと共に過ごすうちに情が湧いてしまったのだ。まるで本当の孫娘のような親愛の情が。
クリスティナが落ち着き、自身も多忙だったため、彼女を他の神官に任せてしまったのが間違いだった。
王室との関係を配慮する余り、クリスティナの気持ちを蔑ろにしていたことに気付かなかった自分の至らなさと、クリスティナの血が滲むような努力を踏みにじったバカ王子に、オスカリウスは腸が煮えくり返って仕方がない。
そしてクリスティナが──代々聖女がその身を削ってまで大切にしてきた、その聖宝を、卑しい身に纏わせ、穢したこの少女が、オスカリウスは絶対に許せなかった。
「……あ、ぅ……あ、あ、あ……っ、ゆ、許し……っ!!」
広い神殿内を満たすほどの、濃厚な殺気に、アンネマリーは恐怖で顔がぐちゃぐちゃになる。ちなみにフレードリクはとうの昔に気絶してしまっている。
オスカリウスが手に魔力を集めると、青白い炎が現れた。これは大神官が大罪人に罰を与える<裁きの炎>だ。
そうしてオスカリウスがアンネマリーに向かって青白い炎を向けた瞬間、神殿のドアが大きく開け放たれた。
「オスカリウス様っ!!」
突然現れた予想外の人物に、オスカリウスの放っていた殺気が霧散した。
オスカリウスの怒りに巻き込まれていた神官たちは、殺気の重圧からようやく開放されて安堵する。
そして本来であれば、ここにいないはずの人物──聖女の、クリスティナの聖騎士であるアレクシスに感謝した。
「オスカリウス様、どうか怒りをお収め下さい! この者たちを害してはいけません!!」
「……くっ!」
アレクシスに諌められたオスカリウスが魔力を断つと、青白い炎が揺らめきながら消えていった。
オスカリウスが怒りを収め、炎を消したことで、アンネマリーはようやく自分の命が助かったと実感できた。
アンネマリーは絶体絶命のところを救ってくれた人物の方へ顔を向け、そして絶句する。
「──っ!!」
怒りに我を忘れたオスカリウスを諌めることが出来るほどの、胆力を持つこの人物は一体誰なのかと思い顔を見てみれば、そこには眩いほど顔が整った青年がいた。
(……やだ、すごく格好良い……っ!! この人は一体……? 聖騎士、よね?)
そこで転がっている王子より遥かに見目が良い聖騎士に、アンネマリーは一瞬で恋に落ちた。命の恩人という吊り橋効果もあったかもしれない。しかし目の前の美しい聖騎士はアンネマリーの好みドンピシャだったのだ。
アンネマリーがアレクシスに見惚れる中、アレクシスはオスカリウスから事の顛末を聞かされていた。
──曰く。
フレードリクが一方的にクリスティナとの婚約を破棄したこと。
勝手にクリスティナから聖女の称号を剥奪し、しかも聖女の腕輪まで取り上げたこと。
身分不相応なアンネマリーを聖女だと祭り上げ、腕輪を渡したこと。
そして極めつけは、クリスティナを偽物の聖女だと糾弾し、学院から追い出したこと──。
オスカリウスから簡単に説明されただけでも、その内容がひどいことがアレクシスに理解できた。
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