【完結】月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

五城楼スケ(デコスケ)

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決着3

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「どこで手に入れたのかは聞いてないなぁ。……でも、ツヴァイハンダーを使いこなせるなんてトールは本当に凄いよね。どうしてあんなに戦い慣れているの……?」

 ツヴァイハンダーのことよりも、ティナが一番気になっていたのはトールの強さだった。

 しかしティナは、トールに質問したことを早々に後悔する。興味本位で聞いてはいけないことのように思ったからだ。

「あ、ごめん……っ! 今の忘れて──」

「生きるためだよ」

「──……え?」

「生き抜くために、俺は強くなきゃいけなかったから」

 トールが教えてくれた答えは、ティナの予想よりも遥かに重いものだった。

 ただシンプルな答えの中に、トールが抱えているらしい複雑な事情が垣間見えて、ティナはやっぱり質問したことを後悔した。

 よく考えてみれば、ティナはトールのことをほとんど知らなかったのだ。

 隣国であるクロンクヴィストからの留学生で、同じクラスで、休みがちだったティナに見返りを求めること無く親切にしてくれて──。

 クロンクヴィスト出身とはいえ、実家のことも、貴族なのか平民なのかすら、ティナはトールのことを知らなかった。

 実際はトールのことを何も知らなかったのだと気付いたティナは、もっと彼のことを知りたいと思う。
 だけど、自分がどこまで踏み込んでいいのか、その境界がわからないティナは戸惑ってしまう。

 トールの過去がどうあれ、彼は生きるために強くならなければいけない環境にいたのだ。そんな状況でトールがここまで強くなったのは、彼が相当努力したからだろう。

「え、えっと……。その、すごく大変だったでしょ? よく頑張ったね」

 だから生きる努力をしたトールを、ティナは褒めてあげたくなった。

「……っ、ふふ。有難う」

 返事に困っているティナが可愛かったのか、褒められて嬉しかったのか、トールの口から笑い声が漏れる。

 トールの目は見えないのに、何故か見つめられているとわかってしまう雰囲気に、ティナは別の意味で困ってしまう。

「約束したからね。絶対死なないって」

 不意に、トールが呟いた。

「約束……?」

 その呟きを聞いたティナが、トールの顔を仰ぎ見ると、何となく彼が遠い目をしていることに気付く。

「……うん、昔にね。とても大切な人と約束したから。だからその人ともう一度会うために、俺は死ぬ訳にはいかなかったんだ」

(トールの、大切な人……)

 大切な存在がいるということは、その人にとって、とても幸せなことだとティナは思う。だけど、トールにそんな存在がいると知ったティナの心は、そんな思いとは裏腹に傷付いたかのように痛む。

「……そう、なんだ……」

 ティナは胸の痛みを堪え、何とか言葉を絞り出す。

「……その人とは、もう会えたの……?」

 もしかするとトールの大切な人は男の人かもしれないし、家族や友人のことかもしれない。
 しかし、命を掛けるほどの強い想いをその人に向けるトールに、ティナは言いしれない寂しさを抱く。

 ──ずっと自分だけが、トールの特別なのだと思い込んでいたのだ。

 自分の勘違いに気付いたティナは、羞恥心でどうにかなりそうだったが、そんなティナに気付くはずもないトールが、「それは──」と答えようとした時、ティナの腕の中にいたアウルムが「くぅん……」と目を覚ました。
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